特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『K字経済の負け組(今週のニュース)』と『シルクロードとビャンビャン麺』

 今週はまるで、梅雨のようなお天気が続きました。
●虹を見たのも凄く久しぶり。


 相変わらずロクでもないニュースばかりですが、入管法の廃案という良いニュースがありました。

 自分なりに勉強しましたけど、この数年で20人も収容者を死に至らしめている入管の裁量を強める、入管法の改正(悪)はとんでもない話だと思います。
 議員会館や国会前に抗議に行った人もいるようですが流石に平日の昼間には行けないので、ボクはTWITTERデモをやってただけですけど、やっぱり大勢の人が声を挙げたから潰せたと思います。勿論 理由は一つだけじゃなくて、内閣支持率の低下などの要素があったからではありますけど、人々が声を挙げなかったら潰せなかったことは間違いありません。


 さて、岩波の『科学5月号』に載った慶應大学の調査では、県別のコロナ対策の評価は鳥取が1位でした。


www.pref.tottori.lg.jp

 で、下位が下から順に大阪、東京、京都、愛知、神奈川(笑)。

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https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2021/4/26/210426-1.pdf

 鳥取が優れている点はとにかく検査を積極的に行っている事。そりゃあ、そうですよね。検査もしないで感染対策が取れるわけもありません。

 更に特筆すべきなのは、鳥取県はそれほど消費支出金額が減ってないし、宿泊業の稼働率も下がっていないこと。検査をして感染を抑えていれば経済的な打撃も少ないわけです。


 で、国全体としてはこんな状態になっています↓。
 今週発表された経済統計では、昨年はリーマンショック以上、つまり戦後最悪の景気落ち込みでした。今年の1~3月も予想以上に悪かった。
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www.jiji.com

 これから夏にかけて雇用調整助成金が切れたり、消費税の支払い猶予が終わるわけですから、もっと目に見える形で景気に影響が出てくるはずです。
●この記事だけだと『じゃあ、3人に2人は年収増なのか』という話になりますけど(笑)。

 今 コロナ禍の下で経済に起きていることは『K字経済』、つまり回復している企業・産業・個人と落ち込んでいく企業・産業・個人が2極化している、と言われています。

www.nikkei.com

 国単位で言えば、日本はK字経済の落ち込んでいく方です(笑)。先進国では日本だけが一人負け、コロナから回復しつつある欧米、中国との差は更に開いていくでしょう。
diamond.jp


 ちなみに最新の各国ワクチン接種率はこんな感じ↓。欧米はもちろん、感染爆発が起きているブラジル(約18%)やインド(約10%)、接種が遅れて揉めている韓国(約9%)よりも、日本の接種は5%と遥かに遅れている
新聞もTVもどうしてこういうことを報じないのでしょうか
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Coronavirus (COVID-19) Vaccinations - Statistics and Research - Our World in Data


 今まで、日本経済がコロナ前の水準に回復するのは22~23年と言われていましたが、24年という予想まで出てきた(元日銀理事、野村総研の木内氏)。あと3年ですよ! 長すぎる。それまでどれだけ多くの人々が苦しむんだか。
www.nri.com

 以前、コロナの影響は中高年男性に大きく出てくると書きました。
spyboy.hatenablog.com

 実際こんなことも起きています。パナソニックなんか昨年は巣籠需要で景気良かったはずですが、中高年世代をターゲットに大リストラを始めました。

diamond.jp

 
 鳥取県の平井知事、マトモな対策もしないで念仏唱えるだけの総理大臣、大喜利ばかりの東京都知事と交替してくれないかなー。
 防衛大臣でもいいや。竹中平蔵関連の会社に発注したとはいえ、まともなシステム一つ作れないばかりか、大臣自ら、仕様ミスを見つけた新聞に食ってかかってるんだからなあ。防衛省内でリークがあったから、余計に責任転嫁したいんでしょうが。

 やっぱり諸悪の原因はこれか(笑)↓。アベノミクス特定秘密保護法有事法制も消費増税もマトモに説明できないようなウスラバカを国民が総理大臣として放置し続けたから。類は友を呼ぶ、で、コロナと一緒でバカも伝染するんです。バカはバカを呼ぶ

 つまり、無能な為政者を選んだ日本人がバカだからです。特に棄権してる奴は重罪。コロナで我々が学ぶべきなのは、政治に関心を持っていないと自分の生活だって守れない。それが最大の教訓だと思います。


 さて、この漢字はなんと読むと思いますか?

 勿論、ボクも読めません。『ビャンビャン麺』と読むそうです。『ビャン』は世の中で最も画数が多い、この料理専用の漢字だそうです。

 こちらのGAEIさんのブログで、この漢字と『ビャンビャン麺』なるものがあるということを知りました。TVのタモリ倶楽部などでも取り上げられたことがあるらしい。
busybee2018.blog.fc2.com

 『ビャンビャン麺』は西安長安)など中国陝西省の料理だそうです。


 10年以上前になりますが、仕事で陝西省から新疆ウイグル自治区へ行ったことがあります。上海から西安へ飛び、そこからウルムチへ飛んでカザフの国境近くにある伊犁まで。つまり中国領内のシルクロードを始まり(西安)から国境までを辿る旅でした。
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 西安発の飛行機の窓から見た黄河流域は砂漠化して黄色と言うより、真っ赤でした。数千年間 バンバン木材を伐採して、こうなってしまったそうです。文明の収奪の結果、まさに死の土地になってしまっていた。将来の地球の姿?

 新疆の中心都市ウルムチは近代都市でした。

Ürümqi – Wikipedia

 泊ったホテルはタワマンみたいな高層ビルだし、目抜き通りに展開された地下街は日本人が開発した、と言ってました。寒いので地下街は重宝しているそうですよ。

 この町では漢民族の人が資本家として威張っていたこと。それにウイグルの人たちの貧しさが印象的でした。
 当時はまだ、今 国際社会で言われているウイグル人への人権侵害、一部では『ジェノサイド』と言われるようなことは表立ってはなかったと思います。

 が、見学に行った工場では幹部は上海など沿岸部の漢民族、現場の工員はウイグルの人、とはっきり二分されていました。
 ウイグルの人って鼻が高くて彫りが深いから漢民族とは外観から違います。彼らが働く工場の現場は安全装置もロクにない、例えば工具の刃がむき出しだったりします。一方 漢人の幹部はオフィスでクーラーが効いた自分の部屋に陣取って、鼻が高くて見目麗しいウイグルの女性を秘書として侍らせている。
 この地域の人々が豊かになるためには沿岸部からの(そして日本からの)投資が必要、なのは判りますが、一般のウイグルの人が普段どう感じているか、容易に想像ができます。

 またウイグルの人たちが泥道で道路工事をしているのも見かけました。皆 靴を脱ぎ裸足で泥濘に入って作業をしている。
 『あの人たちはなんでわざわざ靴を脱いでいるのか』とガイドさんに聞いたら、『靴が汚れるのが勿体ないから』だそうです。その靴って100円ショップで売っているようなゴムの上履きみたいなものです。多分、現地だったら10円もしないでしょう。ウイグルの人たちの経済環境を目の当たりにするような思いがしました。

 だから、ボクが行った1年後に新疆でウイグル人の大暴動が起きたのは、やっぱりな―と思わざるを得ませんでした。その後、中国側の力での弾圧が本格化して今に至るわけです。
jp.reuters.com

 今はこんなことすらやっているわけです。

【独自】新疆ウイグル出生率2年で半減 中国統計入手、不妊処置が急増(西日本新聞) - Yahoo!ニュース


拷問・強制的不妊手術、ウイグルで「行われている」…米国連大使(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

 ユニクロはどうでもいいですけど、繊維業界の人に聞いたら新疆の綿を排除するのは現実的に殆ど不可能に近いそうです。ウィグルのことは北京オリンピックにしろ、中国との貿易にしろ、これから日本にも大きな影響が出てくるでしょう。



 それでも 新疆や陝西省などシルクロード地域の食べ物のおいしさは記憶に残りました。味付けは塩味か唐辛子味(でも日本の物より香り高い)でどれも同じでですが(笑)、特に羊肉と粉食は美味しかった。殆どが骨付きで出てくる肉は実に美味しかったし(特に骨の周り)、麺でも饅頭でも餃子でも、やたらと小麦の味がする。上海や広東などの華南とは違い、4000年間 彼らは小麦粉を食べてきたのが非常に良く判りました。それまで日本では知らなかった美味しさです。

 日本に帰ってきてからも、そっち系の食べ物があると探索に行くようになりました。少し前日本に上陸した、同じシルクロード沿いの蘭州ラーメンも非常に美味しかった。

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spyboy.hatenablog.com

 今回も陝西省の麵料理と言われると、行かざるを得ない。

 と、いうことで、あちらの人がやっている『ビャンビャン麺』専門の店がある神田へ行ってきました。以前ご紹介した蘭州ラーメン(この時期でも満員でした)の店の近くです。
●看板メニューの『ビャンビャン麺(全部のせ)』。右のお椀はゆで汁。一緒に飲むと消化を助けるそうです。
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 『ビャンビャン麺(全部のせ)』は油溌麺(ヨウボー麺、キャベツなどの野菜や肉、唐辛子、花椒、ネギをのせて最後に高温の油をかけたもの))、トマト麺、炸醤麺(ジャージャン麺、甘辛い甜面醤にそぼろ肉や野菜をいれたもの)の3種類が味わえるというものです。汁なしの麺ですね。やっぱり粉を味わう料理です。
●具の下から麺を発掘してみました。幅広~。きしめんみたいですが手打ち麺ですから、こちらの方が遥かに美味しい。
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 うまーい!。手打ちで不揃いな麺の歯ごたえが実にうまい。もちろんファーストフードみたいなものですから、小麦の香りがするというほどでもないですが、麺をかむごとに小麦粉を食べているという実感がわいてきます。で、砂漠地帯の料理特有の唐辛子の辛さ。八角などの香辛料も効果的です。それらが手打ちの麺に程よく絡みます。
 ダイエットのために『麺少な目』にしたのを後悔しました。他にも種類があるようですし、リピート決定です。これは、また食べたい!

イタリア流の週末?(笑):『マリトッツォと生食ソラマメ』と映画『靴ひも』(イタリア映画祭2021)

 感染は下火の傾向にすら、中々なりません。100年前のスペイン風邪は発生当初より変異した翌年の方が感染力も毒性も高かったそうですが、今回も同じ状況です。

 そもそもオリンピックをやるとか言いながら、緊急事態宣言をしても説得力なんか全くない。オリンピックをやるってこと自体が政府や東京都は緊急事態と考えていない、って認めているじゃないですか。

 映画館も一部を除いてお休みです。

 

 映画館への休業要請には科学的根拠がない、と国会で文科相が証言しているにも関わらず、です。この国は端から合理的・科学的に動こうという気はない。

 それじゃあ、感染なんか収まるはずがない。


 非合理的と言えば、五輪の記録映画を撮る予定の映画監督、河瀬直美がこんなことを言っていました↓。


 
 何が『オリンピックで日本人が本来持つ精神性やアイデンティティー(同一性)を訴える』(笑)だよ。上級国民と一般大衆とに分断された日本のどこに同一性なんてあるんだよ(笑)。頭お花畑じゃねーの。
 コロナ禍の下の東京オリンピックこそ、日本人の愚かさの象徴です。海外でも受賞歴があるこの人の作品は今まで見たことなかったんですが、こんな時代錯誤のボケ監督、要らね。

 河瀬のように絆とか同一性とかありもしない観念論を感情的にもてあそぶ呑気な連中がのさばっている限り、なかなか日本も良くならないでしょうね。

 アメリカの陸上チームが千葉県での事前合宿を中止したそうですが東京五輪の米陸上チーム、千葉県での事前合宿を中止 - BBCニュース、結局 アメリカの選手団あたりが参加を拒否しない限り、日本は五輪中止/辞退すら決められないのかもしれません。もはや属国なんてレベルじゃない、統治機構すら存在してないのかも(笑)。 


 さて、最近『マリトッツォ』というお菓子が盛り上がっているそうです。ローマ発祥のお菓子で、ブリオッシュにクリームを挟んだもの。

 輸入食品を扱う専門スーパー、カルディが冷凍の輸入品で売り出して、あっという間に品切れになったのがブームのきっかけのようですが、
rocketnews24.com

 今やディーン&デルーガやスターバックス、巷のちょっとおしゃれ系のお菓子屋などでも見かけるようになりました。
toyokeizai.net

 ダイエットの敵、身体に悪そうだな、とは思いつつも、やっぱり味見はしてみたい。クリーム大好きなんです(笑)。近所のお菓子屋でも作り始めたので、週末に散歩がてら、買ってきました。

 ブリオッシュの生地にたっぷりとクリームが挟まれています。クリームにはかなりコアントロー(リキュールです)が入っているのでしょう、オレンジの香りがします。シュークリームに似ていますが、クリームがカスタードよりしつこくないので、食感はもっと軽やかです。休日のおやつにはぴったり、幸せな気持ちになりました。
 ただ、軽いとは言ってもカロリーが450キロカロリー(笑)。色んな店のものがあるので、味見したいんですが、あんまり沢山は食べられないなー。


 その日の夕食に出したのは近所のイタリアンで買ってきたソラマメファーべと呼ばれるイタリアのもので生食できるそうです。日本のものよりかなり細長い。

 ペコリーノチーズと一緒に生で食え、と言われましたが、家にあったブルーチーズと一緒にオリーブオイルを掛けて食べました。生食はおっかなびっくりでしたが、日本のものより皮が薄くて、適度な青々しさと軽い苦みが初夏を感じさせます。

 晴れた日の夕方、軽い白ワインか泡と一緒に食べたら美味しいだろうなーと思いましたが、翌日は出社なのでワインは我慢しました、残念(笑)。


 さてさて、毎年ゴールデンウィークにはイタリア映画祭というイベントが東京、大阪で開催されますが、今年はオンライン、この週末から始まりました。例年のように大してスクリーンが大きくない会場でぎゅう詰めで見るより、オンラインのほうが明らかに快適です。これは却って良かった。 


www.asahi.com

 今年のイタリア映画祭の目玉作品。映画『靴ひも(Lacci)

 舞台はナポリ、1980年代初頭。息子と娘を持つ夫婦の平穏な暮らしは、ラジオ放送作家の夫が浮気を告白した事で終わりを告げる。夫は家を出てローマへ移ったが、妻と子供たちは不在の夫の影に翻弄され続ける。一方 40年後、ある夫婦が夏のバカンスから帰ってくると自宅は荒らされていた。40年前の出来事とどんな関係があったのか。


 『ローマ法王になる日まで』、『ワン・モア・ライフ!』のダニエーレ・ルケッティ監督の最新作、ヴェネチア国際映画祭オープニング作品です。

ローマ法王になる日まで [DVD]

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  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: DVD

spyboy.hatenablog.com

 原作の小説は「ニューヨーク・タイムズ」2017年“注目の本”に選ばれたという、これまた話題の作品。

靴ひも (新潮クレスト・ブックス)

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舞台は80年代初頭のイタリア、ナポリ。そこからの親子4人、40年の物語です。

 映画は父親、アルド(ルイージ・ロ・カーショ)が子供たちをお風呂に入れるシーンから始まります。一見子煩悩な仲良し家族の物語に見えます。しかし、母親、ヴァンダ(アルバ・ロルヴァケル)は何やらピリピリしている。不穏な雰囲気です。
●妻のヴァンダ。気性が非常に激しい。演じるアルバ・ロルヴァケルは売れっ子です。

 アルドはローマのラジオ局で早朝の番組の放送作家兼コメンテイターをやっています。知的な男ですが、どこか薄っぺらい。一方 妻はナポリで専業主婦。そんなこともあって、生活時間帯も話題もいまいち、合わない。
 やがてアルドは他の女性に心が移ったことを妻に告白します。

 アルドは家を出ていきますが、ヴァンダは中々収まりがつきません。

 ローマに移ったアルドはラジオ局の同僚、リディアと暮らし始めます。

 知的なリディアは脚本作家のアルドにとって、一層 魅力的に見える。

 しかしヴァンダの求めもあり、アルドは寂しがる子供に面会するために週末はナポリに戻らざるを得ません。そんな暮らしです。

 アルドは優柔不断でエゴイストなクソ男ですが、妻のヴァンダも激烈な性格で常に相手を責め続ける。強烈な復讐心や執着を持つ人で、夫も子供もとにかく支配しようとする。男女にかかわらず、支配欲が強い人って居ますよね。正直アルドが妻を嫌になるのも判ります。どちらも非常に厳しい(笑)。

 ここいら辺が、さすがイタリア映画、と言う感じです。どちらが悪いとか、そういう単純な話には収束しない。人にはそれぞれ、理由がある。人間はそうやって生きている。

 タイトルの『靴ひも』は家族を結ぶ絆でもあり、束縛でもある『罠』という意味もあるそうです。映画では絆、束縛、罠、これらの意味が全て、表現される。

 原作小説は80年代と現在の話に分かれており、現在から過去を振り返ることで物語が語られる筋立てになっているそうです。
 一方 映画では80年代と40年後が絶えず交錯するようにお話が進んでいきます。これが非常にスマートで切れ味が良い。お話がベタベタしないので、このやり方は凄く気に入りました。見事な構成です。 

●時折 40年後の老夫婦のエピソードが挿入されます。

 過去と現在が交錯して、いわば謎解きのような形で物語は進んでいきます。アルドにもヴァンダにも子供たちにもそれぞれの理由がある。歪んだ形の家族も、それぞれがそれなりに成長していく。

 歳をとっても、人生にはそれなりに理由があるってことです。

 
 お話のオチはお見事、です。人間というどうしようもない存在を突き放して描きながら、皮肉なユーモアと赦しで包み込んでいる。

 家族の40年間を描いたヒューマンドラマですが、もう一段 高級な、大人のお話です(笑)。人間をこういう風に描けるのは、個人という意識が強靭に確立しているイタリア人だからこそ出来るのでしょう。ネタバレはしませんが(笑)、個に対する意識が我々とは全く違う。秀作と言うのが相応しい作品でした。

www.youtube.com

『ツキノワグマのハンバーガー』と読書『いないことにされる私たち』

 全日の寒さはどこへ行ったのか、今日の東京は夏のように暑かったです。

 予想通り緊急事態宣言も延長されました。それどころか対象地域も北海道、岡山、広島などへ拡大です。身の回りを見渡しても、電車はそれほど空いていなかったし、GWも大勢の人が出かけたようですし、大した効果はなかったと思います。

 まして、これからデパートなどは営業開始するし、イベントも始まる。相変わらず科学的な根拠もはっきりしないのに飲食店と映画館だけに負担が集中する、という状態が続くということですね(怒)。


マスク飲食 “1時間”でも変異型に感染 男性訴え「出なくて済む対策に切り替えないと意味がない」 【ABEMA TIMES】

 根拠もない対策ばかりで(笑)、感染が抑えられるのか、甚だ疑問です。

 せめて、頑張っている店を少しでも応援しようと思って、近所のイタリアンで度々テイクアウトを買っています。今回は限定10食、ツキノワグマハンバーガー!(笑) 牛とは違う獣の香り! まさに肉々しい!(笑)。

 

 材料はクマから下に敷いた大きなシイタケ(王様シイタケ)まで生産者の顔が見えるものばかり。それにマヨネーズですら、お店の手作り。超美味しいに決まってます(笑)。
 それだけでなく、自分の売上だけでなく生産者の猟師さんや農園まで応援しながら、手間暇かけて自分の仕事を一生懸命続ける飲食店の意地を感じました。こちらも勇気づけられる。


 唯一コロナ禍で日本の為政者の無能さがはっきりしたことだけは良かったと思います。ウィルスには忖度も情報改竄も効かないですからね。

 オリンピックをやると、菅は未だに言い張っているようですが、開催するとなるとインドやブラジルも含めて選手が約1万5000人、関係者が約9万人も来日します。
news.yahoo.co.jp

 仮に医療体制の問題が解決したとしても、10万人以上の人間を隔離して監視状態にできるのでしょうか。選手村にいる連中はともかく、スポンサー等 他の連中は六本木あたりで遊びまわるのが目に見えてます(笑)。バカバカしいの一語に尽きる。子供ですら納得しない↓。するわけがない。

 中止したらスポーツ選手の人生はどうなる、と言ってる脳味噌お花畑のキ印が居ますけど、じゃあ、飲食店の従業員は?コロナ禍で職を失った人は?
 何よりもスポーツ選手ごときに日本人全体の生活や健康を危機に晒す権利はない
 モスクワオリンピックの例だってあるんだし、インドでもカナダでもコロナ禍で予選にすら出られない選手もいる。所詮はIOCや関連企業、それに選手たちの商売のためのイベント。中止になったって それこそ自己責任でしょう。

 コロナ対策もロクスポ出来ない癖に、政府は国民投票法とか入管法とかロクでもないことばかり進めている。

 トランプ落選の大きな原因はウィルス対策の失敗、ですが、このまま日本の国民は黙っているのでしょうか

 為政者と同じくらい日本人も無能で無責任ではないか、そんな想いが、どうしても拭えません。


 さて、読書の感想です。『いないことにされる私たち

 朝日新聞の記者、青木美希氏の新著です。

 ボクは朝日新聞は大嫌いです。モリカケのスクープなど全国ネットの取材力は認めるけど、常に自分が正しいかのような独善性が目立つし、例えばゴーン氏逮捕を検察から最初にリークされてその後もべったりと検察の言い分を流し続ける等 権威にも弱い

 例えば右寄りの新聞と言えど、読売は政府よりナベツネの意見を優先する(笑)。産経は商業右翼という社是が徹底している(笑)。定見もなく、徒に読者の感情や権威に迎合する朝日は、読売や産経より遥かにタチが悪い
 原発に賛成したり、太平洋戦争を煽りまくった過去を持ち出すわけじゃありませんが、朝日は未だに東京五輪反対を打ち出すことすらできない。東京や毎日でも五輪に疑問を呈する記事は載っているのに。
www.chunichi.co.jp

 また戦争でもあったら、朝日は強硬論を煽りまくるに決まってる。そういうイエローペーパーなんですよ。東スポの方がまだマシ
 朝日は保守反動の総本山、と昔からボクは思っています。

 その中でも、青木氏は数少ない例外(笑)じゃないでしょうか。この人の文章は煽りが少ない。被害者に寄り添うことで湧き出る感情は述べられていても、読者を煽ったり誘導しようという意図は感じない。
 原発事故の被害者や手抜き除染を扱った前著『地図から消される町』でも、被害者に寄り添いながらも事実を淡々と伝える姿勢が貫かれていて、朝日の独善性とは無縁の本でした。

spyboy.hatenablog.com

 朝日は今年 赤字決算で社長が交代しました。それに伴い、リストラで記者が配置転換されたり退職が相次いでいるそうです。ま、煽りばかりの鮫島みたいな記者も辞めているので功罪はあるでしょうが(笑)。

 青木氏も昨年 取材現場から外され、内勤(記事審査室)に回されました。この人は前職の北海タイムスでは道警の裏金を暴いたことで新聞協会賞を受賞し、経営不振で北海タイムスが休刊した後 朝日に移籍、『プロメテウスの罠』や『手抜き除染のスクープ』でも新聞協会賞を受賞しています。3回も新聞協会賞を取った記者は他にはいない、と聞きます。

 彼女の異動は原発なんかに関わっているとこうなるという見せしめ、という説↓もあります。朝日ならやりかねません。
www.nikkan-gendai.com

 それでも彼女は他メディアで情報発信することが出来る社内制度を活用し、自力で取材・発信を続けています。手弁当でしょ。


 それらをまとめたのがこの本、『いないことにされる私たち』です。

 大きく分けて内容は2つです。
 一つは現在も大勢いる避難者の数が正確にカウントされていないこと
 もっとはっきり言うと、国は避難者の数を少なくカウントして、いないことにしようとしている。例えば大阪府の避難者は総務省の統計では1200人はいるし、青木氏の調査でもそれくらいはいるのに、復興庁のカウントだと僅か88人だそうです。
 全体で見ても福島県の各市町村の把握している避難者数は約8万人ですが、復興庁は約4万人として発表しているそうです。

 青木氏の取材に対して、復興庁は数え漏れとか色々言い訳をしていますが、自主避難者を含めなかったり、明らかに避難者はいなかったことにされようとしている
 復興を旗印にしたオリンピックと一緒です。いないことにするというのは切り捨てる、ということです
 福島の事故だけじゃありません。戦災孤児、空襲被害者、公害の被害者でも起きたことです。この国はいとも簡単に国民を切り捨てる
 政治学の用語を使わせてもらうと、こういうことをやっている限り、今までの日本は国家としての『統治の正統性』がない。つまり、今の日本は国家ではないということです。

 もう一つは避難者の生活について。避難先で14歳の長男が自殺した後 心を病んでしまった南相馬市の56歳の男性の取材を通じて、避難者、特に自主避難者への家賃や医療費の支援打ち切りの問題を取材したものです。

 この本で書かれている当事者の話は正直 ボクの想像をはるかに超えていました。家族が離れて暮らさざるを得なくなったことで生活はこんなに苦しくなるのか、と 思いました。経済的苦境だけでなく、病もあれば、近親者の自殺もある。避難者の約4割の人が高ストレス状態、病的な状態だそうです。

 この本に取り上げられているケースは数は少ないけれど、その分 取材は丁寧で人々それぞれが抱えている事情や苦しみが伝わってきます。
 正直 避難者の家賃や医療費の支援はどこかで打ち切りがあるのも仕方がない、とボクも思っていましたが、そんな生易しいものではない、ということが良く判りました。ケースバイケースとはよく言いますけど、家族が離れて暮らさざるを得なくなったことで子供が自殺してしまったら、親がおかしくなるのは当たり前です。   

 自殺までいかないにしても、病的状態に至るまで苦しみを抱えている人が現実には避難者の4割もいる国と東電、原子力ムラの責任です。
 加害者の政府は被災者全体の実態調査すら行っていないのに、支援打ち切りが出てくるのは違うんじゃないか、と ボクも思いました。

 福島の事故はまだまだ収束していないにもかかわらず、報道は減り、取材するジャーナリストも減っているそうです。青木氏本人もどうなるかわからない。それでも第2、第3の事故を防ぐために我々にできることは、知ること、忘れないこと、声を挙げることだ、と彼女は書いています。
 
 (読者の感情を煽ったり迎合する傾向が目立つ朝日の本紙とは違い)(笑)極力 事実のみを語ろうとしているんでしょう。淡々とした筆致の中に、著者の怒りと強い意志が伝わってくる。
 こういう人たちがいる事を知ることが出来て、読んで良かった、そういう本でした。