特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

''生''の賛歌:映画『JUNK HEAD』

 梅雨も明け、厳しい暑さになりました。日中は殺人的な日差しです。
 東京も1日に感染者が1000人を超えると、職場でも本人や家族に陽性反応が出た、という話も聞くようになりました。前回もそうでした。これは気を付けないとなあ。この時期 感染者がクーラー無しの部屋で家庭内隔離された、なんて話もありました(笑)。

 そんな時にオリンピックですから、呆れるばかりです。政府は口に出しませんが、本音では『死者も重症者も減っているんだから大したことない』と考えているかもしれません。しかし老人の感染が減った以上に現役世代の感染者が増えているし、東京や周辺県は重症者の数も減っていないから、医療崩壊の可能性は大いにある。変異株や関係者による感染拡大の問題もある。
 このオリンピックは始まる前から『終わって』ます

 今日から東京は交通制限が始まります。オリンピック関係者以外に警察が6万人も動員されますが、そのうち1万2000人は全国から集めたそうです過去最大規模 五輪警備に警察官6万人動員(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース。その1万2000人が全国にウィルスをばら撒くのでしょう。選手村に出入りする運転手さんや業者さんはワクチン未接種の人もいるでしょうし。こちらはどうにも、お気の毒です。

 政府と電通パソナ、アスリートと称する筋肉バカ連中が自分たちの利権のためにオリンピックを強行するというのなら、こちらはこれしかありません↓。バカは相手にしない。TVも日常会話もオリンピックなんか無視すればいい

 いや、それだけじゃなく、欲と金にまみれたオリンピックなんかこれで消滅してしまえばいい。

 日本を代表する企業、トヨタだってオリンピックから逃げ出しました。自社は世界から見られている、という自覚があるのでしょう。更に右に倣う企業も出てくるはず。
www.yomiuri.co.jp


 オリンピックだけじゃなく、今の日本、政府や国民の意識や能力もこんなもんだってことが如実に現れただけでも良し、としなければならないのかも。これで日本人が心機一転、反省して新規まき直し出来れば目出度いけど、ムリでしょうねー。



 ということで、大森で映画『JUNK HEAD

gaga.ne.jp
 舞台は遠い未来。地球は環境破壊で地上は汚染された。人類は地下開発のための労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠の命を得た人類は代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は独自に進化し生殖能力を得ていたマリガンの調査を開始する。政府が募集した地下調査員にダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公はーーー

 本業は内装業、つまり映画は素人の堀貴秀監督が独学で作り始め、約7年をかけて完成させたSFストップモーションアニメ。
 完成は2017年、海外の映画祭では高い評価を受けたものの自主制作のため、日本での一般公開は今年の3月26日、その後は各劇場で満席続出。ミニシアターランキングで第1位となり、TOHOシネマズなどメジャーな映画館でも上演、現在も各地で上映が続いている話題の作品です。

 こういう作品は好んでは見ないのですが、各方面で絶賛の声が聞こえてきます。とりあえず映画館で見ておこうと、大森まで出かけた次第です。

 フィギュアはすべて監督自身の手作り。総コマ数は約14万に達し、企画も撮影も脚本も音楽も地下の住人たちの言語まで監督が手掛けています。気の遠くなるような、殆ど狂気に近い、驚くべき労力です。倉庫を借りて特撮セットを作り、監督はセットの上に住み込んで作ったそうです。
●人形、セット、脚本、音楽、撮影、全て素人である堀監督の手作りです。

 作品の雰囲気は非常にダークです。地下世界を描いているからでもありますが、この映画では、人類の未来はまさにディストピアだからです。

 まず、未来の人類はこのような姿になっています。不死となった人間は生殖機能を失い、もはや人間の姿をしていません。身体は取り換え可能な存在。頭は自我の入れ物に過ぎません。

 ところが人類が住む地上は環境汚染が進み、謎のウィルスで人口の30%を失いました。既に人類には生殖能力がありませんから、このままでは人類は滅んでしまします。未だに生殖能力を持つ人口生命体’’マリガン’’を調査するため、失業したダンス教師だった’’主人公’’は志願して、マリガンたちが住む地下へ潜入します。

 ところが潜入の途中、地下の住人達たちから攻撃を受けた’’主人公’’は博士(写真下、左)によって救われますが、記憶を失い、こんな体(写真下 右)になってしまいます。
 

 果たして地下には凶暴な化け物やマリガンたちがうごめいています。その中で''主人公''は、生きていけるのでしょうか。


 
 最初は見ていて、なかなか気が進まなかったです。
 ユニークな世界観だし、ストップモーションアニメの表現力の豊かさ、創造力が溢れる独創的なキャラクター造形、ユーモアあふれる作風、と低予算とは思えない見事な出来ではあるんです。

 しかし描かれている世界がディストピアなので、見ていてどうしても陰鬱になる。人形アニメだからマジで怖くはないんですが、出てくる怪物などは結構怖かったしグロテスクでもある。ボクは怖かったりグロテスクな話は苦手です。

 ところが見ているうちにだんだん引き込まれていきました。これは自分でも不思議でした。

 何故かというと、ここでは主人公があまりにも無力なのです。マリガンたちは造物主である人間を神、だと思っています。しかし、実際には''主人公''は何もできない。


 
 地下世界では怪物におびえ、マリガンたちにこき使われるだけの存在です。

 ’’主人公’’の目の前でマリガンたちのいくつもの生と死が繰り返されます。それに愛情らしきものも徐々に浮かんでくる。人間である’’主人公’’と人工生命体、どちらが生物なのか判らなくなってくる。そして地下世界で冒険や事件に巻き込まれる内に、次第に''主人公''は地上では得られなかった生の実感を感じるようになっていきます。

 後半の息をもつかせぬ展開は見事なエンターテイメントになっていました。ここは正直 感動しました。
 この映画は生物がいない死の世界で、生の賛歌を描くことに成功している。生とは何なのか、死とは何なのか、図らずも観客に問いかけてくる。
 ただ一つ言えていることは、‘’主人公’’は己の無力さ故に生を取り戻す。監督が本当にそこまで考えて作ったのかどうか疑問ではあるんですが、この映画、見事に哲学的なんです(笑)。

 動かないはずの人形が表情豊かに思えてくるほどの演出力の勝利でもあると思うんですが、こんな発想は始めての体験でした。

 そこまで考えなくても、人形、音楽、脚本、セット、莫大な手間がかかっている創造力溢れる世界だけで大したものです。質が高いと言うだけでなく、実に独創的です。
 監督によると映画は三部作だそうです。今作だけで7年ですから、どうなることやら(笑)。ただ今作の成功で資金も集まるでしょうから、スピードは速まるかもしれません。

 とにかく、これは驚くべき傑作だと思います。人形劇とは言え、怖いのは嫌なので(笑)、個人的には好きな映画ではないですが、心は動かされました。素晴らしいです。これは見るべし。

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