特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ブルーにこんがらがって(2):『ブルーバレンタイン』

ノルウェーで起きた極右のテロは、ちょっと衝撃的だった。
この傷ましい犯罪が起きた背景には、移民に寛容な労働党政権への不満がある、という話だが、排外的なナショナリズムの台頭というのは日本でも他人事ではない。餃子や尖閣に対するヒステリックな大騒ぎは忘れるには早すぎる(笑)。経済が悪くなるにしたがって、そういう排外的な、そして頭のネジが5,6本抜けた輩は増えていくだろう


もともと お仲間でつるむのが大好きな社会、部外者を排除しがちな日本という国が、これ以上 排外的になったらどうなってしまうのか。
東京電力にしろ、経済産業省にしろ、外部の眼に晒されないから、あのように無能且つ腐敗した組織になってしまったのだろう。『やらせ』をメールで指示するような九州電力の上層部の無能さは、まともに市場競争がない独占企業だからこそ成り立つ話だ。一党独裁共産党と同じだよな。 中国の新幹線事故で『絶対 安全です』と言い張る中国の役人が、『原発は安全』と言い募る経済産業省の役人とダブって見えたのは僕だけだろうか。



関東に引き続いて関西でも節電だそうだが、そこまで言うなら何故 TV放映を日中だけでも中止しないのだろうか。今回の原発事故で、民放はどの局も同じように政府の安全デマを垂れ流す有害無益の存在、パチンコ屋以下の存在であることが誰の眼にもよくわかったはずだ。
と、言うような議論すら、あまり出てこないのも(笑)、TV局の独占体制のなせる業だろう。
TVをつけると時々、政府が節電を呼びかけるCMが流れているが、悪い冗談にしか思えないよ


それでも、原発がないと電力不足で企業は外国に出て行ってしまう、とか言ってるアホ、マスコミの論調がまだ、目に付く。
原発を動かそうと止めようと、日本の企業はどんどん海外に出て行くに決まっている。日本の人件費は高いし、購買人口は減っていくし、円は高い、まして、政治家はアホで、役人は天下り増税ばかり考える、そして東電のような独占企業が跋扈して電気代を吊り上げているような社会じゃ、まともな企業が海外に出て行ってしまうのは当然な話だ原発が動こうと動くまいと、その流れは変わるはずがない。


さて(笑)
先週に続いて、もうひとつ感想を書きたかった映画は『ブルー・バレンタイン』 http://www.b-valentine.com/
かっては愛し合っていた夫婦が崩壊するまでの3日間を、現在と過去を対比しながら描いた、そんな話だ。


結婚3年目の若夫婦。
女(ミシェル・ウィリアムズ)に愛想をつかされて、男(ライアン・ゴズリング)が今にも捨てられようとしているところから、お話は始まる。女の愛情を取り戻そうとして男がやることは、酒瓶を抱えて二人でラブホテルにしけこんで仲直りしようとしたり、酔っ払って彼女の職場へ無理矢理押しかけたり。
それじゃあ、女に捨てられて当然(笑)なんだけど、彼がダメ男になっていったのには理由がある。そして彼女にも理由がある。映画では過去の二人のいきさつと現在を対比して描いていくことで、それが浮き彫りになっていく。
小さなできごとの積み重ねがゆっくりと二人を追い込んでいく。
だけど男も女も根っからの悪人ではない。いい加減だけど、心が優しい普通の人間だ。おそらく、この映画を見ている大多数の観客と同じように、だ。


映画は過去と現在と話が切り替わるタイミングもばっちりで、進行はテンポがよい。救いのないラブストーリーなんだけど、どろどろしないで展開はあっさりと流れていく。
白眉なのはラブホテルでのシーンだ。まるで水の中の撮られたような青い光の中、ミシェル・ウイリアムズの白い肌が艶かしい。だけど血の凍るような冷たさに彩られた、まるで寝苦しい真夏の夜のようだ。この悪夢は美しいけれど残酷で、とても忘れることができない。



見たらどっと落ち込むような気がして覚悟して映画館に出かけたが、なんとか持ちこたえられたのは(笑)、この映画の語り口が大人だから、だと思う。
エンドロールでは、まるで夢の中に咲いているような、鮮やかな花火が描き出される。 過去がいくら美しくても、もう、どうにもならない。こんがらがって糸をほぐすことができない。そういうことって確かにある。


たぶん、この映画はそれでも愛を追求しなさいってことを言いたいんだろうけど、ボクはこんなんだったら一人のほうがいいや、って思ってしまった(笑)。そこまで傷ついて何かを得ようとするって、ワカラナイな。 良くも悪くも、人の気持ちなんて変わってしまうものだ。それなら流れるがままに任せる、しか人間にできることはないじゃないか。


前回感想を書いた『キッズ・オーライト』も、この『ブルーバレンタイン』も傑作で、同じくアカデミー賞候補作だった『トゥルー・グリット』も含めて、受賞した『英国王のスピーチ』より遥かに上だと思うなあ。

ボクらの毎日の暮らしはこんがらがって、どうにもならなくて、それでも生きていかなくてはいけない
人生に色がついているのなら、それはブルーという色に彩られているような気がする、なんて言ったら、言い過ぎだろうか。