特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『頭隠して尻隠さず』と『0517再稼働反対!首相官邸前抗議』

 道を歩くと緑の香りと明るい陽の光、良い季節です。
 それでも段々と日差しの強さを感じるようになりました。夏がすぐそこまで来ているのを感じます。それにしても、最近は春と秋が短くなりました。これも地球温暖化の影響でしょうか。


 前回 月曜日のエントリーで、新国立競技場の建設現場が地元では、『タコ部屋じゃないか』と言われている というお話をご紹介しました。労働時間の長さもさることながら、作業員がお昼も外に出てこないのですから。
spyboy.hatenablog.com

 丁度 昨日の木曜日、朝日新聞朝刊にこんなニュースが出てました。NHKの夜のニュースでもやってましたね。
www.asahi.com

 国際建設林業労働組合連盟(BWI)という130ヵ国、328組織, 約1200万人が加盟している労組の国際組織がこんな指摘をしたそうです。
『月に26日や28日働いている例がある▽つり上げた資材の下で作業をしている▽通報窓口が機能していない▽外国人技能実習生もいるにもかかわらず一部は通報受付が日本語のみ、など問題点を指摘。』

 やっぱり タコ部屋じゃないですか!(笑)。賄賂で裏工作、アンダーコントロールという嘘で招聘、スタジアムの建設現場は死人が出るタコ部屋、その一方 被災地の復興は目途が立たない。アメリカのTVの放送時間に合わせた炎天下の本番、冷房無しのスタジアムで死人が出たら目も当てられません。

 後進国独裁国家がミエを貼るためのインチキ・オリンピック。元がムリなんだからボロはいくらでも出てくる。これからも出てくるでしょう。まさに『頭隠して尻隠さず』とはこのことです。
●BWIの報告書。題して『The Dark Side of the Tokyo 2020 Summer Olympics』。
5つの輪はそれぞれ
『外国人実習生の濫用』、『過重労働』、『2人の死』、『(安全を軽視する)恐怖の文化』、『当局は見て見ぬふり』
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https://www.bwint.org/web/content/cms.media/1542/datas/dark%20side%20report%20lo-res.pdf



 この前 変わった物を食べました。最近 日本に入ってくるようになったと言う、アイルランドヘレフォード牛という肉です。ちょうど今週水曜発売の雑誌ブルータスのイタリア料理特集『日本はイタリアの21番目の州だった(笑)(その手があったか!)には『ヘアフォード牛』と書いてありましたが、ヘレフォード(Hereford)の間違い。magazineworld.jp 
それくらい、日本ではまだ珍しい牛です。
●Tボーンの肉汁が全く流れてこないのに注目。シェフ氏曰く、焼きの技術、だそうです(笑)。
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 霜降りの和牛のようにカロリーの高い飼料を与え、しかもサシを入れるためにビタミンDを欠乏させて、いわば病的に短期間に太らせた牛ではなく、アイルランドで自然の牧草だけを食べさせながら通常より2~3倍長い期間かけて健康的に育てた牛だそうです。
 商売の面ではそれだけ歩留りの効率が悪いし、コストもかかるにも拘わらず、海外ではそうやって牛を育てている人がいる。

 店のシェフ氏は、熟成牛の次はこれだ、と言ってました(笑)。牧草だけで育てたグラス・フェッドの肉は他の地域にもありますが、ヘレフォード牛は肉の味が濃いそうです。確かにしつこくないけどミネラルのコクがある。赤身の味と歯ごたえのバランスが美味しかったです。
●こちらはニュージーランドのグラスフェッドの牛。こちらはマグロの赤身のような爽やかな味です。これも美味しい。
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 昨今の日本礼賛の傾向のせいか、和牛がやたらともてはやされたり、和牛が外国に密輸された、とかマスコミはことさらニュースに仕立てあげます。知的財産権の問題はあるにしろ、もっと重要なニュースはいくらでもある。ボクなんか和牛ごときで、と思ってしまいます。
www.asahi.com
www.sankei.com

 このヘレフォード牛だけでなく、昨年からイタリアのキアーヌ牛やファソーネ牛が日本にも輸入されるようになりました。やっと、ですよ!和牛より美味しい牛肉、美味しいものは世界中にいっぱいあります。もちろん美味しい和牛だってないわけじゃないけど。

 たかがお肉、ですけど、今の世の中を象徴するような話です。食べ物だけでなく、我々が知らないことは世界にいっぱいある。
 日本バンザイとか言っている間に、我々の実質賃金は下がり、日本企業は凋落し、過去と比べても他国と比べても、我々の生活は貧しくなってきている。報道の自由度も下がっている。政治家も国民も目指せ、北朝鮮じゃないか(笑)。

 バカなニュースを流す奴、バカなニュースに踊らされる輩は放っておいて、我々は謙虚に、世界に広く目を向けていかないと自分の人生がもったいない、と思います。
●さすが保坂区長ですけど、こんなキャンペーンをやらなければならないこと自体、日本社会は劣化してますよ。バカばっかり。



このところ経団連会長、経済同友会代表幹事、トヨタ社長などから『終身雇用制はもう維持できない』という発言が続いています。
www.fnn.jp


 それに対する反発の声があるようですが、ボク自身はそれほど違和感がないんです。と、いうのは今だって終身雇用ではないからです。

 現状でも労働者の7割が働く中小企業の多くは普通にリストラしています。
 大企業だって、何かあればリストラや早期退職などをやっています。
特に最近はメガバンクに、富士通、NEC、カシオ、パイオニア、コカコーラボトリングジャパン、日本ハム、それにエーザイなど製薬業界、中高年を中心に希望退職を募る動きは止まりません。

 5月13日現在で、2019年に希望・早期退職者の募集実施を公表した主な上場企業は16社を数え、前年1年間の12社を既に上回ったそうです。何が人手不足だよ、ってこと。
●上場企業の早期退職、希望退職の推移。昔からリストラはやってるんですよ。

www.tsr-net.co.jp

 終身雇用なんかどこにあるんだ、という感じです。そもそも終身雇用とか言ったって正規雇用だけの話で、今は非正規雇用の人が全体の4割もいる。それも合わせたら日本の社会は終身雇用なんてことは言えるはずがありません。

 じゃ、連中はなぜこんなことを言い出したのか。おそらく、
おそらく、これ、『解雇の金銭解決制度の創設+αを狙っているんでしょう。

 
www.nikkei.com


 補償の水準にもよりますが、解雇の金銭解決自体は中小企業にも適用されれば悪い話ではありません。中小企業の場合は補償もなく労働者が放りだされるケースの方が多いんだから。
 大企業の場合も構造改革、事業から撤退したり、工場を廃止したり、確かにそういうことをやりやすくしたい、それは判らないでもない。
 無能な経営者の責任を追及する仕組みもなければ片手落ちだとは思いますが、労働者にとっても、儲からない事業を続けるのは必ずしも良いことではない。給料も上がらないし、やりがいだってないですから。

 ただ、それを言っている連中の顔を見ているとそんな、高潔な志があるようには見えない(笑)。
 木曜日の日経には、現在『副業・兼業の解禁』が政府内で議論されている、ことが載りました。解雇の金銭解決にしろ、副業・兼業にしろ人材を流動化して労働力を安く買い叩こうと言う魂胆が透けて見えます


www.nikkei.com

 記事には『副業をしたい人は多い』とありますけど、それは給料が安いからじゃないですか!それを維持しようって話でしょ。労働者にとっては副業というより、労働時間の延長ですよ。男にとっても酷い話ですが、家事育児を押し付けられている女性はどうすんの???

 連中は、相変らず人件費を下げることばかり考えている。それが日本の人手不足や少子高齢化、強いては不況の原因の一つだと言うのに。

 あんまり好きな企業じゃありませんが 最近 通販のZOZOが比較的高めの時給1300円で2000人バイトを募集したら、あっと言う間に枠が埋まりました。人手不足と言っても給料を上げれば働こうとする人はいるし、その人たちはお金を使うから国内需要だって増えるに決まっています。

www.itmedia.co.jp

 こうなってくると、経営側が労働者の雇用をある程度!保証するかわりに企業の中の様々な職務や勤務地を無限定に使いまわすく日本型の『メンバーシップ型雇用』から、企業と労働者が事前に契約した職務(ジョブ)や勤務地に対する雇用である欧米式の『ジョブ型雇用』を部分的にでも目指していく、しかないのかもしれません。

 でもそうなると、経団連に代表される大企業からは特に、優秀な人材はどんどん逃げ出していきます(笑)。能力があれば外資の方が給与だって高いし、若い時から責任のある仕事ができるし、何よりも『手に職がつく』
 歴代の経団連会長のように電子メールができないトップなんかグローバル企業で存在できるわけがありません経団連のジジイ連中が言っていることはまさに自滅パターン(笑)。

●本当に東大・京大生が優秀かどうかは知りませんが(笑)、既に学生の就職希望先は役所や日本型大企業が減って、外資のコンサルばっかになっています。是非はともかく、全部『手に職』がつく企業。無意識かもしれないが学生もわかってる。経団連のジジイ連中を見ていたら、あんな会社に入ったらダメだってことは学生でも判る。
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東大・京大生が選んだ「就活人気100社」 | プレジデントオンライン

 上のランキングを見ても日本型大企業の前途は暗いことが判ります。今は人材が競争のキーなのに、企業の方が優秀な?人材から見放されつつある。
学習院の就職課の戯言を取り上げる日経もバカ丸出し。どいつもこいつもデマ飛ばすんじゃねーよ。

 今頃 日本型雇用はもうムリ、と口をそろえて言っているジジイ連中を見ていると『頭隠して尻隠さず』という言葉が思い浮かびます。自分の任期内、目先の利益ばかり追求する連中の考えそうなことです。まさに原発にしがみつくのと同じロジックじゃないですか。


 終戦時 公職追放などで上層部のジジイ連中が居なくなったことが戦後の経済発展の原因の一つと言われます。現在も政治家だけでなく、こういう無能な爺さん連中を放逐しなければ日本は立ち直れないかもしれませんね。



 ということで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議
 今日の東京は夏日になりました。それでも夕方は抗議日和(笑)。陽が柔らかくなって、いい感じです。
 今日の午後6時の気温は21度、参加者は400人くらい?先週よりも多かったです。

●抗議風景


 今週 日立の現社長が『原発事業は単独ではやる必要がない』とインタビューで答えていました。日本最大の企業、日立ですら単独では原発事業はできない、という訳です。

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 会長の中西が先週『だめになりそうな事業を残すことは雇用されている人にとって一番不幸だ』と言った矢先に、です。自分たちの支離滅裂さに気がついてもいない粉飾決算をしてまで原発事業を続けようとした東芝に比べれば日立はだいぶマシだなあ、と思ってましたが、あんまり変わらないみたい(笑)。
 何よりも恐ろしいのはその程度の判断力しかない人間が日本で一番大きな企業のトップにいるということ。日本社会はその程度のレベルでしかない、ということ、です。こわいなー、この国。

映画『RBG 最強の85才』

 何やら衆参W選挙が取りざたされるようになってきました。公明党が反対するから衆参W選挙は無い、と言われていましたが、大阪、沖縄の選挙の自民敗北で、与党内では傷を少なくするために衆参W選挙が検討されているそうです。

 名目は消費税の延期。延期の可能性は3月のブログにも書きましたが、それでなくとも安倍晋三過去3回も消費税を名目に解散&選挙をやっています。バカはバカなりに『解散の度に首相の求心力は高まる』というセオリーを理解している。
 景気に暗雲が漂ってきた現在、消費税延期を唱えて選挙をしてくることはあり得るでしょう。そうなると野党は消費税を選挙の論点にできなくなる。

 今日 内閣府が発表した景気動向指数では6年2か月ぶりに『悪化』との判断が示されました。経済関係者は注目していた指標です。

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NHKは中国経済の減速とか言って他人のせいにしてましたが、実質賃金の低下などアベノミクスが失敗したのがいよいよ露わになった結果です。


 更に来週 発表されるGDPとこれから指標の発表が続きます。
 6月のG20でも『景気が悪いのに消費税なんか上げるのか』と言われるでしょうから、それをきっかけにW選挙の可能性はあるのかもしれません。それに対して野党の方は未だに旗印、特に経済面の旗印すらありません。
 相も変らず安倍辞めろだけじゃ、内輪ならともかく、一般の国民に対して説得力を欠いているとボクは思うんですが、どうでしょうか。
●いくらこうだとしても、ですよ。


 この前、久々に神宮前へ行ったら、国立競技場がだいぶ出来上がっていました。
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 外国の人も多く働いてるそうですが他の現場と違うのは、働いている人たちは、昼休みも工事現場から全く出てこない。あれは殆どタコ部屋じゃないか、とは、周りの住人たちのもっぱらの噂です。
 
 突貫工事の結果 ヤマは超えたそうですが問題案件だった新国立競技場が工事費黒字化目指す「マジック」の中身 | Close-Up Enterprise | ダイヤモンド・オンライン、工事で立ち退いた人も居れば、工事現場で過労死した人もいます。オリンピックのチケットが売り出されて喜んでいる人たちの気がしれません。
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今回は 感動のドキュメンタリーです。恵比寿で映画『RBG 最強の85歳

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 1933年ニューヨークの下町ブルックリンでウクライナからのユダヤ人移民の娘として生まれたルースは弁護士を志してコーネル大へ入学、そこで学生結婚、出産。その後ハーバード大法科大学院に入学。ガンを患った夫の近くで暮らすためにコロンビア大へ転校、首席で卒業したが、50年代は女性が弁護士になる道は閉ざされていた。ラトガース大の教授になった彼女は講義の傍ら、全米自由人権協会に参加、男女の差別を認める法律の撤廃を求める訴訟を起こし、最高裁で6件中5件の勝利をもたらす。やがてカーター大統領から裁判官に任命され、クリントン大統領から最高裁の判事として迎えられる。

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 アメリ最高裁判事の最年長、長年 性差別と闘ってきたルース・ベイダー・ギンズバーグに迫るドキュメンタリー。 
●2017年のアメリ最高裁判事の顔ぶれ。前列左端がルース。終身制の最高裁判事は大統領より社会的影響力が大きい と言われています。現在リベラルが4名、保守派が5名。
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 この数年 彼女はRBGと呼ばれ、様々なグッズが売られたり、彼女の絵本やワークアウトの本が出るほどの大人気、#Me Too運動も相まって、彼女の存在は一種の社会現象になっているそうです。
●撮影当時 85歳のルースは20年前、ガンになって以来 週3回のワークアウトを続けています。
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 監督は、コロンビア大やCNNでドキュメンタリー作品に携ってきたジュリー・コーエンとベッツィ・ウェスト。2人の監督、7人のプロデューサー、撮影監督など制作のリーダーは全て女性だそうです。アメリカでは昨年公開されてドキュメンタリー作品としては興収10位に入る異例の大ヒット、今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のほか、歌曲賞にもノミネートされました。
●監督のジュリー・コーエン(右)とベッツィ・ウェスト(左)

 日本では3月に彼女の若かりし日を描いた『ビリーブ 未来への大逆転』が上映され、今に至るまでロングラン上映が続いています。
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RBG 最強の85歳』はそれに続いての公開です。
●恵比寿の映画館では『ビリーブ 未来への大逆転』と『RBG 最強の85歳』が併映されていました。

 当日は始めに『ビリーブ 未来への大逆転』をもう一回見たのですが、前回見た際 随分見落としていたことがあったことに気が付きました。かなり情報量が多い。あと主演のフェリシティ・ジョーンズがルックス、姿勢、しゃべり方まで本人そっくりに演技していることも分かったし、脚色してある部分も理解できた。非常に良くできた映画です。再度 見てよかった。改めて感動、涙が流れました。
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 さて、『RBG 最強の85歳』は今やポップ・アイコンにまでなっている現在の彼女と過去の彼女の業績や発言を比較しながら、お話は進んでいきます。 
 ウクライナからのユダヤ人移民の娘として生まれた彼女は、当時の『赤狩り』に抗議する弁護士たちの姿を見て、弁護士になることを志したそうです。

 そのあと大学入学後の彼女、映画『ビリーブ』でも描かれていた、学生結婚して子供を育て、生存率5%のガンに罹患した夫の看病をし、自分の分に加えて夫の分まで授業のノートを取り、なおかつハーバード・ロースクールで首席だった!というエピソードには、やはり度肝を抜かされます。睡眠は毎日2時間だったそうです(笑)。
●夫のマーティンと彼女は学生結婚しました

 当時はハーバード・ロースクールに女性が入学できるようになって日も浅く、当時は学生数約500人のうち、女性は9人ほど。授業でもなかなか発言の機会も与えられず、女性用トイレですら不備だった。
 そういうことをルースが今 ハーバード・ロースクールに通っている彼女の孫に話すシーンがあります。彼女の孫の学年で初めて、生徒が男女同数になったそうです。感動的なシーンでしたが、世の中が変わるのには時間がかかる、ということも思い知らされます。
●当時の学校での写真(彼女は右端)

 実際に見る彼女は身体だけでなく声も小さく、とても闘士という感じには見えません。内気で無駄口をたたかないというキャラクターだそうです。
 彼女が17歳の時に亡くなった母から、『淑女であれ』(Be A Lady)、『自立しろ』(Be Independent)ということを教わって育ったそうです。淑女であれというのは淑やかにしろ、ということではありません。『怒るのは時間のムダ』ということだそうです。その言葉が彼女の人生を導いていきます。
●正直、彼女の業績だけでなく、美しさにも圧倒されました。
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 一方 夫のマーティンは社交的で冗談が大好き。画面で見ていても人柄の暖かさが伝わってきて『いい人だなあー』と思いました。大柄でニコニコしていて、ほんと、良い人。
 税金専門の弁護士(儲かりそう!)として一流だったそうですが、ルースの仕事の重要性を理解すると、自分は家事、育児も引き受け、彼女のサポートをする。『男が家事をやれ』の見本のような人です。50年代にもキャリアと家事を両立させる男が居たんです。彼もまた、ヒーローであることは間違いありません。

 一流校の首席だったにも関わらず、女性であるがゆえに弁護士事務所に就職できなかったルースは大学教授を務める傍ら、性差別を是認する法律を変えていこうとします。彼女の凄いところは、女性の権利だけでなく、男性の権利にも着目したところ。
 映画『ビリーブ』でも、当時 介護をする男性には介護費用の税控除が認められないのは性差別だ、として国税庁に訴えを起こした『ワインバーガーVSワイゼンフェルド』裁判(75年)が取り上げられていますが、ルースは女性の権利だけをことさらに主張するのではなく、男女を問わず性差別は不当だ、と主張していきます。その結果70年代、彼女は最高裁で弁論を行った6件のうち5件で勝訴するという実績を残しています。

 80年に民主党のカーター政権が誕生すると、カーターは彼女をワシントンの控訴裁判所の判事に任命、コロンビア大の教授職を得ていたマーティンもワシントンへ引っ越して彼女の仕事を支えます。
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 93年にはクリントン大統領から史上2人目の最高裁判事に任命されます。社交好きのマーティンが内気な彼女を各方面に随分プッシュしたそうです。クリントンは『彼女は推薦リストの22番目だったが、彼女と面談したら15分で意気投合、指名を決めた』と映画の中で語っています。
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 映画では彼女が関わった様々な裁判が紹介されますが、印象に残ったのは南部バージニア州軍事学校が女性の入学を認めないことを訴えた裁判。
 96年 彼女は最高裁の判事としてバージニア州の措置を違憲と判断しました。『体力テストさえクリアすれば、女性でも軍事に関わる能力はあるはずだ』と言うのです。

 20年後 ルースはバージニア州軍事学校から招かれ、大勢の女性生徒や卒業生を前にスピーチします。彼女たちが見つめる中、ルースは『彼女たちが入学できるようになれば、いずれ多くの人たちが彼女たちのことを誇りに思うはず、と私は考えた』と穏やかに語ります。それを聞く多くの女性たちの目には涙が光っている。なんとも感動的な光景です。
●ルースの判決で州立学校に入学が許された女性たち


 意外だったのは超保守派の最高裁判事、スカリアとの交流です。レーガンが任命したスカリアはコテコテの保守派で銃所持賛成、中絶反対、同性婚反対、政治献金は上限撤廃、環境保護政策はもちろん反対、ブッシュとゴアの大統領選開票でも僅差だった投票の再計算を拒否してブッシュの当選に貢献した、非常に問題がある人物です。
 ところがルースはスカリアとオペラという趣味で意気投合、仲良しになって生涯交流が続いたそうです。それだけでも彼女はイデオロギーに囚われる偏狭な人物ではないことが判ります。
●スカリアとルースはインドへも旅行しました。ルースがスカリアの後ろに座ったことでフェミニストから非難された、と彼女は笑っていました(笑)。単にスカリアがデブだったから重量バランスの関係で前に座っただけ、だそうです(笑)。


 2000年代に入り最高裁の判事が保守派が大勢を占めるようになると、最高裁の判断も保守的なものが多くなっていきます。その中でルースは少数意見として明確な主張を行うようになります。元来 中道寄りの人でしたが、世の中が右傾化するとともに左派とみなされるようになってしまったのです。

 グッドイヤー社の女性社員が賃金差別を不当と訴えた裁判では、原告が訴えるまでに時間がかかりすぎているという理由で最高裁は訴えを却下します。それに対して、ルースは少数意見で反対を唱えるだけでなく『議会が最高裁の間違いを正してください』とまで訴えます。こんな裁判官がいるでしょうか。
 それに応えて議会は法律を改正、その『公正賃金回復法』はオバマ大統領が最初に署名した法律になりました。
 このような反対意見を述べる彼女に対して次第に、世の中の注目が集まるようになっていきます。ルースという人は齢70を超えて、また新しい役割を果たしていったのです。
●ルースが最高裁で反対意見を述べる際はいつも、このネックレスを法服の上につけるそうです。それを模したネックレスを洋服メーカーのバナナ・リパブリック(GAP)が売り出したら大ヒット、即完売になったのがニュースになりました。

womenintheworld.com


 ルースは石部金吉でもなければ、完全無欠な人ではありません。大統領選当時、トランプを『詐欺師』と呼んで謝罪したり(間違いではありませんが、最高裁の判事としてはまずい)、ワイナリー(オーパス・ワン!)に行って飲みすぎてしまい、大統領の年初の演説の最中に居眠りしたのが大々的に報じられたりしています。そういうところが愛されている。

www.dailymail.co.uk

 今やルースは元麻薬の売人で90年代に射殺された有名ラッパー、ノトーリアス・B.I.Gをもじって、ノトーリアス・R.B.G(悪名高きRBG)と呼ばれて社会的に注目される存在になっています。
 2016年にはワシントン・ナショナル・オペラにも出演、
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Ruth Bader Ginsburg with the Washington National Opera
https://www.nytimes.com/2016/10/22/arts/music/washington-national-opera-ruth-bader-ginsburg-donizetti.html

 超有名お笑い番組サタデイ・ナイト・ライブでは彼女をパロディにしたコーナーもあるそうです。彼女はスマホは使えるけれど、家のTVのつけ方も知らないそうで、インタビューの際 自分のパロディを始めて見て笑っていました。ちなみにサタデイ・ナイト・ライブでアレック・ボールドウィンがトランプのパロディをやったら、トランプが激怒したのも有名です。

Weekend Update: Ruth Bader Ginsburg on Not Retiring - SNL

 #Me Too運動の先駆けという意味もあるのでしょう。年齢を経るにつれて社会的な影響力が増している、というのは確かに稀有な人です。本人はブーム自体は興味ないんでしょうが、それを他人事のように楽しんでいるようです。
●さまざまなグッズが売り出されています。


 ルースは2010年に伴侶のマーティンをガンで亡くしましたが、自身も2度、ガンにかかっています。それを克服するための週3回のワークアウトも話題になっています。

The RBG Workout 2019 Wall Calendar

The RBG Workout 2019 Wall Calendar

 昨年11月 彼女は転んで肋骨を骨折、その際 肺にガンが見つかりました。年末に手術、今年の始めに執務に戻っているようです。

www.nikkei.com

 この人が居なくなったらトランプが保守派の判事を任命するでしょうから、とにかく元気でいて欲しい。アメリカの世界的な影響力を考えれば、そして未だに大学入試ですら女性差別が存在する日本でも他人事ではありません。どうか末永くお元気に、としか言葉がない。
www.reuters.com


 映画の情報量は多いですが、判り易いだけでなく、見方も公平だし、扇情的なところもありません。内気だけど意志が強い、そしてユニークなRBGという人の人柄を良く引き出しています。結構笑えます。まるでドキュメンタリーのお手本のようです。
 差別との戦い、夫婦愛、不屈の精神、様々な学びを得られる普遍的な作品です。RBGという人の存在、マーティンと言う人の存在を知るだけで、多くの人が勇気をもらえるでしょう。

映画『RBG 最強の85才』予告編

 アカデミー賞にノミネートされた映画の主題歌『I'll FIGHT』も名曲です。80年代から渋い曲を書いてきた名シンガーソング・ライターのダイアン・ウォレン、今回も良い曲を書きました。それをグラミー歌手ジェニファー・ハドソンが歌っています。受賞したレディ・ガガのワザとらしい『シャロウ』より、10倍はカッコいい。とにかく、必見のドキュメンタリーです(笑)。
●このPVは映画の予告編よりカッコいいかも。終盤 作者のダイアン・ウォレンがわざわざ出てきたのにも驚いた。

"I’ll Fight" | Jennifer Hudson | Music & Lyrics by Diane Warren (From the Motion Picture ‘RBG’)

『アマゾンから考える資本主義の未来』と『0510再稼働反対!首相官邸前抗議』

 いきなり機嫌が悪くて恐縮ですが(笑)、この国はどうしてこんなにバカが多いのでしょうか?
 園児の列に車が突っ込んだ事故がまた、大騒ぎになってます。確かに悲惨な話です。いたたまれない。
 でも、何が問題なのでしょうか。運転手の問題があるのかないのか。それは分かるけど、逮捕されているから情報は限られている。

 他にも問題はないのでしょうか?事故が起きた場所が危険な場所なのかどうか、また保育園の周りの歩道にはガードレールがあったのか、交通制限をかける余地がなかったのか、そういうことは全く語られない。非常に違和感があります。

 

 日本は先進国の中でも交通事故はそんなに多くないが、歩行者が死亡事故に会う確率は他国と比べて非常に高いそうです。
diamond.jp

 だとしたらこのような悲惨な事故が続く原因は、歩道が狭い、ガードレールが整備されていない、街中で人車分離が進んでいないなどの環境面での未整備が原因である可能性が高い
news.yahoo.co.jp


 欧州では街の中心部に車が入れない都市って一杯あります。日本の歩行者天国はごく限られた繁華街で休日に実施されるだけですよね。欧州の車禁止は歩行者の為、日本の歩行者天国は商売の為、です。
●日本では交通事故の際、歩行者(青)が死ぬ確率が非常に高い。
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www8.cao.go.jp

 ボクは見てませんが、バカな記者が記者会見で保育園の園長先生を泣かしたとか、こんどは逆に『#保育士さん頑張って』とか、挙句の果てには散歩の是非とか、相変わらずピントのずれた話ばかりやっている。子供も犬も散歩するのは当然だろーが!その割に保育士の人の賃上げなんて話は影も形もない(アホか)。

 これが犯人が高齢者だったら、また、あることないこと、集団リンチが始まる
事故を防ぐためにはどうしたらよいか、そんなことはちっとも議論されない。その代わりに行われるのが日本人お得意の人民裁判です。


 普通に考えれば日本人が他国の人より知能が低いとは思いませんが、直ぐ感情に流されるのは間違いない。そして他国より確実にバカばかりのマスコミは国民の感情を煽って視聴率稼ぎばかりやっている。
 かねがねTV朝日とフジTVのインチキさは腹に据えかねていたのですが、最近はNHKまでバカ合戦に参戦してきた。
 交通事故、ピエール瀧改元天皇家、くだらない話題を延々と大騒ぎしている間、法律や税制、国会などもっと大事なニュースは流れない。連休前の鉱工業指数の低下、それに昨日出た3月の名目&実質賃金の低下なんか大問題じゃないの。

鉱工業生産「弱含み」に下方修正 3月0.9%低下 :日本経済新聞

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 かって太平洋戦争やイラク戦争参戦、そして原発事故の反省が未だにまともに行われないのはひどい、と思ってました。
でも、もう判りました。日本人はそういう国民なんです。交通事故ですら事実を直視しようとしないのだから、この国の人たちの多くは思考能力が著しく欠けている、としか言いようがありません。
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 だから今回の悲惨な事故もバカな国民とマスコミが共同で起こしたものです。次の戦争でも政府やマスコミの煽りに、右左関係なく、日本人は簡単に乗せられてしまうでしょう。


この前、アマゾンに行ってきました。
こんなものを見ましたよ~。まず、倉庫用ロボットです。
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 ルンバの親玉みたいですが、この上に棚を載せて縦横無尽に倉庫を走り回るそうです。

 欧米では良く、アマゾンの倉庫の労働が厳しいという話があります。倉庫の作業員が商品を取りに行く歩行距離が1日10キロ以上になるというのです。ただ、アマゾンだから特に厳しいのではなく倉庫業務の内容はアマゾンでも千趣会でもどこの通販も同じです。

 だったら、人間が商品を棚に取りに行くのではなく、ロボットを使って棚を持ってこさせよう、というのがアマゾンです。逆転の発想です。ロボットは出荷データと連動して動いている。仕組みとしては凄い。ある意味 人間に優しい面もあるのかもしれません。ただし、これが導入されると倉庫の雇用は大幅に減る。

アマゾン茨木FCを公開 ロボットが倉庫を駆け巡る

次にペット用給餌機
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 ペットが機械下部のくぼみに口を突っ込むとペットフードが落ちてきます。それだけでなく、中のペットフードが減ってくると自動的にアマゾンへ発注が行く仕組みです。今流行りのIoT製品ですが、商売を逃さないえげつなさには感心します(笑)。

 ボク自身は?と思いますけど、ずぼらなアメリカ人には良いのかもしれません。これからAIスピーカーに話しかけるだけで生活必需品が注文できるようになるみたいですから、日本でも欲しい人は居るかもしれない。ちなみにボクが以前 一緒に暮らしていた犬は甘えん坊で手からご飯をもらいたがるので、こういう機械にはソッポを向くでしょう(笑)。

Echo Dot  第3世代 - スマートスピーカー with Alexa、チャコール

Echo Dot 第3世代 - スマートスピーカー with Alexa、チャコール


 一方 アマゾンは節税でも有名な企業です。日本でも僅かしか法人税を払ってないのは有名ですが、
www.asahi.com
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先日 アメリカでも昨年は所得税を払ってないのに、逆に国から約150億円近くの還付金を受けていた、というニュースがありました。
business.nikkei.com

 還付金の方は設備投資や研究開発へのトランプの法人減税をうまく使ったんですね。ただ設備投資や研究開発への減税は景気や雇用への効果がありますから一概に悪い、とは言えません。良し悪しは別にして、日本でもこのような還付金は大企業も中小企業もバンバン、使っています。

 アマゾンは会社のポリシーとして、所得税を極力払わない。『09年から18年の間に265億ドルの利益を出しているが、この間に納めた所得税は総額7億9100万ドルで、税率にするとわずか3%』、タックス・ヘイブンをうまく使った節税が上手だった、ということです。
*ただしこれもアマゾンだけではありません。アメリカの代表的なフォーチュン500企業のうち2018年の所得税をゼロの企業はGMIBMデルタ航空、電力最大手のデューク・エナジーや石油メジャーのシェブロンなど60社もある。国境を越えたタックスヘイブンへの国際的な対策は急務であることは間違いありません(パナマ文書が暴露されて以降 G18でも話し合われています)
 
 年間売上25兆を超える巨大企業になったアマゾンは何をやろうとしているのか。
 彼らは社員に『自分たちは顧客に世界1の体験を与える企業になる』と宣言して、そのための行動を求めています。それができない社員はいくら利益を上げても認められないそうです。

 顧客のためにコストを抑え、安売りする。利益は極力出さずに儲けたカネは設備投資や研究開発に使ってしまう。税金もなるべく払わない。株主にも配当を払わない。税金や配当を払う金があったら顧客のために使う。それが彼らの考え方です。ついでに『社会から長期間誤解されることも恐れない』と社員に宣言しています。

 彼らは税金も配当も払わず、顧客のために金を使う。勿論 合法ですから文句の言いようがない。法制度(つまり、我々)が彼らの知恵に追いついていないだけです。


 更に目的達成のためなら、優秀な人材を人種や性に関係なく、世界中から連れてきます。日本のアマゾンの廊下を歩くと、男女問わず、エリートサラリーマンみたいな奴からニートみたいな奴、欧米系、インド系、中国系、ターバンを巻いた人、国際色や多様性に溢れていてビックリします。夜の六本木どころではありません(笑)。
六本木ヒルズにいた当時のグーグルの中も見たことあるけど、ホワイトカラー然とした社員ばかりで、あれよりも遥かに多様だと思う。
 ちなみに『Amazonは、マイノリティ/女性/障がい者/退役軍人/性同一性/性的指向の雇用機会均等の積極的な差別是正措置を推進する』とホームページではっきり宣言しています。

 そうして集めた優秀な人材とありあまる金でロボットやAI、ドローン、挙句の果てには月着陸船まで、新技術をバンバン開発、消費者満足を向上させる。単純に利益だけを志向する資本主義とは違う、新たな資本主義と言えるかもしれない。
●アマゾンのCEOジェフ・ベゾスは今日 開発した月着陸船を発表しました。
www.nikkei.com

Jeff Bezos Unveils Blue Origin's New 'Blue Moon' Lunar Lander | Mach | NBC News


 誰だって安くて便利なものは歓迎です。その一方 日本でも独禁法違反で取り調べを受けたように彼らの商売は超エゲツない。アマゾンに納入する問屋さんは理詰めで苛められているようです(笑)。アマゾンの影響で本屋もバンバン潰れたし、トイザらスのような巨大おもちゃ屋も潰れたけれど、そのアマゾンを消費者が支持している。

 世の常としてアマゾンを非難する人は多いけれど、表面だけしか見ていなかったり、税金などの仕組みを理解していないだけの人の方が多い。実際 アマゾンから恩恵を被っている人の方がはるかに多いんですから。アマゾンのやり方に問題もあるのは確かだけど、実際 ボクの生活も便利になったし、何よりも貴重な時間の節約になっている。

 『消費者の為なら税金も配当も払わず、新技術を開発し、ライバルを潰して安売りと利便性を提供する』。これをどう考えたらよいのか。ボクはまだ結論を出すことが出来ません。独禁法の適用は考えた方が良いと思うけれど。少なくとも日本共産党みたいに『全て大企業が悪い』みたいな単純なアジテーション(笑)で判断できないのは確かです。

 そこには安売り、テクノロジー、消費者の欲望、国民国家の限界、多様性、独占、様々な問題があります。アマゾンと言う存在は資本主義の未来をどう考えるか、と言う問いを一人一人に突き付けている

 複雑な世の中です。簡単に割り切れないことばかりデマやフェイクニュースが提供する安易な答に走ったりせず、我々は世界の複雑さに耐えられる知的体力を鍛えなければいけないのでしょう。



 ということで、今週も官邸前へ 
 連休が終わってようやく、天気が良くなってきました。1年で一番過ごしやすい陽気かもしれません。今日午後6時の気温は23度、抗議の参加者は3〜400人くらい?
 爽やかな夜風と参加者の温かな雰囲気で、気持ちが良い夜でしたよ。
●抗議風景


 経団連の中西↓が言っているように『ゾンビ企業や事業に人を張り付けておくことは、その人たちを不幸にする』と、ボクも思います。商店街然り、農業然り。
 じゃあ、原発事業は何なんだ日本のエリート層、政治家、役人の多くは結局は他人事、無責任です。感情に走る国民も含めて、これでは日本が衰退の道を歩むのはムリもないと思います。