映画『ヒミズ』を見て以来、読む本の量が増えた。その中の一冊、アリアナ・ハフィントンの『誰が中流を殺すのか アメリカが第三世界に堕ちる日』(日本もそうなりつつある)の中で、作家ミラン・クンデラ(存在の耐えられない軽さ)の『権力に対する闘いは、忘却に対する記憶の闘いである』という発言が引用されていた。
- 作者: アリアナ・ハフィントン,森田浩之
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2011/10/21
- メディア: 単行本
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汚染された石材を使って工事していた件にしろ、役人が原発事故対策の議事録を作ってなかった件にしろ、東京電力の値上げにしろ(元来 値下げが筋だ)、相変わらず酷い話ばかり続いている。誰も責任をとらないし、原因の究明すら、しない。それで怒りを覚えても、せわしない日々の中で感覚が麻痺してしまったりも、する。そのような中で『忘れない』ことは第一歩なんだと思う。
で、パフュームだ(笑)。念願の生パフューム。
Perfume 3rd Tour JPN@さいたまスーパードーム
Perfumeって素晴らしい発明だと思う。テクノ+ダンス+アイドルって文字通り目からうろこが落ちるような組み合わせだ。とんがったところもある音楽なんだけど、独特なダンスと娘っこたちの親しみやすいキャラクターで、ちゃんとポピュラリティを獲得している。テクノロジーを身体性で裏打ちしているから説得力があるんだよ。3人のキャラクターも愛らしい。苦労人らしく腰が低いだけでなく、三人三様の素直な感情表現がとても可愛らしい。彼女たちのライブDVDを見てると終盤はたいていもらい泣きしてしまうし、最近では『こんなに立派な大人になっちゃって』と、まるで自分の娘たちをみているような心境にすら、なる(笑)。
会場は子どもと一緒の家族連れからアイドルファン、若い女性、おっさんまで幅広い客層で満員。
何もかも商品にされてしまう世の中で人々の嗜好も思考も極限まで細分化して分断されつつあると思うけれど、パフュームのようにアイドル好きからお茶の間の一般人(笑)、コアな音楽ファンまで誰にでも愛される存在って珍しいと思う。
<セットリスト>
1.レーザービーム
会場は大量のレーザー光線の洪水。スクリーンに流れるビデオとシンクロしながら彼女たちが現れる。
2.VOICE
3.エレクトロ・ワールド
名曲だなあ。初期の曲でも全く違和感がないのは売れない時代から完成度の高いことをやっていたからだろう。間奏の際 パッ、パッと一人一人にスポットを当てていくライティングがかっこいい。曲終了後 照明が暗転した一瞬に衣装替え
4.ワンルーム・ディスコ
○トークコーナー(1)。
『昨年出した『JPN』がチャート1位になった御礼をやっと皆さんに直接することができます。』と、あーちゃんが言うのを聞いて感心した。よく出来た営業マンだってここまで言える奴は少ないだろう。のっちのすべるトークも健在。話しているうちに3人はどんどん広島弁に戻っていく。挙句の果てには脈絡なくポケモンの歌をアカペラで歌いだした(笑)。
- アーティスト: Perfume
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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5.Have a Stroll
前面のステージからアリーナ中央のステージに移動。ピチカート・ファイブ風のこの曲。こういうウェル・メイドなポップスがあるのもPerfumeの魅力だと思う。
6.時の針
7.微かなカオリ
間奏の間に客席に投げキッスして、自分で照れているあーちゃんが可愛かった。
8.スパイス
昔のヒューマンリーグを思い出させるミディアムテンポなこの曲は会場の大音量で聴くと、案外ダイナミックでスケールが大きいことに気がついた。同じメロディで盛り上がっていく様はラベルのボレロのようだ。
- アーティスト: Perfume
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○トークコーナー(2)
意味はよくわからないけど今度は過去の歌謡曲、夏色のナンシーやサバイバルダンスを歌いだす3人。
9.GLITTER
激しいダンスと緑のレーザー光線が一体になって場内は文字通りキラキラ、になる。忘れ難い光景。
10.メドレー
シークレットシークレット〜Baby crusing Love〜575〜love the world〜不自然なガール〜シークレットシークレット
○トークコーナー(3)
ここで、あーちゃんが意を決したようにこんなことを話し出した。
『昨年はこれからどういう風に活動して言ったらよいか考えさせられました。衣食住があってこそのエンターテイメントだし。あのときはとても不安だったし、何よりもTVなどで被災地の様子を見て判った気になっている自分が嫌でした。あの時のことは絶対忘れちゃいけないことじゃけん。それを忘れないようにしながら、私たちにできることをしようって考えました。』
あ〜ちゃん、ミラン・クンデラに勝ってるかも。
11.ポリリズム
12.FAKE IT
あーちゃんが『踊るよ〜』と叫ぶ。CDより全然へヴィーな、クラブで流れてもおかしくないようなアレンジ。
13.ねぇ
本編のハイライト。タップを取り入れた激しいダンス。三人の一糸乱れぬフォーメーションは生で見ると余計に感動した。 長い髪をなびかせて踊るかしゆかちゃんはホント、踊り映えする。
14.ジェニーはご機嫌斜め
ちょっと恥ずかしかったけど、ボクもちゃんと掛け声やりました。『のっち〜、あーちゃん、ゆかちゃ〜ん!。』
15.チョコレート・ディスコ
16.MY COLOR
震災後 少し変わってしまった生活を歌うこの曲が最後に来るとは思わなかった。
<アンコール>
17.Dream Fighter
いったん消えた彼女たちが今度は会場の後方の入場口から登場。アリーナ後部の簡素なステージに立って、あーちゃんが『凛として時雨さんに先を越されてしまいましたけど、この会場でやりたかったんです』って、Perfumeのファンは『凛として時雨』なんか知らないよ(笑)。そのあと、『2011年は辛く苦しいことが多かったけど、今年は良い年にしたいと思います』と言って歌が始まる。
未来への強い意志を表明するこの曲は、そういうコメントのあと歌われるものとして、ふさわしいものだった。純白の衣装に白いスポットライト、何の装飾もないステージ。その上で激しいダンスを繰り広げたパフォーマンスはこの日一番感動的だった。
18.Puppy love
オーラスにふさわしい、テクノ・ガムランみたいな曲。エスニックで可愛らしい、これもいい曲。
19.心のスポーツ
最後にあーちゃんが『みんな、寒いけど風邪引かないで帰ってね〜』と言いながらステージを降りていく。
選曲にしろ、ステージでのコメントにしろ、まさかパフュームのステージに3・11のことがこんなに深く、影を落としているとは思わなかった。
彼女たちの存在を凄く大きく感じた3時間弱。スタジアムだから彼女たちの姿は小さくしか見えないんだけど、3人が会場を目一杯走り回り、ステージで精一杯跳んで、激しく踊っているのが、遠くからでも本当によくわかる。身体性っていうのがある種のコミュニケーションでもあるのが改めて理解できた。舞台装置や音響などテクノロジーの助けはあるにしても、大観衆3万7000人に対して生身の3人だけで対峙して、真っ向勝負していたのは本当に凄いことだ。大メジャーになっても、下積みアイドル時代と本質的なところは変わってないんだろう。
Perfumeがますます好きになっちゃったなあ。
今回はただのファン日記でした(笑)。