特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『密輸 1970』

 この週末はテレビをつけるとオリンピックと高校野球ばっかり。勘弁して欲しい。テレビはまるで白痴製造機です。
 もっと放送すべきものは幾らでもあるでしょう。公共の電波を占有して、文字通り頭がおかしいんじゃないか。

 直ぐテレビを消しましたけど、ネットで見たオリンピック開会式のこれ↓は確かにかっこよかった。ギロチンにかけられたマリー・アントワネットの生首が歌い、革命の血を模した赤い吹雪がセーヌ河に舞い散る。

 LGBTQ版『最後の晩餐』などもあったみたいですね。それも意義があった。

 勿論 こういう現実があるにしても、です。オリンピック会場にほど近いサン・ドニ地区は住民の4人に1人が移民と言われています。

 それに引き換え、東京オリンピックの開会式は文字通り国辱でした。理念もコンセプトも何も訴えるものがない。

 中抜きした電通とオリンピック委員会を儲けさせただけ、なんでしょうね。
 

 クリエイティブへの敬意なんてものはみじんもない。要するに文化がない。

 良く旧左翼の皆さんは、日本は平和主義とか理念を訴えろ、とか言いますけど、こんなボロ国家にまともな理念なんかあるわけない。
 例えばフランスにもアメリカにも『革命』という『国民の大きな物語があります。王政が続いているイギリスのロンドン五輪開会式でも、国会を爆破しようとしたガイ・フォークスが取り上げられたと思います。アナキストの元祖です。
 国民の大きな物語、つまり国民国家の存在理由=レゾン・デートルです。日本には歴史はあるけれど、国民の『大きな物語』はない

 

 東京の開会式の惨状も国の成り立ち、国民の精神構造自体の問題なんでしょうね。パリと比べると余計に知的・精神的貧困が目立つ(笑)。ダメだ、こりゃ(笑)。


 と、いうことで、新宿で映画『密輸 1970

 舞台は1970年代、韓国の漁村・クンチョン。化学工場ができてから海は汚染され、海女で生計を立てていた地元の女性たちは漁獲が減って困っていた。リーダーのジンスク(ヨム・ジョンア)は沖合の海底に沈めて税関から隠していた外国からの密輸品を引き上げる仕事を請け負うことにする。ある日 税関の摘発に遭いジンスクたちは刑務所送りになるが、彼女の親友・チュンジャ(キム・ヘス)は現場から逃亡。2年後、クンチョンに舞い戻ってきたチュンジャはジンスクに新たな密輸の仕事を持ち掛けるが。

mitsuyu1970.jp

 1970年代半ばの韓国の漁村を舞台に、海女たちと地元のギャング、税関、巨大密輸業者たちが海の底のお宝を狙って抗争を繰り広げるクライムアクションです。韓国映画、こういう映画はあまり見ないのですが、文句なしに面白いと評判なので見に行ってきました。

 韓国はまだ貧しく、外国からの輸入品には関税がかかっていました。日本からの家電や小麦粉、アメリカのタバコ。それに対して、密輸で関税を誤魔化そうとする人たちもいます。

 韓国の漁村、クンチョンにも密輸船がやってきます。税関に検査される前に荷物を沖合の海に沈め、あとで引き上げてさばくことで税金を誤魔化すのです。
 化学工場ができてから汚染で漁獲が減って、困っていた海女たちは気が進まないながらも、荷物の引き上げを請け負い、密輸に一枚噛むことになります。
 

 ところが税関に密告されて彼女たちは捕まってしまいます。ただ一人、チョンジャだけは現場から逃亡して姿を消します。

●海女のリーダーのジンスクと親友のチョンジャ(右)。密輸で儲けた金で買った服を着ています。

 2年後 姿を消していたチョンジャがクンチョンに姿を現します。

 クンチョンで大々的に密輸を行おうとするベトナム帰りの密輸王、

 地元のヤクザ、

 悪徳税関、

 それに海女たち、

 四つ巴の争いが始まります。

 70年代の韓国歌謡?が流れる中、ドラマが展開されます。日本製のラジオやラジカセを密輸するとか、役人が賄賂をもらって取り締まりを見逃すとか、時代を感じさせます。懐かしいだけでなく、新鮮でもあった。
  
 お話が一転二転どこらか、三転四転する脚本も非常に良くできている。女性陣はかっこよく、男どもはイケメンの輸入王を除いては恍けた田舎のあんちゃんばかりなのも面白い。クライムサスペンスですがコミカルです。ボクは怖いのはダメなので、それも良かった。

 凄くお金がかかっているわけでもないし、特殊なことをやっているわけでもない。所詮緩いエンタメではあります。だけど面白い。この映画を見ながらずっと思っていたのはこういう映画、どうして日本でもできないのかなーってこと。

 かっこいい女性だって、イケメンだって日本にもいるし、70年代テイストだって共通です。違いはやっぱり、制作側の想像力、自由に表現しようという気概じゃないでしょうか。

 インディーズや昔の映画はともかく、今の日本のメジャー作品で自由な表現なんかは皆無でしょう。法律もなんのそのの主人公たちや悪徳役人などを表現しちゃいけないとか、政治的な立場を出しちゃいけないとか、脚本に変な自主規制が効いちゃっているんじゃないかなあ。そんなバカなことをやってる国は日本以外には北朝鮮などの専制国家だけです。
 日本の衰弱を一層感じられるような作品でした(笑)。この映画自体は面白いです(笑)。


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