特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

2012年のベスト5(映画編)

今年もいよいよ押し迫ってきたが、街の雑踏を避けて、とにかく家に籠もりたくなるのはボクだけだろうか(笑)。選挙以来 ニュースも一段とムカつくことばかりで、殆どTVを見ることもなくなった。
今日は朝から半身浴をして、17日に放送されたNHKポリーニ特集の録画を聴きながら、本を読んでいた。誰とも話さない、どこにも行かない、この幸せ(笑)。結局 世界は終わらなかったが、もしかしたら終わりに向かって進んでいるのかもしれない2012年はこんな映画を見てきました。トータルでは60本くらい。世間知らずのボクにとって、映画は自分の世界を広げるシミュレーションじゃないか、という気がしてきた(笑)。完全に好き嫌いだけで選んだベスト5はこんな感じです。
                                           
5.『ファミリー・ツリー
事故で人事不省に陥った妻が浮気をしていたことを知った男が、子供たちと一緒に浮気相手を探すロードムーヴィー。暴力やドラマティックなシーンどころか、感情をあらわにするシーンすら殆どない静かな映画。見終わった後 じわじわ来る。今も来てます(笑)。この映画の中には、穏やかな潮風が吹いている。忘れがたい映画。

                                                                  

4.『アルゴ』
偽映画をでっち上げてイランの人質を救出するという実話を基にしたプロットの凄さだけでなく、俳優の好演、演出、どれも言うことなし、ぞくぞくするような傑作。こんな素晴らしい映画を見られただけでもラッキー〜。その割りに自分の中で順位が低いのは映画の質ではなく登場人物に対する思い入れの問題かなぁ。主人公、CIAじゃなかったらなあ(笑)。

                                                           

3.『ヒミズ』、『希望の国
自分に暴力を振るう父親を殺してしまった中学生とその恋人を描いたヒミズ』、原発事故に見舞われた農家の一家を描いた希望の国』。園子温監督が3.11の廃墟をバックに撮影した両作品は、今 芸術に何ができるか、いや、自分たちに何が出来るかってことをボクらに突きつけている。まるでギラギラした短刀のようだ
よく練られたプロットや夏八木勲のどっしりとした名演に加えて、被災地の捉え方がこなれている分だけ『希望の国』のほうが完成度は上だ。確か日経の映画評で『神話的』と評されていたが、原発事故という不条理な現実を切迫感を持って描きながら美に昇華させた、とても壮大な物語だ。だが、理不尽な日常の中で二階堂ふみちゃんと染谷翔太の存在が炸裂する『ヒミズ』の説得力も捨てがたい。ヒミズ』のラストシーンはボクは一生忘れない。どちらも2012年を代表する圧倒的な傑作。全ての人にそれでも、生きろと呼びかける、この2つの表現がなかったら、同時代の惨劇に正面から向き合おうとしない日本という国全体を、ボクは軽蔑したかもしれない。


                                                                                                      
2.『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』
北関東を舞台に、ラッパーを目指す平凡な若者たちを描いた三部作の完結編。安っぽく無機質なロードサイド風景の中で、カネも才能もない若者たちがどうやって生きていくか、をコミカルに、あるときはシリアスに描いている。不況に苦しむ甲府の若者たちを描いた昨年の感動作『サウダーヂ』と話が繋がっているようにすら思える。
ラップなんか全く興味がなかったボクだが、描かれている人間像や環境があまりにもリアルで、この映画で描かれた虚構と現実との区別がつかなくなってしまった。もう、実在の話にしか思えない
絶望的な状況でも『まだ、声出してんぞ』とラップする、おマヌケな登場人物たちにはマジで影響を受けました(笑)。今までボクは、話が通じない人には何を話しても仕方がない、と思っていました。が、この映画を見て、相手が聴いていようがいまいと、自分の意志を肉声で表現することはもしかしたら、凄く大切なことなのではないか、と考えるようになりました。今年デモに行く回数が増えたのも、完全にこの映画の影響です(笑)。
ニートだったり、日雇いバイトで毎日をやり過ごす主人公たちは第1作目で『眼も、夢も、死んでんのさ』と歌っていたが、今作で同じ曲を『眼も、夢も、死んでねえ!』と歌うようになっていたのには本当に感動した

                                                                                        
1.『ドライブ』
昼間はスタントマン、夜は犯罪者の逃亡を助ける運転手をしている孤独な男がふとしたことから隣室に住む人妻を救おうとする
、現代のLAを舞台にした寓話。
奇妙な作品だ。主人公には名前がないばかりか、台詞すら殆どない。だけど どうして、こんなに忘れがたい映画なんだろう。それは、ライアン・ゴズリングキャリー・マリガンという今が旬の俳優二人の好演だけでなく、画面の色彩や音楽、要するにこの映画が体現しているアトモスフィア(雰囲気)だと思う。けだるくて、スタイリッシュで、無慈悲で凶暴な、純愛。この映画のアトモスフィアにシンパシーを感じてしまうのは、きっと、2012年が常に誰かが誰かを見下し続けるような殺伐とした時代だからだ。その中でなんとか生きていこうとする試みを、この映画は体現している。

                                        
●その他
ベスト5には入らなかったが、下に挙げるものはどれも、心の財産?になるような圧倒的な名作だった。
・過去への尊敬と未来への希望に反逆精神をまぶした、『宇宙人ポール』、
・ディカプリオ君がクイアーな権力者の主人公を好演した、『J・エドガー』、
・イタくてイタくて、うれし涙が出てくる、『ヤング≒アダルト』、

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・良い意味でご都合主義のロマンティシズム、『ミッドナイト・イン・パリ』、
・切なくて、いとおしい無差別殺人映画(笑)、『ゴッド・ブレス・アメリカ
・センチメンタルなんだけど溢れるばかりの愛情に無条件降伏、『サニー、永遠の仲間たち』、
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・今ここにある異世界に救いを求めたくなる、『セブン・デイズ・イン・ハバナ
・残酷なスクール・カースト制度へのクリエイティヴなリベンジ、『桐島、部活やめるってよ』、
・エンターテイメントとしてほぼ完璧、主人公が着ていたカーディガンを買いたくなった(笑)『最強の二人
                                                
●番外
月の裏側に生き残っていた金髪ナチスが地球へ攻めて来るというオタクが大喜びしそうなストーリーなのに、サラ・ペイリン(言ってることは安倍晋三そっくり)みたいな無知な似非右翼のほうが、ナチスよりタチが悪いってことしか描かなかったお笑い政治映画アイアン・スカイ
 
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ホントは今年の1位から3位までは順位付けられません、全部大好きだし、いい年こいて、まともに影響を受けました。
勝手なことばかり書いているアホなブログを読んでくださった皆さん、1年間ありがとうございました。良いお年をお迎えください。