特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

アメリカの中間選挙と映画『華氏119』

今回から、新しいブログになりました。
旧ブログ(はてなダイアリー)からのインポートは順番待ちだったし、ブログの設定も何だかんだ1週間かかりました。いじらなければ問題ないんですが、フォントを大きくしたり、少しは見やすいものにしたかったのです。まだ新ブログの使い方も慣れてないのですが、内容も含めて試行錯誤をしながらやっていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

毎週 恒例の金曜官邸前抗議は日曜日に大規模抗議があるので今週はお休みです。まあ、集会とかボクはあまり好きじゃないです。等身大の生の声ならともかく、マヌケな政治家や独りよがりの活動家の話なんか聞いても時間がもったいない。予定調和だったり、ヒステリックな原発廃止バカ話を聞いても得るものはありません。ま、こちらの模様は来週に。


さてアメリカの中間選挙は今回はほぼマスコミの予想通りになりました(笑)。上院が共和党、下院が民主党過半数共和党過半数を取った上院は圧倒的に地方部ばかりでしたので、もともと民主党が勝つのはムリでした。ほぼ順当な結果でしょう。
WSJの記事はこう言っています。
diamond.jp

民主党が期待していたような全米を席巻する「波」とまでは行かず、共和党を特定の場所で混乱の渦に巻き込む「竜巻」の様相を帯びた
民主党は大勝というわけではないし、大敗北というわけでもない。ただ上院は最高裁判事のことがあるから、確かに厳しいんですけど。

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●選挙結果を受けてのマイケル・ムーア監督のtweetVICTORY!と(笑)

と言っても、共和党の支持が強いのは年齢別には65歳以上のみ、そして地方部だけです。アメリカのどんどん衰退していく部分です。今が社会が変わっていく変わり目だし、逆の意味でトランプの参謀、バノンなんかもそう思っているでしょう。
同時に行われた知事選では『全米50州のうち36の州で行われ、ABCテレビによりますと野党・民主党が選挙前よりも7人増やして16人、与党・共和党が7人少ない、19人が当選を確実アメリカ中間選挙2018|NHK NEWS WEBという結果です。
下院の奪還、知事選の勝利の原因は今回 若者の投票率がアップしたから、です。若者は、トランプの無責任な政治に任せるわけにはいかないというわけですね。

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一方 日本はどうでしょう。国民は政治に無関心、無責任なまま。相変らず 政治も経済も年寄りの男(Boy's Club)が握っているし、そして男は家事をやらない自分で自分の生活を生きていない)。勿論 女性の中にも稲田朋美片山さつきみたいなクズもいますけど、それでも政治は女性に全てゆだねるくらいしないと日本はダメかもしれません。男性の選挙権はともかく、男性の被選挙権(立候補権)を廃止するのはどうでしょうか! 汚いジジイが国会から消えるし、ジジイに媚びることでのし上がろうとする基地外女も消滅するだろうから、きれいさっぱりするんじゃない?


と、いうことで、渋谷で映画『華氏119


gaga.ne.jp
トランプの大統領に当選した2016年11月9日。それまでは誰もトランプの当選を信じていなかった。なぜトランプのような人間が大統領に当選してしまったのか?どうやったら我々は民主主義を取り戻せるのか?


ボウリング・フォー・コロンバイン』でアカデミー賞を、ブッシュを徹底的にこき下ろした『華氏911』でカンヌ映画祭で最高賞を受賞した、おそらく世界で最も有名なドキュメンタリー監督、マイケル・ムーアの新作です。


ボクはムーア監督の大ファンです。劇場公開の作品はもちろん、彼が作ったTV番組のDVDや本も日本語版は殆どは見ている。彼の徹底的にこき下ろすお笑いのセンスが好きなんです。彼のアカデミー賞授賞式のスピーチなんか名画『スミス、都へ行く』みたいな名シーンでした。『ローマ法王もディキシー・チックスもみんなお前に反対だ。ブッシュ、お前の時間はもうおしまいだ!

Michael Moore winning an Oscar® for "Bowling for Columbine"


一方、あまりにも姿勢が明確なので、ドキュメンタリーとしては??と思う時もあります。ドキュメンタリーというより、プロパガンダに近いかも。しかし、それは見る方も作る側も明確に判ってやっているから、『真実を伝えている』ふりをした日本の凡百なドキュメンタリーより遥かに良いです。押しつけがましさもないし、誤解しようもないですもん。


今作のテーマはトランプ。でもトランプそのものではなく、トランプを生み出したアメリカ社会そのものに視線は向いています。ちなみに119とは2年前の大統領選でトランプが勝利宣言をした11月9日のこと。

トランプの娘婿クシュナーはかってムーア監督のためにパーティを開いていました。
 

宣伝でも言われているように、ムーア監督はトランプの勝利を事前に予言していました。確かに誰もトランプの勝利なんか予想していない16年の夏、『トランプが勝つ5つの理由』という彼のレターがボクにも送られてきました。ボクは彼のプロモーション用メーリングリストに登録しているんです。
www.huffingtonpost.jp

 
でも、大多数の人と同じようにボクもまさか、と思っていました。ムーアは大統領選のカギを握る激戦州(スイング・ステート)、オハイオやミシガン、ペンシルべニアなどラストベルトのことを理由として述べていたんですが、これらの州は労働者の地域、民主党の地盤ですからね。

ところが選挙ではトランプがこれらの州で得票し、選挙に勝った。映画は本人も含め、誰も勝つと思わなかったトランプの勝利から始まります。トランプ本人も本気じゃなかった。大統領選への出馬自体 自分のTV番組のネタでNBCへのギャラつり上げのための材料だったし、当選時だって、まともな勝利演説を用意していなかったくらいです。


日本ではあまり触れられていませんが、ヒラリーの敗因は単純明快です。トランプ云々というより、ラストベルトでまともに選挙活動をしなかったから。例えば激戦州のウィスコンシンには7か月足を踏み入れなかった。ヒラリー陣営は驚くほど傲慢だった。ヒラリーの敗北演説は感動的だったし、当人は社会を良くしようとする志がある人だとは思います。でも、言葉の端々に現れているように彼女自身も傲慢だった。ウォール街から山ほど献金をもらっていても悪いとも思わない。講演会のギャラが1回7000万円ということが報じられても恥かしいとすら、思わない。
ちなみに昔 ビル・クリントンの大統領辞任直後の日本での講演会ギャラは2000万か3000万円だったと思います。当時は電通が売り込みに来た。20年でずいぶんギャラが跳ね上がったものです。


ムーア監督もミシガン州生まれ、父親も祖父も自動車労働者です。彼が描くラストベルトの人たちの不満、怒りは非常にリアルに感じられます。それと派生して、彼の生まれ故郷ミシガン州フリントで発生した水道の鉛毒が描かれます。コンピュータメーカー、ゲートウェイ2000の社長だったスナイダー州知事共和党)の性急な水道民営化が原因です。このことは日本でもニュースで報じられるほどの騒ぎになりましたけど、州は非を認めない。健康被害データを改ざん、緊急事態保護法を制定して抗議を押さえつけます。しかしGMの工場だけは部品洗浄で不良品が発生したため、違う水道に付け替える(笑)。映画では、このスナイダー知事は昔からトランプと仲良しで、トランプが政治のお手本にしていることが 語られます。

 

トランプや共和党だけが問題なのではありません。民主党だって腐っている。バーニー・サンダースの立候補を党の重鎮たちが顔をそろえる特別代議員制度で押さえつけたのは記憶に新しい。気落ちしたサンダース支持者の多くは棄権します。ヒラリーもトランプも選挙での得票はそれぞれ約6000万票です(ヒラリーの方が100万票以上多い)。しかし棄権は1億票にも上ります。

民主党が人々から遊離しているのは今に始まったことではありません。リーマンショックの原因となったウォール街への規制緩和も始めたのはクリントンです。オバマ大統領はフリントの水道の件でミシガンまでやってきましたが、何もしなかった。フィルムは人々の落胆の表情を良く捉えています。これが民主主義なのだろうか。トランプの当選の原因は今に始まったことではない人々の民主主義に対する落胆からだ、という訳です。

 

トランプは次の選挙での再選に意欲満々だし、既に再選運動を始めています。トランプのやり方はヒトラーそっくりではないか、というのがムーア監督の主張です。人々は政治に関心を失っている。そして、独裁者が過激なことを発言しても、まさかそんなにひどいことはしないだろうと思っている。一方 日常生活に不満を持っているものは過激な発言に熱狂し、独裁者はウケるために本当に滅茶苦茶なことをやりだす。
ムーア監督は『うんざりして、あきらめた時代に独裁者が現れる』と語ります。

トランプの参謀バノンの会社はムーア監督の『シッコ』のDVDを発売していました。


では、我々に希望はないのでしょうか。ムーア監督はこんな動きにも密着します。
ウェストバージニア州での教職員のストライキ、『民主党を乗っ取ろう』と草の根で活動を始めた組合活動家、従来からのボス政治に対抗して立候補する草の根の候補たちがいます(主に女性)。
民主党の下院議員候補オカシオ=コルテス氏。プエルトリコ系の29歳。プログラミングか何かのコンテストで全米2位になるほど優秀な頭脳の持ち主でしたが、その後 父親が死亡して大学進学を諦めて今はバーテンダーバーニー・サンダースを支持する運動から政界に入り、重鎮を蹴散らかして民主党の候補に選ばれました。今回 史上最年少で当選。

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ソマリア難民、パレスチナ移民、イスラム系の女性二人、それにレズビアンで先住民の女性も当選。



 

そして銃規制を訴えるフロリダ州の高校生たち。


●選挙後 映画に出演した高校生のマット↑へのムーア監督のtweet。『パークランド高校の子供たちが革命に火をつけたんだ。これからが始まりだ!』

既にニュースなどで何度も見たパークランド高校のエマ・ゴンザレスさんの演説、映画で改めて見ても泣けて困ります。

Emma Gonzalez Speech At March For Our Lives Rally

銃規制運動への参加を禁止した小学校の校長に、11歳の子供が『これは私たちの問題だ』と言い捨ててデモに参加するところも印象的でした。『みんなで参加すれば、処罰なんかできない』と、ほぼ全校生徒が校長を無視してデモに参加するんです。
女性、若者、マイノリティがダメダメ政党だった民主党の中身を入れ替え、世の中を少しだけマシにするかもしれない。
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●11/5、NHK夜9時のニュースで


今回はお笑いは控えめです。ムーア監督自身もアカデミー監督の有名人になり、アポなし突撃も難しいのでしょう。

スナイダー州知事の家にフリントの水道水を撒くムーア監督。水が無害と言うのなら使って見ろという訳です。


映画の構成もやや乱雑な印象を受けました。しかし、教職員たちのストライキや組合活動家、民主党の草の根候補たち、それに高校生たちの姿には希望が持てます。こんな状態でも画面には希望が映っています。与野党ともに既成政党が腐ってしまい、人々が政治に関心を失くす。その隙間でポピュリズムがヘイトを煽る危機的な状況は日本もアメリカと変わりません。


ムーア監督は雑誌のインタビューでこう語っています。
この映画は究極的にはファシズムについての映画だ。だけど、20世紀のファシズム、第二次次大戦の時代のドイツ、イタリア、日本のようなファシズムを指しているわけではない。今あるのは“21世紀のファシズム”で、それよりずっとフレンドリーなバージョンだ。そして多くの人を殺すことになるだろう。誰かを列車に乗せて強制収容所に連れて行くようなことはしない。
では、どういう形をとるかというと、トランプのような人間が多くを自分の味方につけ、社会を引き継ぐ。それも人を強制するのではなく“僕についてきてくれれば、僕は君たちのためにこんなことができる”とね。非常に危険なことが起こっているんだよ。アメリカ以外でも同様なことが起こりつつある。民族主義者や右翼結社がヨーロッパ、ブラジルので勢力を伸ばしつつある。それは日本でも起こる可能性があるんだ。そういう意味で、この映画は日本に向けてのメッセージが多く込められた映画だと思う。

courrier.jp

●NHK9時のニュースで『日本に望むことは?』と聞かれて。誰のことか判りますよね(笑)。はっきり言った!NHKも放送した!

こんな映画を撮ってもトランプの支持者は絶対に見るわけがありません。そんなことはムーア監督は判っています。彼は、この映画のターゲットはサンダースを支持していたけど棄権してしまったような、政治に絶望している人たちだ、と語っています。彼らが棄権さえしなければ、トランプを引き摺り下ろせるのです。
果たして私たちはまた、独裁者を登場させてしまうほど愚かなのでしょうか。今は人々が自ら行動するしかない、とムーア監督は呼びかけています。
 

 

 


ボクはオバマ氏もサンダース氏も立派な人と思いますが、スタッフは抱えているにしても、彼らは一人でした。一人の力にはどうしたって限界があります。
でも、この選挙で起きていることは違います。女性や若者、マイノリティが立ち上がりだした。若者や女性を中心にオバマ氏やサンダース氏のような人たち、民主党民主党たちが大勢表れているんです。もともとトランプの支持層は年寄りばかりですが、今回の選挙では18~24歳までの若者の民主党支持率は約7割だそうです。格差、宗教、人種、性、アメリカという国に広がる分断は日本から想像するよりはるかに大きいにしても、チャレンジすること、新しいことをする人の足を引っ張ってばかりの日本とは随分 違うように見えます
日本にも、立憲民主党立憲民主党員、反共産党共産党員みたいな人たちがどんどん出てくればよいと思います(他の政党は論外)。どっちも今のままじゃ政権の可能性なんか皆無ですから。それとも、反自民党の自民党員の方が良いかもしれませんね。

華氏119 - 映画予告編

斬新過ぎて面白い:映画『search/サーチ』


また、食べに行ってきましたニュージーランド・ラム。9月に、マグロの赤身みたいな、さっぱりとしてジューシーなラム・チョップを食べて、早くもお代わりが欲しくなったんです(笑)。上の写真は店頭にある肉の熟成庫です。


ニュージーランドの食肉公社がやっている店だそうでファミレスみたいな感じの気楽な雰囲気です。相変らず満員でしたが客層は若かった(笑)。この日も山ほど肉を食べましたけど、さっぱりとした肉を炭で焼いただけですので、次の日の体重計も平気でした(笑)。前回もそうでしたが、これは驚きです。


肉の断面図:左から放し飼いの牛のヒレ肉、仔羊ちゃん、熟成肉



店のテラスから


それにしても 国会を見ているとうんざりですね。スキャンダルのオンパレードの閣僚は嘘と開き直り、ばかり。マスコミはくだらないスポーツニュースや弱者たたきばかりで、政治も外交もまともに報じない。夜7時とか9時とかメインのニュースでスポーツなんかやってるの日本だけじゃないんですか? 
TVの制作側も視聴者も白痴の集まりか。


ただ、あまりにもひどすぎて慣れっこになってきてしまった気もします。正直 ボク自身は段々怒る気力も無くしてしまった。こういう無関心、絶望こそがファシズムの温床だと思うのですが、これだけ酷いと、どうしてもその傾向は強くなる。でも、ただうんざりしているだけでなく、人間の気持ちの弱さを補強する『仕掛け/システム』みたいなものは知恵として考えてみても良いのだと思います。


一つは新しいもの、知らないこと、人、さまざまな新しい物を取り入れていくこと。日本のような同質性の強い、ある意味閉鎖社会に暮らしていると意識的に新しい物・多様性に触れることを考えていかなければいけないのかもしれません。



と、言うことで 新宿で映画『search/サーチ映画『search/サーチ』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

妻をがんで亡くしたばかりのIT技術者、デビッドの16歳の娘、マーゴットが突然姿を消す。行方不明として捜査が行われるが、家出なのか誘拐なのか判らない。デビッドはマーゴットのパソコンのパスワードを解明、メールやSNSにログインして、交友関係などから手がかりを探し出そうとする。しかし彼が見たのは自分が知らなかった娘の一面だった


監督は今年27歳、アニーシュ・チャガンティという人の初作品です。今年8月に全米9館で限定公開されて、大ヒット、公開規模は1200館、興収は全米4位を記録したという作品です。主役はスタートレックシリーズに出ているジョン・チョー。先日はキャストがアジア系で固められた『クレイジー・リッチ』が全米1位を記録して大きな話題になりましたが、インド系監督が作った、この映画も韓国系の一家が主人公です。問題はある国ですが、それでもアメリカは変わりつつあります。その反動でトランプのような排外的なバカが出てくるにしてもです。さて、日本はどうでしょうか。政治にしろ、経済にしろ、民度にしろ、変化があるとしたら、どんどん劣化するばかりではないでしょうか。自己責任病がその典型です。


この映画の一番の特徴は、ほぼ全ての映像がPC上の画面で展開される、ということです。それだけ聞くと画面を狭く感じたり、せせこましい感じがするかのような印象を受けます。が、映画ではIT技術者の主人公が、写真や動画などPC上のデータだけでなく、メール、フェイスブック、インスタ、YouTube、それにワッツ・アップなど日本ではなじみが薄いアプリまで、PC上の画面を次々と切り替えていきます。展開はスピーディだし、限られた画面でサスペンス場面では緊迫感が一層盛り上がります。PC画面を映像にするというのは大正解でした。


失踪したティーンエージャーの一人娘の行方を必死で探す主人公がPCで手がかりを探すうちに、娘の意外な一面に触れていきます。親一人、子一人、仲良し親子だと思っていたが、自分は娘のことを全く判っていませんでした。
●妻を早くに失くし、主人公と高校生の娘は二人で暮らしています。

警察の捜査担当官は息子を育てるシングルマザー。子供を一人で育てる親同士、気持ちが通じるはず、と思いましたが!(笑)
●捜査担当(左)はシングルマザー、娘を案ずる主人公に献身的に寄り添います。


ネタバレになるので、お話はこれ以上書けません(笑)。派手なアクションシーンがあるわけじゃありませんが、次から次へとスリリングな展開が待っています。残酷なシーンがないのもボクは好き(笑)。お話はすっごく面白いです。全く退屈しない。
●お話は常にPC画面のアプリの中で展開されます。
 
●疾走した娘の足取りを追って友人を探すのもフェイスブックだったり、PCのテレビ電話の中です。


この映画が特に優れているのは、ジェットコースターのようにくるくる展開する脚本、スリリングな画面展開、一人娘を必死に探すオヤジのジョン・チョーのブチ切れ演技。あと、感心したのが、ただのサスペンスには終わらず、現代の社会、マスコミやネットに対する批評性を盛り込ませていること。ネット社会が下劣なのはアメリカも日本と同じなんだな〜と変なところで感心したりもしました。
●悲劇のただなか、TVのワイドショーが主人公に殺到します。


後味も悪くありませんし、凄く面白い、少しだけ皮肉が混じったエンターテイメント。監督デビュー作でこんなに完成度が高い、というのはどうなってるの??結構 公開規模も大きいようですし、地味な印象にめげずに見てみると、これはとても面白い、一見の価値がある作品です。

講演会『デジタルが拓く未来』と『1102再稼働反対!首相官邸前抗議』


早くも11月。あんなに暑かったのがウソのように(笑)、そろそろ衣替えです。街にはもう、イルミネーションが光っています。いくら電力消費量が少ないLEDとは言え、311当時の節電はどこへ行ってしまったのでしょうか(笑)。ネオンが消え照明がまばらな当時の街も、ボクは結構良かった、と思うんですけどね。



今回は 直ぐ目の前に来ている未来の話です。
先日 『デジタルが拓く未来』と称する講演会へ行ってきました。毎年、シンクタンク野村総研が開いているものです。

昨年の講演会はアメリカの未来学者、ジェレミー・リフキン氏が『これから、再生エネルギーがどんどん安価になる。原発は日本の負の遺産』と経済界を中心とした聴衆の前で断言してました(笑)。
それまでは再生エネって、どちらかというとマイナー、怪しげな話だったと思いますが、たった1年でNHKや日経などで大きく取り上げられるようになりました。かっては太平洋戦争の敗戦を事前に予測し(それで野村証券は大儲け)(笑)、今は役所が出す白書や報告書を作ってる会社ですから、それなりに影響力があるんでしょう。

スマート・ジャパンへの提言―日本は限界費用ゼロ社会へ備えよ

スマート・ジャパンへの提言―日本は限界費用ゼロ社会へ備えよ


今回はその続きです。コンサル出身で自分が話したくてしょうがない(笑)、同社の社長の講演の内容をご紹介します。言葉は平易なものに置き換えています(笑)。青字が講演内容です。
●同社の調査では、経済の低成長にもかかわらず、近年 生活者の生活実感は改善している。スマホなどデジタル化の進展で、生活の利便性が高まっているからではないか。

→これと同じことは昔 古市憲寿が言ってましたが(笑)、確かに利便性という点ではそうだと思います。ボクも昔は珍しいCDや本を探すのに半日かけて渋谷や新宿の裏町を探しましたけど、今は検索してクリックするだけ。
確かに日本経済は成長してないし、実質賃金も20年下がり続けていますが、デフレとデジタル化でかろうじて我々の生活は成り立っているわけです。


●一方 産業界ではデジタル化による既存産業の破壊(ディジタル・ディスラプション)が進行しつつある。これには良い点、悪い点があって、例えば自動車産業なら自動運転やEV、シェアリングで販売台数が減少する可能性は高いが、保険や自動運転、配車サービスなど新たに生まれる分野まで考えると市場が大幅に拡大する可能性もある。


●アマゾンやグーグルなどデジタルのプラットフォームを握る企業が時価総額のトップになりつつある。アマゾンやグーグルのような企業はプラットフォームによる利益があるため、物はいくらでも安売りできるので、小売業など既存の産業に対して強い競争力を持っている。

→ただ普通の物を売るだけの産業、小売業とか卸売業は世の中から消滅する可能性は高いんじゃないでしょうか。余程マニアックなものを売るか、買い物の楽しさやアドバイスを提供できる店か、出来立ての食べ物やサービス(美容院やクリーニング)以外は、それこそアマゾンで全て済んでしまいます。他にもなくなる職業・産業は沢山出てくるでしょう。
これはしょうがない。消費者にとっては便利なんだから。



●現在は資本主義自体が、労働力と資本家によって成り立っていた「産業資本主義」(『モノの販売』、『労働力』、『企業の利益』が基本)から、プラットフォームによる「デジタル資本主義」(『モノではなくサービス』、『労働力ではなくデジタル』、『企業ではなく、消費者の利益』)へ移行しつつある段階ではないか。
→ある日突然 世の中が『デジタル資本主義』に代わるのではなく、数十年かけて従来の資本主義が衰退して、デジタル資本主義に置き換わる。気が付いたら世の中が全く変わっていた、ということだと思います。これはリフキン氏や水野和夫氏も指摘していることです。


●デジタル化には『フィルターバブル』(自分と同じ意見にしか触れようとしない)、『エコーチェンバー』(同じ意見を何度も聞くうちに、それを信じ込む)というリスクがあり、悪い方向へ行けば民主主義を危うくする可能性もあり得る。

デジタル化がもたらす思考の過激化は、今週10月29日に放送されたNHK『クローズアップ現代+』の『ネットに煽られた約1000人のネトウヨが大挙して弁護士に懲戒請求を申し立てたところ、実名がバレて(笑)逆に業務妨害で訴えられて窮地に陥っている(笑)』という特集でも取り上げられました。なぜ起きた?弁護士への大量懲戒請求 - NHK クローズアップ現代+


この話、ネトウヨがジジイばかりだったことが判った、ということも含めて、数か月前から話題になっています。

往々にして人間は耳に心地よい、自分と同じ意見ばかりに触れようとするものです。この番組で紹介されていたのは、例えば 定年後の暇なジジイがネットでネトウヨの意見に触れ、それだけに夢中になる(フィルターバブル)。


更にネットのリコメンド機能で同じような意見にばかり触れることで、更にアホが増幅される(エコーチェンバー)。


そしてもともと足りない脳みそが崩壊、被害妄想のうわ言↓を呟く廃人になっていくというものでした。

(以上は10/29,クローズアップ現代+より)
これはネトウヨだけの話ではなく、右でも左でも脱原発でも宗教でも同じことが起こり得ます。おしどりマコ堤未果を真に受けてる奴なんてまさにその状態です。フェイスブックのデータを悪用してBrexitやトランプへの投票を誘導したマーケティング会社ケンブリッジ・アナリティカが良い例で、デジタルは民主主義を危うくする可能性もある


●将来の資本主義の姿はいくつかのシナリオが考えられる、
(1)デジタルによって資本がより一層強くなる「純粋デジタル資本主義」(例.中国)、
(2)デジタルが資本と市民のシェアリング(コモンズ)を強化する「市民資本主義」、
(3)デジタルが市民のシェアリング(コモンズ)を強化する「ポスト資本主義」(リフキン氏の『限界費用ゼロ社会』)。
(1)は民主主義と両立しないディストピアだし、(3)はユートピアに過ぎる。我々が今後目指していく方向は資本を強化しつつ、新しい形の市民社会を構築していく(3)の「市民資本主義」ではないか。

→幾つかのシナリオで考えるのは良いですよね。未来は必ずしも一方向と決まっているわけではありません。例え資本主義が限界に来ているとしても、その後 バラ色の未来が自動的に訪れるわけではない。人口が減っていくとか、デジタル化が進むという大きな流れは変わらなくても、将来は色々なケースがあり得る。
●デジタル化による資本主義の未来シナリオ。彼らが柄谷行人の意見を基に作った図にボクが講演の内容を付け加えたもの。

普通に考えるとデジタル化が進むことによって、格差は広がります。従来の資本主義、つまり物を作って売るという行為は時間がかかります。一方、デジタルは拡散が広く早いですから、勝者は莫大な富を握る傾向にあります。アマゾンやグーグル、マイクロソフト、枚挙にいとまがありません。
そしてテクノロジーを利用して、国民を徹底的に監視できる。中国が良い例です。昨年行った大連でも、あちらの人は絶対に信号無視をしませんでした。信号機ごとにカメラがついていて、違反者の顔をAIで認識、交通違反切符が自動的に送られてくるからです。
●中国は2000万台以上、イギリスは600万台以上の監視カメラが既に設置されています。小説『1984』のような暗黒世界、ディストピアはもう、目前まで来ている。



デジタル化とそれに伴う社会の変化は避けることは難しいでしょう。良いことだけじゃなく、小売や卸など既存の産業を破壊したり(デジタル・ディスラプション)、人々の間の格差を拡げたり、監視社会が強まったり、人々を過激化させて分断を広げたりするなどのリスクも大きいかなり大きい
●講演内容の元ネタ。

デジタル資本主義

デジタル資本主義


でも、希望はない訳ではありません。デジタル化は余っている資源を人々が効率的に共有するシェアリング・エコノミー再生エネルギーなどの活用にもつながります。人種や性、貧富に関係なく人々が意見を直接出し合うデジタル民主主義というものも考えられない訳でもない。優れた教育、もしかしたら医療も安価に提供することは出来るでしょうし(しょうもない大学は潰れるし、無能な教師は失業でしょうけど)地産地消地域通貨などで地方経済を回していく、リフキン先生が言う様に再生エネルギーを効率的に活用して費用がゼロに近づくことも期待できる。


唯一 厳しいのは政治です。特に日本は与野党ともに全然ダメじゃないですか(笑)。また投票率の低さなど国民も全然他人事(笑)。個人個人はわからないけど、日本という国全体では見通しは超暗そうです(笑)。


結局 気が付いた人が少しずつ自分の生活を変えていくことこそが、限界に達しつつある資本主義の世の中をよりマシな方向に向かわせる、と思うんです。例えば男が家事をやるとか(笑)。当たり前のことだけど、日本の現状を考えれば これが、もっとも革命的なテーゼじゃないの。




と、いうことで、今週も官邸前へ。#金曜官邸前抗議
ちょっと風は冷たいけど、秋晴れの気持ちの良いお天気でした。午後6時の気温は17度、参加者は550人。
来週は11日の日曜に大規模抗議があるので、金曜の抗議はお休みです。今日はその分まで抗議しておく(笑)。

●抗議風景『東京電力ふざけるな!』


今週30日、業務上過失致死罪に問われている東電の元会長、勝俣恒久の被告人質問がありました。

東電元会長「責任は現場にある」 旧経営陣強制起訴 - FNN.jpプライムオンライン


勝俣は「原発の安全は、一義的に現場が全て行うので、責任も現場にある」と答えたそうです。言いかえると『俺は会長として高給をもらってたけど、責任は取らんぞ』ということです。これについては昨日、11/1付けの中国新聞の社説が言いつくしていると思います。


【社説】東電の旧経営陣裁判 誰も責任負わないのか


安倍晋三を見習っているわけではないでしょうが、勝俣も旧日本軍の多くの将軍と同じで、責任は部下や同僚になすりつけ、自分は保身に明け暮れているオリンパス東芝、その他 各種のデータ偽装、こんな連中が最高責任者じゃ組織がまともに動くわけがありません。
勝俣恒久は今も四谷の豪邸に住んでいて、徒歩1時間近くかかるボクの実家近くまで時々散歩に来るそうです。良くもぬけぬけとお天道さまの下を歩けるな。こういう社会のリーダー層のモラル・ハザードは日本の衰退を象徴していると思います。ほら、言うじゃないですか。魚は頭から腐るって。