今日は24節気の『大暑』だそうですね。東京の青梅も40度。今年は猛暑であることは間違いないんでしょうけど、結構 節気などの暦通りに動いているような気がします。神様、どうか、暑さはこれくらいでピークにしてください(笑)。
この時期にオリンピックだの、甲子園だの、マジで頭がおかしいのではないでしょうか。ムリを承知で兵隊を大勢無駄死にさせたインパール作戦そっくり。
●電通だの、JOCのジジイ連中を儲けさせるために学生を無駄死にさせかねません。
何よりも問題なのはこんなバカげたことが議論もないまま進んでいくところです。マスコミも悪いが国民も問題大有り。ま、いいか、何とかは●ななきゃ治らないから(笑)。
この週末 丸の内へ『抹茶の点て方教室』に行ってきました。京都のお茶屋さんの東京支店で月に1回やっている、定員12人くらいの教室です。人気があるらしく、1年位チャレンジして、やっと予約できたんです。
お茶の作法とかは興味ないですけど、ちゃんとした淹れ方は一度習っておきたいと思ったんです。和食を食べに行ったときに出てくる抹茶って本当に美味しいじゃないですか。
当日 店頭で受付したとき、お店の人から『今日は他の参加者の皆さんは女性の方ばかりで- - -』と申し訳なさそうに言われました。予想通りなので『そんなものですよね。ボクは和食のお店で抹茶を飲むと、家でも美味しいのを飲みたくなるから来たんですよ〜。』と答えたら、嬉しそうに『ありがとうございます。』と笑顔になったのが印象的でした。大体 世の中の美味しいもの、面白そうなものは大抵女性が占有しています(笑)。だから男はバカなんです(笑)。
●お茶の葉の解説を受けたあと、種類の異なる抹茶をテイスティング、それから淹れ方。と言っても、無精しないで『茶漉し』を使う、茶筅でかき回すのは15秒以内という原則を守ればいい、ということでした。
●先生の手首のスナップが効いた茶筅の動きの速さにはびっくりしました。当たり前かもしれませんが、彼の会社(お茶屋さん)では抹茶飲み放題だそうです。
他にも、夏は茶葉をよく濾してあれば水で入れても問題ない、暑いときは安価なあっさりした茶葉の方が美味しい、デミタスカップなどで飲むのもあり、という話はなるほど〜と思いました。ただ、飲み放題だからと言って、抹茶って何杯も飲むものじゃありませんね(笑)。お店を出たとたん、女性だらけの店内で我慢していたゲップが出ました(笑)。
●最後はお愉しみ。お茶受けはこの日、京都から持ってきたという長久堂の柚子の上生菓子でした。
と、いうことで、新宿で映画『菊とギロチン』映画『菊とギロチン』公式サイト|7月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開!
関東大震災直後の日本。地方には貧困が広がると同時に世の中は窮屈な風潮になり、今までの自由な大正モダンの世界は終わりを迎えようとしていた。関東大震災のどさくさに紛れて憲兵隊に殺された大杉栄の影響を受けたアナキスト結社『ギロチン社』の面々は警察から逃れた東京近郊の農村で、女相撲一座『玉岩興行』と出会うが- -
大正時代に実在した反政府結社、アナキスト(無政府主義)の『ギロチン社』と架空の女相撲一座『玉岩興行』の関わりを描くお話しです。架空と言っても女相撲は昭和30年代までは普通に日本各地に存在していたそうですから、まるっきり無茶なお話しではありません。無茶なのは『土俵に女性を登らせないのが伝統』というデマを堂々と飛ばす日本相撲協会とそれに乗せられるバカな国民です。
監督の瀬々敬久は近年 『64』や『八年越しの花嫁』、『友罪』などでヒット作を飛ばしていますが、ボクはそういうのは見たことありません(笑)。全共闘世代よりは年下で、ボクより年上の人。インタビューなんかを読むと何となく考え方がわかる気がするんです。商業映画で糊口をしのぎながら、自分の思いを紛れ込ましたり、時には自分の作りたいものを作る。ゲリラ戦ですよ。組織の中での生き残り方、と言っても良い。
今作は自分でクラウドファウディングで資金を集めた完全自主製作映画。30年前から構想していたが、どんどん戦前に似てきた近頃の風潮に危機感を抱いて実現させた作品だそうです。脚本は瀬々と、崩れていく日本の地方都市を描いた傑作『サウダーヂ』まるで、この身も焦がされるように: 映画『サウダーヂ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)を手掛けた相澤虎之助!。実在したギロチン社の中濱鉄は東出昌大、古田大二郎は寛一郎(佐藤浩市の息子さんだそうです)、大杉の友人だったアナキスト村木源次郎に井浦新(この人大好き!)、女相撲の力士、花菊にはオーデションで選ばれた木竜麻生、他に韓英恵や山田真歩(サイタマノラッパー2)などが出演、ナレーターは永瀬正敏。
ということで、ただのインディ映画じゃありません。『万引き家族』を抑えて、今年の邦画ベスト1という声すら、聞こえてきます。上映時間は3時間9分(笑)
お話はギロチン社の描写から始まります。関東大震災の直後 憲兵隊に虐殺された大杉栄の復讐をしようと、ギロチン社の面々は下手人の甘粕の弟を狙ったり、資金稼ぎのために銀行強盗などを行います。しかし当局の厳しい取締に散り散りになり、中心メンバーの中濱(東出昌大)と古田(寛一郎)は東京近郊の農村に身を潜めます。
ギロチン社の若者たちは格差・差別がない世の中を作る夢を持っています。しかし中濱は何もしないくせに、酒に溺れたり、活動資金で女郎屋に入り浸ったり、非常にだらしがない。古田は生真面目だけど、実行力がない。大言壮語はするけれど、自分たちは厳しい労働に従事したこともありません。ここいら辺はかっての過激派と重なるところもあります。
●ギロチン社の面々
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そこにやってきたのが女相撲の一座です。当時は自動車などの交通機関も発達していません。彼女たちは村々を歩いて旅から旅を続けながら、身体を張って生きています。ここでもう一つの話が語られます。夫からの暴力と婚家から子供を産む道具扱いされることに耐えかねて逃げてきた花菊という新人の女力士(木竜麻生)です。
彼女たちの多くは、女だからという理由で様々な困難を抱えています。花菊のように夫から逃げてきた小桜(山田真歩)もいれば、朝鮮半島出身で関東大震災の朝鮮人虐殺から逃げてきた十勝川(韓英恵)、本土人から差別される沖縄出身の与那国という力士もいます。女性にはまともな職業が珍しかった時代。男・家父長制度の奴隷状態から逃れて、女性が自分の力で生きていく道は中々ありませんでした。その数少ない例外が女相撲です。
●まるで江戸時代と同じように彼女たちは歩いて、村を回ります。2枚目は女相撲の親方。力と知恵を使って彼女たちを世間の荒波から守っています。
●興味本位で集まってきた観客は彼女たちの真摯さに驚き、いつの間にか周囲には歓声が上がるようになります。ここは女子レスリングをテーマにした今春公開のインド映画『ダンガル』新宿アルタ前街宣『#私は黙らない0428』と映画『ダンガル きっとつよくなる』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)に良く似ている。マジもんの運動神経では『ダンガル』には負けますけど、大学相撲部で特訓した女優さんたちは説得力のある相撲を見せます。
最初はただ 物珍しさで見物に行った中濱と古田は、自分たちの力だけで生きて行こうとする彼女たちの真剣さに触れることで少しずつ変わっていきます。
描写が非常に鮮やかです。ギロチン社の若者たちの事績は歴史に基づいているようですが、理想主義的なところも、だらしがないところもストレートに描写される。震災後の朝鮮人虐殺から命からがら逃げてきた十勝川の話を聞いて、中濱が土下座して謝罪するところなんか、見ている側があっけにとられるほど爽やかです。
中濱はアナキストというより詩人です。大言壮語しますけど、遊びばかりで実行はなかなか伴わない。真面目で気が小さく、間違って銀行員を殺してしまったことに悩み続ける古田とは対照的です。二人は、大杉を殺した責任者であり、朝鮮人虐殺を取り締まらなかった警視総監の正力松太郎(読売です!)を暗殺しようとする。お話しの舞台は主に千葉の漁村という設定ですが、まるで日本の村落の原風景を映したようなロケ地、舞鶴の漁村も印象的です。
●詩人の中濱(東出昌大、1枚目)と生真面目な古田(2枚目)。古田を演じる寛一郎は佐藤浩市の息子、三國連太郎の孫です。
朝鮮人虐殺や朝鮮や沖縄の人への差別、農村の貧困も天皇制、侵略戦争も女性たちがモノのように扱われる状況も、この映画はタブーなしに正面から取り上げる。関東大震災で食うや食わずに追い込まれて地方を放浪していた避難民が居た、なんて始めて知りました。
昨今の風潮じゃ、自主制作になるんだろうなあと思いつつも(笑)、当たり前のことを描いているだけなのに、何でこれが自主制作なんだ、と思ってしまいます。今や震災の時の朝鮮人虐殺を否定する政治家すらいる世の中です。震災の時にそういうことがあったのは、ボクだって亡くなった祖父から聞いています。彼らの世代は自分の目で見ているんです。たかだか二世代前の事実を描写することに勇気が必要なんて、まったく世も末です。
●井浦新(写真右)、いいですよね。ルックスだけでなく、こういう映画に積極的に出演する姿勢も好きだなあ。
比較的自由だった大正期は終わろうとしています。貧困が拡大するにつれ、国家は不満を抱いた国民への圧迫を強めます。国民自らも他人、特に弱い者にフラストレーションをぶつけ、自らの不満をごまかします。今も昔も同じです。
この村でその先棒を担ぐのは警察ではなく、在郷軍人会です。『他国への侵略』そのものだったシベリア出兵から帰ってきた彼らは、徒労感を抱いています。彼らが戦場に行ったのは100%ムダだった。本当は自分たちもそのことは判っている。帰国してからも温かく迎えられたわけではない彼らは、地震に乗じて朝鮮人を虐殺したり、それを隠すために軍国主義的な風潮を人々に押し付ける。
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彼らにしてみれば、女相撲などは風紀を乱す憎むべき存在です。朝鮮出身の十勝川を巡る在郷軍人会とギロチン社の面々とのエピソードは実に深い、見事なものに仕上がっていました。十勝川は食うために日本に渡ってきて正業につこうとしたが、関東大震災で命からがら逃げだしてきたばかり。そんな彼女にまた、在郷軍人会がいわれのない拷問を加えます。
人間のクズそのものの連中ですが、今でいうネトウヨそっくりの偏見を振り回す在郷軍人会にも彼らなりの理由がある。無駄な戦争に駆り立てられた心の痛みがある。だから追いつめられると『天皇陛下万歳』を自ら連呼するしかなくなってしまう。天皇制のある種の本質を見たような気がします。ここは白井聡の『永続敗戦論』や『菊と国体』の100倍素晴らしい(笑)。彼らに全く感情移入はできないけど、感動しました。
やがて世の中の貧困はさらに広がり、世相は一層暗くなる。ギロチン社の面々にも女相撲一座にも官憲の圧迫が迫ります。
●花菊(左)に思いを寄せたまま、古田は敢えて警官に捕まります。
前半は素晴らしい。役者さんたちの切迫した表情とストレートな描写に圧倒されるばかりです。ただ歴史的な事実を踏まえているとはいえ、後半はもうちょっと映画的な展開が欲しかったです。特にせっかく良い表情をしている花菊の人生を後半もう少し掘り下げていれば、更に萌える展開は出来たのに、とは思います。『自分が強くなることで世の中を変えたい』と願う花菊の物語はもっと見たかった。
●最初は無力だった花菊ですが、自分が強くなることで世の中を変えたい、と願うようになります。今まで全く対照的だったギロチン社の若者たちと一瞬 線がつながります。
映画の題名『菊とギロチン』は実際に中濱鉄が遺した短歌『菊一輪ギロチンの上に微笑みし 黒き香りを遥かに偲ぶ』から取ったそうです映画『菊とギロチン』瀬々敬久監督&脚本家 相澤虎之助インタビュー | Cinema Art Online [シネマアートオンライン]。
今年の邦画ベスト1かどうかはわからないけど、見事な映画、圧倒的な作品であることは間違いありません。戦前を描いた作品としては宮崎駿(風立ちぬ)や若松孝二(キャタピラー)なんかより遥かに勝っている。完成度はいまいちなところもあるけれど、これだけパワフルな映画は滅多にありません。
時代が傾いていく中で我々はどうやって生きていったらよいか。この映画は3時間に渡って、『今しかない』という問いを観客に突き付け続けます。鮮烈な描写と成熟した視点を併せ持つ日本映画のある種の到達点かもしれません。野心的で爽やかで知的で、生命力に溢れた、今 見るべき映画です。