特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

人生は甘くて苦い(笑).:映画『ビフォア・ミッドナイト』

今日は俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなったそうだし、最近はルー・リードムーンライダーズかしぶち哲郎氏とボクの好きなミュージシャンが続けて亡くなっている。先週はフォークシンガーのピート・シーガー氏まで亡くなってしまった。御年94歳じゃ仕方ないけれど、まさに生きる伝説の人だった。この人は公民権運動の時代から今まで全然考え方が変わらず、イラク戦争当時は反対のプラカードを掲げて一人で道端で立って抗議し続けたそうだ。凡百の日本の自称フォークシンガーとはだいぶ違う(笑)。ボクは左翼とか右翼とかイデオロギーに囚われている人は嫌いだが、この人はアメリカの左翼の良質な部分を体現する人だと思う。組織はあてにしないで自律を信じる、ある意味アメリカ人らしいリバタリアン的な要素を持っているのだが、そこが尊敬できる。合掌。
ピート・シーガー氏。オバマ再選の式典で。ブルース・スプリングスティーンと。

                     
新聞各社の調査を見ると、どうも都知事選の調子が思わしくない。各紙ともトップは舛添、2番手は日経が細川、読売は細川・宇都宮が横一線、朝日はどちらとも書いていない。細川は準備不足は否めないし、本人に対する不安も残るし、決め手に欠けることは確かだけど、そんなに舛添に入れたい人がいるのかなあ。まあ、石原慎太郎や猪瀬に投票してきた良識溢れる(笑)東京都民だから驚くような話ではないのかもしれないが。舛添は自民、公明の6割〜8割(信じがたいが)くらいを固めたそうだから、既に100万〜150万票持っていることになる。投票率にもよるが無党派は300〜500万票くらいあるのだから、やはりそこへの浸透が勝負なのだろう。昨年の東京選挙区では吉良ちゃん、タロー、鈴木寛合わせて約200万票はあった。もっと投票率が高ければ、そして有権者が良識を働かせて候補者を一本化できれば勝ち目はある。

それにしても街頭での反応は新聞とは全く!違う。どこの立会演説の様子を見ても細川の演説は人も集まっているし盛り上がっている。それに投票率が前回より上がりそうなのは間違いないので、そこに期待する。
とにかく選挙に行こう!

    
                                                                 
よ〜し、たまには恋愛映画にも行っちゃおう、それもロマンチックな奴(笑)。ということで渋谷で映画『ビフォア・ミッドナイト

                                                    
アメリカ人男性(イーサン・ホーク)とフランス人女性(ジェリー・デルピー)との一日のラブストーリーを描いた3部作の3作目。第1作目、95年の『ビフォア・サンライズ』では電車の中で出会ったアメリカ人男性とフランス人女性がウィーンで友達以上恋人未満の関係になるまでの一夜の出来事を、その9年後の『ビフォア・サンセット』ではウィーンで別れてしまった二人の9年後のパリでの半日の再会を描いていた。

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第1作目は公開当時『恋人たちのディスタンス』という邦題でアカデミー賞にもノミネートされて話題になったそうだ。だけどボクはそんな邦題じゃ完全無視(笑)。それが、この正月に前2作を続けてDVDで見て、存外面白かったので反省して?今回 見に行った次第(笑)。

今回の3作目はパリでの再会から9年後と言う設定。パリで再会した二人はそのまま一緒に暮らしている。アメリカ人男性は作家となり、フランス人女性は環境保護NPOで働いている。その二人がギリシアでバカンスを過ごしている。その一夜の物語。
今年のアカデミー脚色賞ノミネート作品。            
                                                                 
前作と同じように物語は、男と女の溢れるような会話で進められる。台詞は監督と主演の二人が一緒に実体験を基にしながら書いているそうだ。ロマンティックな会話になったかと思えば大喧嘩が始まる。そのスリリングさは当人たちのキャラクターでもあるけれど、脚本がすごくよく練られているのだろう。文字通り息をもつかせぬ感じだ。今回の40を過ぎた男と女の会話は決してロマンティックなものではない。育児のこと、生活のこと、お互いのキャリアのこと、身体の衰え、あけすけな下ネタ、過去の恨み(笑)−−−−。
●一見 呑気そうに歩いているが、行われているのはバトル。言葉のバトル。

主人公たちはボクより若干年下という設定なので、これからもっと大変になるんだよ、と言いたくもなるが、こういう年配のカップルの会話は親近感が感じられるし、フランス映画っぽく一ひねりも二ひねりもある会話はやっぱり面白い。

イーサン・ホーク目当ての女性の観客も多いとは思うが(笑)、この作品のジェリー・デルピーはすごく素敵だと思う。彼女が『はじめて出会ったとき、40過ぎの今の太った私の姿でも、あなたは声をかけた?』とイーサン・ホークに半ば脅迫するシーンがあるが、彼女は全3作のなかで最も魅力的に映っているのではないか。立派な中年になったルックスも(笑)、眼から鼻へ抜けるような聡明さも、それに若干エキセントリックなキャラクターも、良い歳の取り方をしているから演じられるのだと思う。
脚色もそう。
部屋で二人きりになったあと、ジェリー・デルピーが服を脱いだのに男は服を着たまま、イーサン・ホークがズボンを脱ぐと、彼女が服を着るというコミカルなシーンがあるが、今までの作品では台詞ではともかく、視覚的にはそういう直接的な描写はなかった。会話だけで描いてきた今までの作品では全くなかった、そういうシーンを今回は敢て真正面から映すところも、監督は加齢を肯定しながら撮っているからだと思う。歳を取るって男も女もロマンティックじゃなくなるし、可愛げもなくなるけど、それはそれで悪くない。こういう人間の描き方、好きだなあ。

●再会から9年が経ち、二人の間には子供がいる。

イーサン・ホークもおっさんになった。他人のことは言えないけど(笑)

                       
この二人の関係を見ていると、風通しの良い自由さを感じて心地よい。描かれているのがお互いインテリでリベラルなカップルだからかもしれないが、これだけ何でも話すことが出来るのは凄くうらやましく感じてしまう。お互いが自分の思っていること、感じていることを素直に表現できてしまう。だけど実際は疲れてしまうこともあるだろう。このジュリー・デルピーが演じる役柄のように、魅力的なくらい聡明なんだけど、それゆえに男の言葉の裏読みの裏読みを重ねるような人(笑)だと、余計にそうだろう。この映画はそれも狙っているかも。大人の男と女の恋愛はただの甘さじゃない。ビタースイートってとこだ。

●こういう絵だけ見ているとスイートな(笑)恋愛映画なんですがね。

                                           
せっかく美しいギリシャの光景がバックなので、それをもうちょっと映してくれても良かったとは思うけれど、とても面白かった。特にラストは40過ぎの男女にしかできない大人の甘〜い決着のつけ方。それがべたべたのメロドラマにならないのが大人の年の功って奴かも。だから何度も見たくなるような映画です。50を過ぎた主人公たちの姿も見たくなる。って、また9年後かよ!
                                                            
●二人は大人の甘〜い決着の付け方を見せてくれる。白黒つけなければ気が済まない子供にはできない芸当だ。

                                           
こういうストーリー的には何も起こらない、けれど心が揺れ動いていく、こういう静かな映画、ボクはだ〜い好き。DVDで何度も見直したくなる映画。