特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

Eテレ『バリバラ 外国人技能実習生はいま・・・』と映画『愛と銃弾』

 昨日 日曜の夜 夜7時のNHKニュースにチャンネルを合わせようとしていたら、チャンネルを変える途中で映った隣のチャンネル、NHK E-TVから目が離せなくなりました。
 ニュースでは外国人観光客か何かの白々しい話が流れていたのに対して、E-TVの方では外国人実習生の女性が深刻な顔つきで話していたからです。
 『バリバラ』バリアフリー・バラエティ)という番組でした。

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www6.nhk.or.jp

 愛媛県の紡績工場で働いているベトナムからの実習生の女性は、表向きは工場で働いて婦人服などを縫う技術を取得することになっていました。
 しかし、実際は早朝から深夜まで分厚いタオルを縫い続ける長時間労働、休みは月2回しかない、残業代はまともにつかない。ちなみに彼女たちの月間の残業時間は約180時間、過労死基準の倍です。


 業務内容も労働時間ももちろん違法ですが、工場の社長からは『文句を言うと強制帰国させる』と脅かされています。彼女たちは実習生になるために借金を抱えています。また、決められた職場を移ることもできません。彼女たちが番組の中で言っていたように『家畜のよう』、『奴隷扱い』です。

 10年くらい前、ボクがベトナムへ行ったとき、工場に勤める現地の女の子が『私が子供の時は、ベトナム戦争の影響で多くのベトナム人が家畜と一緒に家の中で住まなくてはならない貧しい生活だった。しかし今は外資の工場が出来て、そんな生活から抜け出すことが出来た』と言っていました。
spyboy.hatenablog.com

ところが今、ベトナムの人が日本に来たら、家畜扱いだった過去に逆戻り、という訳です(怒)。
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 番組では、彼女たちの証言だけでなく、彼女たちが実際にスマホで撮った深夜労働の映像が流されました。違法労働の動かぬ証拠です。そのあと彼女たちは工場側から強制帰国させられそうになりますが、支援者と番組スタッフが工場に押しかけて、彼女たちを何とか保護することが出来ました。
番組は実習生だけでなく、経営者側の声も取り上げようとします。その点も公平な姿勢です、エライ。しかし、経営者側は取材拒否。


 外国人技能実習生は今 全国に30万人もいるそうです。深夜労働のコンビニだけでなく、特に高齢化が進む農業や漁業などでは、その存在は欠かせないものになっている、と言われています。高収入で知られる長野県川上村のレタス農家などは有名です。その一方 実習生たちの長時間労働や賃金未払い、過労死など、その労働実態は問題点が指摘されています。
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 番組で取上げられた工場は愛媛県、分厚いタオルを縫っているということですから、おそらく『今治タオル』じゃないでしょうか。今治タオルは品質の良さで日本の地場産業の生き残り例として、マスコミなどで度々取り上げられています。国産品で安心などと言われていますが、こういう実態もある。全部が全部、そうではないのかもしれませんが、画面に映った実態は絶対に許せないです。
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 実名・顔出しで番組に出演して『実態を知ってほしい』と語る女性4人の話を聞きながら、番組のホスト側の司会やタレント(IVANとか言う人)も目に涙をためていた。ボク自身 改めて申し訳ないというか、実に情けない思いがしました。
実習生制度は日本の恥、汚点です。今回の入管法改正はそれを継続、拡大しようと言うんでしょ。

 TPPがらみなどで、日本の農業や漁業を守れ、とか言ってる人がいますけど、技能実習生がなければ成り立たないような産業や会社なら存在しない方がいいさっさと潰れてしまったほうが社会のためには良いんです。もちろん、そんな産業や企業はサステナブルじゃないから、どうせ潰れるしかないんですけど、犠牲者は一人でも少ない方が良い。
www.change.org


 障碍の問題がテーマの番組の筈の『バリバラ』が、こういう話題も取り上げるんだ?と思っていたら、出演している障碍者の人が『障碍というのは身体のことだけでなく、生きずらいということだ。そういう意味で彼女たちはボクらと一緒だ』と言ってました。これには眼が覚める思いがした。
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 日本の恥部を直撃する番組でした。それをゴールデンタイムで放送している。これなら受信料を払う価値があります(笑)。Eテレと総合テレビ、同じNHKでこれだけ違うかな~。それもまたびっくりです。今週9日木曜深夜に再放送があります。
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ということで、恵比寿で映画『愛と銃弾

aitojuudan.onlyhearts.co.jp


舞台は現代のイタリア、ナポリ。カモッラと呼ばれる凶暴なギャングが闊歩する街。漁師の父親が亡くなってみなしごになったチーロ(ジャンパオロ・モレッリ)は魚介を利権とするギャングのボスに育てられ、暗殺者としての訓練を受ける。ある日 チーロはボスの秘密を見てしまった看護師を殺すことを命じられるが、彼女を殺そうとした瞬間、彼女は孤児時代に愛し合っていたファティマ(セレーナ・ロッシ)だったことに気が付いた。彼女を守ろうとするチーロはナポリの裏社会全体を敵に回してしまう。


 日本ではプロモーションもほとんどない地味な扱いですが、昨年 イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・ドナテッロ賞で最優秀作品賞、助演女優賞、音楽賞、歌曲賞、衣装賞など最多受賞した作品です。当然イタリアでは大ヒットの作品。

 シチリアのマフィアと並ぶ、超怖い犯罪組織として知られるナポリのマフィア、『カモッラ』を描いた作品ということで怖い作品なのかと思ったのですが、全然違いました。犯罪組織が舞台のサスペンスではあるものの、ラブストーリーであるばかりでなく、コメディでもあり、ミュージカルでもあります。
●組織の殺し屋チーロ(右)と看護婦ファティマはかって愛し合った仲でした。二人はカモッラからの逃避行を続けます。
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 映画は教会での厳粛な葬儀から始まります。強面のギャングたちが棺桶を担ぎ、一癖ありそうな金髪美人がウソ泣きをしている。
 すると、棺桶の中の死体の男が歌いだす。それも今風のカッコいい音楽ではなく、ベタなカンツォーネ。『俺は何で死んだんだ』とか『あの女が葬式にきてくれない』とかくだらない愚痴を大声で歌い上げる。笑うしかありません。まさかミュージカルとは思わなかったですからね、びっくりした。
●棺桶には一癖ありそうな金髪美人妻(中央)が寄り添っています。
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 それから、お話は少し前に戻ります。魚介を利権にするカモッラのボスが対立組織に尻を銃で撃たれて殺されかけます。あれ、ボスの顔はさっきの死体とそっくり(笑)。ボスは自分そっくりの男を殺し、自分が死んだことにしようとしたんです。その際 病院で看護師に生きている自分を見られてしまう。

 そこでボスは自分の警護役の殺し屋、チーロに口封じのために看護師を殺すことを命じます。ボスは孤児のチーロを拾いあげ、殺人マシンとして育ててきたのです。ところがいざ、チーロが看護師を手に掛けようとすると、彼女はかって愛し合っていた女性、ファティマだったことが判ります。チーロは過去の愛に生きることを選びます。そして彼女を守るためにナポリのマフィアをバカバカ、ぶち殺していきます。
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と言っても、死体が歌ったり、病院患者が踊ったり、そんな演出ばかりです。ぜんぜん怖くない。ゲラゲラ笑ってました。
●病院でチーロとファティマが再会するシーン。ミュージカル仕立てになっています。

AMMORE E MALAVITA dei Manetti Bros. - Clip "L' ammore overo" (What a feeling)


 チーロ役の俳優さんは人間離れしてカッコいい。ぎゃあぎゃあ喚き続けるファティマ役の女優さんはあんまり好きになれなかったのですが、ともかく美男美女。ナポリの美しい海や空の下、美男美女がマヌケなギャグと共に逃避行を続けます。ベタなカンツォーネと共に、お話しのテンポも速い。見ていて怖くない(笑)。とにかく見ていて楽しい。
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 あと、特にボスを始めとしたマフィア側がとにかくお洒落。綺麗な色の麻シャツやジャケットの着こなしが実に美しい。伊達にダビッド・ドナッテロ賞で衣装賞を受賞しているわけではないんでしょう。こんな服はどこで売っているのだろうと思いました(ナポリで売っているんでしょうけど)。
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 約10年前、カモッラを取り上げたノンフィクション『死都ゴモラ(映画にもなりました)を書いた作家がカモッラから死刑宣告を受けて、警察の庇護を受けて身を隠したものの、守りきれず、結局国外逃亡したという事件がありました。確かに、絶望と恐怖が支配する街を描いた『死都ゴモラ』はマジで怖かった。
 7,8年前にも警察がカモッラを取り締まったところ、カモッラがゴミ収集を取り仕切っていたため、ナポリ中のゴミが溢れたという事件がありました。そんな連中をギャグにできるのですから、事情はだいぶ変わってきたのかもしれません。それとも、マフィア構成員の巣窟のようなナポリのスラム街でロケを敢行したことも併せて、敢えて現実を笑い飛ばしたのでしょうか。
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 とにかく、文句なしに面白い!。美しい海や空、美男美女、ベタなギャグにお洒落な服。どんでん返しのお話しも見事です。とにかく、見ていて楽しい要素が盛りだくさんです。奇想天外な演出も相まって、これは見ないと勿体ない。大当たりの作品でした。

www.youtube.com

『平成は日本敗北の時代』と『0201再稼働反対!首相官邸前抗議』

 いやあ、寒い~。東京では初雪が降りました。
 雪道を歩きなれていない東京の人間は道に雪が積もると滑って、マジで命にかかわります。そんな自然と乖離した生活はおかしいに決まってますが、現状はそうなっているから仕方がない。今年の初雪は殆ど積もらなくて何よりでした。
 でも、陽の光の強さはだんだんと増しているようです。春に焦がれます


  ニュースでは厚労省の統計詐欺で実は実質賃金は下がっていた、と報じています。野党もやっと攻め口を見つけたようです。

でも、実質賃金はアベノミクスが始まって半年経った時点から急激に下がり始めています。5年前から、このブログではそのことを書いてます。
spyboy.hatenablog.com

 当たり前です。金融緩和して物価を上げようという政策は言い換えると消費者から企業への所得移転です。そんなこと最初から判ってる。マスコミも野党も、何をいまさら、ですよ。あほか。これだけトロいんだから、日本の為政者は楽なもんでしょう。


*本文には関係ありませんが、今朝毎日に掲載された元DAYS JAPAN広河隆一のセクハラ・パワハラに対する被害者の実名手記、読んでみて我慢がならなかったのでリンクします。例のTBS元支局長の山口敬之と一緒で、広河隆一って想像以上のクズです。良くこれで人権とか平和とか云えたと思う。結局 右左は関係ない。人間のクズはクズ。さすがデマ芸人のおしどりマコ編集委員に起用するだけのことはあります。




 さて 30日水曜日の朝日朝刊に出ていた、経済同友会代表幹事の小林氏のインタビューが面白かったです。
題して『平成は日本敗北の時代』。

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www.asahi.com

 内容は普段 不肖 ボクがブログで書いていることとほぼ同じでもあるんですが(笑)、インタビューの内容を周辺資料も併せて、ご紹介したいと思います。こういう意見が大マスコミに出てくること自体重要だと思うので。

 小林氏はまず、こう語っています。
戦後復興や高度成長期にモノづくりで世界をリードした日本だが、バブル経済崩壊以降、グローバリゼーションやデジタル革新、公益を見失い、平成は敗北、挫折の時代となった

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 インタビューに出てくる企業の時価総額というのは株価に発行総数を掛けたもの、企業の価値、規模を表します。30年前は日本企業が世界の上位10位のうち8割を占めていた。今は影も形もありません。米中のIT企業が殆どです。


diamond.jp

次にテクノロジーについては『もっと悲惨』と述べています。

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 あまり実感できないかもしれませんが、今、日本のモノづくり企業が世界をリードしているのはせいぜい一部の機械や化学、素材関連があるだけで、他は結構厳しい と思います。AIや次世代通信(5G)などが広まった将来には、トヨタだってどうなるか判らないんですからね。

 日本にはかって、液晶やケータイ、太陽電池半導体と一瞬 世界で勝てそうな技術もありました。現在の惨状は、判断ミスや新しいチャレンジの芽をつぶしてきた経営者/企業だけでなく、バブル期以降 半導体太陽電池、クールジャパンなど税金を使って失策を重ねた経産省や、様々な分野を無用な規制で縛ってきた他の官庁も大いに責任があります。
 
 ちょうど昨日 経産省が音頭を取って東芝・日立などの液晶部門を合併させて成立したものの、経営危機に陥り、経産省のファンドによって再度救済された大手液晶メーカーJDI(ジャパン・ディスプレイ)が再々度経営危機に陥り、とうとう中国・台湾メーカーの傘下に入りそう、というニュースが流れました。でも、経産省や政治家は誰も責任を取りません。
premium.toyokeizai.net

  5GもAIもサイバーセキュリティ―も日本は本当に遅れてしまった。基幹的な技術を欧米や中国から手に入れなければ社会が立ち行かない。このままでは他国の2次下請け、3次下請けとして食いつなぐ国になってしまう。

小林氏はアベノミクスについてもバッサリやっています。

  そもそもデフレマインドの克服ということ自体が本末転倒アベノミクス財政出動、金融緩和は本来は時間を稼ぐため、円高を克服するための手段で、それ自体が成長戦略だったわけではない。この6年間の時間稼ぎのうちに独創的な技術や産業を生み出すことが目的だったのに結果がでていない。ここに本質的な問題がある。


そんな日本に対して、小林氏は地政学的に3つの選択肢があると言います。

  今は米国依存だが、さらに従属を深め米国の別種の州として生きていく。もしくは中国の一つの市、上海や北京になる形もあり得る。独立を守り、米中の間で中立を保つことも可能性としてはある。そのためには経済、技術を通した地経学的見地が死活的に重要だ。

 アメリカの51番めの州は大賛成ですが、中国の一つの市というのはちょっと(笑)。しかし日本は独立を維持しようにも経済、技術ともに前述のようにお先真っ暗なわけです。アベノミクスに手を差し伸べて時間稼ぎに加担した自分を含めた経営者たちにも責任がある と、小林氏は言います。

  『経営者として、社会的公器のリーダーとして、トップに社会に対して強く関わって変革していこうという意志を持った人の絶対数が減った。』
  『でも、ネット社会の今は、財界トップと言っても情報が一般社員と比べて特段に優れているわけではないから、社会的地位も特段に高いわけでもない。政府の意思決定過程に組み込まれてしまえば、出来ることもたかが知れている。』

ボク自身はアベノミクスに加担した経営者は小林氏も含めて反省が全く足りないと思いますが、小林氏は今後 経営者はこうすべきだ、と述べています。

  『財界トップには権威のない時代だと自覚する。財界人だけで群れて固まらず、若い人たちを含めた幅広い団体、知的NPOを作って意見を交わし、社会に問いかけ、政治に注文する。そういう柔軟な形が必要』

 ここまで日本が凋落してしまった原因は大衆迎合的な政治家とそれに忖度する行政が『知的退廃と自己革新力の枯渇を招いた』ことにあると小林氏は語ります。

  『国家の未来図が描かれないままの政治が与野党含めて続いてしまった。今さえよければ、自分さえよければという本音の中で国民も政治家も生きてきた。

それなのに国民は未だに自己認識すら出来ていない。

 「内閣府の2018年6月の調査でも74.7%の国民が今に満足しており、18~29歳では83.2%。心地よいゆでガエル状態なんでしょう。・・カエルはいずれ煮え上がるでしょう
  『先進国、文明は老いるものだ。新しい血と混ぜることを嫌えば衰退に向かう』
  『単なる労働力として外国人を入れるのではなく、勉強する、考える日本人を増やす触媒の役割を担ってもらうべき』
  『異文化と接することで日本本来の文化も磨かれる。そういう新陳代謝を怠ったのが平成時代の一つの性格。異文化とワイワイガヤガヤやることで実力がつく』


 このインタビューは昨年末に発表された経済同友会の提言『Japan 2.0 最適化社会の設計—モノからコト、そしてココロへ—』
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/d20118bef9db92e568468e436cd6a581be6adc07.pdfを受けてのものです。
www.doyukai.or.jp

 この提言には『裁量労働制拡大』や『原発再稼働や年限延長』など必ずしも賛成できない内容が含まれています。

 しかし
経済格差に関わらず教育機会を提供する
公的医療は年齢ではなく、所得や資産に応じた窓口負担にする
働き方に対して中立的な税制とし、女性の社会参加を促進するために配偶者控除を廃止する
など大事なことも言っている。

 また現実を考えれば『消費税率引き上げと給付月勤労税額控除の導入』も議論の価値がある。

 そして経済界も反省、生まれ変わって、『ヒューマニティを根幹に据えた持続可能な社会を目指すべきだ』というのは言えているでしょう。

 今回のインタビューは、経団連日本商工会議所と異なり、リベラルな経済同友会ならではの意見かもしれません。小林氏の講演は聴いたことありますけど、以前はアベノミクスを擁護していたし、こんなことは言ってませんでした(笑)。この、インチキ野郎!
 同情的に見れば、小林氏は同友会代表幹事を3月に退任するということで、ようやく本音が出てきたのかもしれません。

 ただ、問題は多くの日本人が右も左も含めて、日本の現状を認識していないこと
  安倍晋三はもちろん、小選挙区制でモノが言えない自民党内の政治家、忖度ばかりの役人とマスコミ、集合離散するばかりで現実的な代替策を打ち出せない無能な野党、それに、半分近くの人間が棄権する無責任な国民、と何重にも障害が連なっています。


 日本は別にムキになって経済成長しなくても良いし、まして世界の一等国なんかである必要はない、と思います。でも、最低限のカネがないと日本は資源を輸入できないだけでなく、存立すら危うくなる。残念ながら 今の日本は理念で勝負できないのだから、日本の最良の安全保障は経済です。

 まして少子高齢化、ジジババばかりの社会になって、日本がある程度のカネすらなかったらどうしたら良いのか。このまま長いものには巻かれろ、異論がでてこないような閉塞した世の中になってしまったらどうなるのか。
 政治的に右とか左とか、年齢も性別も関係ありません。日本なんかどうなってもいいんですが、個人個人は自分の生き残りを考えなければいけないですからね。 

 ちなみにボクは、日本自体はもう、このまま緩やかに衰退していくのは避けられないと思っています。
 時代遅れの原発固執したり無策な少子化対策ばかりでなく、政治家も国民も危機意識のないバカばっかりだもん。選挙を棄権する奴が全体の半分も居る国に未来があるわけないでしょう(笑)。

 小林氏がいう様に、将来の日本は貧乏な年寄りたちが新興国の2次下請け、3次下請けで何とか糊口を凌ぐようになるんでしょう。けれど、世界的な競争に生き残る企業や事業をやっている人(経済的な面だけでなく、道義的(ethical)だったり、個性的だからこそ生き残るパターンもあるでしょう)が多ければ、もう少しマシな社会を目指せる可能性もあると思います。ここ数年が正念場じゃないですか。
 内海桂子師匠96歳



 ということで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議
 今朝は本当に寒かったです。思わず180×60センチの巨大マフラー(というかストール)を巻いて通勤してしまいました(笑)。その格好のまま、官邸前へ(笑)。
午後6時の気温は4度、参加者は400人。こんな寒い日はスマホの電池の減りが早い、早い。電池の残量がタクシーの料金メーターみたいなスピードで減っていきます(笑)。
●抗議風景


 30日、東海村の研究施設で放射性物質漏れが起きた、というニュースがありました。

 幸い大事故ではありませんでしたが、問題はいくつかあります。
 まず、施設を所轄する日本原子力研究開発機構はしょっちゅう事故を起こしている機関だ、ということです。
 もんじゅで散々事故、トラブルを起こしただけでなく、2017年にレベル2の汚染事故、2018年には2件の火災事故を起こしています。はっきり言って、札付きのダメ組織です。

発表・お知らせ|プレス発表、事故・トラブル関連(2018年度)|国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

発表・お知らせ|プレス発表、事故・トラブル関連(2017年度)|国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

 さらに、公開された現場写真を見て驚きました。
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news.tbs.co.jp

 現場では ビニール袋で作業をしており、その袋が破れて放射性物質が飛び散ったかもしれない、というのです。以前 東海村で起きたJCO臨界事故の原因はバケツでウラン溶液を扱うというずさんさにありました。今回も、破れるような強度しかないビニール袋で放射性物質を取り扱っていたわけです!

 食べ物にしろ、工業製品にしろ、良く日本の品質の優秀さが言われるじゃないですか。しかし近年のさまざまな偽造、偽装の報道を見ると、日本の品質の優秀性なんて今や単なる信仰、願望に近いように思えます。今回の事故はそれを良く示しています。
 今、日本は敗北の時代にあります。せめて日本人はもう少し現実を直視し、謙虚にならなくてはいけないと思います。

NHKスペシャル『ベイリーとゆいちゃん』と『目撃!にっぽん 辺野古に住んで見えたこと~“移設先の町”4か月の記録~』、そして映画『未来を乗り換えた男』

 とにかく、寒いですね~。朝晩は身を切るような寒さです。
あと、もうちょっとの我慢、と思いつつ、一年で最も寒い2月がやってこようとしています。

 ボクがまともにTVを見るのは日曜だけです。平日は帰宅して、夕飯を作り、食べて、お風呂に入ったら、もう9時過ぎになります。10時前には寝てしまいますから、TVを見ている暇はありません。日曜に撮りためておいた番組を早回しで(笑)、見ることにしています。時間がもったいないですからね。

 ちょうど昨日の日曜日、NHKで面白い番組が2本、やっていました。

まず、NHKスペシャル『ベイリーとゆいちゃん』

www6.nhk.or.jp

 病院で働くセラピー犬、ベイリーくんと難病で手術を控えた10歳の女の子を追ったものです。
 犬は人間に対して様々な癒し効果をあたえることは知られています。犬と人間は見つめあうと、お互い親愛の情を占めるホルモンが分泌されるそうです。番組の中でも犬がやってくると、認知症で混濁状態にあった人が意識を取り戻したり、喋れるようになった例が紹介されていました。
 小腸を90%切除し、それを引き延ばすという難手術をうけたゆいちゃんも、ベイリーくんが病床にやって来ると苦しそうな表情がさっと明るくなります。その変化は驚くほどです。手術後 痛みで歩けない時もベイリーくんと一緒なら歩こうとする。

 ベイリーくんも超賢い。普段は看護師の言うことを何でも聞くのですが、手術の翌日は指示を受けても、ゆいちゃんから離れようとしません。前の晩 手術の痛みで眠れなかったゆいちゃんはベイリーが添い寝すると始めて、安心して眠りに落ちたのですが、ベイリーくんは彼女が眠り始めると、ようやく自分からベッドを降ります。

 これはどう考えても、犬の方が人間より賢い。やはり、犬に総理大臣なり、首長になってもらった方がこの国は良くなるのではないか。改めて実感しました。人間、いらね。


 もう一つは 早朝やっていた『目撃!にっぽん 辺野古に住んで見えたこと~“移設先の町”4か月の記録~』。NHKの若い女性ディレクターが辺野古に4か月間住み込んで、住民の話を聞いた記録です。

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 辺野古の住民は新基地を容認している人の方が反対より多いことで知られています。しかし、狭い地元ですから賛成派も反対派も口が重い。そこでNHKの若い女性ディレクターが辺野古に4か月間住み込んでルポを作った。そんな番組です。

 辺野古の街は超さびれています。米軍キャンプに近い辺野古は昔は米兵相手の商売でにぎわっていました。ベトナム戦争当時は200軒あった飲食店は現在は20にまで減っているそうです。画面に映るのは空き店舗ばかり、まるでゴーストタウンです。かといって、他に産業があるわけではない。
●3年に1回、辺野古で行われるお祭り。美しい光景ですが、人々の間に分断が横たわっています。

 新基地に賛成の立場としてこのオッチャン↓が出てきます。彼も当初は基地反対でしたが、『どうせ国策は止められないのだから、条件闘争をやって補償金をもらうべきだ』という立場です。お金で転んだというのは簡単です。でも、原発もそうですが、いざ当事者に成ったら、そういう考え方もあるのは、それはそれで理解はできます。

賛成派は個別補償を要求していますが、国はのらりくらり、かわしています。それでも番組の取材中 沖縄防衛局が『法的に個別補償はできない』と言ってくる場面がありました。賛成派の人たちは『裏切られた』と怒りを露わにしますが、確かに個別の補償は利益供与になってしまうから法的にはムリです。賛成派の人たちは結局、『国を信じるしかできることはない』という立場をとらざるを得ません。それが彼らの限界でもある。



 基地反対の立場としてはこのおっちゃん↓が出てきます。孫に負の遺産を残すことはできない、と、20年以上反対を続けてきた。しかし、狭い地域故の血縁関係や友人関係もあります。『もう疲れた』と辛そうです。

 賛成、反対どちらの人も今まで自分たちがやってきたことを無駄にしたくないということは共通しています。ここが賛成・反対双方の最大公約数になるのではないか。20年という時の積み重ねがあります。この問題に目を向けなければ基地問題は解決できない、と思いました。
日本政府が今迄やってきたように沖縄の話を聞かずに強引に工事を進めるのは最低・最悪の愚行ですが、基地に反対する人だけでなく、賛成している人の話も聞かなくてはならないと思いました。


 辺野古の新基地には沖縄の人でも賛否両論あります。ボクはまず、賛否それぞれの意見を聞きたいです。
 本土が沖縄に基地負担を押し付けているのはその通りですが、それでも、渋々かもしれないが賛成している人は沖縄でも4割近くいる。賛成・反対どちらにも理由があるはずで、両方の意見を聞かないと判断を誤ります。
でも 三上智恵の『沖縄スパイ戦史』などの作品などが典型ですが、ドキュメンタリーでは、丁寧に調査しても結局は反対派の言い分に偏った一方的な観方のものが多い。そんなの、ダメに決まってます。ボクはそれは知的怠慢だと思う。信用できません。

 そういう意味で、この番組は非常に優れている。若い女性ディレクターがアパートに4か月住み込み、地元の飲み屋にも通って人間関係を作っていっただけのことはあります。暮らしの中から出てくる等身大のリアルな意見に触れることが出来ます。

 『嵐』の解散や相撲取りを番組のトップに持ってくるような昨今のNHKニュースは完全に頭がおかしいと思いますが、こういう優れた番組もある。NHKを非難するだけでなく、良心的な番組は掬いあげていかなければいけないと思います。こんな番組、なかなか民放では作れないでしょうから。
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と、いうことで、有楽町で映画『未来を乗り換えた男

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舞台は近未来のパリ。ドイツでは新たにファシズムが興隆し、大勢のドイツ人がフランスに逃れていた。やがてドイツはフランスも占領することを目論み、亡命者たちは南米などに逃れようとする。亡命者たちの一人、ゲオルクはパリで自殺を図った亡命作家に成りすましてメキシコ行を企てる。マルセイユまでたどり着いたゲオルクは、懸命に人を探している美しい女性、マリーに出会うが、


 原作は自分もナチからの亡命者だったドイツの作家アンナ・ゼーガースという人が第2次大戦下に亡命先のマルセイユで執筆した小説、それを現代に置き換えたドイツ映画です。

 お話し自体は大したことないんです(笑)。元レジスタンスらしい孤独な亡命者、ゲオルグが亡命作家と共に、追手から逃れてマルセイユへ向かう。道中 怪我を負った作家は亡くなってしまい、亡命者はその作家に成りすまして、作家が亡命先として招かれていたメキシコへ向かおうとする。
 ところが彼が立ち寄る先には必ず謎の女性、マリーが現れ、彼は彼女に惹かれてしまう。そのドラマ自体はあまり興味が持てませんでした。真面目に見るにはちょっと甘すぎる。
●だって孤独な亡命者と美貌の人妻とのメロドラマですもん(笑)
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この映画がすごいのは、舞台を現代に置き換えたことで、現在の難民問題、そして再び訪れるかもしれないファシズムや抑圧の恐怖が良く映し出されているところです。
●ゲオルグと亡命作家(奥)はドイツ軍とフランスの官憲から逃れて、貨物列車でパリからマルセイユへ逃亡します。
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 この映画の中の亡命ドイツ人たちはまるで、アフリカやシリアから逃れてきた実在の難民たちのように暮らしている。ビザを求めて1日中、大使館に並び、わずかな蓄えや食料も底を突こうとしている。抑圧する官憲の手を逃れて、ひっそりと暮らす彼ら。明るい地中海の光が対照的です。
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 着々とファシズムの手は迫ってくる。パリが占領され、段々と南へファシズムが押し寄せてくる。亡命ドイツ人たちは官憲、そしてファシズムから逃げ続けなければならない。だが、マルセイユまで逃げてしまえば、もう逃げる場所はない。
 
 どん詰まりの街に漂う絶望感。ある者はうずくまり、ある者は死を選び、ある者は生きようとします。
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 後半に展開される人妻マリーとゲオルグの心の交流は悪くはありません。悪くないけど、まあ、どうでもいいかな、と(笑)。衝撃のどんでん返しはメロドラマを一層盛り上げるけれど、良い意味で絶望感の方が勝る。
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 映画のタッチはちょっと60年代ぽいというか、懐かしい感じもあります。鮮やかさを抑えた、画面のくすんだ色彩がそう感じさせるのかな。
 多くの人が心の底にうっすらと感じているであろう、近未来のそんな予感、不安をこの映画は画面に映しだします。その絶望に親近感を感じてしまうんです。この感情をどう表現したらいいのか。ボクにはこの絶望がリアルに感じられて仕方がない。
●今日のニュース。日本だっていつこの映画のようになるか判りません。
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https://mainichi.jp/articles/20190128/k00/00m/040/009000c


 なかなかユニークな映画です。すごく面白いとかいう訳ではありませんが、雰囲気がある。見る価値がある映画です。今の日本では、ファシズムが再来する恐怖は他人事じゃないですからね。

謎が謎をよぶ冒頭3分映像『未来を乗り換えた男』