特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

NHKスペシャル『Last Days 坂本龍一 最期の日々』と『夜桜中華』

 新年度になって、宴会が増えてきました(笑)。
 とにかくボクは人と話すのが恥ずかしいし、話すこともないので、宴会、会合、パーティーの類は大嫌いです。若い時は勿論、歳を経るにつれて益々嫌悪は増してきた。

 宴会の8割くらいは出席を拒否していますが、どうしても断れないものは乾杯だけして5分で退席、それでも逃げられないものはウーロン茶だけ頼んであとはニコニコしながら無言で時間が過ぎるのを待つ、で対処しています。我ながらアホらしくて仕方ない。

 飲みたい奴は勝手にすればいいけど、巻き添えは迷惑です。こんなくだらないことばかりやっているから日本の生産性は低いって言われるんですよ。
 最近の若い人には『職場の宴会になぜ残業代がつかないのか』という子もいるそうですけど、尤もな話です。

 日本の若者はこの国の将来を悲観している人の割合が他の先進国に比べてずば抜けて多い、というニュースがありました。


news.yahoo.co.jp

 無理からぬことだと思います。与野党含めた政治家、学者に至るまで、日本の将来の羅針盤を示すような人は立場を問わず、殆ど見かけたことがありません。

 せいぜい、経営者が時折、将来のことを語るくらいでしょうか。オーナー系や長く続く企業の経営者は少なくとも自分の会社の行く末は考えていますからね。
 自社が史上最高の決算でも『円安が日本にとって良いわけない。円安になること自体を喜ぶような人は、ちょっとおかしいんじゃないか。』と断言できるユニクロの柳井の方が、未だに円安に繋がるバラマキや金融緩和を主張している与野党の政治家より遥かにマトモです。

newsdig.tbs.co.jp

 ま、経営者でもこういう低能はいますけど。

news.yahoo.co.jp


 政府がやっているのは誰が見ても判るその場しのぎと高度成長のリバイバル、一方 野党と支持者の市民や学者の多くは環境の変化を見ようともせず、これまた昭和のやり方を墨守するだけです。あとは消費税廃止やバラマキのような訳の判らないポピュリズムやデマばかり
 それでは誰だって将来に希望なんか持てるはずなんかありません。

 

 冷静に考えれば、今は昔よりは良くなったことは沢山あります。セクハラ・パワハラは言うに及ばず、今の季節なら公共の公園で酔っぱらったバカじじい連中が薄汚い宴会を繰り広げていた花見一つとっても昭和なんかロクなもんじゃなかった、とボクは思います(笑)。

 確かに少子高齢化に、テクノロジーの変化、格差の拡大、おまけに日本の周りはきな臭いことばかり、では、気分が暗くなるのはわかります。

 希望を見つけるのは自分自身の問題だから若い人が明るい見通しを持てなくてもボクの知ったことではありませんが、それでも大人の最低限の責任として、女性の社会進出にしろ、テクノロジーにしろ、何か糸口くらいは見つけなければならない。多少は(笑)そう思うんです。
 今の現役世代は残念ながら、政治にしろ、経済にしろ、社会にしろ、落ち目のものしか若い人たちには残せそうもありません。それでも何も手渡せるものがない訳でもありませんから。


 日曜日に 放送されたNHKスペシャルLast Days 坂本龍一 最期の日々』。 
 いつも日曜日は9:30には寝るようにしているのですが、見始めたら目が離せなくなって、つい最後まで見てしまいました。

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 番組は23年春に亡くなった坂本龍一の生活に約2年間、正確には死の1時間前まで密着したものです。正確には遺族が提供した材料を編集したものが多くを占めています。

 ボク自身、坂本龍一と言う人にはさほど関心はありません。無駄な音を使わない彼のピアノソロは好きなのでCDは何枚か持っていますが、それだけです。YMOも殆ど興味がない。

 坂本はNY在住だと思っていたのですが、日本に帰ってきていたんですね。数十年前(笑)ボクが実家に居た頃は坂本が犬の散歩で明治公園に来るのをたまに見かけていたのですが、また明治公園脇の数億ション(笑)に仮住まいをしていたようです。
 恐らく通っていた慶應病院が近いからだとは思いますが、人間は死期が近づくと勝手知ったる場所へ戻りたくなるのかな、とも思いました。彼は近くの新宿高校の出身でもあるし。

 20年の12月には余命半年と診断され、21年1月に手術、その後も転移が見つかり、ずっと入退院を繰り返しました。22年1月の段階ではもう、坂本は非常に苦しそうに見えました。
 それでも3,4日に1冊のペースで漱石哲学書、それに荘子西行などの古典を読み、自らの死を考え続けた。なおかつ身体の循環を良くするという野口整体を続け(ボクもやってます)(笑)、滑稽なポーズをするなど身体に良いと思われることを試し、生きようとした。驚くべき意思の力です。

 同時期に闘病生活をしていたYMO高橋幸宏とのエピソードも心温まるものでした。高橋が軽井沢に住んでいるのは知りませんでしたが、穏やかな自然の中で犬と暮らしていたのは如何にも彼らしい。坂本と高橋の直接の再会は叶いませんでしたが存在はお互い感じていたようです。

 それにしても坂本や高橋より5歳も年長なのに、一人残された細野晴臣の心中はいかばかりか。『まだまだできることは幾らでもあった』という彼の述懐は嘘偽りのないところでしょう。


 坂本は抗ガン剤の治療の影響で、ピアノを弾くと電気が走るような痛みが走っていたそうです。CDを聞いている時はそんなことまで想像もできませんでした。

 以前NHKで放送された22年9月の演奏が休み休みの収録で5時間もかかったというのも良くわかりました。

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 もともと坂本のピアノはド下手にしても(本人談)、ハンディを抱えていた晩年の演奏が無駄な音がない、より研ぎ澄まされたものになっていったのも頷けます。 

 晩年に至っても、ロシアの侵略を受けたウクライナの音楽家との共作や外苑の銀杏並木伐採反対などの運動にも関わり続けた彼は『無数にある全ての社会問題にコミットすることはできない』と、より音楽を突き詰めようとしていたようです。

 彼が言う『音楽だけが正気を保つ唯一の方法』とは世の中の不条理に対してだけでなく、彼自身にとっても、だったのでしょう。彼が指導、サポートしていた東北ユースオーケストラなど人前ではにこやかに振舞っていましたが、カメラの前で一人で音楽に携わる時の彼の表情は鬼気迫るものがありました。

 
 このドキュメンタリーを見ながら思い出したのは、先月に見たフランスの映画監督J・L・ゴダールの遺作『遺言 奇妙な戦争』です。彼は坂本に先立つこと半年前、22年の秋に亡くなった。自ら選んだ安楽死です。


godard-phonywarsjp.com

 遺作は架空の映画の予告編という形式を取りながら、画面に鮮やかな映像のコラージュを並べることで、資本主義に抵抗する人間像を表現しようとしたものです。映画のスポンサーは資本主義の権化みたいなケリンググループのサン・ローランですが(笑)。
 20分程の映像の中に時折、死を目前にした彼のレマン湖畔での生活が挿入されます。

 穏やかな生活、ではあります。時折かなり苦しそうな表情を見せますが、彼は映画を作り続ける。ゴダールも坂本も思想的には非常に近いけれど、ゴダールは自ら死を選び、坂本は最後まで懸命に生きようとした。どちらも意志の人、ではありましたが、この違いはどこから来たのだろう。
 坂本もゴダールも私生活では色々あった人ですが、ともに最後は家族に許されたのは幸せでした。自分が自分自身を許せたのかどうかは判りませんけど。

 ちなみに番組の中で映された、坂本が選んだ自分の葬式用の選曲リストにはサティやフォーレドビュッシーなど如何にも彼らしい曲の中に、ゴダールの『軽蔑』の中の曲が入っています。ボクも流麗で憂鬱なこの曲、大好き。

坂本龍一が「Funeral」に選んだフランス音楽を解説! “教授”のフランス音楽愛が見えてくる|音楽っていいなぁ、を毎日に。| Webマガジン「ONTOMO」


 いよいよ死期が迫り、意識がなくなりつつも、病床の坂本がピアノを弾くかのような手の動きをしていたのも印象に残りました。ボクの亡くなった大叔父は画家でしたが、彼も死の間際、意識を失くしても病床でずっと絵筆を動かす仕草をしていました。あれにはビックリした。

 ああいう人たちは、最後はカネも名誉も愛も他人も要らない、もしかしたら自分という存在もどうでもいいのかもしれない。大事なことは芸術だけなのでしょう。芸術への執念こそが彼らの生、だと思いました。

 芸術家にも、バカの癖に威張り腐っている政治家にも、我々のような凡人にも、死は誰にとっても平等です。この番組を見れば誰もが死を身近に感じるし、それを通じて自分の処し方を考えさせられる。
 美しい映像、60分間完璧に決まった編集も特筆すべきですが、あれを撮らせた坂本も撮ったNHKも偉い。人間の生と死を雄弁に物語るドキュメンタリーでした。 


 今年は 毎年恒例の六本木の桜がいまいちだったので、近所の桜でもう一度 お花見をしました。と言っても昼間は仕事ですから夜にしか桜を見ることができません。

 この辺りは街灯だけでなく、マンションや個人宅でもライトアップしている家が多いです。

 桜を見ながら散歩がてら、碑文谷へ中華を食べに行きました。

 コリアンダーと押し豆腐のサラダ。中華の押し豆腐って美味しいです。生で食べても良し、煮込んでも良し、もっと手軽に手に入れば良いんですが。

 ニンニク風味の冷やした蒸しナス。これは絶品です。柔らかいナスがまるで飲み物のように口に入っていきます(笑)。

 ニラ饅頭。ぷりぷりのエビが入っています。30年くらい前から変わらない味です。

 海老の唐辛子炒め。これは始めて頼んだ料理。ニンニクの芽と海老を唐辛子で炒めてあります。この店はお上品なので?それほど辛くありません。海老がやたらとデカい(笑)。

 鶏と青菜の土鍋煮こみそば。昨年食ったものの中でこれが一番うまかった料理です。スープが最高なのと麺が段々スープを吸い込んで味が変わってきます。麺が伸びた方が美味しいという珍しい料理(笑)。


 こちらは違う日。
 ローストダックと鶏飯。渋谷と恵比寿の間に新規開店したシンガポール料理の店。御主人はマレーシア人で英語しか通じないので異国気分が味わえました(笑)。野菜が少ないけど、店はお洒落だし味は美味しかった。焼いた鴨はとても柔らかかったし、鶏のスープはかなり美味しかった。

 豚の角煮そば。こちらも新規開店した新宿の中華麺専門店『百味麺館』で食べたもの。パクチー大盛の混ぜそばです。目玉焼きが載っているのも珍しい。肉もデカいし、味も美味しいんだけど野菜が少なかったのは我ながら失敗でした。こういうものを食べると確実に太る。

 ここもお店の人もお客も中国人だけ。テーブルにはこんな宣伝が(笑)。時代を感じます。同じ日本に居ても彼らは希望を感じているんだろうなあ。

「福田村事件2」か「人間喜劇か」(笑):映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

 この週末で東京の桜も満開になりました。60年代 ’’Violets of dawn’’という美しいフォークソングが有りましたが、夜明けの桜も美しいです。

 


 昨晩日曜夜のNHKスペシャル、『Last Days 坂本龍一 最期の日々』、文字通り珠玉のようなドキュメンタリーでした。NHKすごいと思いました。この感想は次回に(笑)。

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 それにしてもこの週末、日本が変わるには外圧しかないな、と改めて思いました。台湾と日本の地震への対応の差を見れば、日本の為政者のレベルが著しく低いことがわかる。

 ボクも最初は石川あたりだと道路事情も大変だろうなーくらいにしか思っていませんでした。我ながらマスコミに流されていたんですね。

 他国と比べなければ、同調圧力の強いムラ社会、日本のおかしさは中々可視化されない。そのためにも日本は世界に向けて社会を開いていかなければいけないと思います。たとえそれが平和主義だろうと世界の中で孤立するのが一番よくない。

 明治維新にしろ、太平洋戦争にしろ、日本人は自縄自縛のムラ社会に住んでいる奴隷民族で自浄能力はないと思います。戦前と戦後、日本人のフィロソフィーは変わってない。

  今の日本の現実はこういうこと↓。アメリカの51番目の州だって分不相応でしょう(笑)。

 冷静に考えたら戦後民主主義自体、アメリカからもらった借り物なんだから、時が経つに連れて劣化していくのは当たり前かもしれません。

 映画としてはあまり評価できませんが、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』が象徴的に描いています。この中国版のポスターが描いているように崩れていく小さな理想世界(戦後民主主義)に閉じこもり心中するのか(宮崎)、過去のノスタルジーに逃避するのか、不確かな新しい世界に自ら出ていくのか今はそのことが問われていると思います。
 どの扉を開けるのか、選択は我々の手の中にある

 日本の政治家がダメなのは間違いありませんが、問題はそれだけではない。昨晩の坂本龍一のドキュメンタリーもそうでしたが、我々自身の生き方や生活そのものが問われているのだと思います。 


 と、いうことで、新宿で映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2

1980年代の名古屋。映画監督の若松孝二井浦新)は自分の映画を自由に公開したいと、名古屋でミニシアター「シネマスコーレ」を開業する。池袋の映画館「文芸坐」を退職してビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治(東出昌大)が支配人として雇われる。経営は厳しいが、映画に魅せられた若者、金本法子(芋生悠)や井上淳一(杉田雷麟)らが集まってくる。

www.wakamatsukoji.org

 60年代 若松孝二監督が若者たちと映画作りに奮闘する日々を描いた『止められるか、俺たちを』の続編。今作は80年代の名古屋に若松監督が作った映画館で現在も存在する『シネマ・スコーレ』の支配人やそこに集まってきた実在の若者たちの姿を描いています。

 監督は前作や『福田村事件』の脚本を担当した井上淳一。前作同様 若松監督を井浦新が演じ、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟、コムアイなどが共演。


 前作の『俺たちを止められるか』は大好きな映画です。
 井上淳一の脚本は古臭いし説明がくどいのですが、60年代のそういう人たちのドラマだからそれ程気にならない(笑)。
 それを名手、白石和彌監督がうまくまとめ上げた。女性助監督の眼から描くことで現代にも通じる普遍性を獲得していたし、何よりも井浦新門脇麦が素晴らしかった。
 実質的には若松監督ではなく、夭折した実在の女性助監督を演じた門脇麦の青春映画になっていました。まるで水のように透き通った、それでいてヒリヒリやけどするような感性が表現されていた稀有な映画です。

 今作は、その(笑)井上淳一が脚本だけでなく監督も手掛ける、しかも井上本人のエピソードも入る、とのことで見る前はかなり不安でした。
 もともと、この人のセンスはかなり問題があります。井上が脚本を書いた昨年の『福田村事件』はオールスタードラマとしての面白さはあったけど、台詞はくどいし、やたらと言葉で説明するし、何よりも人物描写が上っ面だけでドラマとしては酷かった。物語のキーとなる主人公のトラウマとなった事件を映像ではなく台詞で説明してしまうし、朝鮮人を虐殺する側の内面は殆ど描かれなかった小学校の学芸会か、と思いました(笑)。

 この映画は福田村事件と同時期に企画され、出演者も被っています。両作とも主役が井浦新であるだけでなく、共演者は東出昌大コムアイ田中麗奈と共通する人も多い。東出とコムアイに至っては『福田村事件』と同様、カップルの役です。内容も在日朝鮮人の問題など共通する部分がある。プログラムによると井浦は撮影中、この映画を『福田村事件2』と呼んでいたそうです

 見る前は悪い予感しかない(笑)。さあ、どんな映画でしょうか(笑)。


 舞台は80年代初頭。TVは全盛で家庭用ビデオも発売された時代。TVに押されて映画はヒット作もなく、どこの映画館も閑古鳥。60年代に一世を風靡した大島渚や若松の映画は名画座以外では公開されません。

 その中で若松は家賃が安い名古屋の風俗ビルの一角に自分の映画館を開こうとします。自由に映画を公開するためです。支配人として抜擢したのは池袋の文芸坐で働いていた木全純治(東出昌大)。妻(コムアイ)を養うためにビデオカメラのセールスをやっていた木全を若松は口説き落とします。
●木全(東出昌大)(右)と若松(井浦新

 映画館は『しねま・すこーれ』(映画学校)と名付けられます。木全は木全で、自分の好きな映画をかける理想的な映画館を作ろうとします。バイトに映画好きの学生、金本法子(芋生悠)や井上淳一(杉田雷麟)も集まってくる。しかし名画座でかかるような映画ではお客さんは来ない。映画館は大赤字が続きます。

 経済的な観念も発達している若松はあっさり当初の理想を翻し(笑)、木全に当時流行っていたピンク映画を中心に興行するよう命じます。
 ところが当時のピンク映画は滝田洋二郎周防正行黒沢清など後年 名を成す映画監督がやりたい放題に作った作品が混じっていました。木全たちは映画の新しい可能性を見出していきます。

 この映画の題名の『青春ジャック』はいかにもセンスがないですが、かって若松監督が70年に作ったピンク映画『性賊 セックスジャック』という作品のもじりだそうです。

 ボクは未見ですが、題名の『セックスジャック』は当時頻発したハイジャックのもじり、内容は(井上のような)おとなしい青年が日本共産党の本部を爆破するものだそうです(笑)。其の頃からすでに、共産党は体制側の存在だったからです。でも、そんな映画、ピンクでもなんでもないじゃないですか(笑)。

 しねま・すこーれでバイトする金本も井上も映画を作ることが夢です。しかし、自分が何を描きたいかすら判らない。その挙句、井上は名古屋を訪れた若松に衝動的に弟子入りを志願します。

 最初はどうなることかと思ってみていたんですが、面白いです。出演者がめちゃくちゃいい。魅力的です。東出昌大黒沢清監督の『スパイの妻』などで素晴らしい俳優であることは判っています。この映画でも独特のキャラクターである木全(もちろん 実在の人物)を魅力的に演じています。

 また『福田村事件』でも素晴らしい雰囲気を出していたコムアイが木全の妻を演じていて、またいい。元『水曜日のカンパネラ』のボーカルですが、演技をしている方が全然素晴らしい。妖艶だけど強固な意志を垣間見せる、自立した女性像を表現しています。定型的にはとらえきれない不可思議な人間像です。

 なんといっても最強なのが芋生遥小泉今日子が製作した映画『ソワレ』でも素晴らしい演技を見せていたし、

spyboy.hatenablog.com

 少し前に見た『夜明けの全て』でも強烈な存在感を放っていました。

 この映画でも素晴らしかった。この人が金本というキャラを演じることで映画全体のレベルがワンランク上がった不安定で、脆くて、でも逞しさを感じる役柄をよく表現したと思う。

 『ソワレ』でも感じたんですが、ボクはこの人、本当に好き💛

 井浦新の若松監督役もいよいよ堂に入ってます。モデルでもある美形の井浦新とヤクザ・キャラの若松監督はどう考えても対照的な存在です(笑)。
 ここでは適当で金にうるさいけれど、映画が大好きで常に後進のことを気にかけていた若松監督を、井浦は本当に楽しそうに演じている。乗り移ってるのかも(笑)。

 ここで描かれていた80年代の風俗や自由な表現が許されていたピンク映画が下火になってアダルトビデオに置き換り、今度はミニシアターが輩出する映画界の流れも興味深かった。東京の人間嫌いの学生だったボクが過ごしてきた80年代とはずいぶん違う、とは思いましたが、これはこれで面白かった。当初はピンク映画中心だったしねま・すこーれはミニシアターとして活路を見出し、現在に至っています。

 若松が河合塾のPR映画を作っていたり、そこに竹中直人が出ていたのも全く知らなかった。この映画では竹中自身がそれを再現しているんです!
 国外脱出してパレスチナゲリラに加わっていた元若松プロ足立正生と若松監督が秘密裏に連絡を取り合っていたエピソードも面白かった。若松も公安の監視下にあったようです。もう、何でもあり!(笑)。

 後半描かれる井上自身のエピソードはどうでもよかった(笑)。しかし金本と対比させることによって、うまく相対化されていたからOKです。表現することへの情熱は伝わってきました。金本も井上も映画の名を借りて、自分探しを続けている。一方 若松や木全はそんなところを超越している(笑)。

 映画全体を見れば演出の感覚は垢ぬけないし、相変わらず台詞も説明が多い、日経の映画評でも『台詞で説明して済ませようとするラストシーンを泉下の若松監督が見たらどう思うだろうか』と苦言が載っているほどです(笑)。

 映画の中で若松監督は『人を殺す側の痛みを描かない映画はだめなんだよ』とか『映画は映像で伝えるもので、説明するものではない』と言っていました。本当に若松の言葉でしょうけど、まるで『福田村事件』の欠点を挙げているかのようです。井上監督は自分でもわかってるのか(笑)。

 それでも、この映画は面白いんです(笑)。自分でも不思議でした。見終わってから、その理由をずっと考えていました(笑)。
 まずは俳優陣が井上のダメ台詞を乗り越える素晴らしい演技、熱気を醸し出しているから。井浦新や芋生遥、東出昌大コムアイと主な出演者はどれもサイコーです。出演者が19人も集結した舞台挨拶の記事を見れば、現場にはそういう演技を引き出すような磁場があったに違いない。

www.sponichi.co.jp


 何よりも、この映画には若松監督を始めとした登場人物に対する深い深い愛情が感じられます。バカで性急で視野は狭いけれど、一生懸命 80年代を生きていた人たちをコミカルな視点で愛情を込めて描いている。その根底にはこういう人たちがいたことを伝え、存在を肯定する使命感があります。
 まさに人間喜劇サローヤンみたいです。

 『福田村事件』と脚本、主な出演者は全く同じだけど、見終わった感覚は全く異なります。すごく気持ちが温かくなるユニークな映画です。
 面白いだけでなく、ボクはこの映画が大好きです。この映画には人間への愛がある。もしかしたら今年のベスト1かもしれないと思うくらい好き(笑)。

 井浦新は『止め俺3は俺が作る』と言っています(笑)。それもまた、楽しみです。
 ボクはバカは嫌いなんですが、正確にはバカには2種類ある(笑)。こちらのバカは断固支持します(笑)。


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『政界与太話』と『お花見@六本木』

 東京では昨日 桜が満開になりました。近所の桜もまるで咲き誇っているかのよう。
 満開が4月にずれ込むのは7年ぶりだそうで、地球温暖化とはいえ、そんな年もあるんですね。


 今週 新年度の挨拶で銀行の部長さんから面白い話を聞きました。
 その銀行では4月から定年が65歳に延長になったそうです。『さすが、御社は余裕がありますね』と言ったら、『定年が60歳の今でも、社内で定年退職する人を見たことがありません』と言ってました(笑)。

 確かに大手の銀行では’’普通は50半ばまでに子会社や取引先に出向させられてしまうので、定年まで会社に残っている人は稀’’と聞きます。それだったら定年が65歳に伸びても経営上は何の問題もありません(笑)。さすがは銀行、金の亡者、わざわざ制度にするところが悪知恵を利かせています(笑)。新卒募集のパンフにでも大書するのでしょう(笑)。
 
 部長さん曰く、『定年退職で職場で花をもらっている光景なんてTVの中でしか見たことがない』そうです。銀行やコンサル、広告代理店とかは世の中に貢献しない虚業(ブルシット・ジョブ)とボクは思っているので、どうでもいいんですが(笑).

 まあ、世の中厳しい(笑)。特に日本のように公助が乏しい国では毎日が綱渡りです。


 この前、定期的に話を聞いている、官邸や政党にアドバイスをしている学者さんの話を聞きました。以前ブログに書いた『裏金を朝日などのマスコミにリークしたのは岸田(の側近)』という話を聞いた人です。

 官邸としては『安倍派潰しは計算通りだったが、自民党の支持率がここまで下がるのは誤算だった( 笑)』そうです。
 確かに安倍派潰しは着々と進んでいます。二階も世耕の衆院鞍替えが消えてドラ息子に地盤を譲ることが出来て喜んでいる(笑)。和歌山のスケベ宴会のリークも世耕潰しでしょ。

 しかし支持率がここまで下がることまで思いが及ばなかったのは党内政治しか頭になかったんでしょう。確かに野党の支持率も大して上がっていませんが、国民の反応を読み誤った。

 今 官邸は6月解散、7月選挙を狙っているそう。その前に外交で得点をあげようとしたが、北朝鮮に暴露されて失敗(笑)、しかし6月の実質賃金は各企業の賃上げでプラスになるのは今から判っているので、それを狙っていると聞きました。

 それでも自民党内では岸田への反発もあって岸田退陣は既成事実化しており、次は上川か茂木か、という情勢だそうです。
 元岸田派の上川は岸田の院政になる場合もあり得ますが、それでも党内の評価が高いそうです。昨年の外遊の結果もあるでしょうが、何よりも上川はオウムへの死刑判決を独断で執行して以来 本人だけでなく、子供も含めた家族にもずっとSPがついており、党内でも一目置かれているとのこと。上川は一生SPが付かなくてはならないかもしれない、とも言われています。

smart-flash.jp

 小池百合子も絡んでくるようですし、また状況は変わるでしょうけど、確かなのは岸田が退陣しても何も変わらないということです。政治家だけでなく、裏金や買収で動く有権者もいるし、何よりも国民の半分が投票に行かないのでは大勢に変化はない

 政権担当能力がない野党は相変わらず蚊帳の外で、それも仕方ないです。せめて与党の議席が減って、衆院で全体の7割以上を占めている自民・公明・維新の議席が3分の2を割ればありがたいけど、そこまではムリか(笑)。

 日本の政治が機能するためには与党に対抗できる野党が必要です。そのためには現実的な視野に立つ野党とまともな有権者が必要です。

 棄権するようなバカは論外ですが、野党の支持者だって、例えば紅麹のことまで安倍やアメリカのせいにしているようじゃどうにもならない(笑)。安倍の長期政権は国民の選択の結果だし、アメリカだってソ連だってロシアだって中国だって自国の利益を図って工作をしてくるのは当然です。日本だって海外でもPR会社を雇っているのだから程度の差こそあれ、大きな違いはない。

 かっての自民党社会党にCIAやKGBのカネが入っていたことや読売や朝日の社長がCIAのエージェントだったことは情報公開で判っていますが、これからも似たようなことは続くでしょう。

 野党や支持者がそんなくだらないことばかり騒いでいたら、大多数の無党派は仕方なく?自民党や維新へ投票する。まともな人間なら誰だって頭がお花畑の政治家には投票したくないし、自分やこの国の将来が心配でしょう。

 そんなことで騒いでるヒマがあったら、これから自国はどうしたらよいか、を考えるべきです少子高齢化対策や産業構造の転換、社会のデジタル化や安全保障、やらなければいけないことは幾らでもある。ほんと、今のままでは間に合わない。日本は先進国の周回遅れなんですから。



 例えば、これ。この八代という学者は普段は新自由主義的ですが『岸田の少子化対策は単なるバラマキで、効果を上げるには婚姻率を高め、女性が働きやすくする政策が必要。財源も現役世代に負担が大きい健康保険料ではなく、どうして全世代が平等に負担する消費税を財源にしないのか』という意見は正に正論です。

president.jp

 どうして野党はこの程度のことが言えないのか。

 現実的な政権担当能力がある野党が日本に誕生するまで、あと10年くらいはかかるのでしょうか。問題なのは政治家だけでなく、国民の知的水準も含めた民度の低さ、です。
 


 3月最後の土曜日は ここ数年 恒例になっている六本木へお花見に行ってきました。
 毎年 この時期は東京の桜は満開か散り始める頃ですが、今年はまだ1分か2分。
 でも、お皿の上のお花見がメインだから大丈夫(笑)。料理も桜尽くしです。

 アミューズ。これ、なんだっけ(笑)。クリームっぽい味は覚えているので、ピスタチオか山菜のムースかなあ。

 酢漬けの赤キャベツのタルト
 単なる酢漬けではなく、ジェニパベリーなどハーブが色々入っていて複雑な味と香りが美味しかった。

 ブラッドオレンジと人参のムース
 オレンジの酸味と人参の甘みが程よく上品で、これも上手い。

 最初の前菜は大根にビーツ、バターナッツカボチャ、紫芋、セロリ、キュウリなど様々な野菜のペーストを挟んだ上に甘酸っぱいソース、その上に黒トリュフ!
 この時期でもまだ、フランス産の物だそうです。目の前で削った黒トリュフは最盛期に負けない、良い香りでした。この店は大手系列(ヒラマツ)ですが大量仕入れだけあってトリュフの質の良さ&リーズナブルなのは感心します。

 レアな甘エビと香ばしい桜エビ
 甘エビと蕪のコンビネーション。上には海老のオイル、ロゼシャンパンのピンクの泡、桜の花をかたどった桜エビのお煎餅。

 蒸したキンメダイにシャンパンソース
 毎年シャンパンソースの料理が出てきますが、今までよりバターが減っていたのはGood。下はみじん切りにした生の白アスパラ。こういうのはレストランならでは。家で真似しようとも思いません(笑)。

 和牛のポシェ
 ロースを牛のコンソメでしゃぶしゃぶして半生の状態、肉の味もコンソメの味も濃厚でした。あわせるのは肉汁と苺系のソースにビーツと大根、ピンクペッパー、緑のハーブオイル。美味しいとは思うけど、やっぱり和牛は脂っこい。

 桜のアイスクリーム、下には粗くジャム状にした苺とミント。

 フロマージュブラン、下には苺とルバーブ飴細工とクッキーで花の形が作ってあります。

 そろそろ外が恋しくなってきました(笑)。

 温かい夜だったので、お茶と最後のデザートは店の外のテラスで頂くことにしました。

 テラスは5Fですが目の前は公園なので遮るものがありません。六本木の夜景が拡がっています。

 タルト・シトロンとハーブティー

 赤坂方面。TBSや虎ノ門ヒルズが見えます。

 目の前にあるこのタワマンは麻布台ヒルズが出来るまで日本で一番値段が高いマンションだったそうです。確か20億くらいだったと思います。
 ここに住んでいた元SMAPの草薙君が泥酔して、目の前の公園で全裸で寝込んで警察のお世話になったのは有名です(笑)。

 ガラスの柵の向こうには桜並木が拡がっています。ライトアップはされていますが、今年の桜はまだまだです。本来なら特等席でゆったりお花見ができるんですが、こういう年もあります。

 お会計を済ませて、下に降りていきました。

 桜はまだまだですが人が少ないのは良いです。

 桜は生憎でしたが、人も少ないし、お腹は一杯になったし、楽しかったです。今年はもう1回お花見をしなくちゃいけないかな(笑)。