特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ツキノワグマのハンバーガー』と読書『いないことにされる私たち』

 全日の寒さはどこへ行ったのか、今日の東京は夏のように暑かったです。

 予想通り緊急事態宣言も延長されました。それどころか対象地域も北海道、岡山、広島などへ拡大です。身の回りを見渡しても、電車はそれほど空いていなかったし、GWも大勢の人が出かけたようですし、大した効果はなかったと思います。

 まして、これからデパートなどは営業開始するし、イベントも始まる。相変わらず科学的な根拠もはっきりしないのに飲食店と映画館だけに負担が集中する、という状態が続くということですね(怒)。


マスク飲食 “1時間”でも変異型に感染 男性訴え「出なくて済む対策に切り替えないと意味がない」 【ABEMA TIMES】

 根拠もない対策ばかりで(笑)、感染が抑えられるのか、甚だ疑問です。

 せめて、頑張っている店を少しでも応援しようと思って、近所のイタリアンで度々テイクアウトを買っています。今回は限定10食、ツキノワグマハンバーガー!(笑) 牛とは違う獣の香り! まさに肉々しい!(笑)。

 

 材料はクマから下に敷いた大きなシイタケ(王様シイタケ)まで生産者の顔が見えるものばかり。それにマヨネーズですら、お店の手作り。超美味しいに決まってます(笑)。
 それだけでなく、自分の売上だけでなく生産者の猟師さんや農園まで応援しながら、手間暇かけて自分の仕事を一生懸命続ける飲食店の意地を感じました。こちらも勇気づけられる。


 唯一コロナ禍で日本の為政者の無能さがはっきりしたことだけは良かったと思います。ウィルスには忖度も情報改竄も効かないですからね。

 オリンピックをやると、菅は未だに言い張っているようですが、開催するとなるとインドやブラジルも含めて選手が約1万5000人、関係者が約9万人も来日します。
news.yahoo.co.jp

 仮に医療体制の問題が解決したとしても、10万人以上の人間を隔離して監視状態にできるのでしょうか。選手村にいる連中はともかく、スポンサー等 他の連中は六本木あたりで遊びまわるのが目に見えてます(笑)。バカバカしいの一語に尽きる。子供ですら納得しない↓。するわけがない。

 中止したらスポーツ選手の人生はどうなる、と言ってる脳味噌お花畑のキ印が居ますけど、じゃあ、飲食店の従業員は?コロナ禍で職を失った人は?
 何よりもスポーツ選手ごときに日本人全体の生活や健康を危機に晒す権利はない
 モスクワオリンピックの例だってあるんだし、インドでもカナダでもコロナ禍で予選にすら出られない選手もいる。所詮はIOCや関連企業、それに選手たちの商売のためのイベント。中止になったって それこそ自己責任でしょう。

 コロナ対策もロクスポ出来ない癖に、政府は国民投票法とか入管法とかロクでもないことばかり進めている。

 トランプ落選の大きな原因はウィルス対策の失敗、ですが、このまま日本の国民は黙っているのでしょうか

 為政者と同じくらい日本人も無能で無責任ではないか、そんな想いが、どうしても拭えません。


 さて、読書の感想です。『いないことにされる私たち

 朝日新聞の記者、青木美希氏の新著です。

 ボクは朝日新聞は大嫌いです。モリカケのスクープなど全国ネットの取材力は認めるけど、常に自分が正しいかのような独善性が目立つし、例えばゴーン氏逮捕を検察から最初にリークされてその後もべったりと検察の言い分を流し続ける等 権威にも弱い

 例えば右寄りの新聞と言えど、読売は政府よりナベツネの意見を優先する(笑)。産経は商業右翼という社是が徹底している(笑)。定見もなく、徒に読者の感情や権威に迎合する朝日は、読売や産経より遥かにタチが悪い
 原発に賛成したり、太平洋戦争を煽りまくった過去を持ち出すわけじゃありませんが、朝日は未だに東京五輪反対を打ち出すことすらできない。東京や毎日でも五輪に疑問を呈する記事は載っているのに。
www.chunichi.co.jp

 また戦争でもあったら、朝日は強硬論を煽りまくるに決まってる。そういうイエローペーパーなんですよ。東スポの方がまだマシ
 朝日は保守反動の総本山、と昔からボクは思っています。

 その中でも、青木氏は数少ない例外(笑)じゃないでしょうか。この人の文章は煽りが少ない。被害者に寄り添うことで湧き出る感情は述べられていても、読者を煽ったり誘導しようという意図は感じない。
 原発事故の被害者や手抜き除染を扱った前著『地図から消される町』でも、被害者に寄り添いながらも事実を淡々と伝える姿勢が貫かれていて、朝日の独善性とは無縁の本でした。

spyboy.hatenablog.com

 朝日は今年 赤字決算で社長が交代しました。それに伴い、リストラで記者が配置転換されたり退職が相次いでいるそうです。ま、煽りばかりの鮫島みたいな記者も辞めているので功罪はあるでしょうが(笑)。

 青木氏も昨年 取材現場から外され、内勤(記事審査室)に回されました。この人は前職の北海タイムスでは道警の裏金を暴いたことで新聞協会賞を受賞し、経営不振で北海タイムスが休刊した後 朝日に移籍、『プロメテウスの罠』や『手抜き除染のスクープ』でも新聞協会賞を受賞しています。3回も新聞協会賞を取った記者は他にはいない、と聞きます。

 彼女の異動は原発なんかに関わっているとこうなるという見せしめ、という説↓もあります。朝日ならやりかねません。
www.nikkan-gendai.com

 それでも彼女は他メディアで情報発信することが出来る社内制度を活用し、自力で取材・発信を続けています。手弁当でしょ。


 それらをまとめたのがこの本、『いないことにされる私たち』です。

 大きく分けて内容は2つです。
 一つは現在も大勢いる避難者の数が正確にカウントされていないこと
 もっとはっきり言うと、国は避難者の数を少なくカウントして、いないことにしようとしている。例えば大阪府の避難者は総務省の統計では1200人はいるし、青木氏の調査でもそれくらいはいるのに、復興庁のカウントだと僅か88人だそうです。
 全体で見ても福島県の各市町村の把握している避難者数は約8万人ですが、復興庁は約4万人として発表しているそうです。

 青木氏の取材に対して、復興庁は数え漏れとか色々言い訳をしていますが、自主避難者を含めなかったり、明らかに避難者はいなかったことにされようとしている
 復興を旗印にしたオリンピックと一緒です。いないことにするというのは切り捨てる、ということです
 福島の事故だけじゃありません。戦災孤児、空襲被害者、公害の被害者でも起きたことです。この国はいとも簡単に国民を切り捨てる
 政治学の用語を使わせてもらうと、こういうことをやっている限り、今までの日本は国家としての『統治の正統性』がない。つまり、今の日本は国家ではないということです。

 もう一つは避難者の生活について。避難先で14歳の長男が自殺した後 心を病んでしまった南相馬市の56歳の男性の取材を通じて、避難者、特に自主避難者への家賃や医療費の支援打ち切りの問題を取材したものです。

 この本で書かれている当事者の話は正直 ボクの想像をはるかに超えていました。家族が離れて暮らさざるを得なくなったことで生活はこんなに苦しくなるのか、と 思いました。経済的苦境だけでなく、病もあれば、近親者の自殺もある。避難者の約4割の人が高ストレス状態、病的な状態だそうです。

 この本に取り上げられているケースは数は少ないけれど、その分 取材は丁寧で人々それぞれが抱えている事情や苦しみが伝わってきます。
 正直 避難者の家賃や医療費の支援はどこかで打ち切りがあるのも仕方がない、とボクも思っていましたが、そんな生易しいものではない、ということが良く判りました。ケースバイケースとはよく言いますけど、家族が離れて暮らさざるを得なくなったことで子供が自殺してしまったら、親がおかしくなるのは当たり前です。   

 自殺までいかないにしても、病的状態に至るまで苦しみを抱えている人が現実には避難者の4割もいる国と東電、原子力ムラの責任です。
 加害者の政府は被災者全体の実態調査すら行っていないのに、支援打ち切りが出てくるのは違うんじゃないか、と ボクも思いました。

 福島の事故はまだまだ収束していないにもかかわらず、報道は減り、取材するジャーナリストも減っているそうです。青木氏本人もどうなるかわからない。それでも第2、第3の事故を防ぐために我々にできることは、知ること、忘れないこと、声を挙げることだ、と彼女は書いています。
 
 (読者の感情を煽ったり迎合する傾向が目立つ朝日の本紙とは違い)(笑)極力 事実のみを語ろうとしているんでしょう。淡々とした筆致の中に、著者の怒りと強い意志が伝わってくる。
 こういう人たちがいる事を知ることが出来て、読んで良かった、そういう本でした。