特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

史上最低の作戦と史上最低の大統領

渋谷で映画『トロピック・サンダー/史上最低の作戦http://www.shijosaitei.jp/home.html
 ベトナム戦争で犠牲になった女性の感動の手記『トゥイーの日記』のあとが、ベトナム戦争を背景にしたお下劣映画の感想というのは多少気がとがめないでも、ない(笑)。でも人生なんて皮肉なものなのだ。
 黒人役のために黒人になる整形手術まで受けてしまう演技派俳優(ロバート・ダウニー・Jr)、おならが売り物のデブ・コメディアン(ジャック・ブラック)、アクション俳優から演技派俳優への脱皮をめざす落ち目のスター(ベン・スティーラー)、など一癖も二癖もあるスターたちを集めて戦争映画を作ろうとした監督が本当の戦場に迷い込んでしまう、という映画を撮る(笑)、そんな話だ。
 一見すると、生首は飛ぶは、セットをドカドカ爆破するはで、バカ丸出しのハリウッド映画の様でいて、プロットは2重3重の構造になっていることからもわかるように、実は凝りに凝った映画だ。娯楽映画なのにお色気担当の女優さんが殆ど出演していない、というのも実は硬派な映画であることを誇示しているかのようだ。ハリウッドの裏事情を茶化すのにわざわざ、その当事者を変装させ出演させているというのも芸が細かい。
 ショーン・ペンをコケにする役を本人にやらす、というのも良かったが、なんといってもルパート・マードックみたいな金の亡者の悪徳プロデューサー役がトム・クルーズ、というのはびっくらこいた。エンドロールで自ら正体をばらすまで、絶対誰にもわからないだろう。興味がなかった俳優さんだったが、この映画では文字通り演技賞ものだ。全登場シーンで、ただただ、怒鳴り、罵り、下品な4文字単語を連発し続けていただけ、なんだから(笑)。
 この映画の娯楽性と知性と痴性を肩肘張らずに鼎立させる手腕にはハリウッドの底力を見たような気がする。ある意味 日本の観客には難しすぎるこの映画、全米1位だったんだよね。

 さて、今週のベストヒットはやはり、記者会見場でブッシュに靴を投げつけたイラク人記者、ザイディ氏だ。ジャーナリストとしてどうかということはあっても、世界中の人の気持ちを代弁してくれた彼の勇気には尊敬あるのみ、だ。ザイディ氏が靴を投げたことが報じられて直ぐ撮られた、この素晴らしい写真を見て欲しいhttp://sankei.jp.msn.com/photos/world/america/081216/amr0812160900001-p4.htm。世界中の多くの人がこの子供と同じように思っているのではないか。記者さんを取り押さえたのが周りの記者だった、ということに象徴されているように、ブッシュを警護するSPの動きが異常に鈍かったとか言われているが、それもわざとだったんじゃないか?ただ記者さんが靴を投げつける際 ブッシュに『犬野郎』と言ったのは、いくらなんでも犬に対して失礼だとはおもうが。
ブッシュはこういうことが起こること自体もイラク民主化の成果だ、とか言ってるらしいが、TVカメラで世界中の人が見ている前だから成立した話だろう。裏ではどうなっているんだか。グアンタナモの拷問を今だに正当化しているような人間たちが自由とか言うのはちゃんちゃらおかしな話だ。
 とにかく現在拘束されているという記者さんが無事に、早く釈放されますように。