今年も1か月が過ぎようとしています。毎度の話ですが早い~。
とにかく定年まで早く時間が過ぎてほしい。でも、そのあとはゆっくりお願いします(笑)。
●昨日の渋谷。最近は1年中イルミネーションをやっているんでしょうか。
新型肺炎、武漢どころか各地に広まっているようですね。上海では消毒薬を空中散布したという話を聞きましたし(笑)、中国の東端、大連にいる人に聞いたら、大連でも5人患者が出ていると言ってました。もちろん中国だけでなく、世界中に感染しつつあるわけで、グローバリゼーションの時代、それ自体は仕方がない。
そもそもインフルとどれだけ違うのか、ボクにはよくわかりません。
これで、東京オリンピックが中止になれば良いんだけど!
こういう時、一番恥ずかしいのが、これに乗じてデマや偏見をばら撒いている連中です。
ホント、こういうクレーム↓を電話してる暇なクズこそ肺炎で死ねばいい、と思います。どうせ匿名でしょう。弱者や他人に対してトコトン冷たい、日本人の民度が判ります。
まあ、連中は総理大臣を見習っているだけ、と言えばそれまでかもしれませんが(笑)、
インバウンド需要だけでなく、中国での生産や販売、電子部品など輸出への影響もある。車やスマホ、パソコンの生産も遅れているようです。元々米中摩擦で不透明な情勢でしたが、経済への影響のほうが遥かに大きいかもしれません。
世界は、特に日本は今や中国の人たちなしではやっていけないんだなーと思います。嫌中とか呑気なことを言っている場合じゃない。彼らといかに共存していくか、日本人はもっと真剣に考えなければいけないんでしょう。
●お口直し(笑)。ヒラメの上に削った黒トリュフ。珍しく、ちゃんと香りがしました。
今回は、リチャード・クー氏の新刊(と言っても昨年5月発売)『「追われる国」の経済学』と講演の感想です。文字が多くなって恐縮なんですが、大事なことを言っていると思ったので、皆さんとシェアします。
著者のリチャード・クー氏は元FRB(アメリカの中央銀行)で、今は野村総研のチーフ・エコノミスト。
小泉政権の時代、この人がTVで舌鋒鋭く 当時の緊縮財政を真っ向から批判していたのを覚えている方も多いかもしれません。
当時は小泉人気の絶頂期、与野党の政治家も学者もマスコミも『改革』という言葉に惑わされたのか、批判は殆ど見かけませんでした。一億総白痴状態。
TVや新聞などで小泉の政策をまともに批判していたのは、この人だけじゃないですか。金子勝とかも批判の論陣を張ってましたけど全然理屈になってないから、竹中の引き立て役としてTVに出ているのか、と思いましたもん。
暫くしてクー氏はTVには顔を出さなくなりました。彼は、小泉の批判ばかりするので、TV局から圧力があった、と著書ではっきり語っています。
しかし、彼は学者でもなければタレントでもない。民間企業の野村総研から給料が出ています(笑)。その後も自由に著作・研究を続け、野村の顧客に講演したり、海外に呼ばれて、特にアメリカのバーナンキやサマーズなどに日本の経験を基に政策面でのアドバイスも行っています。
国内でもリーマンショックの際、彼が当時の麻生総理のアドバイザーとして財政出動を提言したのは有名です。麻生自体の是非はともかく、エコポイントなんかしょぼいけど消費を喚起する政策自体は正しかったし、効果もありました。
あの時はまだ、財政出動なんか与野党ともにトンデモない、という雰囲気でした。当時の民主党なんか、ただの新自由主義政党でしたからね。
彼の意見を一言で言うと『バブル崩壊後の日本はバランスシート不況だった』ということです。
従来の経済学の前提は『人間は経済成長を希求するもので、常に資金の借り手が存在する』という状態です。一方 クー氏の考えたバランスシート不況とは『巨大な債務がある時は人間は債務の返済を最優先にする。積極的に借金をする奴などいない』というものです。
つまり
『日本経済はバブルが崩壊してGDPの3倍、1500兆円の損害を受け、民間企業の多くが借金を背負った。そうなると企業は借金を返すことが最優先になり、投資は二の次になる。そうなると経済自体も縮小して、不況は悪化していく』、
『そんな時に財政再建のために政府が緊縮策をとると不景気はますます悪化する。だから政府は積極的に財政出動するべきだ』
と言って、彼だけは真正面から小泉を批判していたのです(当時 東大経済学部長の神野直彦先生も小泉を批判してましたが、彼はマスコミには殆ど出ないので)。
クー氏の言ってることは正しかった、です。
財政再建のために緊縮財政を行った小泉時代、いくら『構造改革だ』と笛や太鼓をたたいても不況は回復しませんでした。むしろ派遣社員の規制緩和などで日本経済を悪化させた。
結果としてリーマンショック前 アメリカの景気が良くなって輸出が好転することで何とか日本は一息つくことになります。政策の効果じゃありません。そのあとでリーマンショック、東日本大震災と続いて、それもぶち壊しになったわけですが。
彼の意見は主流の経済学者とは毛色が異なります。しかし現実の経済をうまく言い当てているし、実績も出している。現実の役に立っているところは、凡百の経済学者とは違います。TVに出なくても財界や海外の人たちも含め、判っている人は判っている。ボクは彼の著書は、日本語で書かれたものは必ず読むようにしています。
野村総研のエコノミストではあるけれど、自分で作ったプラモデルの写真集も出しているほどのプラモファンの(笑)、クー氏はタミヤ模型に『自由に製品を作れなくなるから、株式を上場しないでくれ』とアドバイスするなど、金の亡者というわけでもありません。
野村がスポンサーになって彼に資金や助手を提供、自由に研究させているのも太っ腹だと思います。太平洋戦争の時もいち早く敗戦を予想していただけのことはある。そうやって連中は株で大儲けしたのですが(笑)。
- 作者:アル アレツハウザー
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/04
- メディア: 文庫
前置きが長くなりました。
『「追われる国」の経済学』は今までのクー氏の研究を発展させたものになっています。この前 潜り込んできたVIP顧客向けの講演会(笑)とミックスになっちゃいますけど、内容をご紹介します。
・日本のみならず、欧米などの先進国全体がバランスシート不況に陥っている。多くの国で民間の投資が減少する一方、政府の負債はどんどん拡大している。
・それに対して金融緩和が行われているが企業への貸出しは殆ど増えておらず、金融政策は日本でも欧米でも殆ど効果が出ていない。むしろ金融政策は先進国ではバブルを引き起こしかねない。
・企業への貸出しが増えない理由は『企業が債務を返済することを優先させているから』と『先進国に投資するより、新興国に投資したほうが利益率が高いから』である。特に追われる国である先進国より新興国に投資したほうが利益率が高いのは一過性ではなく、構造的な問題だ。
・世界各国で保護主義の動きが強まっている。自由貿易はどの国も豊かにするものと経済学では教えられているが、貿易赤字を長年出しつづければ、製造業など赤字国の産業は破壊され、雇用も失われる。各国の格差の拡大もそれが原因だ。
・元来の自由貿易では、ある国が貿易黒字を出せば、その分 通貨が上がって、為替の調整が行われる。ところが現在の為替移動は国債の購入など資本取引が全体の95%を占めており、為替の調整機能が失われている。自由貿易は各国を豊かにするが、『資本移動の自由化』は失敗だった。
・今や先進国は需要が足りないのだから、政府が財政支出をして経済を支えるしかない。その間に構造改革を行ってイノヴェーションを起こし、需要を作っていくことで新たな繁栄をめざすべき。アメリカがレーガン時代に構造改革を行って産業をハイテク分野へシフトしたのがその成功例である。しかし構造改革を行うには時間がかかるので、財政出動の期間は場合によっては数十年に及ぶのではないか。
・長期にわたる公共投資が政治家の利益追求になったり、非効率な投資にならないように、独立した委員会で監視する必要がある。これからは独立した中央銀行だけでなく、独立した公共投資の監視機能が必要である。
・先進国の人々の活路は新興国の労働者にできないような高度な働き方をしていくしかない。そのためにはリベラルアーツなど自分の頭で考える教育がますます重要になってくる。そのためには国が教育への支出を拡充するべき。教育も重要な公共投資である。
・現在アメリカでは従来の親中派は消え失せ、役人、軍人、政治家は殆ど全て中国を叩くべき、と考えている。国務省と国防省、CIA、ホワイトハウスの意見が一致しているのはアメリカ史上初めてではないか。理由は『南シナ海への中国の進出』、『国防省への中国のサイバー攻撃の成功』、『習近平の任期延長の動き』で、政党を問わず親中派ほど『中国に裏切られた』と感じている。唯一トランプだけが自分の再選のために中国と目先の取引をしようとしている状態(笑)。
一方 中国は習近平は独裁色を強めており、安易に妥協はしない。ただし中国は今後15年で人口減少が始まり、そうなると経済は縮小せざるを得ない。先進国になれないまま経済が後退すると共産党政権も維持できなくなる可能性もある。それに危機感を抱いている経済優先派も共産党内にはいるが、米中摩擦はそう簡単には収まらない、長期のものになるだろう。
ハーバード大の著名化学者逮捕 中国との関係虚偽申告か https://t.co/J9jT33eRmD
— 金順姫 (@kim_soonhi) 2020年1月29日
“米司法省はナノテクノロジーの世界的権威でハーバード大化学・化学生物学部の学部長(60)を逮捕。
中国の武漢理工大から給料として毎月約550万円、住居費や生活費として年間約1700万円をもらう契約を交わしていた”
最後の中国の話は米中双方にパイプを持っているクー氏ならではのお話で面白かったです。
経済の話に戻すと、クー氏が金融緩和や財政均衡など主流派の経済学の政策に否定的なのは水野和夫など左派?の経済学者と共通しています。
財政出動に重きを置く点は左派やMMTとも共通していますが、『資金が余っているのは政府ではなく民間なのだから中央銀行がその資金をファイナンスするべきではない』というところはMMTを明確に否定しています。それは理屈だと思います。
一方 水野和夫先生などは『先進国の利益率が下がり続けていたり、企業の資金需要が減っているのは成長の限界、「資本主義の終わり」だから』としています。
クー氏は『構造改革でイノベーションを起こしやすい環境にしていけば資本主義は復活できる』としているところが異なっています。
正直言って、資本主義が終わりなのか、イノベーションで新たな経済成長が始まるのか、どちらが正しいかはあと50年くらい経たないと判りません(笑)。
彼のバランスシート不況の考え方は実際の経済の動きに即したものだとボクは思います。
実際 アメリカがリーマンショックを脱したのもクー氏が元財務長官でオバマ政権の国家経済会議議長だったサマーズ氏(この本の帯に推薦文を書いています)にアドバイスして財政出動をさせたのも大きいそうです。
バブル崩壊やリーマンショックなどで大きな負債を抱えている時に、企業が将来のために莫大な投資をするわけがありません(笑)。ビジネスをやっていれば誰でもわかることです。
そんな時に国が緊縮財政で公共事業を減らせば不況は更に悪化するに決まっています。それが小泉時代でした。なのに大多数の経済学者は『日本は莫大な借金を抱えているのだから、早く財政再建を進めるべきだ』と小泉にゴマを擦ってました。
アベノミクスの金融緩和に対する経済学者の反応も似たようなものです。多くの学者が賛成しました。反対意見を表明したのは数えるほどです。
案の定、何年経っても効果は出て来ない。主導した経済学者の伊藤隆敏や本田悦朗は外国へ逃げてしまいました。経済学者と言っても、役立たずの曲学阿世ばかりです。
マイナス金利までやっても金融政策が効果を示さない以上、現在のように慢性的に不景気な時は国が公共事業で経済を支えるのは仕方がないと思います。ただし、クー氏の言うように無駄な公共事業をやらせないよう監視機関は作るべきです。
一方 クー氏が言うように、構造改革でイノベーションが生まれるかどうかは判りません。レーガンの構造改革=「規制緩和と金持ち減税」は貿易赤字と財政赤字という双子の赤字を生み出し、アメリカの産業構造を破壊しました。製造業などのオールド・エコノミーを退場させ産業構造を変換したという意味では功績かもしれませんが、ラストベルトの労働者をはじめ犠牲者があまりにも多すぎた。それにアメリカでIT産業が勃興したのはレーガンの規制緩和というよりクリントン政権の情報スーパーハイウェイ構想だと思います。
構造改革として適度な規制緩和や相続税などの減税をクー氏は支持していますが、少子高齢化が続く日本でむやみやたらな減税にはボクは反対です。
クー氏は『相続税を逃れるために不動産バブルなどが起きているのであって、相続税を安くすれば、経済はバブルではなく実業に投資は向かうのでは?』と書いてますが、ボクは『相続税100%にすれば税金逃れは諦めざるを得ないし、何よりも均等な機会が生まれ、公平な競争が行われてイノベーションが生まれやすくなる』と思います。人材しか資源がない日本は特に、均等な機会、公平な競争の重要性は大きいでしょう。
そりゃ給料は上げない、雇用は保障しない、労働時間は長い、組織の風通しは最悪でどうやったらやる気が湧くんだよ。
— 愛国心の足りないなまけ者 (@tacowasabi0141) 2020年1月29日
むしろそんなこともわからない経団連の頭の悪さに頭を抱えるわ。
“やる気がない”が71%!経団連も頭を抱える「働きがい調査」の惨憺たる結果 https://t.co/odZEZTLKPw
それより、イノベーションを起こすには日本はもっと多様性を尊重する文化になる必要があると思います。
アメリカの巨大IT企業を見てください。アップル創業者のスティーブ・ジョブスはシリア難民の息子、アマゾン創業者のジェフ・べソスはキューバ移民(義父)の息子、グーグル創業者の一人はロシアからの移民、マイクロソフトを立て直した現社長はインド出身、アップル現社長はゲイ。男女問わず、そんな人たちばっかりです。
一方 日本は東大や慶応幼稚舎出身、二世・三世の政治家、それも男ばかりが社会の上部にいる、自己責任の名のもとにシングルマザーや貧困家庭出身の人は進学もままならない厳しい状況に置かれている。
それじゃあ、かなうわけがありません。論外。控えめに言っても、こんな国ではイノベーションは生まれにくい。構造改革以前の問題です。
●こんな連中が政治家じゃ、日本はイノベーションどころじゃないでしょ。
教育にもっと投資を、というのはクー氏の言う通りです。教育は自己責任でなく、公共投資です。将来、納税という形でリターンが返ってくるのですから。
日本の場合 教育の内容や教師の質は問題あるという気はしますけど、もっと教育に投資して『先進国の人たちの活路は新興国の人たちができないような高度な働き方をしていくしかない』というのは間違いないでしょう。自分自身でも、疲れますけどね。
そう考えれば、東電のような独占企業だけでなく、規制や利権に守られている農協や一部の商店街や中小企業などは、ボクは存在そのものが社会悪だと思います。
クー氏は『人類の進化はあらゆる差別との戦いであるなら、経済発展の目指すべき方向は地球上のすべての人々に繁栄の機会が平等に開かれている世界である』と言っています。そのためには、我々一人一人がそれに見合うように自分を磨いていかなければいけないと思いました。
北欧の強みは「人生の詰みにくさ」にあると思う。冬は寒くて暗いし物質的には巷のイメージよりも質素だが、家が貧乏でも毒親でも進学しなくても何とかする手立てが割とあるし、一旦働いてから進学する人も多い。ノルウェーの文化大臣やフィンランド首相がそうだったように。 https://t.co/nG0x3aEezV
— Celeste (@yy_celeste) 2020年1月27日
『「追われる国」の経済学』は600ページもあるので正直読むのは大変でしたが、表現は平易だし、内容は非常に為になります。
クー氏には再分配という視点はあまりないですが、それでも『貿易赤字は国内の雇用を破壊する』、『資本の国際的な移動を規制するべきだ』、『公共事業を監視する政治から独立した監視機関が必要』という指摘はボクには新たな発見でした。
クー氏の言う
『先進国は政府が、(民間の金を利用して)本当に国民の生活や産業に利益をもたらす公共投資を長期間行って景気を支えろ。その間に教育への投資や適切な規制緩和でイノベーションを起こせ。』
は、格差の拡大と低成長で皆が途方に暮れている(笑)グローバリズムの処方箋、としては一つの考え方じゃないでしょうか。我々の活路を考えるうえで貴重な本だと思ったので、敢えて内容をご紹介しました。
と、いうことで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議
今日は気持ちが良い晴れ間でした。でも夕方から風が冷たくなりました。午後6時の気温は7度、参加者は少なめ、200人は欠けるかな。
●抗議風景
今週火曜日、面白い記事が日経電子版に載ってましたので、ご紹介します。
EUは脱炭素社会を実現する上で「投資適格」とみなせる技術、つまり『クリーンな技術』をリストアップしており、昨年夏にその報告書が出たそうです。
www.nikkei.com
それによると『原子力はクリーンな技術とはみなされなかった』そうです。クリーンな発電方法は太陽光に風力、海洋、地熱、それにバイオ、水力、蓄電池など。石油や石炭火力とともに原発はクリーン技術からは除外されました。
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2019/2019sum06web.pdf
地球温暖化防止のために原子力を推進すべきだという日本政府や電力業界、財界の意見は全く否定された、わけです。
確かに原子力はCO2は出さないかもしれないが、廃棄物の問題、それに建設までのエネルギーコストや発電中の排熱を考えればクリーンどころじゃありません。そもそも原子力は燃料を電力に変換する効率は火力より低いのですから、環境上 不利に決まっている。
今年1月14日、その報告書に基づいて欧州委員会は、50年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする「欧州グリーンディール計画」に伴う投資計画を公表しました。今後10年間で122兆円も投資する、というすごい計画です。そこから原子力は排除されています。
●原子力ムラ(業界団体)は激怒しています(笑)。
www.jaif.or.jp
日本のマスコミ、ましてTVはこんなことは殆ど報じませんが、世の中の流れはこうなっています。このこと一つとっても、今の政府や経産省の言ってることを真に受けていると日本のお先は真っ暗(笑)、なのが判りますね。