特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

告発のとき(ニューメキシコ、L.A.、東京)

映画''In The Valley Of The ELAH''恋活(恋愛活動)をしよう@ネットで恋活
テーマがイラク戦争の欺瞞と帰還兵のPTSDじゃあ、日本じゃあ、あ〜っと言う間に上映は終わりそうだ(笑)。でも監督がアカデミー賞の『クラッシュ』

クラッシュ [DVD]

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ポール・ハギス、音楽はマーク・アイシャム、おまけにスーザン・サランドンが出ている。それじゃあ、見に行かなきゃしょうがない。

冒頭、『これは事実にインスパイアされた物語』という字幕が流れた後 本編が始まる。主人公(トミー・リー・ジョーンズ)は軍(MP)を退役して土砂運搬業を営みながら、妻(スーザン・サランドン)と二人で暮らしている。彼らの二人の子供はどちらも軍に入隊した。長男は軍隊内の事故で死亡、次男はイラクへ派遣されている。ある日次男が行方不明という知らせが届く。納得できない主人公は軍や警察のプレッシャーを跳ね除けながら、シングルマザーの女刑事(シャーリーズ・セロン)と一緒に次男の行方を追う。
そんな話だ。

残された次男の遺品である壊れた携帯の動画が段々と解読されていく。その中で段々と、イラク戦争の無意味さ、戦地での次男が主人公が知っている人間ではなくなっていくこと、が明らかになっていくプロットは素晴らしい。怒りを押し殺して、次男の真実に向き合う主人公の表情からはただ、深い悲しみだけが伝わってくる。老夫婦が子供をすべて軍隊で亡くしてしまったら、どう感じるだろうか。老境に至って初めて、自分の人生はまったくの無意味だった、と感じることは、どんなに残酷なことだろうか。

シャーリーズ・セロンがこんなに良い女優だとは知らなかった。彼女が演じる刑事はトミー・リー・ジョーンズ演じる主人公そっくりなタフさを体現している。警察と言う男社会の真ん中でセクハラと格闘したり、理不尽な権力に抵抗する様はとても魅力的だ。しかし、それでいて彼女が透明な、純粋な美しさを表現しているのは凄い。

更にこの映画でのマーク・アイシャムの音楽は本当に素晴らしい。派手なアクションがあるわけでもない映画だから、どちらかというと画面は沈黙ばかりだ。しかし、ふと気が付くと優しい音色が流れている。重い物語に向き合おうとする観客を寄り添って支えようとしているみたいだ。

あと もう一つ言っておきたいことがある。こういうテーマは日本とは関係ないように思えるが、そうじゃない。サマワでの自衛隊は一体、何をやっていたのだろうか。現地でのマスコミの取材は中国並み(笑)に完全検閲済みだったからな。せめて自衛隊が現地の人の恨みをあんまり買うようなことをしてないことを祈るよ。でも世界中の誰が見たって日本は嘘つきブッシュの共犯だからね(笑)。それにしても、当時 自衛隊の派遣理由を『石油の安定供給』とか『国益』(笑っちゃうね)とか言ってたバカ政治家は今の石油高に対してどう責任をとるつもりなのか。お前の国益はどこへいったんだよ(笑)。

この映画のラストシーンが前作『クラッシュ』と同じだったのは戦慄を覚えた。物語の前半で主人公はアメリカ国旗の上下がわからない、エルサルバドルからきた労働者に国旗掲揚の仕方を教える。「逆さまに国旗を掲揚するのは『緊急事態。誰か助けてほしい』という時だけだ」。しかしラストでは、主人公が自ら、逆さまに国旗を掲揚する。人間が悲鳴を挙げているという点では、本作の舞台のニューメキシコでも、クラッシュの舞台だったLAでも、そして東京でも、起きている事は同じなのだ。

エンドロールで監督は、イラクで亡くなった子供の写真を写し、メッセージを入れている。『(犠牲になった)すべての子供たちに捧げる』 と。