特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『1111原発ゼロ☆国会前集会』と映画『10年 Ten Years Japan』

 週末は友達と原宿に行ってきました。
 自家製のクラフトビール&燻製料理のお店です。と言っても、ボクはビールはあんまり好きじゃないので他のモノを飲んでた。

●セロリ入りのブラディ・マリー。グラスの縁にはスモークして香りをつけた塩

●スモークした肉の盛り合わせ。エスプレッソで肉を燻製すると柔らかくなるそうです。

 夜が更けるにつれて、テーブルが全て外人で埋まったのはびっくりしました。日本人客は我々だけ(笑)。六本木ならそういうこともありますけど、原宿だから、ちょっと驚きました。ここに限らず、安くて美味しい店って外人比率が高いことが多い。彼らはなんだかんだ言って鼻が利く。
 結局 日本人がアホってことなのか、単に彼らがカロリーの高い料理を求めているからなんでしょうか(笑)。

店中 外人だらけ。植民地状態(笑)。




日曜は、日比谷で映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見た後、国会前へ行ってきました。

 良いお天気で散歩日和でした。日比谷から歩いて15分くらい、国会前に通じる歩道にはバカみたいに警官が厳重なゲートを作ってました。ホント、税金の無駄遣いです。金返せ
 参加者は2500人。相変らずボクより年配の人が多いです。この日 自分が着ていた真っ赤なセーターが場違いに感じる(笑)。着いたときは上智の中野教授がしゃべっているところでした。

 まあ、他人の話、特に政治家の話とかはあまり興味ないんですけど(笑)、維新と国民民主以外の野党が提出した原発ゼロ法案が今国会で自公に審議拒否されている、ということだけは判りました。まともに答弁も出来なかったり、スキャンダルだらけの大臣が居座っているのも含め、やっぱりこれだけ与野党議席数がかけ離れていることが国会の自浄能力を失わせているんでしょうね。自民党の支持者も含め、これは国民全体にとって不幸なことです。
●順に共産党の吉良ちゃん、立憲民主の山崎氏(原発ゼロの会)、社民党の福島氏

 かといって、投票したくなるような野党でもない、のも確かなんですが(笑)、鼻をつまんで投票するしかありません。それにしても『野党は共闘』も良いんですけど、もう飽きた(笑)。もちろんそれすら成り立ってない現状はあるにしても、野党共闘なんて最低条件、更に新たなコンテンツ、旗印が必要です。

 この日 立憲民主の山崎氏が『原発が日本経済の足を引っ張っている』と述べてましたけど、まさにその通りで、短期的には原発のコストの電気代への転嫁や巨額の補助金、長期的には産業構造の転換を遅らせているのは事実です。それこそ財界だって、この点は納得できる人も多いはずです。次の選挙にそなえて、経済政策と共に、原発の害悪を具体的に訴えてもらいたいものです。

と、いうことで、新宿で映画『10年 Ten Years Japan
tenyearsjapan.com



『高齢化問題』、『AI教育』、『データ社会』、『原発事故』、『徴兵制』。日本の10年後を描いた5つの短編で構成される物語。太賀、池脇千鶴國村隼、杉村花などが出演。

万引き家族』の是枝裕和監督が総合監修を担当したオムニバス作品。日本の10年後をテーマにした17~18分の短編を5人の新人監督が担当しています。ボクは見ませんでしたが11月6日のNHK朝7時のニュースでも、この作品が紹介されていました。朝7時のニュースは来日時に黒塗り文書を批判するポスターを貼ったケンドリック・ラマ―のインタビューを流すなど頑張ってます。


作品は順番に、厚労省が75歳以上の老人の安楽死を推奨する制度と勧誘担当者を描いた『PLAN75』、AIシステムで勉強だけでなく行動まで管理される小学生と用務員を描いた『いたずら同盟』、母の生前のデータが入力されたデジタル遺産をハッキングした女子校生を描いた『DATA』、原発事故で地上が汚染され、人々が地下で暮らすようになった中で、地上の世界を夢見る『その空気は見えない』、徴兵制が導入され、告知のポスター制作を担当する広告代理店の青年を描いた『美しい国』の5つです。
●『DATA』。父と二人暮らしの女子高生(杉村花)は母の生前のデータを保管した「デジタル遺産」をハッキングし、母の秘密を探ろうとします。


超高齢化と安楽死、AIによる管理教育、デジタル遺産、原発事故、徴兵制、近未来の日本を想像するとこうなるのでしょうか(泣)。監督は別々ですが、どの作品もショッキングなテーマを淡々と、間接的に描いています。
●『いたずら同盟』。勉強から遊びまで、すべてがAIに管理された学校で用務員(國村隼)は子供たちを見守っています。


ボクは75歳以上の老人の安楽死が国策になったのを描いた『PLAN75』が一番、面白かったです。苦しまない方法で、国が葬儀や墓の世話、支度金までくれて安楽死させてくれる。これを見てると正直『自分も応募しちゃうかも』と思ってしまいました。公的扶助に頼らざるを得ない低所得層をターゲットに厚労省安楽死政策を推し進めるという設定は、いかにも維新や竹中平蔵みたいな日本のバカな新自由主義者が思いつきそうです。お話は、普段は安楽死を勧誘している厚労省の担当者が認知症になった義母を抱えたときにどうするか、というものです。
●『PLAN75』。10年後 日本では75歳以上の老人の安楽死が国策になります(1枚目)。厚労省の勧誘担当は仕事に励むのですが(2枚目)、認知症になった義母を安楽死させようとする妻を懸命に止めようとします(3枚目)

美しい国』ではしょっちゅうミサイル警報が鳴る日本が描かれています。今でも自衛隊は定員の7割程度しか充足しておらず、特に兵員が足りないそうです。徴兵制、もしくは経済的徴兵制をやりたいと思っている政治家や役人は結構いるでしょう。連中は自分たちは特別、戦場へ行かなくて済むと思ってますからね。
映画は徴兵制のキャンペーンを担当する広告会社の若手社員を描きます。徴兵制のポスターを貼る下請け業者の人たちが、いつの間にか中高年ばかりになっている、そんな日本が描かれます。
●『美しい国』。徴兵制が施行された日本。徴兵制をPRする代理店担当者はデザイナーの大家に勧誘ポスターの変更を頼みに行きますが。

技術の進歩に格差の拡大、自分の利益が大事な政治家に、差別や感情に流される割には忘れっぽいバカ国民。何よりも環境の変化のスピードが速すぎる。日本の現状をみれば 楽観的な未来より、悲観的な未来が思い浮かびます。人にもよるかもしれませんが、少なくともボクはそう思う。長期的には判りませんが、10年や20年先の短期では結構厳しそうです。
是枝監督もそう感じているのだと思いますが、それでも一つくらいは未来の希望を描いた作品があっても良かったとは思います。人間のほとんどの活動がデジタル化されて保管される『DATA』や新たな原発事故後の日本を描いた『その空気は見えない』がそうなのかもしれませんが、作品としてやや力不足かも。
●『その空気は見えない』では池脇千鶴が母親役を熱演。新たな原発事故で地上は汚染され、人々は地下で暮らしています。が、子供にとっては酷な環境でした。

普通に考えれば日本の将来はお先真っ暗です。少子高齢化で市場は縮小、科学技術は中国やインドにも負けつつあり、それに輪をかけて政治はまるでダメ。与野党問わず、無能な政治家や腐敗した役人ばかりが目につきます。国民は政治に関心を示さないばかりか、狭い殻に閉じこもって排他的になるばかり。
それでも自分の周囲を見渡せば、身近なところにも明るい兆しも転がっています。確かに大変な時代ですが、自分自身が変わる切っ掛けを探してみるのも良いかもしれません。自分たち一人一人が変わっていくことが、時代が変わる切っ掛けでもあるのではないか。徹底的にパーソナルな事柄を描いたこの映画を見てそう思いました。

十年 Ten Years Japan 【2018】 映画予告編