特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『まいうーのティラミス・ソフト』と映画「 ワン・モア・ライフ!」

 この週末、東京でも桜が開花しました。
 いよいよ春がやってきました。人事異動など様々な行事(雑事)があって個人的にはウンザリな季節でもありますけど、温かくなることだけは嬉しいです。
 ボクの人生、あと何回 春を迎えられるのか判らないですが、そろそろ1回1回、噛みしめるように味わわなくてはいけないのかもしれません。
●今朝の朝陽。冬とは陽の勢いが違います。力強い。


 こちらは週末に食べたティラミスのソフトクリーム。いつもの北参道のお店です。まろやかで濃厚なクリームを一口食べた瞬間、『ああ、幸せだなー』と思いました(笑)。

 この店、壁には色んな有名人のサインが貼ってあります。こちらは『まいうー』の石ちゃんのもの。

 時々ボクの家の周りをサウナスーツを着てジョギングしている彼を見かけます。きっとダイエットしてるんでしょう、生で見ると太ってません(笑)。TVなんて虚像、であることがそんなことからも判ります。


 さてさて、コロナは大変ですけど、良いなーと思うこともあるんです。いつも言っているとおり、宴会がない他人と物理的にも心理的にも距離感を保てる常にマスクをしているから余計な口を利かないで済む

 エッセンシャルな仕事をされている方はそんなことを言ってはいられませんし、これで世の中が回っていくのか?付加価値が生まれていくのか?という向きもあるでしょうけど、人間嫌いなボクとしては快適さを感じる事は禁じ得ません。禍ってものは多くの場合、人と関わるから生じるわけです。
 朝は5時に起きて徒歩通勤、人がまばらなオフィスで黙って仕事して、定時で帰って夕飯を作る。そのあと少し本を読んだり録画したTVを早回しで見たりして、夜9時半には寝てしまう。こんな生活をしていると、コロナ前と比べて他人が入り込む余地は格段に少ない。
●自分ではテレワーク出来ないくせに、よく国民にテレワークしろ、なんて言えると思います。全て他人事、それがこの国の政府の特徴です。だから信頼されないんです。

 もちろん仕事で利益を出していかなければボク自身も干上がってしまいます。いつまでもこういう状態じゃ困ることは事実ですが、人間はつい、目先の快楽に溺れてしまいがちです。
 いかに生き残れる程度に他人と関わらずに日々を過ごしていくか、それが問題です(笑)。それこそ幼稚園の頃から今に至るまで、ずっとそうでした(笑)。平安時代末期 西行法師は隠遁生活に入る際、どうやって生活の資を確保するかが悩みの種だったそうですが、隠遁の困難さは今も昔も変わりません。
●静かに暮らしたくても馬鹿が足を引っ張るんです。 


 それでも江戸時代は50過ぎで隠居生活に入る人が多かったそうです。今より平均寿命が短かったからでしょうけど、老後資金2000万とか脅かされている現在の我々より遥かに人間的のように思える。哲学者の中島義道がいわばセミリタイアの『半隠遁』という概念を唱えてましたが、

コロナ禍は『人間と関わらないで済む豊かさ』を見直す機会でもあるんじゃないでしょうか。


ということで、新宿で映画『ワン・モア・ライフ!
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one-more-life.jp

 舞台はシチリア島。楽しいことだけを追いかけてきた楽天家の中年男パオロは交差点で信号を無視して交通事故に遭遇、死亡してしまう。天国の入り口で係員(死神)にあまりにも短い寿命に納得できず猛抗議していると天国側の計算ミスが判明、その結果 寿命が延長され92分間だけ地上に戻れることになる。これまで自己中心的に生きてきたパオロは、人生に後悔を残さないために何をするだろうか。

 監督はアルゼンチンの軍事独裁政権との苦闘に悩む若き日のローマ法王フランチェスコを描いて感動的だった『ローマ法王になる日まで』のダニエーレ・ルケッティ。
●これははっきり言って名作です。

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  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: DVD

 死んでも天国の窓口で猛烈抗議して寿命の延長を勝ち取るなんて、いかにも自己主張が強いイタリア人らしいお話です。
●天国の入り口でパオロ(左)は係官に猛抗議します。
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こういうところがイタリア映画、好きなんです。お上の言うことを真に受けるだけの奴隷根性の染みついた人が多い日本人とはだいぶ違います。納得がいかなければ、神様にだってガンガン 文句を言うわけです。また物見高い人たちが集まって来て、いつのまにか抗議が個人から集団のものになる。
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そうやって抗議しているうちに天国側がパオロが健康のためにスムージーを愛飲していたのを見落としていたことが発覚します。その分 寿命は延びるはずです(笑)。困った天国の神様は、係員(死神?)をつけて、パオロを92分だけ、下界に戻すことにします。
●天国と下界はこのエレベーターで繋がっています(笑)
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 そこから、お話は過去の少年時代から現在に至る迄のパオロの人生、主に女性遍歴(笑)と残り92分の人生が描かれていきます。それはそれでよいのですが、このパオロの人生のやり直しがリアルタイムで92分にまとめられていたらスリリングな傑作になったかもしれないとは思います。
●パオロと妻(左)
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 パオロという人物は悪人ではないけれど、身勝手で偏屈だし、いつも楽しいことだけ追い求めている。仕事だけでなく、家事や育児だって分担しますけど、いやいやです。PTAのママ友や職場の同僚と浮気したりするだけでなく、子供はいつも放置しています。正直 間違いだらけの人生です。
●家庭を放っておいたパオロは特に長女(左)には嫌われています。
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 一方 奥さんの側も自己主張の強いイタリア人です。パオロの友人と浮気しています。パオロもそれを知っていますが、正面から向き合わない。
 死まで残り92分になり、パオロも家庭に帰って妻や子供たちとの関係を修復しようとします。しかし今までの積み重ねをたった92分で修復できるでしょうか。
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 主人公のパオロにはあまり感情移入できません。いつも同じ格好でおしゃれじゃないのもいまいち(笑)。イタリア映画の楽しみの一つは男女を問わずファッションでもありますけど、この映画ではあまり参考にならない。それに過去と現在が交錯して描かれる描写がちょっとわかりにくかったりする。
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 ただ、この映画で描かれる登場人物たちは皆欠点を持っていると同時に自己主張があって、仕方ないと思えてきます。パオロの監視役の死神ですら、そうなんです。人間も神様も間違いを犯す。間違いを犯すことを恐れてはいけない、それが人生なんだと。

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 アペリティーボという食事前の近所の飲み会、美しいシチリアの光景などイタリア映画ならではのアクセントも楽しいです。『ローマ法王になる日まで』のような感動の名作という訳ではないし、魅力的だったり、完成度が高い作品という訳ではありませんが、楽しい小品としては良かったと思います。

急死した中年男、92分間だけ生き返る!映画『ワン・モア・ライフ』予告編