特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

正しい歳のとり方(爺さん編):ロメールの新作

銀座でエリック・ロメールの新作『我が至上の愛 アストレとセラドン』。http://www.alcine-terran.com/wagaai/
宣伝ではローマ時代の恋人たちの云々ということだったが、ローマ時代にフランスに住んでいたフランス人のご先祖様、ガリア人のお話だった。都市住民のローマ人と牧畜主体のガリア人じゃあ、ぜんぜん話が違うじゃん。
この映画は、お互いの誤解で別れてしまったガリア人のカップルが再び結びつくまでを密やかな笑いと共に描く、そんな話だ。
 何といっても魅力的なのは、主人公のカップルを初めとするガリアの純朴かつ容姿端麗な男女の瑞々しさ、だ。
ロメールの以前の作品、『クレールの膝』では若い娘の膝をひたすら写すフェチぶりには呆れるほど感心した。

 今回はそれにも増して若い恋人たちの姿を瑞々しく表現している。画面に映し出された、ガリア風のトーガがまくれて見える太ももや胸、そして笑顔の男女がお互いの顔を、体を、まさぐる姿はエロチックというより、健康的な美しさと喜びに満ち溢れている。ロメール監督はこれで80過ぎ、このエロ爺さんぶりには、恐れ入る。勿論 褒め言葉だ。この映画に出てくる美しい恋人たちと同じように、ロメールの感性はなんとつつましく、そして若々しいのか。

 今回の「アストレとセラドン」を見て、ロメールの以前の作品、一晩を同じ部屋で過ごす男女の、ひたすら何も起こらないが感動的な物語、『モード家の一夜』を思い出してしまった。 設定は似ていても、対照的な話ではある。しかし今回のように、美しさや喜びを素直に描く物語は、現代により相応しいのではないか。

 ロメール当人はもう引退する、とか言ってるという話もあるが、もったいない。引退するなんて全く信用してないが、ロメールにはまだまだ新しい映画を作って欲しいよ。