特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

BS-TBS『報道1930』(統一教会特集)と映画『ボイリング・ポイント/沸騰』

 ボクの身の回りでもコロナの感染、増えてきました。2月頃も酷かったですが、それ以上の勢いです。手洗い、マスクなど気を付けてはいても、大丈夫と言う保証は何らありません。かといって経済活動を止めるわけにもいかない。夏風邪もひいていられない(笑)。

 丸善本店に設置された『安倍晋三追悼コーナー』がネット上でバズってます。

 統一教会など宗教やマインドコントロール関係の本が前面に押し出された品ぞろえは『良く判っている』(笑)としか言いようがない。ネトウヨは発狂しています(笑)。

 今に始まったことじゃありませんがワイドショーによく出ているらしい三浦瑠麗って驚くくらいのバカですね。
 ワシントン・ポスト(ウォ―タ―ゲート事件を暴いた、まともな新聞)とワシントン・タイムズ統一教会が買収したウヨ新聞)を混同して、必死になって統一教会を擁護しています。ワシントン・ポストとタイムズの違いなんて、ボクは高校生の時から知ってたぞ(笑)。

 三浦を見ていると『東大でもこんなにバカがいるのか』と驚かされます。これで肩書は『学者』なのですから(実はまともに論文も書いたことないらしいですが)、日本の知的劣化の象徴みたいな人物です。TVのワイドショーを作る方も見る方もバカばかり、という事なのでしょう。


 さて、先週22日の金曜に放送されたBS-TBS報道1930』の統一教会特集はこれまでで1,2を争うような充実した内容でした。ネットでも識者の間では絶賛の嵐、というと言い過ぎかもしれません(笑)。

 統一教会の日本進出に岸信介が大きな役割を果たしていたことに始まり、80年代の霊感商法被害、そして現在の政治家との癒着まで要点を押さえて、しかもエビデンスを出しながら詳細に報道してました。ワイドショーや普段のニュースは酷いみたいですが、TBSやればできるじゃん(土曜日の『報道特集』の統一教会特集も悪くはなかったけど、情報の密度という点で『報道1930』に全く敵わなかった)。

 番組は統一教会と関係がある政治家のリストに始まり、

 日本進出に岸信介が大きな役割を果たしたことや 

 当初は松濤の岸の家に統一教会の本部があった話も昔の地図まで出してきたのは実に説得力がありました。

 

 霊感商法の被害では、日本から経済的に収奪することを明確に宣言する文鮮明の教えや、

 1000億円以上にも上る霊感商法の被害の大きさ、

 それに文鮮明金日成と義兄弟の契りを結んだという北朝鮮とのつながり、

 それにアメリカとのつながりも。共和党の大統領はブッシュ以外は全員 祝電やメッセージを送っているそうです。統一教会は反共思想で政治家に取り入るけれど、それは方便でしかありません。

 そして第2次安倍内閣になって政治家が公然と支援を求めるようになった事まで、ばっちり描かれていました。安倍政権は選挙至上主義で選挙のためならなりふり構わなかったそうです。

 結局 政治家は選挙の実働部隊が欲しいから統一教会日本会議に頼りたがる統一教会の信者は全国で10万人もいないそうですが(比例区の候補者1~2人分)、政治家には電話かけやポスター張りなど無償で動いてくれる実働部隊は貴重なようです。これも市民が政治に無関心だからです。

 番組は『統一教会は宗教というより、反社会的な団体である。政治家が反社会的な団体と結びついてよいのか。せめて支援を受けていることを公開するべきではないのか』と締めくくっていました。

 異例なことに、この番組は今 YOUTUBEで公開されています。統一教会の実態はネットや一部のワイドショーを除いて、大新聞やテレビのニュースでは殆ど放送されないからでしょう。

 制作側の『今このことを知らせなくてはいけない』という志がひしひしと伝わってきます。圧力で次の放送が妨害される可能性もあるから、この放送に持ってるネタを思い切り詰め込んだのではないでしょうか。分かり易いし、信頼のおける情報です。ぜひご覧ください。

www.youtube.com

●どこの組織でもそうですが、良心を忘れず抵抗する人はいるわけです。マスコミの中においても。


 と、いうことで、有楽町で映画『ボイリング・ポイント/沸騰

一年で最も多忙なクリスマス前の金曜日、イギリス・ロンドンの人気レストラン。妻子と別居し疲れ果てていたシェフのアンディ(スティーヴン・グレアム)は役所の衛生管理検査で店の評価を下げられたり、従業員のいさかいや遅刻など、次々にトラブルに見舞われる。そこへ、ライバルの有名シェフが著名なグルメ評論家を連れて予告なしに来店するが。
www.cetera.co.jp


 イギリス・ロンドンの人気レストランを舞台に、オーナーシェフの波乱に満ちた一夜を描く人間ドラマ。ノー編集でノーCG、90分リアルタイム・ワンショットという驚くべき手法で作られています。第75回英国アカデミー賞(BAFTA)では4部門(英国作品賞、主演男優賞、キャスティング賞、新人映画賞)にノミネートという作品。

 かってはイギリスの料理はまずいことで定評がありました。ワンパターンでソーセージに既存のソースをかけただけ、のような料理が幅を利かせていた。しかし、日本のNHKでも番組が放送されたジェイミー・オリヴァ―などTVに出演する有名シェフの活躍でグルメブームが起こり、お洒落なレストランがずいぶん増えたそうです。

 ジェイミー・オリバーはロンドンでボクも食べたことがありますが、高級ファミレスに毛が生えたような大量生産の味で、ま、フツーです(笑)。日本だったら通用しないでしょう。ただお洒落で独創的な味付けをした料理はイギリス人にとっては珍しい筈で、当初はさぞ衝撃だったのではないでしょうか。
 この映画はそんなレストランを舞台にした、まるでドキュメンタリーのような90分の劇映画です。

 クリスマスは高級レストランが最も忙しい時期です。客が多いだけでなく、店側も1年の集大成なのか接客もメニュー作りも気合が入っている。ボクはそういう時期は敢えて店に行かず、クリスマス後に残った食材を食べに行く、というのがもっぱらですが、とにかく店にとっては大変な時期です。

 そんな時期にも拘わらず、シェフのアンディは妻子と別居。ここ数日、事務所の床で寝ています。店を人気店にした腕利きシェフですが、かきいれ時のクリスマスにも関わらず、精神的にも肉体的にもボロボロです。材料の仕入れを忘れたり、従業員に怒鳴ったり、あまりよろしい状態ではない。

 従業員側も様々です。遅刻の常習犯、客にナンパされることを待ってるウェイトレス、客をナンパするウェイター、有能だが待遇に不満を抱える黒人女性のスーシェフ、熱血漢の三番手シェフ、接客を取り仕切るオーナーの娘、皆それぞれ一癖ある。

●シェフのアンディ(右)とスーシェフのカーリー

 お客の側も当然様々。傲慢で偉そうな客もいれば、この日にプロポーズをしようと張り切る客もいる。料理の価値が判らず、メニューにない『ステーキを出せ』と言い張る、インスタのインフルエンサーもいる。

 極めつけはTVに出ている有名シェフが愛人のグルメ評論家を連れて、突然やってきたことです。アンディと有名シェフは表向きは友人ですが、かっては同じ店に居て微妙な関係です。

●接客を取り仕切るオーナーの我儘娘

 映画は90分ノーカットの長回しの撮影、という特殊な表現のなかで、様々な人々が常に行きかう群像劇になっています。撮影の段取りも台詞覚えも大変だったでしょう。画面はまるでドキュメンタリーのような緊張感に溢れています。

●従業員たち。それぞれ様々な事情を抱えています。

 皿洗いは東欧からの移民や麻薬常習の黒人がやっていたり、下ごしらえはフランス人や黒人の人だっていたり、スーシェフは待遇に不満を抱えている黒人女性だったり、パティシエ見習いは手首に何度も自殺未遂した後が残っている。レストランは社会の縮図になっています。いかにもジョブ型雇用らしく、周りに使った調理器具やごみが散らばっていても、下働きの子は『片付けるのは俺の仕事じゃない』と知らんぷりをしていたりする。

 それにライバルシェフには金儲け優先のグルメブームの光と影がちらついている。どうしたって観客は現代の社会構造の事も考えさせられます。ここいら辺の散りばめ方は実にうまい。退屈している暇がない。
●ライバルシェフ(中央)と愛人のグルメ評論家(右)

 話のオチはあるようでないし、何か風刺が効いているとか、感動するとかではありません。ですが、アンディ役のスティーヴン・グレアムは凄く良かったし、映画の独特な緊張感がとにかく面白いです。長さも90分と締まっていてちょうどいい。大変ユニークな映画でした。


www.youtube.com