特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

いくつになっても人間ってやつは:映画『昼下がり、ローマの恋』


ブログにお寄り下さるCangaelさんにご指摘頂いて気がついたのだが、ちょっと前に見た映画『人生はビギナーズ』で自分がゲイなのをカミングアウトする爺さんを演じたクリストファー・プラマーって『サウンド・オブ・ミュージック』のお父さん役だったそうだ。あの、やさしく頼もしいトラップ大佐のイメージと、紫のセーターを着て若い恋人にキスを迫る爺さんとの余りのギャップにびっくりしたのだが、今日 アカデミー賞を初受賞(助演男優賞)したそうだ。御年 82歳。人生って何が起こるかわからない。
●トラップ大佐の雄姿

●50年後?の紫のセーター姿も素敵だ。しかも素肌の上にVネック(笑)




銀座で映画『昼下がり、ローマの恋http://hirusagari-roma.com/
このタイトルで、しかも主演がロバート・デ・ニーロモニカ・ベルッチという触れ込みだから、ローマを舞台に静謐かつ重厚なラブロマンスでもやるのか、と思ってわざわざ銀座まで出かけてみた。ところが劇場に入って原題を見たら『MANUALE D'AMORE3』(愛のマニュアル 3)、つまり前に公開された『イタリア的、恋愛マニュアル』の続編、恋愛に関する中篇エピソードを組み合わせた軽〜いコメディだった。
久々に騙された。殆ど犯罪的な邦題だよな。シリアスなものか、お笑いか、人間には事前の心積りっていうものがあるんだから。
●イタリア的、恋愛マニュアル

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だけど邦題を別にすればお話は肩も凝らないし、画面に出てくる景色もファッションも女性も美しいし、最後にはほろりとさせる感慨もあって、案外 楽しい時間をすごすことができた。負け惜しみじゃないです(笑)。

最初のエピソードはトスカーナの海辺の村にやってきた青年弁護士の淡い恋物語、次は定年間近のニュースキャスターの悲喜劇ロマンス、最後は定年後静かに余生を暮らそうとローマにやってきたアメリカの歴史学者とアパートの管理人の娘との恋、愛に関する3つのお話。

最初のお話で青年弁護士を演じてる人(リッカルド・スカマルチョ)は昨年の『明日のパスタはアルデンテ』で自分がゲイであることをカミングアウトする役だった(そんな話、ばっかりだな)(苦笑)。
●コメディかと思ったら案外ビター:あしたのパスタはアルデンテ

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だから今更ゴージャスな人妻と恋に落ちるのはちょっと違和感がある(笑)。けど、彼の表情からは、世俗的な野心もあるけど純粋さも残っている青年期の瑞々しさ、みたいなものが良く伝わってくる。それが海辺の美しい景色とマッチしている。おまけに昼間から遊び呆けている田舎の村人たち!村の警官まで一緒になって村の中でレースをやって遊んでいるようでは、こらあ、イタリアも財政危機になるわ(笑)。そこがいいんだよ!



2番目のエピソードは主役のおっさんのルックスがまるでベルルスコーニ元首相みたいだった。新しい彼女に目覚めてかつらを外した彼は(笑)ベルルスコーニから邪悪なところを省き、スケベさを残し、もっと人を良くした感じだ。そういうおっさんなら、見ていて楽しい。だけど彼の運命は---(笑)。
それにしてもイタリア人が着ている紺のスーツって絶対かっこいいなあ。ダーク過ぎない紺色と鮮やかな白、その組み合わせを絶対に崩さない。そこがいいんだよ!


3つ目のお話は当然 この映画のメイン。
デ・ニーロが演じるアメリカ人の歴史学者。かって心臓手術を受けたため過酷な運動を避けるばかりか、普段も感情の起伏を抑えながら引退生活を送っている設定。彼と、同年代の親友のスケベなアパート管理人など、周りのドタバタしたイタリア人との対比が面白い。
そこへローマを離れていたアパート管理人の娘が10年ぶりに帰ってくる。異様に美しい(笑)。はい、デ・ニーロくんはどうなるでしょうか。モニカ・ベルッチが目の前に現れたら、引退していようがいまいが人格もポリシーも変わるのはしょうがない(笑)。 そこがいいんだよ! 人間だから。
●美女を前にしたら、思わずにやけるのは当然だろう

デ・ニーロは軽いコメディを嬉々として演じているような感じ。出自を考えればあたりまえだが、アメリカ人の彼がイタリア語をしゃべっても周りと全く違和感がないのも面白かった。イタリア映画初出演だそうだ。



この映画はとにかく、登場人物が生き生きしてるのが印象的。いい加減だったり、間抜けだったり、頑固だったり、うそつきだったり、適当だったりするけど、みんな自分に対して正直だ。終盤 『幾つになっても恋はできる』というモノローグがでてくるが、デ・ニーロは67歳、モニカ・ベルッチは47歳、そういう年代のラブストーリーを当たり前のように作ってしまうところが、ヨーロッパ映画の良いところ愛だの恋だの命だのって、チャラチャラしたお子ちゃまのロマンスなんて見てられるか(笑)。この年代だったらこう、こういう職業の人はこう、男だったらこう、女だったらこう、という風に人を枠にはめない、大げさに言うと人間っていうものを限定しないところが大好きだ。
ま、普段 自分のことになると、なかなか、そうは思えないんですけどね(泣)。