特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『東電からの原発事業分社化』と映画『ハドソン川の奇跡』、それに『ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル』

このところ急に寒くなり、掛け布団も厚いものに取り換えました。一段と布団の中が恋しくなってきます。布団のなかが一番幸せ! こうなってくると仕事だけじゃなく、街に出かけること自体が億劫になります。特に夜の街が嫌。街は混んでるし、柄は悪いし、帰りの電車に乗れば酔っぱらいは臭いし汚いし。昨日も勤務先のパーティを断ったし、今日も11月の宴会を一つ、断りました。ふざけんなって。挙句の果てにはもう、忘年会がどうのとか言い出すバカまでいます。万策尽くしても逃げられないモノ(笑)しかボクは行きませんが、それでも うんざり。ったく、どこのバカが忘年会とかくだらないものを思いついたんでしょうか(泣)。
                                                             
今週、ボクはコンサートへ行くので官邸前抗議はお休みしました。

TPPも1日と言われている衆院の採決に向けて国会周辺で反対の動きも出ているみたいですね。誰か、きちんとした反対理由を教えてくれたら、ボクも参加するのになあ(笑)。もちろん農協が既得権益を守りたい、というのは理解できますけど、ボクはそれには賛成しかねるので(笑)。
                                        



さて、今週 気になったのは『東電 原発事業は分社化』、『廃炉事業に数千億の追加費用が必要』というニュースです。新聞、TVでも比較的大きく報じられました。が、本当は経産省は何を狙っているんでしょうか。ちょっと理屈っぽくなりますけど、大事だと思ったので少し書いてみます。

福島第1廃炉費用「年数千億円」も 東電自力負担厳しく :日本経済新聞


新聞の記事と見比べながら、実際の経産省の委員会での討議資料を見てみました。ほんの6ページほどのパワーポイントですが、その中の『今後の議論の手順(全体像)』(2ページ)『詳細(論点1)』(3ページ)、『詳細(論点2)』(4ページ)を見て頂ければ彼らの狙いは判ります。
経産省の資料P2〜P4



●ムリ筋の話をでっち上げるのは官僚は本当に上手いと思いました。見事な出来(笑)の資料のPDFファイル: http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/touden_1f/pdf/002_03_00.pdf

この資料の中で経産省は『廃炉や賠償の費用は膨れ上がるけど、新たな国民負担は生じさせない』(P2のシナリオ4)としています。それ自体は結構ですが、そこには裏があります。まず経産省東電を再編することを狙っています。『原発事業を分社化』ではなく、『東電の原発事業を他の電力会社の原発事業と合併させよう』としているのです。日経の26日の記事(後述)によると原発会社を東西2つに作ろうとしているようです。今日28日の日経1面にも『西日本で原発の共同事業化が進んでいる』と出ていました原発、西日本で共同事業 4電力が新会社検討 :日本経済新聞。日経、煽りまくり(笑)。ま、それはいいです。電力会社と切り離すことで原発を潰しやすくなるかもしれない。福島の廃炉費用を押し付けられるかもしれない東北電力は怒ってるようですが(笑)原発運営全般で他社と連携、東北電社長「念頭にない」 :日本経済新聞

                               
問題なのは『廃炉や賠償の追加費用』です。経産省は『現状 毎年800億かかっている廃炉費用は全然足りない』、『現状 毎年2100億かかっている賠償費用も足りない』と言っています。この部分だけが断片的にニュースで報じられています。
しかし経産省は『じゃ、いくらかかるか』という費用の見積もりは出していません。その一方で経産省は『国民負担増とならない形で廃炉に係る資金を東電に確保させる制度を国が用意』と言っています。東電に経営改革を迫るのは良いですが、その中に『毒まんじゅう』が隠れています。
日経のこの記事によると、『柏崎の再稼働で東電の収益は最大2000億/年が上乗せされる』ので、それを原資に国民負担増を防ぐというのです。

東電分社、原発再編促す 経産省提案 :日本経済新聞
●その部分の拡大

つまり経産省再稼働しなければ、国民が廃炉や賠償の追加費用を負担しなければならないと言っているわけです。上手いというか、酷いというか、さすが木っ端役人。やることがセコイ。それより原発を推進してきた経産省文科省のリストラが先だろうって。どうせ、要らない官庁なんだから(笑)。
                                  
まず再稼働で実際に何億収益が上乗せされるのかは判りません。さすがに経産省の諮問委員会のなかでも、コストを出せという話になっているそうです。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20161025-00000022-ann-bus_all

さらに言うと、メルトダウンを5年間隠しとおしたり、35年前のケーブルを使っていて大停電を引き起こしたりするような体質の東京電力原発を触る資格はありません。どう考えたって、もう1回 福島のような事故を起こす可能性ありますよね。今度起こしたらアウト、です。柏崎の再稼働なんかお断りです。事故があったら東京だって200キロ圏内に入ります。だけど福島の廃炉や賠償費用で、カネは更にかかるのも間違いないじゃあ、どうするというのは、国民一人一人が関心を持って注視、声を出していかなければならないでしょう。

                                           
ボクは『原発事故の費用と責任をはっきりさせ、東電のリストラを極限まで進めた上で、国民がカネを出す』 それしかないと思います。脱原発はタダでは出来ないです。それは皆が認識しないといけない。でも、『だからこそ、原発はもうやめろ』って話なんです。これがクソ経産省の言い分をひっくり返すロジック。そこで難しいとか判らないとか、国民が放っておいたら、また経産省や電力会社、御用学者などの原発ムラに我々は食い物にされてしまいます
ボクはそういうの嫌なんですけど!


                                    
ということで、今週は金曜日も映画の感想です。六本木で映画『ハドソン川の奇跡

2009年1月15日、ベテラン操縦士サレンバーガー機長(トム・ハンクス)が操縦する飛行機は離陸直後、マンハッタンの上空わずか850メートルという低空地点で鳥を吸い込んだエンジンが停止してしまう。彼が下した決断は、ハドソン川への着水だった。155人の乗客・乗務員とNYの市民を救った彼と副操縦士アーロン・エッカート)だが、着水は本当に正しい決断だったのか、国家運輸安全委員会当局からの追及が始まった。

                                             
2009年にハドソン川に旅客機が着水、一人の犠牲もなく全員が救い出された事件は多くの人にとって印象が深い事件です。確かに機長はヒーローだとおもいましたし、乗客を救助した船の乗務員や警察・消防などもヒーローだと思いました。911で自信を失っていたアメリカ人が同じNYで、同じ飛行機を舞台にしたこの出来事で自信を取り戻した、というのは良くわかります。その裏に、当局からの追及があったんですね。ちなみにクリント・イーストウッド監督は従軍した朝鮮戦争の時 乗客として載っていた輸送機が不時着水した経験があるそうです。
●実際に湖に飛行機を浮かべて撮影したそうですよ。

映画の方はテンポ良く話が進んでいきます。離陸してから着水するまで3分程度の話を90分、どう話を膨らませるか、またどう間延びしないで見せるか、イーストウッド監督の名人芸です。説明臭さもなければ、押し付けがましさもない、淡々と、しかし盛り上がっていくのは大したもんです。
●今回もひたすら、男の物語(笑)。左は機長役のトム・ハンクス、右側は副機長役のアーロン・エッカート君。


お話は離陸〜着水までの回想シーンと救出されて以降の機長たちの描写が対比されて進んで行きます。一夜にして大衆のヒーローになってしまった機長は困難に直面します。大衆の中に取り残された孤独、不安、それに異例の判断をしたとして安全当局は機長たちを査問にかけます。それは確かにそうだと思います。
●救出されて直ぐ、当局は調査を始めます。

ただ、イーストウッド監督の根本にある、リバタリアンっぽさ組織ではなく個人が大事、という価値観は根底に流れています。ベテラン操縦士である機長は自分の判断を優先させて、ハドソン川への着陸を試みます。それはマニュアルにはないとして、個人の判断を許さない組織としての当局との対決シーンがクライマックスです。ドキュメンタリーじゃありませんので、脚色として過度に当局を悪者にしているところはあるかもしれません。イーストウッド監督はどちらかというと共和党支持、今回の選挙もトランプ支持、というのは何となく理解できます。
●着水すると直ぐ機長は、客室へ向かい乗客の避難を誘導します。今にも飛行機が水没するかもしれないんです。


                                
このような個人と組織との葛藤というテーマはアメリカ映画の伝統のように感じます。ボク自身 子供のときTVで観た『ヴェラクルス』とか『飛べ・フェニックス』、『カリフォルニア・ドールス』などロバート・アルドリッチ監督の作品の影響をすご〜く受けているので、こういう価値観は共有しています。誰も聞いてくれないけど自分の政治的立場を問われたら、ボクは左翼でもリベラルでもなく、分配と自律を重視するリバタリアン左派と答えます(笑)。とにかく(笑)、ハードボイルドな、苦み走った物語です。
●この頃は皆 ガラケーです(笑)。時代の変化って早い(笑)。

●ボクが生まれて初めて見たジェームズ・スチュワート主演映画です。他のキャストもリチャード・アッテンボロー, ピーター・フィンチ, ハーディ・クリューガー, アーネスト・ボーグナインの豪華布陣。子供のとき『生きるっていうのはこういうことだ』って、この映画に教えてもらった気がします。サイコー!

                  

ボクの好きなアーロン・エッカート君がもっと活躍してくれたら嬉しかったけど、それ以外は殆どケチのつけようのない良くできた映画です。結末が判っている元のお話がある点は別にして、感動もするし、スカッともするし、面白いし。個人的な思い入れみたいなものは持ちにくいんだけど、完成度が圧倒的に高い良い映画だと思います。

                                                


                                                                                  
ということで、墨田トリフォニ―ホールでユリアンナ・アヴデーエワ リサイタル』https://www.triphony.com/concert/detail/2015-12-000240.html

                                     
今回の会場は錦糸町で、ボクの家からだと少し遠いんです。雨も降って寒かったし。始めて行ったこの会場は木の床で音も結構いい、パイプオルガンまであります。区営なんでしょうか、異様に立派です。ザ・公務員という感じの係員もやたらと一杯いる(笑)。チラシを見るとコンサートもかなり頑張って色々招聘しているのは判るけど、この半年くらいの公演の目玉が今日のコンサートと能楽役者の公演だけじゃ、先が思いやられそう。駅に隣接しているにも関わらず雨に濡れなければ辿り着けないアクセスのマヌケさといい、悪いけど維持費が負担になる無駄なハコモノの典型例かも。 
                                   
気を取り直して(笑)、アヴデーエワさんは2010年のショパンコンクールの優勝者です。少し前 Eテレで見た演奏が端正だったんで、ちょっと気に入ってたんです。前回 来日の時も券は買ったんだけど、当日 面倒になって行かなかった(笑)。今回は雨も降ってたけど意志を強く持って出かけた次第。根性です(笑)。

<セットリスト>
J.S.バッハ/イギリス組曲第2番 イ短調 BWV807
ショパン /バラード第2番 ヘ長調 op.38
      4つのマズルカ op.7(ナショナル・エディション)
      ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄」
リスト  /悲しみのゴンドラ
      凶星!
      リヒャルト・ワーグナーヴェネツィア
      ピアノ・ソナタ ロ短調

いい感じのセットリストです。バッハの秩序だった世界から始まり、ショパンの情感、嵐のようなリストの名曲『ピアノ・ソナタ ロ短調』へと続きます。初めて聞くアヴデーエワさんのピアノは想像と違って非常に強い音でした。ポリー二先生もユジャ・ワン嬢も音は強いですが、透明感があるパキパキした音です。アヴデーエワさんは音の太さを強調した強い音です。この人はご覧の通り、外観は華やかなロシア美人ですが、音は力強い農夫と言ったらよいでしょうか。ニッコリ笑う笑顔もほっとするような感じで、華やかと言うより素朴な田舎のお姉さんみたいな感じです(笑)。マーケティングの『マ』の字もない。いいなあ(笑)。
                                    
演奏の方は、バッハは良かったんだけど和音を強調するところはボクは少し馴染めませんでした。少し音の濁りもあったし。ショパンはさすが、安定の出来。素敵です。
でも何と言っても休憩の後のリストの『ロ短調』は凄かったです。早弾きのパートが少ない分、音の強さがダイレクトに伝わってきて、かなり感動しました。タメも決めまくってたし。本人も鬼気迫るといった感じで、素晴らしかった。この『ロ短調』みたいな演奏をしてくれるんだったら、ぜひ また見たいと思いました。
<アンコール>
当たり前でしょうけど本当は優雅な演奏も早弾きもバンバン出来るけど抑えていたのが、アンコールで良くわかりました(笑)。