特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

面白い、面白い、面白い!:映画『アルゴ』

日曜の朝日朝刊の1面に福島事故の健康被害に対するWHOの予測というものが載っていた。大きな被害ではない、というもので、本当にそうならそのほうがよい。だが3面に『この予測は低線量被爆では被害は生じない、という前提で書かれている』という一文がちらっと書いてある(笑)。おまけに予測を書いたメンバーにはニコニコしていれば放射能は怖くないという山下俊一率いる福島県医大の奴まで入っている(笑)。
この記事には、いまだ世の中では低線量被爆で被害が生じるかどうかは議論が分かれている、という客観的な事実が書かれていない。被害なんかたいしたことない、というこんな記事を出しても不安は募るばかりだろう。3.11であれだけ非難を浴びてもマスコミは全然判ってないようだ。

あと頼むからTVのニュースは野田と安倍と橋下、こんな奴ばっかり映すなよ。こいつらは言ってることは全て同じだ。権力さえ取れれば国民はどうだっていい。こいつらの政党名は権力亡者党だよ。いい加減 こんな連中の翼賛放送やめろっつーの。
そんなニュースばかりのなかでも亀井先生(笑)と小沢の合流は珍しく良いニュースだ。元来 こういう風に政策で一致するところが合流するのが本来だろう。ただ、看板に擬せられている滋賀県知事、どうも腰が定まってない人みたいだし、政治的手腕も?だし、いまいち不安だなあ。今は反原発の勢力が大きくなることが優先だから、それでもいいんだけど。とにかく頑張って欲しい。

                                    

六本木で映画『アルゴ』。
【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|アルゴ
客席に座るとポップコーン臭い。でかいポップコーン抱えてコーラ飲んでる姿ほど人間がバカに見える姿はないと思うんだけど、そんなのばっかりだ。シネコンに入るたんびに客層の悪さに辟易するが、六本木は特に酷い。席の背をけるわ、暗い中で携帯いじるわ、おしゃべりしてるわ、国籍問わず白痴のような客ばかりだ。お前らはきちんとした映画は見に来るんじゃない。TVの続編映画でも見に行ってろ!上映時間の関係でつい六本木にきてしまった自分の愚かさ・弱さを呪ってしまった(泣)。

いや〜な気持ちのまま映画が始まる(笑)。が、画面に70〜80年代に使われていた『ワーナーブラザース』の昔のマーク、赤字にWの文字が出てくると『おおッ』とばかりに嫌な気持ちは忘れてしまった。気合入っているなあ。この時点で、この映画はちょっと違うな、と思った。

舞台は1979年。暴虐と贅沢で国民を苦しめたパーレビ国王を倒したイラン革命アメリカに亡命した国王の引渡しを求めて、イランの民衆はアメリカ大使館に乱入し大使館員を人質に取る。その際 6人の館員が脱出し、カナダ大使の私邸にかくまわれる。彼らを救うためにCIAが取った作戦は、イランで撮影するSF映画を企画し、そのロケハンに乗じて脱出させるというものだった。

                                                 
驚くべき話だが、実話だそうだ。監督、主演は昨年の『カンパニーメン』でリストラされた男の好演が記憶に新しい俳優ベン・アフレック。大学では中東学専攻だそうだ。

冒頭 当時のニュースフィルムが流れる。パーレビが秘密警察によって国民を弾圧していたこと、パリから飛行機で朝食を運ばせるような贅沢をしていたこと、そのパーレビをアメリカ、イギリスが支援していたこと。要するにイラン人質事件はある意味 アメリカの自業自得ってことがちゃぁんとわかる描写ではじまる。ハリウッド映画なのにおかしい(笑)と思っていたら、この映画の脚本を買って、プロデューサーを務めたのはジョージ・クルーニー。彼はインタビューで『俺は大作映画やCMに出演することで、大企業を搾取しているんだ。そのカネで自分がやりたい映画を作るのさ』と述べている。確かにマッカーシー赤狩りを描いた『グッドナイト&グッドラック』、大統領選の暗部を描いた『スーパーチューズデー』など彼が製作に絡んだ映画は地味だが良い作品ばかりだ。ちょっと格好良すぎだよ(笑)。もちろんイランの革命防衛隊が人質に何をやっていたかもちゃんと描いています。

CIAの脱出専門家という主人公を演じるベン・アフレック。髭面でネクタイも緩み、スーツはよれよれ、ギスギスして疲れた表情で登場する。映画でははっきりとは語られないが、私生活では家族とも別居し、組織の中でも陽の当たらないポジションにいるようだ。
●うらぶれた感じのベン・アフレック

この映画の魅力の一つはこういう語り口の上手さだ。事情を説明しすぎはしないけれど、その分 俳優たちの演技が充分すぎるほど雄弁に語っている。ベン・アフレックの当初のうらぶれた表情や次第に生気を取り戻していく様子、アラン・ラーキン(リトル・ミスサンシャインのエロ爺役)が演じるハリウッドのプロデューサーの悪徳ぶりなどは印象深かった。
                                        
●悪徳?映画人の面々と(笑)

                                               
何かが爆発したり(笑)、暴力シーンなんか全然ないんだけど、とにかく最初から最後まで迫力がある描写がてんこもりだ。とくに大使館に押しかけるイランの群衆。暴虐な独裁者を匿うアメリカに対する民衆の怒りが画面に炸裂する。こんなシーン、どうやって撮ったんだろうと思った。最後に実際の記録フィルムから、そのまま再現したというネタ晴らしがあるが、ものすごい迫力だった。
●人質の大使館員たちと(当初の頃とベン・アフレックの表情が違うでしょ)

元の脚本が素晴らしいのは勿論だが、丹念に伏線を敷いては丁寧に拾い上げていくプロットも良い。人間ドラマとしても一級品だ。特に上層部から(バカな)作戦を中止して人質を見捨て撤収するように命令された主人公の葛藤の描写は心に残る。物語はその静けさのあと 一気に急展開する。独断でイランから脱出しようとする主人公と人質たち、正体を暴こうとする革命防衛隊、上層部に作戦中止を撤回させようと闘うCIA本部、LAの偽映画事務所の面々が入り乱れて話が進んでいく緊迫感はもう、忘れがたい。
最後にもう一回 当時のフィルムを流して、今度は泣かせる演出もお見事。

                                                                                                      
とにかく面白い、面白い、面白い!政治ドラマとしても、英雄的な救出劇としても、組織と個人との葛藤の物語としても、圧倒的に面白い。『猿の惑星』や『宇宙空母ギャラクティカ』を登場させたりする映画LOVEの気持ちが全編にあふれているところも愛らしい。
今年見た映画では、ひたすらスタイリッシュな『ドライブ』がダントツだったんだけど、強力ライバル出現。
どうしてこんなに凄い映画が作れるんだろうか!