特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『繋がっている私たち』と『パラサイト』を超える大ヒット:映画『エクストリーム・ジョブ』

 今日から6月、社会も動き始めたようですね。
 ボクが知っている例では、少なくとも6月中はテレワーク推奨、という会社が多いようです。今までの世界に逆戻り、では全く意味がないですよね。


 以前にも書いた、うちの近所にある小さなイタリアンはNHKでパスタの作り方を教えるようなオーナーシェフがやっているんですが、この2か月 テイクアウトのみの営業を余儀なくされていました。
 6月から営業を再開するというので、週末に最後のテイクアウトを買いに行ったら、店の若い子たちの表情が明るかったこと!
 その表情を見ているとこちらも嬉しくなりました。

 営業再開と言っても、もともと16席しかない小さな店をソーシャルディスタンスで更に6席に減らして営業を始めるそうなので、経営面では順風満帆、とはいかない筈です。それでも普段の仕事に戻れる、作り立ての料理を出すことが出来るのは料理屋さんにしてみれば嬉しいのでしょう。
 何気ない日常が如何に貴重か、ボクも感謝しなきゃいけないと思った。
●テイクアウトで買ってきた豚のポルケッタ(丸焼き)。バラ肉をウイキョウと一緒にマリネして炭火焼きにしたもの。真空パックされたものを家で湯煎して、フライパンで焼き直しました。付け合わせは豚の脂で一緒に焼いたピーマンのロースト


 昨晩のNHKスペシャル世界同時ドキュメント 私たちの闘い』は中々感動的なプログラムでした。

www2.nhk.or.jp

 この2か月間の世界各地の人々の自撮りをつなぎ合わせただけでしたが、実に雄弁な番組でした。特に医療崩壊寸前のNYを救うために全米から集まってきた看護師たち、人々を励まそうとバルコニーから歌い続けたフィレンツェのオペラ歌手の姿はマジで感動的でした。

 ロックダウンの程度も感染状況も、一人一人が感じる危機感も様々です。が、コロナという環境下で我々は似たようなことを感じているのが良くわかった。不安を感じたり、時にはくじけそうになるけれど、違う国、違う人種でも我々と同じことを感じている人たちがいる。年齢も国籍も環境も違うけれど、彼らは我々かもしれない。

 ミネアポリスと渋谷でさえ、同じことが起きています。我々はつながっている。
●渋谷署の警官が路上でクルド人を暴行、怪我を負わせたのが拡散しています。

ミネアポリスで警官が黒人を殺したことに対する抗議が全米各地に拡がっています。

●NY。昨年 映画『ジョーカー』で見た光景、そのままです。びっくりした。

●非暴力で座り込みをしている女の子を警官が蹴り飛ばした瞬間。

●警察と群衆の間で暴力の応酬も起きています。1枚目、白人女性たちが黒人の抗議者を警察の暴力から守るために、腕を組んで警官の前に立ちふさがっている。2枚目、群衆の中に孤立した白人警官を黒人たちが守っています。

●抗議で逮捕された人たちを護送するのを拒否して車から降りたバス運転手に、周囲から拍手が沸き起こっています。


 一方 アベノミクスもオリンピックも、

 補助金の利益誘導も、政治家連中は我々を古い世界に引き戻そうと懸命です。

 所詮 今時 賭けマージャンなんかやってる連中です。

 我々はやっぱり、前の世界には戻ってはいけない。


 映画館、もそろそろ開くようです。まあ、シネコンはどうでもいいかな、と思いますが(笑)、ミニシアターの経営は心配です。映画館も、再開しても定員は少なくなるから、経営は大変でしょうし。

 今回のコロナ禍で映画も音楽も演劇も大打撃を受けています。
 映画界について、『サイタマノラッパー』や『AI崩壊』の入江悠監督は映画を作る側、俳優だけでなく、アクション関連の人、撮影の人、もちろん映画館の人、様々な立場の人の間で分断が起きることを指摘しています。
movie.walkerplus.com

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 6月から仕事を始められる人もいれば、そうでない人もいる。映画館や俳優さんの問題だけでなく、撮影や小道具の人もいる。
 これからは撮影するにしても、キスシーンやアクションの殺陣はどうしたらよいのでしょうか。エキストラを集めて群衆シーンというのも難しい。
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 監督はこう言っています。
 今回のコロナ禍はさまざまな立場の人々の間の分断をグラデーションのように生じさせている。そしてコロナ禍で最も恐ろしいのは誰にでも当てはまる明快な解決策がないこと。その分断を乗り越えるには一人一人が想像力を働かせていくしかない。

 映画を作る側、映画館の側、見る側、大資本に自主製作、シネコンにミニシアターとそれぞれ事情は全く変わってくる。すべての人を救える明快な解決策は確かにない。
 これは映画に限った話ではありません。職業、雇用形態、住んでいる地域、性別に国籍。ある意味、今の世の中の縮図でもあります。

 ボクが映画を見る理由の一つは、世間知らずの自分の世界を広げるため、です。特にボクは人間嫌いですから、世界が狭いのは自分でもわかってる(笑)。
 入江監督は、『分断を乗り越えるために想像力を働かせること』についてこう語ってます。

 映画のスクリーンは『世界を見つめる窓』であり、私たちはそこで他者を見つめる視力を鍛えられてきたはずだ。

 ボク自身は人間というものにあんまり興味がないので、他者への想像力、という面では甚だ心もとない。それでも目を見開いて、世界を感じていかなければいけない、と自戒しています。バカになっちゃうから。

 我々は孤立してはいるけれど、繋がっている存在でもあるからです。今回のコロナ危機から学ぶべき点はそれじゃないか、と思っています。


ということで、アマゾンの配信で映画『エクストリーム・ジョブ
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 班長率いる5人の麻薬捜査チームは実績を全く残せず、解散の危機にひんしていた。彼らは大物麻薬組織の情報を入手し、潜伏捜査を始める。コ班長とメンバーのチャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンは組織のアジト前にあるフライドチキン店を買い取り、営業しながら24時間体制で監視を行うが、フライドチキンがおいしいと評判になって客が殺到してしまう- - -

 韓国で『パラサイト』を抑えて2019年度NO.1ヒットを記録しただけでなく、韓国歴代興行収入ランキング第1位に輝いた大ヒット作です。年初に劇場公開されましたけど見損なったので、配信になったのはちょうどよかった。


 お話はコ班長率いる捜査チームが現場へ踏み込むところから始まります。彼らはビルの屋上からロープで釣り下がり、犯罪組織がいる部屋の窓から踏み込もうとします。
 普通だったら窓を蹴破って部屋へ侵入、逮捕となるわけですが、窓を蹴破ると発生する賠償金に怖れをなして、チームの面々は中々踏み込むことができない(笑)。結局 犯人たちを取り逃がしてしまいます。

 ドジばかりの捜査チームは上司の署長に捜査費用の削減と将来的な解散を告げられます。
●チームの面々。確かにパッとしない顔ぶれですが- - -

 窮地に陥った彼らは麻薬組織のアジト前にあるフライドチキン店を買い取り、24時間体制で監視、組織を壊滅させようとします。しかし、マ刑事が故郷のレシピで作ったカルビ味のフライドチキンが大ヒット(笑)、店は大繁盛して捜査どころではなくなってしまいます。

 お話はコメディ。
 大財閥とそれ以外という格差社会の韓国は、手軽に日銭を稼げる商売としてフライドチキンで起業する人が多いと聞きます。焼肉より安価で、チキンは手軽な庶民の味として親しまれているそうです。

 あちらのチキンは揚げたものだけでなく、この映画のようにタレを絡めたものもあるそうです。身体に悪そうだけど、美味しそう。新大久保へ行けば食べられるのかな。
●これが水原風カルビチキン


 この映画、なんといっても脚本がうまい。刑事ドラマというよりコントのようにお話が進んでいきます。

 その中で登場人物たちはダメ刑事の烙印を押されても刑事として生きるべきなのか、大繁盛のチキン屋として生きるべきなのか悩みます(笑)。こういうの、好き💛

 麻薬捜査チームの面々は最初は顔の区別もつかないくらいだったのですが、お話が進むにつれ、コ班長の中年の悩みなど、メンバーのキャラが明確になってきます。段々愛おしくなってくる。

 それがクライマックスで見事に回収されます。
 


 韓国映画らしいどぎつい描写は少ないし、ケラケラ笑いながら楽しんで見ていられます。ほんと、よくできている。感動するとか、そういう話ではありませんが、純粋に楽しい、そんな作品でした。大ヒット作、というだけのことはある。既にハリウッドでのリメイクが決定しているそうです。


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