今年になって高橋幸宏、岡田徹(ムーンライダーズ)、デヴィッド・リンドレーと好きだったミュージシャンの死が続いています。今朝ニュースで流された坂本龍一氏の逝去の報には驚きました。
REST IN PEACE RYUICHI SAKAMOTO
— David Bowie Official (@DavidBowieReal) 2023年4月2日
“Here am I, a lifetime away from you...”
Sad to learn of the passing of actor, composer, and producer @ryuichisakamoto. The renowned Japanese artist passed on Tuesday 28th March aged 71.
He won awards - including an Oscar, a Grammy and Bafta -… pic.twitter.com/OZdRVnQyYW
年初に放送された、昨年末の彼の演奏を記録したドキュメンタリーでは本人はかなり苦しそうでしたから、逝去自体には驚きはありません。が、余りにも早い。
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渋谷の実家に住んでいた頃、坂本氏がサンダルに白いランニングという格好で、時折 犬を明治公園で散歩させているのを見かけました。だからボクは、ランニング姿のおっさん、というイメージの方が強い。この頃↓です
◾️坂本龍一氏がDJを担当したラジオ番組『サウンド・ストリート』に、デヴィッド・ボウイがゲスト出演。(1983年11月22日放送) pic.twitter.com/34KgnY15Q8
— デヴィッド・ボウイ 名言集 (@DavidBowieBot) 2023年4月2日
やはり戦後民主主義とその文化は終わりつつあると思います。実質的には戦後民主主義は60年代に終焉を迎え、80年代にはもう終わっていたんでしょうが、いよいよ誰の目にも見える形になってきた。
亡くなった大江健三郎、坂本龍一両氏は、戦後民主主義をあえて選んだ人たち。
— こたつぬこ🌾野党系政治クラスタ (@sangituyama) 2023年4月2日
丸山眞男にならっていえば、「戦後民主主義の虚妄」にあえて賭けた人たち。
我が世代にはもはやあえてという選択肢は存在しない。
最近はベンチャーで起業したりNPOを始めた若い人が事業による社会問題解決を目指したりするのが良い例で、戦後民主主義に代るもの、文化は少しずつ生まれてきているとは思います。若い人だけでなく高校時代 坂本氏と一緒に激しい学生運動をやっていた元厚労大臣の塩崎が政治家引退後 里親を広める運動を始めたのもそうでしょう。
考え方を右とか左に分けるなんて愚かなことです。先は見えなくても少しでもマシな方向へ進んでいくしかない。そう思えば日本人も多少は成熟しつつある。
坂本龍一さんは、以前、ダウンタウンの番組に出てたことを、僕は反社会的行為に加担してしまっていたという風に総括していて、そんな大げさなと思ったんだけど今はわかる気がする。大衆とりわけ弱い立場の人をどうエンパワメントしたらいいのかを僕らが想像するよりもずっと真剣に考えていたんだと思う
— kotaro morozumi(a.k.aムエタイマシーン3号) (@mzmktr) 2023年4月2日
だけど政治家だけは与党も野党もまるでダメなのは、自己統治能力すら欠けている日本人らしい、と言えばその通りです(笑)。
2015年8月30日、安保法制反対のデモ。国会前を埋め尽くした人々に向けてスピーチした坂本龍一さん。 pic.twitter.com/iQj19PPaCK
— 石田昌隆 (@masataka_ishida) 2023年4月2日
週末は久方ぶりに晴れました。もう4月なんですね。周りの環境は随分変わった。
新居も少しずつ落ち着いてきたので、早く自分の生活のペースを取り戻し、いや、よりまともな生活にしていきたいです。まだ部屋を移動する時にまごついたり、スイッチを間違えたりしますけど、とにかくモノは増やさない(笑)。
(73年初来日を振り返って)
— デヴィッド・ボウイ 名言集 (@DavidBowieBot) 2023年3月29日
コンサートの合間に訪れた京都。その日本の古都で見た満開の桜は見事だった。そんな風にして僕は日本と恋に落ちたんだ。 pic.twitter.com/FH6ZN5MEAw
と、いうことで、新宿で映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』
2016年に69歳で亡くなったロックミュージシャン、デヴィッド・ボウイの人生にスポットを当てた、デヴィッド・ボウイ財団初の公式認定ドキュメンタリー。保管していたアーカイブ映像からの未公開映像を40曲以上の楽曲と共に映し出し、ナレーションもボウイの音声で構成される。音楽はボウイの長年のプロデューサーだったトニー・ヴィスコンティが担当。
dbmd.jp
監督を務めるのは『くたばれ!ハリウッド』や『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』などのブレット・モーゲン。と、言っても良く知りません(笑)。デヴィッド・ボウイ財団が保有しているボウイの映像を監督が2年の期間をかけて選別し、本作を作り上げたそうです。
全編約2時間、ボウイのステージやインタビューの映像がほぼ時系列でコラージュのように流されます。
生い立ちから64年のデビュー、スペース・オデティを歌っていたころ。少年時代 影響を受けた異父兄が精神の病になったことが、ずっと本人に影を落としていたのは知りませんでした。
グラムロックのスターとして脚光を浴びたジギー・スターダスト時代。山本寛斎の衣装を着て『地球はあと5年で終わる』と告げる異星人を演じました。日本ではこの時代が有名なんでしょうけど、ボクはあまり興味ない。
ジギーのカリスマをあっさり捨てて黒人音楽を取り入れたLA居住時代、
コカイン中毒で頬が痩せこけています。
数々の傑作を生みだしたベルリンに住んでいた時代、
これは名曲’’ワルシャワ’’を演奏する当時のボウイ。ナチとソ連共産党に大勢の人が殺されたことを取り上げています。今彼が生きていたら、ウクライナのことをどう表現するのでしょう。
京都に住んで新たなインスパイアを受けた時代(ボクはこの時代が最もクリエイティブだったと思います)、
この頃はまだ一般的な知名度はありませんでしたから、街中を歩いていても平気だったわけです(笑)。ちなみに90年代に彼はソマリア出身のモデルさん(女性)と結婚しますが、新婚旅行は京都の旅館、俵屋に泊まったそうです。
そして『レッツ・ダンス』の大ヒットで世界的なスターになっていった時代、
『戦場のメリークリスマス』を始め、様々な映画やエレファントマンなどブロードウェイ演劇にも出演します。
『戦場のメリークリスマス』の撮影中に、一度ホテルのレストランでボウイとセッションをしたんです。僕がドラムで、彼はギターを弾きながら歌ってね。プレスリーとか、ああいう古いロックンロールが次々に出てくるんですよ。物凄く上手いの。ビックリしましたね。
— デヴィッド・ボウイ 名言集 (@DavidBowieBot) 2023年4月2日
──坂本龍一 pic.twitter.com/QxXca3Qiem
やがて芸術と大衆性との相克に悩んだ末、次第に芸術に回帰していった晩年、と各年代のボウイの姿が描写されます。
さすが財団が保有しているアーカイブを使っただけのことはあって見たことがない映像が多い。それだけでなく、本人の語りが殆どなので変に賛美する内容にもなっていないのは凄く良いと思います。
それに長年プロデュ―サーを務めたトニー・ヴィスコンティがリミックスした音源も素晴らしい。新鮮なだけでなく、映像に新たな意味を与えています。流石というか、驚くようなレベルのリミックスでした。
あと当然のことながら、我々が知らない音源というのはまだ随分あるのでしょう。ジギースターダストの時代にステージでジェフ・ベックがギターを弾いているのも興味深かったですが、isolarⅡ(孤立者)ツアーの初期音源、エイドリアン・ブリューのギターが吠えていて、ワイルドでかっこよかった。こういう音源はまだあるんでしょうね。
ボウイという人は常に変化し続けていた人です。変化には当たりはずれはあり、この映画でもボウイが90年代に組んだバンド、ティン・マシーンは無視されていました(笑)。しかし、晩年に至っても前衛ジャズを取り入れるなど変化を続けて、守りに入らなかったのは驚くべきことです。
そういう人が何を考えていたのか。簡単に判ることではありません。この映画も結論を出そうとしていない。
しかし、この映画を見てわかったことがあります。自分が観客にどう受け取られるか、彼なりに悩み続けていたのです。創造のために自分のプライヴェートを大事にすることも含めて、自分の表現欲求と観客の反応との間で相克を続けていた。この人は自分が変わることに自覚的で迷いはなかった、と思っていたから、それは驚きでした。
自分が表現したいことと観客がそれをどう受け止めるか、80年代に彼がポップ路線へ行ったのも『自分のちっぽけな考えを表現することより、皆に楽しんでもらった方が良いと思ったからだ』と言い放っていたのは、非常に納得出来ました。そこまで考えていたとは知らなかった。
その後 10年くらい経って『やっぱり自分は社会から外れた人たちの文化が好きなんだ』となったのも彼らしい(笑)。ミック・ジャガーは女王からホイホイ、勲章を貰いましたけど、ボウイは2回も叙勲を拒否しましたからね(笑)。
と、いうことで、ボウイの記録というだけでなく、ドキュメンタリーとしてかなり面白い作品でした。まだまだ語って欲しいことは沢山あるし(特に90年代以降)、ステージのシーンがフルコーラス入っていれば完璧でしたが、何度も見返すことで様々な解釈を見出すことができる映画です。これなら満足です。