特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

とろろはスープじゃない!とは思うけれど:映画『ひまわり』

少し前のこの時期 お蕎麦屋さんに入ったら、近くの席にフランソワーズ・モレシャン女史が座って居た。真っ青なスーツを着込んだ外観もあの独特な口調も以前TVに出ていたときと変わらないままだ。だから目立つ(笑)。つい、聞き耳を立ててしまった。
彼女はお店の人に『風邪でのどが痛いので、あのぬぅるぬぅるしたスープをください』と注文している。いくら日本語とは言え、これでは当然わからない。ボクもわからない(笑)。すると連れの人が『とろろですか』と助け舟を出す。『そう、とろろ。ぬるぬるしたスープ』ということで一件落着。文化の違いとは言え、世の中には色々な観点があるものだな、と感心したのを覚えている。


新宿で映画『ひまわり』(リマスター版)
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言わずと知れたマルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレンの共演作、70年の作品。ちなみにこのブログの表題、『特別な1日』も勿論、この二人が共演した名作です。
第2次世界大戦、ロシア戦線で行方不明になった夫の身を案じた妻が戦後はるばるソ連を探し歩き、やっと見つけた夫は現地で妻と子供まで居た、というもの。


巷で言われる『反戦映画の傑作』というより、ま、メロドラマだった(笑)。ロシア語が出来ない妻が一人、夫を求めてソ連を訪ね歩くドラマの不自然さとか、やたらと感傷的なヘンリー・マンシーニの音楽とかは今となってはどうなんだろう、とは思った。
それでも、兵士たちが次々と凍え死んでいく雪の戦場のシーンの凄まじさはインパクトがある。一面に広がる美しいひまわり畑も戦争の残酷さを際立たせている。ソフィア・ローレンのたくましくも美しい、凛とした女性像や女性を目の前にしたときのマストロヤンニのいつもの当惑顔はいつもながら見ていて楽しかった。あと映画の前半 マストロヤンニがやたらとソフィア・ローレンのおっぱいを触りまくっていて、これはマジなのか?っていうのが素朴な感想(笑)。


面白かったのは『徴兵なんて、当然、忌避するもの』というイタリアの庶民の心象の描き方。結婚休暇で入営を延期するために結婚したり、精神異常を装って入営を免れようとするエピソードが物語前半の重要なファクターになっている。『だってナポリじゃ皆 そういうことをやっているのよ』とソフィア・ローレンが言い張るとマストロヤンニが『にたぁ〜』と笑う(笑)。赤紙もらうと表向きは万歳三唱で送り出す日本とは大違い。今でも『原発立地で原発に反対すると村八分にあう』ような現象も、まさにそういうことだろう。


映画『幕末太陽傳』なんかを見ると、元来 日本人もイタリアの庶民みたいな感性を持っていたのだと思うが、どこから変わってしまったのだろう。 色んな人が居て色んな考えがある。違ってるからこそ、『良いとこ取り』が出来るってもんだ。考え方がみんな一緒なんて、危なくてしょうがない、と思うけどな。
やっぱりボクはとろろはスープじゃない、と思うけど(笑)、スープだと思う人も居たほうが良い、と思うのだ。だって、それだけでも愉快じゃないか。