特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

グールドと方丈記

 先日NHK教育TVでピアニストのグレン・グールド『他人と一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、自分ひとりで過ごす時間はそれ以上に必要になる』というようなことを言っていた。
人によりけり、だろうが、少なくともボクにとっては頷ける発言だ。
 普段から周りの皆様から『人脈が大事』とご忠告いただくし、世俗的にはそのとおりなんだけど、それでも他人と会うのが億劫なのだ。対人関係のハウツー本には、こちらから相手に興味を持つことで話が盛り上がる、とか書いてあるが、その興味すら持てないんだよ(笑)。仕事の話はロジカルに対応すればいいからまだしも、それ以外の世間話、ゴルフも野球もサッカーもTVもギャンブルもお酒も出身地も出身校もボクは全く興味がないので 内容が全然わからないからだ(笑)。かといって、自分から他人に話せるような話題は『早く定年にならないかなあ』くらいしかないし、勿論それで盛り上がったことなど一度たりともない(笑)。かといってジム・キャロルPERFUMEの話をしてもしょうがない(笑)。結果としてボクには他人と関係する時間は苦痛以外、何者でもない。 そんな体たらくでは我ながら、見通しは暗い(笑)。

 そうなってくると自分の心の平安を保つのは、いかに一人で過ごす時間を確保するか、に係ってくる。
 方丈記に『閑居の悦楽』というくだりがある。

方丈記 (講談社学術文庫)

方丈記 (講談社学術文庫)

他人との交わりを絶ち、静かに暮らすことで、いかに精神的な喜びが得られるかということを述べたものだ。例えばこんな風だ。
『ことを知り、世を知れれば、願はず、走らず。ただ静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。』
『一期の楽しみは、うたたねの枕の上にきはまり、生涯の望みはをりをりの美景に残れり』

 よ〜するに世俗的なことは何もしないってこと。考えようによっては今の世の中では贅沢なことではある。これと比べたら、例えば最近流行っているらしいハウツー本の勝間和代とかの、寸暇を惜しんで自己研鑽しろ、例えば自転車で移動しながらPod Cast聞いて勉強しろ(都会じゃ危ないだろうが)(笑)みたいな『自己研鑽病』や、辻元清美/上野千鶴子の、とにかく他人と繋がれば何とかなっちゃう『連帯教』(笑)が余計に貧しく感じられる。『構造改革』にしろ『自己責任』にしろ『連帯』にしろ、美名の下に自分たちのイデオロギーを押し付けてくるのは所詮 右も左も同じなのだ。
 そんな馬鹿どもと関わるくらいなら、布団をひっかぶって寝ていたほうがマシ。変わり者のボクだけでなく(笑)、洋の東西を問わず、そう思っている人間は案外多いのではないか。
アイルランドの歌手ヴァン・モリソンに’’Just like Greta''という歌がある。    
マジック・タイム

マジック・タイム

絶世の美女と言われながら、世の喧騒を避け交わりを絶って一生を終えた名女優グレタ・ガルボのことを歌っている。

If anybody ask you have you seen me
Please just tell them no
Cause I'm living on the outside
And I have nowhere to go

I just want be alone
Disconnect my telephone
Just like Greta Garbo
I just want be alone

誰かに私を見かけたかと聞かれたら、どうか『いいえ』と言ってくれ
私はどこにも行くところがない、この世界と関わりがないところに住んでいるのだから

電話を切って、一人になりたいのだ。
グレタ・ガルボのように
ただ、私は一人でいたいのだ。


そう、目指すは隠遁、竹林の暮らし。