特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『秘密の森の、その向こう』と「Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”」@長野

 もう10月ですね。1年のうちで最も良い気候です。
 今朝の朝日新聞に自称『国葬』後 初めての世論調査の結果が出ていました。

 確かにオリンピックも国葬も話は同じですね。政治家は国民を舐めきっている。今はまだ国民も記憶は新しいでしょうが、またセルフ臣民の健忘症が発揮されるかどうか、見ものです。


 週末は久々に良いお天気でした。ちょっと暑かったけど、爽やかな気候で気持ち良かった。
 土曜日はまず、有楽町で映画『秘密の森の、その向こう

 8歳の女の子、ネリー(ジョゼフィーヌ・サンス)は亡くなった祖母の遺品を片付けるために、両親とともに森の中の祖母の家を訪れる。しかし母は少女時代の思い出が詰まった家にいることに息が詰まって出て行ってしまう。残されたネリーは母が昔遊んだ森を彷徨ううちに、マリオン(ガブリエル・サンス)という母と同じ名前を名乗る8歳の少女と出会うが。
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 傑作『燃ゆる女の肖像』や『ぼくの名前はズッキーニ』(脚本)のセリーヌ・シアマ監督の新作です。

 今作は同性愛者のこの監督らしい、娘、母、祖母3代続いたシスターフッド映画というべきでしょうか。

 8歳のネリーは森の中にある、亡くなった祖母の家に両親とともにやってきます。祖母の遺品を片付けるためにです。

 ところが祖母を大好きだった母は精神が不安定になって、家を出て行ってしまいます。取り残されたネリー。

 ネリーは母が幼時遊んでいた森の中で自分と同じ年だった頃の母に出会う。まさにおとぎ話です。それがシアマ監督らしい非常に端正な画面で描かれます。だから、あまり幻想的な感じではない。

 ボクは親と仲悪かったので、親子ものの話って全然理解できないんです(笑)。
 この映画で描かれるシスターフッドも良く判らない。ブラザーフッドもそうですが、そういう同性同士の持たれあいの行きつく先が日本の『男社会』でしょ。キモい。こちらも冷血な個人主義者(笑)のボクには理解できない範疇です。

 でも絵作りの完成度は高いし、価値観を押し付けてくる閉じた感じはないから、ユニークな視点だな、と思って観ていられます。実際は姉妹という二人の少女の自然で繊細な演技も良い。これはどうやって演出したんだろう。

 70分と短い映画なのは正解です。これ以上長かったら間がもたない(笑)。

 クラシカルな画面に突然、斬新な音楽などラディカルな演出が入ってくるのは『燃ゆる女の肖像』と共通しています。同じようにそこは感動した。それに今回の主題歌はフレンチ・テクノとクラシカルな合唱が合体した、かなり感動的な音楽でした。

 ミニシアターランキングでは1位だそうですし、お客さんは結構入っているようです。非常にユニークな視点だし、完成度は高い映画です。親子ものがOKの人が見たら、気に入るのではないでしょうか。


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 と、いうことで、有楽町で映画を見た後、そのまま長野へPerfumeのコンサートを見に行ってきました。

 場所は長野ビックハット。長野オリンピックの時の会場です。4年前にもここで見たのですが、新幹線の駅から歩いていけるところが気に入っています
『Pefrume 7th Tour 2018@長野』と映画『判決、ふたつの希望』 - 特別な1日
 収容人員は1万人弱でしょうが、大きさも丁度良いし、東京よりゆったり見られます。東京のアリーナ会場、幕張とか代々木体育館の音なんかマジで酷い。ただでさえリズムが単純なPerfumeですから、バスドラが布団を叩いているみたいに聞こえるのは耐えられない。
 地方遠征は交通費や時間を考えると勿体ない気もしますが、たまには日帰りでも遠くへ出かけたくもなります。電車の中でゆっくり本も読めるし。

 新幹線で駅に着いたらまず、徒歩25分の善光寺へ。4年前に来た時も長野の街は寂れてきているなあ、と思いましたが、今回は大型店舗も含めて前回より空き店舗が増えていて、4年前より寂れていました。

 地方都市の衰退はどこも共通だと思いますが、長野はオリンピックのバブルの傷跡はまだまだ癒えてないように見える。それでも長野という街は古い建物も多くて、歩いていて楽しい。

 善光寺でお参りして、駅ビルで早めの夕飯を食べて、駅の反対側 徒歩20分のところにある長野ビックハットへ。

 今回は新譜’’PLASMA’’を引っ提げての2年半ぶり、コロナ明け初めてのツアーです。
 ライブが持ち味のPerfumeにとってコロナ禍は大変な事態でした。

●忘れもしない20年2月26日の東京ドームでのライブは開演3時間前に中止になりました。

 今でもライブはマスク着用、声出し禁止と、2年半前とはすっかり変わってしまった。

 ’’PLASMA’’はピチカート・ファイブの影響やちょっとジャズっぽさもある、良い意味で普通のポップスです。悪くはないけど、名曲と言えるような良い曲はないし、音も尖ったところはあまり感じられない。
 Perfumeは大好きですけど、この7,8年、かってのような名曲がないところは、流石にフラストレーションを感じています。だから今回は内心 冷ややかに(笑)、開演を待っていました。

 ただ、今回の席はアリーナ、前から5列目です。Perfumeをこんなに前で見たのは初めて(笑)。数十年前 U2の来日初公演を前から3列目で見たのはボクの自慢ですが、今はそんなに前で見ることに執着はない(笑)。
 近くで見る3人娘の姿は普段TVや遠くの席から見るのとは全然違っていました。ステージ用の化粧の濃さやリズムの取り方とか、ダンスの際も指の先までピシッと伸びているところとか。プロ意識を感じたと同時に、やっぱり大変だなーと思いました(笑)。 

 ショーは当然のことながら’’PLASMA’’の曲が8割がたを占めていました。これは潔くて良い。いつまでも過去の曲に頼っていても仕方がない。
 会場全体に溢れるようなレーザー光線が印象的だった前回’’FUTURE POP’’や’’P Cubed’’のツアーと違って、今回のセットはステージを覆うスクリーンを多用する程度で、地味ではあったけどボクはこれくらいの方が歌やダンスに集中できて良い、と思った。
 いつもはウザさを感じる企業とのタイアップもなかったから、今回のツアーはコロナ明けを狙って見切り発車したのかな。早くライブをやりたかったのでしょう。

 丁度先週見たムーンライダーズもパフュームもテクノ・エレクトロというほぼ同じジャンルですが、ライダーズはコンピューターを排して演奏も照明も何もかも人力、Perfumeは演奏はデジタルデータ、照明も舞台の演出もコンピューター仕掛け、何から何まで対照的です。
 だけど人間臭さが伝わってくるのは共通している。面白いものです。

 今回はいつもにも増して自分が歌ってないときに、かしゆかがやたらと客席に向かって指さしたり、手を振ったり、やたらとコミュニケーションを取ろうとしているのが目立ちました。やっぱり、いい子だなあ(笑)。こっちに向かって指をさされたときはドキッとした(笑)。Perfumeのコンサートは孫が発表会で頑張っているのを目を細めて見ているような気持にもなります(笑)。


*ステージ写真は全て公式Twitterから

 今回はアンコールもない、比較的あっさりしたショーでした。逆に冗長さもなく引き締まっていて、新譜発表のライブとしてはそれはそれで良い、と思いました。

 2時間あまりのステージの最後の曲は’’PLASMA’’のラストでもある『さよなら プラスティック・ワールド』。その前に、かしゆかとあ~ちゃんが『どんどん変化する時代に適応していくのは大変だけど、きっと明るい未来もあるよ』と話していてビックリしました。ボク自身は『明るい未来』なんて考えたこともなかったからです(笑)。

 理屈で考えたら少子高齢化で国民も政治家もアホばかりの男女差別国家、日本は衰退していくだけですが、それでも、そういう見方もあるんだな、と(笑)。

●この9月、NYのタイムズスクエアPerfumeの姿が流れました。

 帰り道、暗い長野の夜道を駅まで歩いたのも、印象に残りました。人家も明かりもまばらな田舎の夜道ですが、ここでも人が暮らしているんだなあ、と思った。9時過ぎ発の新幹線に乗って、家に帰ったら12時、こんなに遅くまで外にいたのも数年ぶりでした(笑)。
 少し忙しかったけど、良いお天気も相まって楽しかったです。