特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『悪夢の軽減税率』と『心のいちばん柔らかいところに届く映画:ラブ&ピース』

週末の天気は厳しかった(笑)。暑くて死ぬかと思いました。最近は疲れやすくなったし、そろそろ目が遠くなってきた老骨の敗残兵に急な気候の変化は辛いです(泣)。
●週末のお昼ごはん:穴子フライとメンチカツ定食(笑)@有楽町。

                                                                     
毎日に引き続いて、朝日、NNN(日本TV)の世論調査でも安倍内閣の不支持率が支持率を上回りました。安保法制にしても、国立競技場にしても、その必要性を国民にまともに説明しようともしないんだもん、当然です。朝日もNNNも安倍の支持率は39%(まだ高い)。これが20%台に下がれば内閣の『危険水域』だそうです。日本のために一刻も速く 退陣してください。日本テレビ世論調査 http://www.asahi.com/articles/ASH7F3FZDH7FUZPS001.html?iref=comtop_6_01
                                                                                                                
土曜日のTBS報道特集安保法案台湾人慰安婦のインタビューという見応えのある二本立てでした。SEALDsの諸君もクローズアップされていて、彼らの話を聞いていると、自分で物事を調べ自分で考えようとする等身大の若者の姿が伝わってきました。日本の若者はこんなに立派だったのか(笑)。こりゃあ、こっちも頑張らなきゃ と思います。ボクが20歳のころはあの子たちの足元にも及ばなかった。番組中『仮に法案が通っても、将来廃案にすればいい』という彼らのコメントには勇気づけられました。自分たちのことだから、という彼らの気持ちが伝わってきたもん。
おりしも就職シーズンですが、こういう子供たちはどんな職業についても、自分で考え、自分で動いて周りを巻き込んで、成果を出していくことができるでしょう。結局は、やるかやらないかだから、です。仕事でも実生活でも机の前で座って偉そうに文句だけ垂れてる奴はいざって言うとき何の役にもたたない、そういうもんです。
もう一つは今 台湾に4人しか生き残っていないという元慰安婦の人のインタビューでした。騙されて南洋に送られ、兵隊の相手をさせられていたそうです。勿論 彼女は逃げることができなかった。顔に深く皺が刻まれた彼女が今も日本語混じりで話すところが悲しい。日本ではいつの間にか強制連行の有無なんて些末なことに焦点があたるようになってしまいました。軍の管理下で、自分の意志に反して理不尽な犠牲になった人が実際にいたんです。一部分にこだわって全体の事実を隠す態度は人間として恥ずかしい、としか言いようがありません。政治色を排して、お婆さんに寄り添うことを第一に考えるサポート団体の若い人たちの存在が救いでした。
                                                        
                    
さて 軽減税率が本決まりになるようで、うんざりです。そもそも消費税の低所得者の負担軽減策は軽減税率と『給付付き税額控除』の2つを政府は検討したそうだ。誰がどんな検討をしても低所得者対策では、軽減税率より低所得者に消費税を還付する給付付き税額控除の方が優れているのは明解ですが、いつの間にか軽減税率の採用になってしまいました。
軽減税率は消費税と同じメカニズムだから、お金持ちの方が負担率が下がり有利です。決まってるじゃん(笑)。軽減税率は消費税の逆進性を二重にするようなものです。消費税には反対する人はどうして軽減税率には反対しないのだろう(笑)。
●食料品に軽減税率を適用したときの所得別負担率(みずほ総研の試算):収入が高いほど負担率は低くなります。http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt150122.pdf#search='%E8%BB%BD%E6%B8%9B%E7%A8%8E%E7%8E%87+%E7%B5%A6%E4%BB%98%E4%BB%98%E3%81%8D%E7%A8%8E%E9%A1%8D%E6%8E%A7%E9%99%A4+%E6%AF%94%E8%BC%83'



一方 低所得者に給付を行う給付付き税額控除のほうは低所得者の緩和効果は当然のことながら遥かに大きくなります。勿論 マイナンバーを導入しなきゃやりにくい、というのはあるけれど、軽減税率の徴税事務よりはマシに決まってます。

●『軽減税率』と『給付付き税額控除』の逆進性緩和効果比較(ニッセイ基礎研の試算。敢えて色んなシンクタンクから引用しています)http://www.nli-research.co.jp/report/report/2014/05/repo1405-2.html


おまけに軽減税率はインボイスを作成提出しなければならないから 『お店の事務が死ぬほど大変』『対象品目の線引きが大変』(例えばイギリスでは冷えた惣菜は軽減税率、温かいテイクアウトは標準税率になるらしい)『対象品目の決定が政治家や官僚の利権の巣になる』などデメリットはいっぱいあります。
                                  

ヨーロッパでは軽減税率の導入は失敗だった、というのが一般的な評価の様です(前述のみずほ総研のリポート)。最近財務省インボイスの事務シミュレーションをしたら大変過ぎてパンクしてしまい、どうしよう、と揉めているそうです(笑)。おまけに、今検討している食料品の軽減税率では低所得者の負担緩和効果はやはりなかったとのこと。低所得者の負担軽減効果がある食品は冷凍食品だけ、だそうです(笑)。
だけど新聞は、自分たちが軽減税率の対象となるように運動してきたから、反対の声はマスコミに殆ど載らない(新聞、TVは経営が一緒)。国民は単純に軽減税率で負担が減ると思い込んでしまう。もしかしたら所得に関係なく多くの人が、自分たちにもカネよこせ、と思っているだけなのかもしれません。もう一回言うけど軽減税率って税収は減るわ金持ちには有利になるわ低所得者の負担は減らないわ売店での事務負担は増えるわ役人・政治家の利権になるわ、ロクでもないやり方です。要するに 一般庶民から金持ちへの間接的な所得移転でしょう。
「軽減税率は戦後最悪の経済愚策」と言う人もいるけど軽減税率は戦後史上最悪の「経済愚策」である | 森信茂樹の目覚めよ!納税者 | ダイヤモンド・オンライン、ほぼ同感です(戦後最悪かどうかはわかんないけど)。





新宿で映画ラブ&ピース
新宿スワン『とめよう!戦争法案 集まろう!国会へ 6・14国会包囲行動』と映画『新宿スワン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)に続く園子温監督の新作。園監督の映画は先週末 もう一本公開されています。観るほうの都合も考えてくれ〜。

ロック・ミュージシャンを志していた主人公(長谷川博巳)は30を過ぎて挫折し、今はしがないサラリーマンになっている。仕事ではドジが続き会社中からバカにされ、気になる女性(麻生久美子)にも声すらかけれられない。孤独な彼は露天商から買ったミドリガメを『ピカドン』と名付けて育て始めるのだが。
                                                                               
園監督が25年前に、主役に忌野清志郎をイメージして書いたと言う脚本を映画化したもの。お話は主人公の自宅にあるTVで放送されている番組で田原総一郎津田大介宮台真司、茂木健一朗が主人公を罵倒するところから始まります(笑)。徹底的なダメ男ぶりを演じる長谷川博巳はまさに怪演。パブリック・イメージを叩き壊すブチ切れた演技に驚きました。

                                                                             
最初はTVのドタバタ劇みたいで正直 嫌〜な感じですが、それでも延々終わらない長谷川博己のダメ演技に感心してしまいました。会社で上司や同僚にド突かれ、家ではカメに会話し続け、歩道ではカメ歩きまで始める。男前の長谷川博巳のファンにはきっとショックでしょう。

                                                              
溺愛していたミドリカメを捨ててしまった主人公が作った『ピカドンを忘れない』という歌は保守的な世の中へのアンチテーゼ、反戦ロックと勘違いされて大ヒット、主人公はスターダムに登っていきます。一方 主人公に捨てられたミドリカメは地下の下水道に流れ着くが、そこでは謎の老人(西田敏行)と棄てられたおもちゃと動物たちが楽しく暮らしています。そこに安息の地を得たカメだったが、可愛がってくれた主人公のことが忘れられず地上に戻ろうとします。

                                            
こうやってあらすじを書いていても、読んでいる人はさっぱり判らないかもしれません(笑)。ボクも見る前はどういうお話か全然理解できませんでした。ただ言えるのは、いつもの園子温映画と違って誰も死なないし、一滴の血も流れません。特撮と童話を社会風刺のスパイスを利かせて料理した奇想天外な、でも極めて上質な作品です。大人が子供の時から心の中にしまっておいた優しい気持ちを思い出させてくれます。だから子供と一緒に見ても大丈夫(笑)。役者陣も長谷川博巳(『地獄でなぜ悪い』に続いて2度目)、麻生久美子(作中 一回も笑わなかった!)、西田敏行(延々 一人芝居を続ける!)、みんな良いし、脇を固めるマキタスポーツや真野恵理奈、神楽坂恵(監督の奥さん)など園子温映画におなじみの役者さんたちの登場も楽しい。チョイ役にも波岡一喜ライオン丸!)が出ていたし、声だけの出演も星野源中川翔子、と飽きさせない。ちなみに主題歌を除く劇中歌は全て園子温監督の作詞作曲。

                                                           
                                                                                           
主題歌はRCの名曲『スローバラード』。この名曲に映画が負けてなかった、それだけでも驚くべき物語です。実際に見てみなければ絶対に判らない、誰もが持っている 心の一番柔らかな部分にやさしく手を差しのべてくるような映画。センチメンタルで優しくて、ちょっとした勇気を与えてくれる。エンディングは号泣必至。やけくそなエネルギーに満ち溢れた怪作、はっきり言って傑作です。