特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

BS1スペシャル「ラップと知事選 沖縄 若者たちの声」と映画『ボヘミアン・ラプソディ』

この土日は爽やかなお天気でした。
それでもボクの週末は映画と1週間撮りだめていたTV番組を早回しで見るのが日課です(笑)。今週は金曜官邸前抗議へ行ってる間に録画しておいたNHKの番組を見ました。
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先日の沖縄県知事選を控えて、沖縄のライブハウスで活動するラッパーたち数人に密着、政治や基地、生活に関する彼らの声をルポにしたものです。ラッパーと言っても勿論 皆 無名の子たちです。

若者たちの政治や基地に関する意見は様々です。政治的意見はともかく、米軍基地が無くなって欲しいというのが大抵の人の思いじゃないかと想像していたのですが、番組の冒頭、『自分がラップを始めたのは基地の米兵と知り合ったからだ、基地がなければ沖縄じゃない』という子が出てきて驚きました。

他にも、そういう意見って番組の中で結構 出てきました。基地で潤っているという経済的な理由なら判りますが、それだけじゃないんですね。もちろん身内や知り合いが被害を受けたような子は若くても強い拒否感はあるんですが、基地に対する抵抗感そのものがない若い世代って多い。もちろん基地より、経済的な期待を優先させて佐喜眞候補に投票する、という子もいます。
先日の知事選では10代、20代は佐喜眞候補に入れた方が多かったというのも判る気がします。もちろん、この番組にも、基地は絶対に嫌だという若いラッパーも出てくるんですけどね。
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ただし、番組で取り上げられたラッパーたちは全員男だった、ということは割り引かなければなりません。ラップというのはマッチョ的な文化を体現している面があって、それが正直 ダメなところです。男に選挙権なんか要らないんだよ、どうせバカばかりなんだから(笑)。
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2018沖縄県知事選 開票ライブ

一方 ラッパーの子がたむろする、基地の周辺で復帰前からバーを営業している店主(下写真右)なんかは『基地も米兵もお断り』という姿勢が明快です。そういう人は玉城候補のポスターを店に貼っている(笑)。ただし、基地前の商店街自体 もう終焉をむかえようとしている。

ラップの傍ら、配達の仕事をしている子は配達先の店でお年寄りの話を聞くことが好きだそうです。おばあさんから、戦中のことを聞かされると『うーん』となる↓。こういう機会がある子はまた違った考えを持つのかもしれません。

若者たちは声高にもならず、かといって遠慮もせず、自分たちの思いを率直に語っていて、面白かった。基地に賛成の子もいるし、反対する若い子もいる。基地に賛成だった子が選挙結果の大差を見て驚くシーンもあります。その子は『みんな、何かを変えたいと思って、玉城候補に投票したのかな』と呟きます。


この番組で取り上げられているのは若い男性、しかも、やや特殊な『ラッパー』というバイアスがありますから、これが若い人たちの意見全般とは受け取ることはできません。
その上で思ったのは、彼らの考えていることは結構 保守的だなあ、ということです。政治的にどうこうということではありません。既存の秩序や権威、権力が彼らの中で既成のものになってしまっている。

ボクの感覚だと『ロックやラップというものは権力と戦うための武器の一つ』(もちろん愉しみのためのものでもあります)です。ところが彼らは悪ぶっているポーズはしても、『地元万歳』というコンテキストに簡単に絡み取られてしまっている。ラップのふりをした日本語フォークかって(笑)、ボクなんかは思ってしまう。もちろん辺野古に座り込んでいる基地反対派の人たちにも旧来の反対運動という、これもまた既成の権威に疑問を持たない、悪い意味で保守的な人は多いとは思います。
●この子は父が米兵、継父などに虐待を受けて苦労したそうです。

地方の若い人の中には、保守的な『マイルド・ヤンキー』が増えてきているという説もありますが、そういう感覚って確かにあるのかもしれません。地元で仲良く仲間たちとつるんで暮らしていければ満足で、それ以上のことは考えたこともないし、考えても仕方ない。地方だってイオンに行けば大抵のものは揃うし、それで飢えるという訳でもありません。田舎のマイルド・ヤンキーのほうが竹中平蔵のような『金儲け命』の新自由主義者よりは、人間として健全なのかもしれない。

問題は、今の世の中が若い人たちの可能性を狭めてしまっていることだと思います。自分の身の回りとは違う生き方がある、違う価値観がある、ということを先行する世代が示すことをできていない。元来 そういうことを教えてくれるのがロックであり、ラップだと思うのですが、経済的な面だけでなく、文化的な面でも今の大人たちは脆弱だし、閉塞して生きているのでしょう。

ドキュメンタリーとして大変面白かったです。一方的な基地反対の観点で作られたものより、はるかに内容が豊かです。あまり予算はかかってないですが、NHKも一部は頑張っている。色々なことを考えさせる番組でした(25日の日曜朝に再放送があります)。
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ということで、日比谷で映画『ボヘミアン・ラプソディ


ボヘミアン・ラプソディ」、「伝説のチャンピオン」、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」といったヒット曲で知られるロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記ドラマ。


まず最初に、ボクはクイーンというバンドはファンではありません。大体のシングル曲は知ってるし、良いなと思う曲もいくつかあるけれど、本気で好きな曲はボウイとデュエットした『アンダー・プレッシャー』くらいです。ハードロックは嫌いだし、大仰な音楽も嫌い、本作の主人公、フレディ・マーキュリーもうまい歌手だとは思うけど、歌い方が下品なので、あまり好きじゃありません。

Queen & David Bowie - Under Pressure (Classic Queen Mix)

尚且つ、クイーンは人種差別で各国からボイコットされていた当時の南アフリカで公演をやっています。ロックの世界でも南アボイコットの動きが広がっていた時に、です。ダリル・ホールホール&オーツは『ボイコットを破ったクイーンとロッド・スチュワートはクズ』とカメラの前で公言していましたけど、当時クイーンはずいぶん非難されました。日本人は無知が多いから意識した人は少なかったみたいだけど、ボクはこの点は許しがたいと思っています。
●80年代、南アの人種差別に抗議する有名アーティストが集まって作ったアンチ・アパルトヘイト・ソング『SUN CITY』。もちろんクイーンが入っているわけない(笑)。

Artists United Against Apartheid - Sun City (music video)


だから、この映画も最初はスルーしようと思ってたくらいです。デモまでの時間潰し、それに名作『シング・ストリート 未来へのうた』のヒロイン、ルーシー・ボイントンちゃんが出ているので見に行っただけなんです(笑)。



ということを抜きにして(笑)、映画としてはかなり面白い作品でした。監督は自身もゲイのブライアン・シンガー。Xメン・シリーズをマイノリティの葛藤と差別への抵抗として描いた監督です。
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まず映画が始まる前 おなじみの20世紀フォックスのファンファーレ。これがエレキギター、それもブライアン・メイっぽいギターの音色で奏でられます。おおっ!凝ってるなあ。
舞台は1970年のロンドン。主人公のフレディ・マーキュリーは、本名はファルーク・バルサラ。アフリカのザンジバル島生まれのインド系です。アート・スクールを卒業後、空港の荷物係として働いていました。ゾロアスター教徒の彼の一家はインドでの宗教弾圧を恐れてザンジバル島に移住、さらにそこでも宗教弾圧を受けてロンドンに移住してきます。''PAKI''と周囲からはパキスタン人扱いされ、しかも歯が出ていたことから、強いコンプレックスを抱いています。生まれ育った名前も捨て、フレディ・マーキュリーというイギリス風の名前に改名するほどです。しかし、彼には美声と声量という武器がありました。
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フレディはボーカルが脱退したばかりのスマイルというバンドに加入します。そのバンドにはギタリストのブライアン・メイ、ドラムのロジャー・テイラーが在籍していました。そこにベースのジョン・ディーコンが加わって、『クイーン』が結成されます。と、同時にフレディは洋服屋の店員をしていたメアリー・オースティン(ルーシー・ボイントン)と知り合い、同棲を始めます。
●メアリー(ルーシー・ボイントン)(右)とフレディ(ラミ・マリック)


ここから、皆さんもご存知のクイーンのスターダム街道が始まります。次から次へと流れるヒット曲を聞きながら、裏側のエピソード、レコーディングやレコード会社との関係を見るのは楽しかったです。約6分間の『ボヘミアン・ラプソディ』がシングルとしては長すぎるとしてレコード会社と揉めるくだりは、やはり面白い。クイーンの面々の強弁より、『マッカーサー・パークドナ・サマーの名曲)は7分だぞ』と弁護士が口をはさむところを入れたのがうまいなあ、と思いました。『マッカーサー・パーク』って『ボヘミアン・ラプソディ』をはるかに凌ぐ名曲だし、いかにも弁護士などが好みそうなオーセンティックな曲なんです。
この弁護士は後日クイーンのマネジメントを引き受け、悪徳マネージャーのせいで空中分解しかけた彼らを救います。いずれにしてもクイーンの曲は感動するほどではないにしろ、ポップだし、誰でも聞いたことがあるものばかり、大画面で見るのは楽しいです。
●'大ヒットした'WE WILL ROCK YOU''って、こうやって作ったんだって思いました。
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制作にクイーンのメンバーが入っているから美化しているのかもしれませんが、クイーンというバンドはずいぶん性格が良い人たちだったんだな、と思いました。天才肌だが暴走しかねないフレディを常識人の他のメンバーが宥めすかして、曲作りもビジネスも何とかまとめていく。ブライアン・メイ天文学博士、ロジャー・テイラーは歯医者、ジョン・ディーコンは電気工学と、ロックバンドには珍しくインテリ揃いだったからでしょうか。
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スターになったクイーンですが、フレディとメアリーの仲は破局を迎えます。フレディは彼なりに一生懸命 メアリーを愛しているのですが、心の底では男性を求めていることがメアリーには判ってしまう。彼はゲイ、だと。実際には両性愛者だったという話もありますが、この映画ではどちらかはわかりません。
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この映画でのルーシー・ボイントンちゃんはとにかく美しくて、画面の中で文字通りかがやいています。後光が差してます(笑)。いいなあ。

●こちらは本物のフレディとメアリー。似てるんでびっくり


2人は友人関係に戻り、フレディはメアリーのアパートの隣に大豪邸を建てます。飼っている猫たちに一つ一つ部屋をあてがいながら、一人で暮らすフレディ。夜になると彼は窓から、メアリーの部屋の明かりを見て孤独にさいなまれます。心ではメアリーを忘れることができないのです。フレディに興味がないボクでも、ここいら辺の描写はかなり、ぐっときました。判るなーと思った。
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やがてフレディは豪邸で夜な夜なパーティーを開くようになり、クスリ、アルコール、男に溺れていきます。悪徳マネージャーはそれを止めるどころか、手助けする始末。真面目な他のメンバー(笑)(?)とも徐々に亀裂が生じ、クイーンは解散状態になります。


やがて史上最大のチャリティ・コンサート、ライブ・エイドが企画され、クイーンにも出演依頼が来ます。何年も一緒に演奏していない彼らはどうするでしょうか。フレディは立ち直ることができるでしょうか。
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お話しは事実を基にしながらも、かなり脚色が入っています。そもそもフレディが自分がエイズであることに気が付くのはライブ・エイドのあとのようですし、両性愛者というより同性愛者として描かれているし、都合の悪い南アの話なんかも触れられてない。だけど、こういう物語にしたのは映画としては大正解。クイーン、フレディ・マーキュリーのある面だけを抽出して、自分のアイデンティティとコンプレックスに悩むマイノリティの物語に仕立て上げたことで、猛烈に感情移入できるお話しに仕上がっています。

日本の観客としては当初クイーンは欧米より先に日本で大人気になったこととか、親日家になったフレディの家に日本庭園があったとか、お忍びで歌舞伎町のゲイバーに通ってた話とかも入れてくれると面白かったですが、そこはスルー。ただ映画ではフレディの家に金閣寺のお札が貼ってありました(笑)。
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ライブ・エイドの画面は、あとで実際の映像と見比べてみましたが、本当にそっくりだし、本物と遜色ない。歴史に残る名演と言われているそうですが(ボクはそこまでとは思わない)、映画では大画面で見られる分だけ、本物より迫力があるかもしれない。1分や2分の演奏シーンじゃなく、20分近く再現したんですから、凄いですよ。すごい。音楽映画の歴史に残る名場面ではあるかもしれません。
●これがホントのライブエイドでのクイーンの演奏風景。日本ではフジTVがCMで切り刻んでライブエイドを実況し、滅茶苦茶にしました。許しがたい犯罪行為です。

Queen - Live at LIVE AID 1985/07/13 [Best Version]

フレディを演じたラミ・マリックという人は大したもんです。歌唱シーンは本物のテープだったり、プロのそっくりさん歌手を使っているようですが、それでもちゃんと歌えるし、フレディのド派手なアクションも完コピできている。なおかつ民族や宗教、セクシュアリティで悩むマイノリティの孤独を壮絶に表現している。
他のメンバーを演じた役者さんもすごいです。特にブライアン・メイ役の人は本人より本人じゃないかと思った(笑)。そして光り輝くメアリー役ルーシー・ボイントンちゃんがフレディの復活の鍵を握っているのも嬉しい(笑)。お互いに新たな恋人ができてもフレディとメアリーは生涯友人関係を続け、フレディは多額の財産をメアリーに残したそうです。
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とにかく面白いし、盛り上がる青春ドラマです。『ボヘミアン・ラプソディ』や『ウィ・アー・ザ・チャンピオン』がマイノリティであるフレディの心境と重ね合せたものになっているところは物語に深みを出しています。エンディングは病が進む中、死を目前にしたフレディの実質的なラスト・メッセージだった『THE SHOW MUST GO ON』(それでもショ―を続けなけれならない)を中心にすれば、もっと盛り上がるとは思いましたが、些細なことかもしれません。

Queen - The Show Must Go On (Official Video)


誰でも聞いたことがある大ヒット曲を大画面、大音量で見ながら、役者さんたちの熱演と判りやすい物語に涙する。実際のクイーンはそれ程 好きじゃありませんが(笑)、この作品はエンターテイメントとしてはかなり質が高い、面白かったです。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』最新予告編が世界同時解禁!

読書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 』と『1116再稼働反対!首相官邸前抗議』

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フランキー堺主演、川島雄三監督の1957年の名画『幕末太陽傳』の舞台、御殿山の昨日の光景です。東京もだんだんと木の葉が色づき始めています。

幕末太陽傳 デジタル修復版 Blu-ray プレミアム・エディション

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11月の半ばを迎えて、めっきり寒くなりました。もう観念して冬服を出します(笑)。ったく、年の瀬が押し迫るにつけ憂鬱になります。宴会の予定が入るからです。せっかく仕事が終わっても、全く面白くない時間を2時間も過ごさなければならないのが耐えられない。ボクはどうしても逃げられないものを3つくらい出るだけですが、それだけでも、今からウンザリ。宴会という言葉を聞くだけで、心まで寒くなります。ホント、人間と関わらないですむ山の中で暮らしたいです。でも寒いのも 嫌~(笑)。
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今週 発表されたGDPがマイナス成長だったことが話題になってますけど、
www.nikkei.com

今まで景気を支えてきた輸出がダメ、

もちろん個人消費もダメ、

2期ぶりマイナス成長 7~9月期GDPをグラフ解説 :日本経済新聞

マスコミは災害などによる一時的な減速とか言ってますけど、災害と外需は関係ありません(笑)。さらに米中の貿易戦争やイギリスのEU離脱にしても、これからも外需はあまり良さそうな感じがしません。かといって、金持ち優遇政策内需はずっとダメ(笑)。今後 日本経済はどうしたらいいんでしょうか!(笑)。
しかもこれから消費増税。もちろん累進税率や相続税大幅アップの方が優先すべきですけど、消費増税自体は仕方がないとボクは思います。でも景気は悪化する。それをどこかでやらなければならないのなら、野党より安倍晋三にやらせて汚名をかぶせた方が良い。いずれにしても、前途に暗雲が漂う年の瀬です。
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さて、読書の感想です。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

世界22か国で刊行され、日本でも10月の朝日、日経、読売、信濃毎日、週刊文春9/27号、文藝春秋11月号と各紙の書評で取り上げられる話題の本。実際 本屋でもベストセラーとして、ずっと平積みされていて、もう10万部を超えているそうです。7月に発売されたこの本、ビジネス書か~と思って、最初は手が伸びなかったのですが、読んでみたら非常に面白かったし、すらすら読めた。これはぜひご紹介したい(笑)。

著者はNY大のビジネススクールマーケティングを教える教授です。いくつもの企業を興した起業家でもあり、NYタイムスやゲートウェイ・コンピュータ(もう潰れた)の社外取締役を務めたキャリアの持ち主でもあります。日本の学者に良く居るように、ニートのように学校に引きこもって口だけ偉そうな連中とは違う。

GAFAとはGoogleAppleFacebookAmazonを略した言葉です。この本は以下のことを述べています。
1.GAFAはなぜ、これほどの力を得たのか
2.GAFAは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
3.GAFAが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか

GAFAが例えられた四騎士とは、聖書の黙示録に出てくる世界の終わりをもたらす四騎士のことです。面白いのでアマゾンの本紹介に出ていたイラストを引用します。
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これらの企業は2017年の企業の株式時価総額(会社の価格です)の1位(アップル)2位(グーグル)4位(アマゾン)5位(フェイスブックを占めています(3位はマイクロソフト)。GEもエクソンも武器製造企業も自動車会社も製薬会社も全く目じゃありません。ちなみに2006年は1位がエクソン(石油)、2位がGE,、3位がマイクロソフト、4位がシティ・コープ(金融)、5位がバンカメ(金融)だったそうです。10年で会社も業種も全く変わってしまった。


GAFAは世界中何十億人もの人々に利用され、人々に利便性をもたらしています。同時に自分たちも莫大な収益を上げると同時に、参入した業界、産業、大企業を破壊しています(デジタル・ディスラプション)。PCや電話機のメーカーはアップルに、マスコミや広告会社はグーグルに、小売業はアマゾンに破壊されたり、業界ごと消滅させられたりしています。ボクの勤務先も大丈夫か?(笑)。最初は限られた企業や業界だけでしたが、これからは銀行などの金融、自動車会社、医療、保険や教育など全然考えられなかった業界まで変えていくでしょう。

例えば 全米で300万人(全労働者の2.6%)いるというレジ打ちの人はアマゾンの無人店舗技術が普及すれば雇用がなくなります。日本でも赤羽駅の紀ノ国屋で実験している、アレです。もう10年くらい経ったら人間の販売員なんて、高級店以外では滅多にお目にかかれなくなるかもしれません
アマゾンだけでなく、トランプのロシア疑惑だってフェイスブックのデータをハッキングし悪用されたというのが実態です。データを悪用したケンブリッジ・アナリティカのバックには極右の大金持ちがいる、という話もある。GAFAは我々の生活や雇用だけでなく、国や社会の形だって変えてしまうかもしれない。確かに彼らは世界を変えつつある。聖書のように四騎士は世界に終わりをもたらすのでしょうか。
赤羽駅無人店舗(アマゾンではなくJRがやっています。仕組みはアマゾンとほぼ同じ)

JR赤羽駅のAI無人店舗を体験してみた - ITmedia ビジネスオンライン

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JR東、赤羽駅に無人決済店舗 カメラが客を追跡 - ITmedia NEWS


GAFAがなぜ、これほどの力を得たのか。デジタルという技術の特性、また彼らが技術をビジネスに結び付けることに長けていたことに加えて、著者は『GAFAは脳、心、性器を刺激している』と言います。グーグルやアマゾンは検索や情報量で頭脳を刺激し、競合より遥かに価格が高いがデザインに優れたアップル製品は持っているだけで持ち主がセクシーに見える、つまり性器を刺激する。フェイスブックは『いいね』や『つながり』で人間の心を刺激する。確かにこれは強い。消費者は自ら進んで服従する、とまでは言いませんが、生活になくてはならないものになっている。


GAFAは世界をどのように変えたのでしょうか。著者は端的に言います。アメリカは300万人の領主と3億人の農奴になる』です。デジタルの世界は勝者総取りです。それもグローバルに。著者によると例えばタクシー配車アプリのウーバーの時価総額は700億ドル、社員は8000人、一人当たり9億円弱の資産を持っていることになります(実際は持ち株数での配分ですから、現実とは異なります)。一方 ウーバーで使われる運転手は200万人、時給は平均8ドル弱(約1000円)。比較対象としては正確ではありませんが、分かりやすい例えです。因みに今のところ 役所の石頭の規制のおかげで日本ではウーバーの進出が失敗しているのは良かったなーと思っています。


違う面もあります。アマゾンは『地球上で最も消費者を大事にする企業』というのが企業理念、掟です。その理念に基づいて、彼らは利益を極力 出しません。税金も極力払わない(日本でも合法的に消費税や法人税を払ってないし、アメリカでも殆ど払っていないそうです)、株主にも配当を出さない。赤字を出さない程度の利益にして、あとは消費者のための投資に回してしまいます。莫大な品揃えと安売りの源資、世界最多のコンピューター、1000以上もの物流倉庫の建設に、品出しロボットを開発会社ごと買収、無人店舗技術やドローン配送、音声AIの開発etc。

今やマイクロソフトのWIN10パソコンには全てアマゾンの音声AIが入っています。アマゾンは服飾業界にも参入していますが、洋服会社(J・クルー)の社長が『金を儲けるつもりがない大企業と競争なんかできない』とぼやいています。利益を出さない、配当も払わない、税金も払わない、確かにそんな企業とは競争なんかできません

ボクは、もしかしたらこれは新しい資本主義の一種ではないか、とすら思います。利益も配当も出さないのだから、大企業や資本家の搾取とか、剰余価値とか、マルクスが言ってたことなんか当てはまらない
アマゾンは何を目指しているのだろう?もしかして世界経済の征服?(笑)。こんな姿勢を著者は、『べゾス(アマゾンの創業者でありトップ)、本当は何を目指しているのか、早く言え』と述べています。

彼らの理念、『地球上で最も消費者を大事にする企業』は綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、社内では確かに徹底されているようです。いくら営業成績が良くても、理念に合ってないと判断されたら直ぐクビ、みたいです。ただし『消費者にとって大事なもの』はアマゾンが決める。そこが恐ろしい。彼らはマスコミの批判なんか恐れない。金があるから、関係ない。そういう意味でも恐ろしい。

ちなみにアマゾンの創業者のジェフ・べゾスは給料は年1000万円程度しかもらってないことで有名です。あの会社でしたら平社員なみでしょう。しかし彼は世界1の大金持ち。アマゾンの株は配当を出さないにも関わらず、値上がりを続けているからです。彼は自費でウォーターゲ―ト事件で有名な新聞ワシントン・ポストを買収、政府批判を続ける同紙の姿勢を支持しているおかげで、トランプからは度々非難されています(笑)。


しかし GAFAがいつまでも続くとは限らない、とも著者は言っています。変化が速い世界ですが、その変化は時を経るにつれて一層早くなっている。IT業界は以前はIBMが絶対君主でしたが、HPにとってかわられ、マイクロソフトにとってかわられ、今やGAFAの時代です。それがいつまで続くかは判らない。著者は高級ブランドという無形資産を持つアップルが最も長続きするのではないか、と言っていますが、それは判りません。

ではGAFAが作り替えた世界で我々はどうしたらよいのでしょうか。著者は『現代は超優秀な人間にとっては最高だけど、平凡な人間にとっては最悪』と言います。優秀じゃダメなんですね。超優秀じゃないと、あとは十把一絡げ。『数万人の領主と数億人の農奴』というわけです。
このような時代に生き残るためには、個人の精神的な成熟に加えて、ハイレベルな教育、ニッチ分野を探すこと、友人関係、新しいことを受け入れる&四騎士を使いこなすこと、好きなことではなく得意なことで仕事をすること、組織ではなく個人を大事にすること、様々なことを挙げています。

著者は『四騎士の目的は金儲けだ』と言いつつも、最後に『四騎士と闘うべきか、悪とレッテルを貼るべきか、それは分からない。すくなくとも彼らを理解することが必要だ』と述べています。
ボクも、それは100%同感です。否定するにしても、良い点を認めるにしても、まず四騎士のような超巨大デジタル企業の存在を理解しなければ何もできない。あと、最近EUがデータ保護規制を作ったり(GDPR)、イギリスがデジタル課税をするとか言ってますが、法的な不備、特に独禁法の強化は日本も含めて世界的な急務だと思います。我々がGAFAに対抗する武器は税制と独禁法、あと連中に踊らされないよう一人一人の知性で対抗するしかありません


著者はビジネスを理解しつつも、かなりリベラルです。日本にはリベラルでありながら実務を知っている人って殆どいないから羨ましい限りです。話も面白い。特に彼がNYタイムズ社外取締役としてグーグルに対抗しようとしたが社内の抵抗で挫折した話なんか非常に面白かったです。朝日も毎日もNYタイムズをお手本にしてデジタル時代に生き残ろうとしているみたいですが、この話を読むとまるっきりのバカに見える。
400ページと厚い本ですが、難しいところもないのでスラスラ読めます。面白かったです。
●このこと一つとっても、日本の将来はお先真っ暗なことが判ります。この国が再建できるとしても、右でも左でも、こういう無能なジジイ連中が棺桶に入ってからですね。

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https://www.theguardian.com/world/2018/nov/15/japan-cyber-security-ministernever-used-computer-yoshitaka-sakurada
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と、いうことで、今週も金曜官邸前抗議へ。
今朝の東京は10度を切りました。10月ですら暑い日が多かったのがウソのようです。今年の秋は短かい、のかもしれません。午後6時の気温は16度、参加者は500人。
●抗議風景

相変らずおしどりマコが講演会で福島に関するデマを振りまいているようなので、その模様を記したtogetterを晒しておきます。今も福島で『奇形玉ねぎ』が発生していると吹聴しているそうです。

引用元のtogetterを見ると、講演の内容を知った人が、福島市の農協・福島県北部農林事務所・サカタのタネに問い合わせたところ、奇形でも何でもないということだったそうです。立憲民主党は、福島苛めで商売をする詐欺師参院選の候補に担いでよいのでしょうか??
原発だけではありませんが、我々が本当に民主主義を求めるなら、こういうデマを一つ一つ潰していくことが必要だと思うんです。反原発デマで商売をしているおしどりマコは、LGBTに関するデマを振りまいて商売をしている杉田水脈生活保護に関するデマを振りまいて商売をしている片山さつきと まさに同類じゃありませんか。

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引用元 https://togetter.com/li/1281486

『1111原発ゼロ☆国会前集会』と映画『10年 Ten Years Japan』

 週末は友達と原宿に行ってきました。
 自家製のクラフトビール&燻製料理のお店です。と言っても、ボクはビールはあんまり好きじゃないので他のモノを飲んでた。

●セロリ入りのブラディ・マリー。グラスの縁にはスモークして香りをつけた塩

●スモークした肉の盛り合わせ。エスプレッソで肉を燻製すると柔らかくなるそうです。

 夜が更けるにつれて、テーブルが全て外人で埋まったのはびっくりしました。日本人客は我々だけ(笑)。六本木ならそういうこともありますけど、原宿だから、ちょっと驚きました。ここに限らず、安くて美味しい店って外人比率が高いことが多い。彼らはなんだかんだ言って鼻が利く。
 結局 日本人がアホってことなのか、単に彼らがカロリーの高い料理を求めているからなんでしょうか(笑)。

店中 外人だらけ。植民地状態(笑)。




日曜は、日比谷で映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見た後、国会前へ行ってきました。

 良いお天気で散歩日和でした。日比谷から歩いて15分くらい、国会前に通じる歩道にはバカみたいに警官が厳重なゲートを作ってました。ホント、税金の無駄遣いです。金返せ
 参加者は2500人。相変らずボクより年配の人が多いです。この日 自分が着ていた真っ赤なセーターが場違いに感じる(笑)。着いたときは上智の中野教授がしゃべっているところでした。

 まあ、他人の話、特に政治家の話とかはあまり興味ないんですけど(笑)、維新と国民民主以外の野党が提出した原発ゼロ法案が今国会で自公に審議拒否されている、ということだけは判りました。まともに答弁も出来なかったり、スキャンダルだらけの大臣が居座っているのも含め、やっぱりこれだけ与野党議席数がかけ離れていることが国会の自浄能力を失わせているんでしょうね。自民党の支持者も含め、これは国民全体にとって不幸なことです。
●順に共産党の吉良ちゃん、立憲民主の山崎氏(原発ゼロの会)、社民党の福島氏

 かといって、投票したくなるような野党でもない、のも確かなんですが(笑)、鼻をつまんで投票するしかありません。それにしても『野党は共闘』も良いんですけど、もう飽きた(笑)。もちろんそれすら成り立ってない現状はあるにしても、野党共闘なんて最低条件、更に新たなコンテンツ、旗印が必要です。

 この日 立憲民主の山崎氏が『原発が日本経済の足を引っ張っている』と述べてましたけど、まさにその通りで、短期的には原発のコストの電気代への転嫁や巨額の補助金、長期的には産業構造の転換を遅らせているのは事実です。それこそ財界だって、この点は納得できる人も多いはずです。次の選挙にそなえて、経済政策と共に、原発の害悪を具体的に訴えてもらいたいものです。

と、いうことで、新宿で映画『10年 Ten Years Japan
tenyearsjapan.com



『高齢化問題』、『AI教育』、『データ社会』、『原発事故』、『徴兵制』。日本の10年後を描いた5つの短編で構成される物語。太賀、池脇千鶴國村隼、杉村花などが出演。

万引き家族』の是枝裕和監督が総合監修を担当したオムニバス作品。日本の10年後をテーマにした17~18分の短編を5人の新人監督が担当しています。ボクは見ませんでしたが11月6日のNHK朝7時のニュースでも、この作品が紹介されていました。朝7時のニュースは来日時に黒塗り文書を批判するポスターを貼ったケンドリック・ラマ―のインタビューを流すなど頑張ってます。


作品は順番に、厚労省が75歳以上の老人の安楽死を推奨する制度と勧誘担当者を描いた『PLAN75』、AIシステムで勉強だけでなく行動まで管理される小学生と用務員を描いた『いたずら同盟』、母の生前のデータが入力されたデジタル遺産をハッキングした女子校生を描いた『DATA』、原発事故で地上が汚染され、人々が地下で暮らすようになった中で、地上の世界を夢見る『その空気は見えない』、徴兵制が導入され、告知のポスター制作を担当する広告代理店の青年を描いた『美しい国』の5つです。
●『DATA』。父と二人暮らしの女子高生(杉村花)は母の生前のデータを保管した「デジタル遺産」をハッキングし、母の秘密を探ろうとします。


超高齢化と安楽死、AIによる管理教育、デジタル遺産、原発事故、徴兵制、近未来の日本を想像するとこうなるのでしょうか(泣)。監督は別々ですが、どの作品もショッキングなテーマを淡々と、間接的に描いています。
●『いたずら同盟』。勉強から遊びまで、すべてがAIに管理された学校で用務員(國村隼)は子供たちを見守っています。


ボクは75歳以上の老人の安楽死が国策になったのを描いた『PLAN75』が一番、面白かったです。苦しまない方法で、国が葬儀や墓の世話、支度金までくれて安楽死させてくれる。これを見てると正直『自分も応募しちゃうかも』と思ってしまいました。公的扶助に頼らざるを得ない低所得層をターゲットに厚労省安楽死政策を推し進めるという設定は、いかにも維新や竹中平蔵みたいな日本のバカな新自由主義者が思いつきそうです。お話は、普段は安楽死を勧誘している厚労省の担当者が認知症になった義母を抱えたときにどうするか、というものです。
●『PLAN75』。10年後 日本では75歳以上の老人の安楽死が国策になります(1枚目)。厚労省の勧誘担当は仕事に励むのですが(2枚目)、認知症になった義母を安楽死させようとする妻を懸命に止めようとします(3枚目)

美しい国』ではしょっちゅうミサイル警報が鳴る日本が描かれています。今でも自衛隊は定員の7割程度しか充足しておらず、特に兵員が足りないそうです。徴兵制、もしくは経済的徴兵制をやりたいと思っている政治家や役人は結構いるでしょう。連中は自分たちは特別、戦場へ行かなくて済むと思ってますからね。
映画は徴兵制のキャンペーンを担当する広告会社の若手社員を描きます。徴兵制のポスターを貼る下請け業者の人たちが、いつの間にか中高年ばかりになっている、そんな日本が描かれます。
●『美しい国』。徴兵制が施行された日本。徴兵制をPRする代理店担当者はデザイナーの大家に勧誘ポスターの変更を頼みに行きますが。

技術の進歩に格差の拡大、自分の利益が大事な政治家に、差別や感情に流される割には忘れっぽいバカ国民。何よりも環境の変化のスピードが速すぎる。日本の現状をみれば 楽観的な未来より、悲観的な未来が思い浮かびます。人にもよるかもしれませんが、少なくともボクはそう思う。長期的には判りませんが、10年や20年先の短期では結構厳しそうです。
是枝監督もそう感じているのだと思いますが、それでも一つくらいは未来の希望を描いた作品があっても良かったとは思います。人間のほとんどの活動がデジタル化されて保管される『DATA』や新たな原発事故後の日本を描いた『その空気は見えない』がそうなのかもしれませんが、作品としてやや力不足かも。
●『その空気は見えない』では池脇千鶴が母親役を熱演。新たな原発事故で地上は汚染され、人々は地下で暮らしています。が、子供にとっては酷な環境でした。

普通に考えれば日本の将来はお先真っ暗です。少子高齢化で市場は縮小、科学技術は中国やインドにも負けつつあり、それに輪をかけて政治はまるでダメ。与野党問わず、無能な政治家や腐敗した役人ばかりが目につきます。国民は政治に関心を示さないばかりか、狭い殻に閉じこもって排他的になるばかり。
それでも自分の周囲を見渡せば、身近なところにも明るい兆しも転がっています。確かに大変な時代ですが、自分自身が変わる切っ掛けを探してみるのも良いかもしれません。自分たち一人一人が変わっていくことが、時代が変わる切っ掛けでもあるのではないか。徹底的にパーソナルな事柄を描いたこの映画を見てそう思いました。

十年 Ten Years Japan 【2018】 映画予告編