特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

だめなんだよ(笑):『いとしい人』

ヘレン・ハントの監督進出作『いとしい人』(Then She Found Me)http://itoshii-movie.com/
だめなんだよ、ヘレン・ハント好きなんだよ。この人の一見 分別くさそうに見えるルックスと子供っぽい表情をしたときの落差がたまらないのだ。顔に深く刻まれた皺が可愛らしいのだ(笑)。
 養子育ちのために自分が子供を産みたくて仕方がない39歳の女性(ヘレン・ハント)が、元夫の中年マザコンのぼくちゃん(マシュー・ブロデリック)に翻弄され、渋い子連れ男(コリン・ファース)に心引きずられる、そんな話だ。
普通に考えると、アラフォーの女性にとって、ただの、すご〜く都合のいい話のように思えなくも、ない(笑)。
知的でしっかりした中年女性がマシュー・ブロデリック、コリン・ファース、タイプが極端に違う若い男二人から言い寄られ、尚且つ 美味しいとこ取りしてしまう。
自分の意見はハッキリ述べるくせに肝心なところは常に『あなたはどうなの?』とあなた任せ、だけど男はそれに抵抗できない。実はずるい女だ。だけど僕は許しちゃう、大人だから(笑)。
 都合がいい話をストレートに肯定しちゃっているところがいいんだよね。憎めない。
もちろん、欲求をそのまま表現したらただのバカだけど、そこはヘレン・ハントの思慮深げな表情で、知的で繊細なコーティングがしてあるから、ちゃんと説得力がある。あと、母親役のベット・ミドラーは太っていて最初は彼女だと判らなかったが、目茶苦茶はまり役。
 週末に夕食を終えた後にでも見るのにぴったりな佳作。時に大人は(笑)、ピアノ・ソナタみたいに上質な軽いドラマを楽しみたいときもあるんだよ。
 それにしても物語の最後に主人公が下す選択は面白い。ユダヤの白人女性が中国系の養子をもらって、イギリス人の夫の連れ子と一緒に育てるなんて、多様性に富んだニューヨークでしかありえないかもしれないが、それがいいんだ、開放感があって。