特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『サンダース氏の主張の本質』と『また、TPPを考えてみる(笑)』、それに『0205 再稼働反対!首相官邸前抗議』

先週末 日銀(と政府)が勢い込んで導入した史上初のマイナス金利たった3日しか効果は持ちませんでした(笑)。株は先週より1000円も安くなったし、円だって5円も高くなった。アベノミクスはもはや断末魔です(笑)。言わんこっちゃないけど、笑ってらんない。選挙があるから、少なくとも夏までは株が上がるだろうっていうのがもっぱらの話だったんですけどね、くっそ〜(泣)(笑)。

                                                     
シャープを台湾の鴻海(かって従業員の自殺が多発したことで悪名高いフォックスコンの親会社)が買収するみたいですけど、昨日のシャープの経営者の記者会見は酷い、と思いました。『事業を切り売りしない』、『従業員の雇用を守る*』、『技術の海外流出はない』って言ってましたけど、そんなわけないじゃないですか。だって、シャープを丸ごと買うんだもん(笑)。 どこかの時点で要らない事業を売り飛ばし、リストラして、技術はゆっくりと持っていくに決まってます。シャープの現経営陣も残るらしいですが、既に従業員の大規模リストラをした経営者がそのまま残るというのは無責任もいいところでしょう。太平洋戦争と一緒ですな。戦犯がトップに残っていたら、再建に向かって従業員は真剣についていくわけがありません。と言っても、ほとぼりが冷めたら現経営陣もお払い箱でしょうけど(笑)。
結局、無責任な経営者、借金を取り立てたい銀行、ブランドと技術が欲しい鴻海、3者の利益が一致したと言うことでしょうか。もちろん 経産省が旗を振ってた産業革新機構の案は銀行に借金を2000億棒引きさせて機構が3000億出す、というものですから、7000億も出してくれるホンハイの案が勝つのは当然です。シャープは運も悪かったですけど、経営者も甘かった。そういう経営者がいると、迷惑なのは従業員です。*今日9時のNHKニュースでは早くも鴻海側は『40歳以下の従業員はリストラしない』に話が変わっていました。

                                          
さて、今月から始まったアメリカの大統領選、アイオワでのサンダース氏の健闘には驚きました。クリントンとの差は0.2ポイントくらいしかないんですから。開票後の党員集会でテーマソングにのって入ってきたサンダース氏はこう言っていました。
アイオワ、ありがとう。9か月前には組織も、知名度も、カネもなかったのにここまで来ることができた。ここから政治の革命を始めようじゃないか!』


                              
当初 誰もがサンダース氏は泡沫候補と思っていたし、ボクもそう思っていました。彼は民主党員ですらありません。9か月前までの部外者が既に民主党の半分を乗っ取っているわけです。余談ですが、日本もどうしようもないバカ野党に期待するより、自民党を乗っ取る方が早いかもしれません
サンダース氏が個人献金だけに頼って、ここまで来たのにはまさに驚きです。それは大勢の人が格差の拡大への怒りを持っているのと同時に、本人が不屈だったからに違いありません。彼はイラク戦争反対(ヒラリーは賛成)、TPPも反対(ヒラリーは最初賛成、後から反対。意味不明な陰謀論に捉われがちな日本の頭の悪い反対派と違って、サンダース氏は『雇用が流出するから反対』とちゃんと理屈が通っています。)、ウォール街を規制しろ、と全然ぶれない。この人はどういう人なんだろうか。

                                              
投票日直前のサンダース氏の集会をYouTubeで見てみたら、アカデミー女優のスーザン・サランドンが応援演説をしていました。この人も全くぶれない(笑)。感極まったのか彼女が声を詰まらせながらサンダース氏を紹介します。サンダース氏が入場する際 流れてきたテーマソングはブルース・スプリングスティーンの『We Take Care Of Our Own』です。なるほど〜。これでサンダースがどういう人か判りました。それはこういう曲だからです。
シカゴからニューオリンズまで、銃撃事件が起きても、洪水が起きても、政府は助けてくれなかった。
アメリカの国旗がどこで翻っていようと関係ない。
俺たちは自分たちの力で立て直そう。俺たちは自分たちで慈しみ合おう。

●サンダース氏と抱き合うスーザン・サランドン。サランドンは筋金入りの超リベラル(笑)。

                                 
この曲は単純に聞くと『大きな政府なんかいらない、自己責任でやるんだ』というリバタリアンの主張みたいにも聞こえないでもない。でも、民主社会主義者を自称するサンダース氏がこの曲をテーマソングに選んだわけは良くわかるんです。
サンダース氏はこう言っています。『金融資本や金持ちが権力を握ってやりたい放題やっている。もっと公平な社会をつくろう。』ここまでは多くのマスコミが報じている通りです。だが彼はもっと大事なことを言っている。『世の中を変えるのは自分自身、我々一人一人だ』とも言うのです。彼は演説の締めくくりによく、こう言っています。
どんな大統領だって一人では変革なんかできない。何百万もの働く人、若い人、99%の側が大きな声を挙げていくことが必要なのだ。一緒に政治革命を始めよう。
その後 彼はデヴィッド・ボウイの『Starman』の『子供たちを自由にさせよう』というフレーズに乗って退場していくんです。

                                                   
これがサンダース氏の主張の本質だと思います。日本では過激とか社会主義者とか言われてますけど、ここが報じられていない。変革をもたらすのは彼じゃない、我々一人一人だ、皆でやるんだ、と。過激でも何でもない、至極当たり前の話です。実際 彼は個人献金しか受けないのも、そういうわけなのでしょう。
●『大金持ちの献金は要りません』(笑)というサンダース氏のCMエンドロール

                                                          
ボクが日本の旧来の左翼の人たちに違和感を持つ理由の一つは、何でも権力のせいにしたり、政府や大企業に要求するばかりで、自分たちはどうするという視点が薄いから、です。原発だって、安全保障だって、言論の自由だって、確かに政府も大企業も問題はあります。でも自分たちにも問題がある原発から利益を得ている人は現実にいるんだし、核を持った狂人独裁者が日本の近くでうろちょろしている。コストをかけずに原発を止めることはできないし、いざというときどうするという具体的方策を持たずに平和なんか守れない。マスコミの偏向に悲憤慷慨する割には、くだらないワイドショーを見て清原がどうのベッキーがどうの、くだらない話題にもっと多くの時間を費やしている。そういう思考停止・他力本願が多いから、非現実的な発想になるのだと思います。まるでお経のように(笑)『平和を守れ』とか『憲法守れ』と唱えるだけで、『なぜ』、『どうやって』が絶望的に薄い。
戦後70年間、今に至るまで日本では与野党ともに利益分配のことばかりやってきたのは、国民の多くがそれを望んでいたからです。サンダース氏は公立大学の学費無料という政策を打ち出して若者の圧倒的支持を受けていますが、自分たちの税金でそれを払うことになる年配の人もそれを応援している。余談ですが、日本だって学費の値上がりは酷いもんです特集ワイド:お金ないから大学行けない 国立でも授業料年54万円、40年前比15倍 - 毎日新聞。学費にしろ、雇用にしろ、子育てにしろ、どうして若い人が希望を持てるような政策を日本の政治家は語らないのか。選挙前に年寄りに3万円配ってる場合じゃありません。まして軽減税率で喜んでいる人なんて、悪いけど脳味噌を疑ってしまします。
                                            
結局 我々一人一人が変わらなければ、世の中は変わらない。ボク自身がもう少し賢くなって、自らが普段の生活を少しずつ変えていかなければ何も変わらない。そのことは311の衝撃で多くの人が思い知ったはずなのです。
幸い 日本はアメリカほど酷い格差社会じゃないし、アメリカほど金融や大企業が世の中を支配しているわけではありません。だけど、根本的なところはサンダース氏が言っていることは我々にも当てはまる、と思います。
                                                                 
これからヒスパニックや黒人が多い南部の選挙があるし、圧倒的に資金力の差がありますから、サンダース氏が最終的に勝てるかどうかはやはり疑問です。72年と今とでは情勢が違いますけど、ベトナム反戦を公約の中心にしてニクソンに大敗した大統領候補マクガヴァンみたいになることだって考えられる。だけどクリントンウォール街規制に言及しだしたように、サンダースの勢いが増せば次の米政府でも格差是正の政策が色濃くなってくるでしょう。彼のやっていることは無駄ではない。それは日本にだって影響がある。いずれにしても日本の我々がサンダース氏から学ぶべき点は多々ありそうだと思っています。
●We Take Care Of Our OwnのPV。大勢の労働者の姿に歌詞が被ります。それはなぜかってことでしょう。


さて、TPPの調印式が行われたみたいですが、日本では相変わらず農業のことばかり話題になっています。でも、TPPに入ろうが入るまいが、就業者の平均年齢が60代後半ってことのほうが、TPPの1億倍も重要な農業の問題点でしょう。他の産業と同じように創意工夫を凝らせば農家の人はTPPがあろうとなかろうと生き残っていけるんじゃないですか。他の産業と同様、サボってる奴はダメでしょうけど。
一方アメリカでは全米最大のロビー団体 全米商工会議所はTPPを歓迎していますが、大統領選の候補者はサンダース氏もクリントン氏も共和党の候補も殆どがTPPに反対しています。日本のTPP反対論者は『TPPはアメリカの陰謀だ』みたいなことしか言いませんが、アメリカだって反対の声は大きいじゃないですか(笑)。国民皆保険は問題なさそうだし、ISDS条項だって健康や環境に関することは対象外になったり、司法手続きが変わったり、当初想定されていたものとは違います。
                                                                           
そんなことより、先週 アメリカのタフツ大が、『TPPによって、実質GDPも減るし、雇用も減る、労働分配率も下がる』という試算結果を出したのが話題になっています。具体的には『2025年にはアメリカのGDPは2015年より0.54%減、雇用は448千人減、日本は0.12%減、雇用は74千人減』となっています。その理由は競争の激化で人件費が下がるからです。だから労働分配率アメリカは1.31%減、日本は2.32%減となっています。

●タフツ大のレポート(サマリー版) http://www.ase.tufts.edu/gdae/Pubs/wp/16-01Capaldo-IzurietaTPP_ES.pdf

●タフツ大の試算結果を伝える日本のマスコミ。労働分配率が下がる、という肝心なことをあまり理解してないようです。
毎日:http://mainichi.jp/articles/20160127/k00/00m/020/121000c
日刊ゲンダイ80万人雇用はウソ…米大が試算「TPPで日本は7.4万人失業」|日刊ゲンダイDIGITAL
?これが一番まとまってます:http://www.businessnewsline.com/news/201601250806530000.html

一方 日本の政府試算では『TPPが発効し成長経路に移行した時点で、実質GDPは2.6%アップ、雇用は80万人増』としています。

元ネタ:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki01.pdf#search='%E6%94%BF%E5%BA%9C%E8%A9%A6%E7%AE%97+%EF%BC%B4%EF%BC%B0%EF%BC%B0'



タフツ大の言ってることと日本政府が言ってることでは結論は正反対(笑)。まあ、計算モデルも対象となる製品の絞り方も対象期間が違いますから、一緒の数字にはならないでしょう。日本政府だけでなく、IMF世界銀行はTPPでGDPは増えると試算してますし、どちらが正しい、と断言する力はボクにはない。ただボクはTPPで物価が下がるから実質GDPは上がるかも、とは思ってましたからタフツ大のレポートはちょっと新鮮でした。新興国との競争の激化で人件費は下がると考えるべきかもしれませんね。いずれにしてもTPPで競争は激しくなり、こうなることが予想できます。
●TPPの良い点:
『優秀な製品、優秀な企業が勝つ』
『消費者は優秀な製品、サービスが利用できる機会が増える』
『(たぶん)、物価は下がる』(生産者にとっては良くない)
『日本に進出してきた外資企業や新サービスで雇用が増える』
『良い製品を供給したり労働者の賃金を上げられない無能なゾンビ企業補助金や規制頼みのゾンビ産業が市場から退出しやすくなる』
●悪い点:
『人件費は下がる』
労働分配率が下がって、資本(お金持ち)の取り分は増える』
『つぶれる会社が増えて、その分の雇用が減る』
『雇用の海外流出が増える』(TPPが無くても、少子高齢化で企業は海外に出ていくに決まってますが)
                                                          
皆さんはどうお考えになりますか? 少なくとも、今後 再分配は益々大事になる、ということだけは間違いないとボクは思います。そのためには現物給付などの効率的な再分配の方法や教育や介護など再分配を強化すべき対象をもっと真剣に議論していかなければならないのではないでしょうか。すくなくとも農産物の補助金がどうとかより、はるかに重要な論点があることだけは確かです。


と、言うことで、今週も再稼働反対の官邸前抗議へ。
今日の午後6時の気温は10度。冷たい雨だった先週と比べるとまるで春のように温かく感じます。今日の参加者は主催者発表で900人。今日 桜島が噴火しましたが、近くの川内原発を動かしている九州電力は予知できたのかって話ですよ(笑)
●抗議風景




今日は久しぶりに双葉町から避難しているお母さんの話を聞いたのですが、故郷に帰るあてもないまま、避難後 既に約400人が亡くなったそうです。ボクは故郷へのこだわりとかは殆どない人間ですが、さすがにちょっと考えてしまいました。

                                  
原発企業、東芝の経営がいよいよ怪しくなってきました。昨日 四半期決算が発表されましたが、今期の決算で自己資本比率は約2%に落ち込む見込みだそうです。業種や業界にもよりますが、自己資本比率は優良企業ではだいたい60〜70%くらい、普通の会社では40%くらい、20%を切ったら『大丈夫か』と言われ始め、10%を切ったら『やばい』という感じです。東芝の2%という数字は尋常なことではありません。なおかつWHの減損はまだしてないそうですから、これから爆弾が破裂する可能性もある。自己資本がゼロになったら債務超過、潰れるということですから、日本のGDPの1%、売上高6兆円の超巨大企業も今や風前の灯です。原発などのエネルギー部門(赤字部門)と半導体(黒字部門)を残して、稼ぎ頭の医療機器(バカだねえ)、それに家電だのパソコンだのは売却するつもりのようですが、大変でしょう。さすがに政府も救済しようとするでしょうけど、シャープの二の舞になるかも。
                         

経営陣はともかく、東芝と言えども立派な人も居るでしょうし、これだけ会社がでかいと日本経済への影響は心配しなければなりませんが、原発を止めたほうがいいと思っている人に明るいニュースでしょう。天罰かな(笑)。