特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

分断を乗り越えて:映画「あのこは貴族」

 3月も終盤に差し掛かりました。早いですねー。
 週末はお花見にも行ってきたのですが、今日は映画の感想に集中したいと思います。


 銀座で映画『あのこは貴族
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anokohakizoku-movie.com

 病院経営の医者一族の末っ子、榛原華子(門脇麦)は結婚寸前で恋人に振られてしまう。高級住宅地、松濤で育ち、エスカレーター式の名門女子校を卒業した華子は既に20代後半、同級生たちは専業主婦に収まり、出産した子も多い。『結婚こそが幸せ』と思い込んでいた華子はお見合いを繰り返した結果、良家出身で容姿端麗な弁護士・青木(高良健吾)との結婚が決まる。
 ある日 華子は青木の携帯に時岡美紀という女性からのメッセージが入っているのを見つけてしまう。時岡美紀(水原希子)は富山から上京、慶應大学に進むものの学費が不足して中退、その後 大企業で働いてもやりがいを感じられず、恋人もおらず、東京で暮らす理由を見いだせずにいた。全く異なる生き方をしていた2人の人生が交わっていく。

 予告編を見て面白そう、とは思ったのですが、あまり関心がないテーマなのでスルー予定でした。しかし1か月のロングラン上映が続き、あまりにも評判が良いのと小泉今日子がパンフレットに推薦の長文を寄稿していると聞いたので見に行った次第。

 余談ですが小泉今日子は先月の朝日新聞の連載インタビューで『コロナ禍でジャック・アタリの利他の話を読んで影響を受けた』と話していました。大晦日の紅白に出演した後 暴走族の友人と初日の出暴走に出かけていたと言う厚木のヤンキー(笑)だった人です。そういう人が今は、’’ジャック・アタリ’’とか言っている。元々ファンでしたが、一層好きになりました。

 
 映画の原作は山内マリコによる同名小説、監督は岨手由貴子と言う人。ボクはどちらもお初です。
あのこは貴族 (集英社文庫)

あのこは貴族 (集英社文庫)


 映画は主人公の華子(門脇麦)がタクシーに乗って、人気のない正月の東京を走っているところから始まります。窓から無言で外を眺めている華子に運転手が『お客さん、東京の人でしょう。』と話しかけます。そう、彼女は家族が一堂に揃う食事会に出るため、都心のホテル(オークラ?)に向かっているのです。

 お正月、東京の住人がオークラやオータニのようなホテルで一族の食事会をするのって、結構ある光景です。多くの場合年寄りを囲んで、既に結婚して独立した子供や親せきが集まって食事をして顔見世をする。年寄りが生きている時はボクの家もそうでした。お正月にこういう食事会をする人たちって案外多くて、ホテルの普通のレストランでも1か月前に電話しないと予約がとれなかったりします。高くて不味いんですけどね(笑)。

 華子の表情はどこかうつろです。窓の外ではオリンピックの工事が着々と進んでいる、華やかだけど空疎な東京の景色が広がっています。
●華子(門脇麦)。病院経営の医者一家の末っ子

 この映画 華子がタクシーの中から街を眺めるシーンが度々出てきます。彼女は常に眺めているだけ、傍観者なんです。
●末っ子ということもあって、華子は常に誰かに頼って生きてきました。悪気があるわけではありません。生来ののんびり屋という性格と単純に家が裕福だからです。

 ホテルに着いた彼女は懐石料理店の個室に入っていきます。彼女の実家が非常に裕福であることが良く判ります。それもそのはず華子の親は代々医者で、病院を経営しています。華子も親と一緒に松濤の豪邸で暮らしている。松濤って言うのは渋谷の奥の地域で田園調布なんか目じゃない、東京でも指折りの高級住宅地です。
 実は華子はこの日、結婚を意識していた婚約者に『重い』と言って振られたばかりだったのです。

 華子は20代後半、仕事を辞めて家事手伝いをしています。エスカレーター式の女子校を卒業した彼女の同級生たちは、親友の逸子を除いて結婚して専業主婦になったり、出産を控えています。大人しい華子は口には出しませんが、流石にこの状況には焦りを覚えている。
 食事会に集まった親兄弟たちは早速 お見合いの相手を見繕い始めます。
●華子と女子大時代の友人の逸子。同級生たちは結婚や出産しており、残っているのはこの二人だけ

●華子の親友、逸子(石橋静河)はバイオリニストとして何とか生計を立てています。

 お見合いを繰り返すうちに彼女は弁護士の青木(高良健吾)に出会います。ハンサムで女性に優しい、慶應幼稚舎出身の弁護士です。お見合いではロクでもない男にしか巡り合わなかった華子はやっと出会ったまともな男に夢中になります。
●青木(高良健吾)は政治家も輩出する名家の出身。慶應幼稚舎出身(笑)の弁護士。女性に親切だし、ジェントルマン。

 婚約することになった華子が初めて青木の家に行くと、華子の松濤の豪邸がかすむような数千坪もある超大豪邸でした。青木は黙っていたのですが、彼は政治家や経営者を排出する代々続いた名家の出身だったのです。病院経営の華子の一族の遥かに上を行く『上流階級』でした。まるで貴族のようです。
 ちなみに青木の大豪邸を見て、ボクは毎年 松濤の大豪邸の広大な庭でガーデンパーティーを開いているという麻生太郎(本人は学習院だけど、息子は慶應幼稚舎)を連想しました。
●青木と華子は青木の大豪邸で結婚式を挙げます。

 しかし金があるからと言って幸せになれるわけではありません。青木もその親や親戚たちも、家を守っていくことが最優先です。華子に求められるのは家の仕来りを守ると同時に跡継ぎの男児を産むこと。今まで自分の意思をはっきり示したことがないまま育ってきた華子は不満を覚えつつも、周囲に従うしかない。
 そんなある日 彼女は青木の携帯に時岡美紀(水原希子)という女性からのメールが届いたのを見つけてしまいます。

 ここから物語は時岡美紀の話に移ります。彼女は富山の普通の家庭で育ち、慶應大学に入学しました。なんでここだけ実在の大学名なのかと思ったのですが、そうでなければ成り立たない話だからです。
●時岡美紀(水原希子、左)と親友、理英(山下リオ)はともに富山から慶應に進みました。

 
 映画の中の美紀だけでなく、慶應に入学すると大抵の人は、『内部生』と呼ばれる付属校からの進学者と外部から入学してきた『外部生』とのあまりの違いにカルチャーギャップを受けます。

 高校から入学したボクにとっても正直、驚きの世界でした。内部生、特に幼稚舎(小学校です)からの生徒には数代続いた政治家や経営者、芸能人の子供が大勢います。大物ヤクザの子供もいる(笑)。要するに一般人とは生活が全く違う。
 ボクが印象的だったのは、内部生の子が学校が雇っている掃除の人の面前で平気で廊下にゴミを放り捨てていたこと。公立校で自分たちで掃除をするのが当たり前だと思ってたボクはその傍若無人さにショックを受けました。『死ね』とは思いましたが(笑)、そういう環境で育っただけで彼らには悪気はないんです。あと内部生には時々金持ちで頭が良くて、尚且つ性格もめちゃくちゃ良い奴もいる。これはどう考えても勝ち目がない(笑)。

 幼稚舎出身者は概して一握りの超優秀な奴と大多数のおバカちゃんに分かれますが、幼稚舎の時はずっとクラスが変わらないので、家族ぐるみで結束が固い。つながりは生涯続いていく。大学に入っても、交友関係は自然と外部生、内部生と分かれるようになります。
 高校から入学したボクも大学に入った時点では外部から来た子には内部生とみられます。同罪です(笑)。それでも幼稚舎出身者とは姿恰好からして違う(笑)。というか、身分、人種が違うといっても良いかもしれない。
●理英も美紀も東京の女子大生、特に慶應の学生の派手な生活には戸惑うことばかりです。

 富山から上京してきた時岡美紀も内部生とのあまりの違いにショックを受けます。しかし、そのあと地方出身の外部生は反動で、滅茶滅茶派手に遊びまわるようになるのがだいたいのパターン(笑)。東京の人の方が概して地味に過ごしているものです。
 そんな時 美紀はバリバリの幼稚舎出身者 青木と知り合うことになります。
●青木(左)と美紀。悪気はないんだけど要領がいい、幼稚舎出身の内部生の描写もめちゃめちゃうまい。感心しました。
 

 その後 富山で働いていた父親が失業した美紀はキャバクラに勤めて学費を払おうとしますが挫折、学校を中退してしまいます。
 しかし美紀は富山に帰ることもできません。市街地は空き店舗ばかりだし、良い仕事もない、多くの若者は親の跡を継ぐしかない。若い奴はヤンキーばかりだし(彼女の弟が乗っている超低車高の車は笑いました)、おっさん連中は女性を愛人か家政婦としてしか扱わない。美紀はそんな冨山から出たくて、慶應に入ったんです。
●富山の実家ではジャージ姿の美紀

 その後 美紀は勤めていたキャバクラの客の伝手で大企業に就職、彼女なりに東京で生き抜いてきました。キャバクラで再会した青木との『関係』もだらだらと続いていた。
●青木(高良健吾)と美紀(水原希子)は長年の『知り合い』でした。

 そして、本来だったら交わることがない華子と美紀が巡り合うことになります。 
●違う階層の人間が交わることのない東京で、ひょんなことから二人は巡り合います。
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 映画の中で『東京では違う階層の人同士は絶対交わらない。出会うことすらもない』というセリフがあります。マスコミはそういうことを言いませんが、その通りだと思う。

 ボクは今の世の中、東大出身者(官僚)と慶応幼稚舎出身者(代々の経営者、オーナー)が動かしているんじゃないか、と思っています。少なくとも半分くらいはそうだと思う。ボクはなんだかんだ幼稚舎出身の経営者や弁護士、コンサルと仕事をすることも多いんですが、やっぱり住む世界が違う。ただ彼らは比較的おっとりしていて、金の亡者の新自由主義者ではないことが多いから、竹中平蔵みたいな連中よりまだマシでもある。実際 竹中平蔵慶應の中でも滅茶滅茶嫌われていた、と 慶應の某名誉教授に聞いたことがあります。

 そういう人たちと一般の人たちは同じ東京に住んでいても、住む場所も行く店も感性も考え方も全く違う。我々一般人と彼らは交わることはほとんどないし、おそらく相手方の気持ちもあまり判らない。どちらも自分たちの世界、狭いサークルの中で生きている。
toyokeizai.net

 それだけではありません。2021年の今 分断は更に広がっている。経済的格差、東京と地方、男性と女性、いや男性同士、女性同士ですら分断されている。今回のコロナ禍で生理用品を買えない女性が増えていると言うニュースがありますけど、コロナ禍は分断を更に広げたでしょう。
www3.nhk.or.jp

 そういうことを指摘する人は少ないけれど、現実にはスタートの時点から我々は分断されているんです。
 ●美紀は大学を中退後、キャバクラの客のつてで大企業に就職しました。彼女なりに自分で生き抜いてきた。

 生来の人間嫌いで、どこのサークルにも属することを拒否してきたボクは、この映画が言ってることが非常に共感出来ました。地縁血縁も殆ど拒否して孤立して生きてきたボクは、自分自身は美紀に近い、と思って見ていたのですが、華子や青木が体現する世界にも触れることはあるので(笑)、他人事とも思えなかった。

 
 俳優陣が素晴らしいです。末っ子の頼りないお嬢様を演じているのにド迫力を感じる門脇麦の演技は相変わらずだし、屈折した感情を表現する水原希子もいいです。この人の人間離れした美しさも映画的ですらある(笑)。善人だけど冷酷でもある青木も高良健吾君が演じるから、それだけではないキャラに感じられると思いました。
 
 華子も美紀もそれこそ階層が違います。自分たちの狭い世界で生きていて、本来なら交わるはずもない。しかし実は自分自身が何も持っていないこと、だけは共通しています。何も持っていないということだけは分断されていなかった。青木ですら、最後にそのことを理解する。それに気づいた3人が成熟と成長を体現していくのが素晴らしい。感動的です。
●美紀と理英、華子と逸子、共に新しい道を歩み始めます。

 その中に時折 抒情的にも感じる美しい映像が加わる。端正で流麗だけど静けさをたたえた、まるで環境音楽のようなサントラも渋い。この構成には舌を巻きます。

あのこは貴族 オリジナル・サウンドトラック

あのこは貴族 オリジナル・サウンドトラック

  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: MP3 ダウンロード

 原作は読んだことありませんが、アマゾンのユーザー評には『こんなにうまく行くわけないだろ』と言うものがありました。
 でも映画を見ているかぎり、そういうことは全く感じません。東京の『上流階級』にしろ、慶應エスカレータ式の女子大の雰囲気、地方の不景気や人々の生活、東京の住人や地方出身者の生活、そして見えない天井が頭の上にある女性たちの息苦しさ、描写があまりにもリアルです。監督もしくは原作者が本当に体験してきたこととしか思えない。
 いくつもの丁寧な伏線が織物のようにお話に編み込まれています。
●これ見て、ボクもスカーフ買おうと思いました(笑)。彼女のジョン・スメドレーのセーター姿も素敵でした。


 女性同士の連帯を描いたシスターフッド・ムービーという体裁をとっていますが、この映画はそれだけではない、もっと大きなテーマを扱おうとしている。
 オリンピックの準備が続く2021年の空疎な東京を背景に、この映画は希望、について語っている
 格差が広がり、階層が固定化し、相変わらずの男女差別も解消されず、少子高齢化で衰退する一方の日本に残された微かな希望。それは社会のプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、自分の力で生き残っていこうとする華子や美紀、逸子や理英たちの姿です。しかも彼女たちの等身大の姿は押しつけがましくない。しなやかに社会の分断を乗り越えていく。この手があったか、と思いましたもん。

 この映画、『まるで自分自身を演じているようだった』と水原希子がインタビューで答えていたのも、小泉今日子が推薦文を書くのも良くわかります。自分なりのやり方で世の中と戦っている人たちだからです。

 見終わったとき、ボクの第一印象は『今の日本でも、こんな映画を作れちゃうんだ』ってこと。と、同時に日本の社会にもまだ希望が残っている、とも感じました。この感想を書きながら再発見することが多かったのですが、見ている時より見終わったあとにグサグサ来る(笑)。人によって感じ方は違うでしょうけど、ちょっと驚くような傑作、と ボクは思いました。
 DVDは絶対買うけれど、できれば劇場でもう1回見たい。まだまだ発見があるでしょうから。現時点での今年のベストワン。断トツです。

映画『あのこは貴族』予告編

『ニュースあれこれ』(日米2+2、子供がなりたい職業、同性婚)と『0319再稼働反対!首相官邸前抗議』

 どんどん春らしくなってきています。東京の桜は3分咲きくらいでしょうか?
●今朝の夜明けの桜。その昔、60年代に''Violets Of Dawn''ってフォークソングがありましたが(笑)。

 政府は緊急事態宣言を解除すると言ってますが、東京などは感染者は増加傾向です。緊急事態宣言と言っても、まともに感染予防対策なんかしちゃいませんからね。
mainichi.jp

 飲食店は営業時間の制限だけで、多くの店は客の間隔を空けたり間仕切りがしているわけでもないし、PCR検査だって増えていないし満員電車もそのまま。映画館だって客席を空けたりしていない。カラオケとか行ってるバカもいる。それに対して政府は呼びかけすら、しない。

 世田谷区は保坂区長の英断で老人施設などでのPCR検査を積極的に行っていましたが、ずいぶん批判されました。ところが昨日は政府もそれを始めると言い出した(笑)。

 このままの状態で下手に解除して変異株が拡がれば、第4波が来て、政府が国民の命より優先している経済(笑)への打撃も更に酷くなるでしょう。解除はせめて花見や新入学・入社の時期とずらすべきなんじゃないですかね。
 結局 国は積極的に国民を助ける気なんかない。太平洋戦争の空襲被害もこういう感じだったんでしょうね。

●こーんな感じ(笑)。精神論はやがて焼け野原をもたらすでしょう。 



 今週 アメリカの国務長官&国防長官と日本の外相&防衛相の会談、いわゆる2+2が行われました。それに関してBS-TBSの『報道1930』を見ていたんです。

 新しい国務長官のブリンケンっていう人は面白い人で、わざわざ今回の歴訪のテーマソングを選んで発表したそうです。
 曲は''Rockiin' All Over The World''。ボクが’’史上最強のロックシンガー’’と思っている偉人、ジョン・フォガティ(CCR)の作品です。スプリングスティーンなど色々な人がカバーしている有名曲なのに古臭いステイタス・クオなんかのカバーを選んでいるのはどうかと思いましたが、ブリンケンという人は自分でバンドをやっていて2年前、曲を出しているんですね。曲名は『Lip Service』(口約束)(笑)。

 写真を見ても左利きでギターを持つ格好が様になってます。ちょっと聞いたら、歌は素人だけどバンドはリズムが重くて結構うまい。何より、外交官が『口だけよ』って歌ってるのが良い(笑)。

 ボクも四月から人事異動になって、正直 胃が痛くなるくらいウンザリしているのですが(泣)、嫌な仕事でもこうやってスマートに笑い飛ばす、これくらいの余裕が必要なんだろう、と思いました。


 、それはともかく(笑)。アメリカは対中国で日本も一緒に対抗しろ、と命令しに来たわけです。
www.nikkei.com

 尖閣なんかどうでもいいんです。あんな島のことで戦争するメリットがあるとはボクには思えません。でも台湾だったら?尖閣以外の日本の島だったら?強圧的に民主派を弾圧している香港の例を見ても、武器使用を認めた海警法の改正にしても、中国が実力行使してくることは充分あり得ます。

 もちろん外交が一義です。アメリカだって中国だってそう思ってるでしょう。だけど、それだけじゃすまない。中国が勝手に人口島を作っている南シナ海が良い例です。
 日本もアメリカも中国も互いに貿易をしなければやっていけません。だから対話が必要だけど、残念ながら力をバックにした対話になっていかざるを得ないのではないでしょうか。
 そう考えれば 以前 オバマ政権が日本に『慰安婦問題で合意して韓国と仲直りしろ』、『安保法制を整えろ』と命じてきたのも理解できます。

 ボクは安保法制は反対です。理由は政府が必要性をまともに説明できなかったこと、日本周辺以外も対象範囲にしてしまったこと。特に後者は致命的な欠陥です。
 しかし、今 考えるべきなのは、アメリカの戦争に巻き込まれるリスクと中国との紛争に巻き込まれるリスク、どちらが大きいか、でしょう。こういうリスクは時代によって変わりますけど、今時点では後者の方が大きい、と ボクは思います。

 アメリカと中国が直接 一戦を交えるなんてことは有り得ないでしょうが、中国が台湾へ侵攻することは有り得ます。半導体の供給があるからアメリカは絶対黙っていない。もちろん台湾が侵略されたら、安保法制がなくても、日本は知らんぷりなんてことは出来ないと思う。『エゴイスティックな国』とそれこそ国際的に孤立してしまう。

 香港で判るように、いったん侵攻が始まったら中国には対話は効かないでしょうし、知らんぷりしていれば次は日本です。もちろん、中国の属国になったほうが一般国民には幸せ、という考え方はあるかもしれません(笑)。日本の半分を占める選挙に行かないバカは、政府が共産党だろうが北の将軍様だろうが関係ない筈です(笑)。 

 日米地位協定のこともあります。沖縄だけでなく、関東平野の西半分を米軍が管制していたり、世界で最も駐留経費を負担していたり、確かに不公平だとボクも思います。
●最近はボクの家の上でも、米軍ヘリが好き勝手に低空飛行しています。1か月前も用もないのに駒沢公園の上を低空で何度も周回しているのを目撃しました。あいつら、遊んでいるんですよ。
mainichi.jp

 これからアメリカが日本に軍事的負担を求めてくるのは地位協定の改定のチャンスではあります。でも同時に、日本は自分の安全保障をどう考えるのかという議論になってくる。例えば台湾が危うくなった時 日本はどうするのかってことまで方針を表明出来ないようじゃ地位協定の改定なんておぼつかないでしょう。 


 日本の安全保障に関するこのような見方が正しいかどうかは判りません。でも日本の野党やリベラルも議論はすべきだと思います。平和を守れ、9条を守れだけじゃ議論にはなりません(笑)。まして、いつまで経っても政権を担当することはできないでしょう。
 きっと、このブログを読んでくださる方は安保法制は反対、という方は多いと思います。如何思われますか?(笑)


 もう一つ今の子供がなりたい職業が『会社員』だった、という話。男子では、小学生、中学生、高校生のいずれも「会社員」が1位で、女子でも中学生と高校生で1位だった。 

www.yomiuri.co.jp
 
 ボクも会社員ですけど、それは地縁血縁から離れて独立独歩で食っていくには会社員しか手段を思いつかなかったからです(笑)。今の子は安定最優先なんですかね。何をやりたいかより、会社員になりたい、と言われても困っちゃいますね(笑)。YouTuberと言われても困りますけど(笑)。

 会社員は会社員で存在しなければ困るし、会社員も会社員なりに少しは世の中をマシな方向に変えて行くことは出来るんですけど、組織の中に居ると疲れることも間違いない(笑)。ウンザリ。それに今の会社員なんて常にリストラと背中合わせ、安定なんかありません。


 
 恐らく、今の世の中では夢も希望も見つけにくいってことでしょう。
 3月16日に警察庁が昨年に起きた自殺に関する確定値を公表しましたが、2020年の小中高生の自殺は過去最多でした。

www.kyobun.co.jp

 6月以降に自殺者が急増していますから、コロナの影響が大きかったようです。
 
児童生徒の自殺、過去最多の479人 : 女子高校生が前年から倍増 | nippon.com
 
 コロナ禍は日本が弱者に厳しい社会であることを浮き彫りにしています。子供の自殺が増えたのもその表れでしょう。
●16日放送MXテレビ’’モーニング・クロス’’
 

 自殺した子供たちの問題だけではありません。そういう社会にしてしまっていることが大人たち自身の首も絞めている。それが今の日本なのでしょう。


 

 最後は皆さんご存知の良いニュース。これはマジで嬉しかった~。
 同性同士の結婚が認められないのは婚姻の自由を保障した憲法に違反するとして、北海道内の3組6人の同姓カップルが国を訴えた裁判で、札幌地裁は『同性婚を認めないのは違憲』という判決を下しました。同性婚に関する司法判断が下されたのは初めてだそうです。
www.yomiuri.co.jp

 判決では国への損害請求は認めなかったものの、同性婚が認められないのは「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反している、としました。裁判長は涙ながらに『差別的だ』と違憲を認めたとのこと。原発もそうですが、地裁レベルではまともな判決も出てきます
www.fnn.jp

 ボクが同性婚に肩入れするのは、こういう動きが広まると少数派が生きやすい世の中になるからです。変わり者で人間嫌いのボクはバリバリの少数派であることは間違いありませんから、これはアライアンスを組むしかない(笑)。

 選挙による政権交代にしても、左巻きバカが唱えるような革命なら猶更 システムを全とっかえするのは困難だし、人間の考え方はいっぺんには変わりません。
 同性婚や女性の社会進出、一歩ずつ変化を積み重ねていく動きこそが世の中を本当に変えていくことにつながる、と思うのです。


ということで、今週は金曜官邸前抗議に参加です。今回を含めて残りあと2回。


●抗議風景「避難できない原発やめろ!」


 集まったのは100人超くらいでしょうか。皆さん意気軒昂、元気でしたね。でも、今はシュプレヒコール怖い(笑)。ボクは他の人とは殆ど話したことないですが、それでも顔見知りの人たちを久々に見て懐かしかった。
 福島瑞穂も来てました。曰く「官邸前抗議に最初に来た国会議員は私」😇だそうで、これはお見それしました(笑笑)。

 昨日は東海第二の運転差し止め、伊方3号機の運転再開という大きな判決がありました。東海第二なんていざ事故が起きたら周辺の約100万人の避難どころか、首都圏全体がアウトになります。そもそも事故が起きたら避難なんか出来ないものを再稼働させよう、という発想自体が信じられません。
 東海第二にしても伊方にしても、原発に拘っているかぎり電力会社の経営は安定しない、動かせるかどうか判らないリスクを抱え込むことになります。連中もそろそろ判りそうなものだと思うのですが(笑)。

『まいうーのティラミス・ソフト』と映画「 ワン・モア・ライフ!」

 この週末、東京でも桜が開花しました。
 いよいよ春がやってきました。人事異動など様々な行事(雑事)があって個人的にはウンザリな季節でもありますけど、温かくなることだけは嬉しいです。
 ボクの人生、あと何回 春を迎えられるのか判らないですが、そろそろ1回1回、噛みしめるように味わわなくてはいけないのかもしれません。
●今朝の朝陽。冬とは陽の勢いが違います。力強い。


 こちらは週末に食べたティラミスのソフトクリーム。いつもの北参道のお店です。まろやかで濃厚なクリームを一口食べた瞬間、『ああ、幸せだなー』と思いました(笑)。

 この店、壁には色んな有名人のサインが貼ってあります。こちらは『まいうー』の石ちゃんのもの。

 時々ボクの家の周りをサウナスーツを着てジョギングしている彼を見かけます。きっとダイエットしてるんでしょう、生で見ると太ってません(笑)。TVなんて虚像、であることがそんなことからも判ります。


 さてさて、コロナは大変ですけど、良いなーと思うこともあるんです。いつも言っているとおり、宴会がない他人と物理的にも心理的にも距離感を保てる常にマスクをしているから余計な口を利かないで済む

 エッセンシャルな仕事をされている方はそんなことを言ってはいられませんし、これで世の中が回っていくのか?付加価値が生まれていくのか?という向きもあるでしょうけど、人間嫌いなボクとしては快適さを感じる事は禁じ得ません。禍ってものは多くの場合、人と関わるから生じるわけです。
 朝は5時に起きて徒歩通勤、人がまばらなオフィスで黙って仕事して、定時で帰って夕飯を作る。そのあと少し本を読んだり録画したTVを早回しで見たりして、夜9時半には寝てしまう。こんな生活をしていると、コロナ前と比べて他人が入り込む余地は格段に少ない。
●自分ではテレワーク出来ないくせに、よく国民にテレワークしろ、なんて言えると思います。全て他人事、それがこの国の政府の特徴です。だから信頼されないんです。

 もちろん仕事で利益を出していかなければボク自身も干上がってしまいます。いつまでもこういう状態じゃ困ることは事実ですが、人間はつい、目先の快楽に溺れてしまいがちです。
 いかに生き残れる程度に他人と関わらずに日々を過ごしていくか、それが問題です(笑)。それこそ幼稚園の頃から今に至るまで、ずっとそうでした(笑)。平安時代末期 西行法師は隠遁生活に入る際、どうやって生活の資を確保するかが悩みの種だったそうですが、隠遁の困難さは今も昔も変わりません。
●静かに暮らしたくても馬鹿が足を引っ張るんです。 


 それでも江戸時代は50過ぎで隠居生活に入る人が多かったそうです。今より平均寿命が短かったからでしょうけど、老後資金2000万とか脅かされている現在の我々より遥かに人間的のように思える。哲学者の中島義道がいわばセミリタイアの『半隠遁』という概念を唱えてましたが、

コロナ禍は『人間と関わらないで済む豊かさ』を見直す機会でもあるんじゃないでしょうか。


ということで、新宿で映画『ワン・モア・ライフ!
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one-more-life.jp

 舞台はシチリア島。楽しいことだけを追いかけてきた楽天家の中年男パオロは交差点で信号を無視して交通事故に遭遇、死亡してしまう。天国の入り口で係員(死神)にあまりにも短い寿命に納得できず猛抗議していると天国側の計算ミスが判明、その結果 寿命が延長され92分間だけ地上に戻れることになる。これまで自己中心的に生きてきたパオロは、人生に後悔を残さないために何をするだろうか。

 監督はアルゼンチンの軍事独裁政権との苦闘に悩む若き日のローマ法王フランチェスコを描いて感動的だった『ローマ法王になる日まで』のダニエーレ・ルケッティ。
●これははっきり言って名作です。

ローマ法王になる日まで [DVD]

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  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: DVD

 死んでも天国の窓口で猛烈抗議して寿命の延長を勝ち取るなんて、いかにも自己主張が強いイタリア人らしいお話です。
●天国の入り口でパオロ(左)は係官に猛抗議します。
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こういうところがイタリア映画、好きなんです。お上の言うことを真に受けるだけの奴隷根性の染みついた人が多い日本人とはだいぶ違います。納得がいかなければ、神様にだってガンガン 文句を言うわけです。また物見高い人たちが集まって来て、いつのまにか抗議が個人から集団のものになる。
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そうやって抗議しているうちに天国側がパオロが健康のためにスムージーを愛飲していたのを見落としていたことが発覚します。その分 寿命は延びるはずです(笑)。困った天国の神様は、係員(死神?)をつけて、パオロを92分だけ、下界に戻すことにします。
●天国と下界はこのエレベーターで繋がっています(笑)
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 そこから、お話は過去の少年時代から現在に至る迄のパオロの人生、主に女性遍歴(笑)と残り92分の人生が描かれていきます。それはそれでよいのですが、このパオロの人生のやり直しがリアルタイムで92分にまとめられていたらスリリングな傑作になったかもしれないとは思います。
●パオロと妻(左)
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 パオロという人物は悪人ではないけれど、身勝手で偏屈だし、いつも楽しいことだけ追い求めている。仕事だけでなく、家事や育児だって分担しますけど、いやいやです。PTAのママ友や職場の同僚と浮気したりするだけでなく、子供はいつも放置しています。正直 間違いだらけの人生です。
●家庭を放っておいたパオロは特に長女(左)には嫌われています。
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 一方 奥さんの側も自己主張の強いイタリア人です。パオロの友人と浮気しています。パオロもそれを知っていますが、正面から向き合わない。
 死まで残り92分になり、パオロも家庭に帰って妻や子供たちとの関係を修復しようとします。しかし今までの積み重ねをたった92分で修復できるでしょうか。
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 主人公のパオロにはあまり感情移入できません。いつも同じ格好でおしゃれじゃないのもいまいち(笑)。イタリア映画の楽しみの一つは男女を問わずファッションでもありますけど、この映画ではあまり参考にならない。それに過去と現在が交錯して描かれる描写がちょっとわかりにくかったりする。
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 ただ、この映画で描かれる登場人物たちは皆欠点を持っていると同時に自己主張があって、仕方ないと思えてきます。パオロの監視役の死神ですら、そうなんです。人間も神様も間違いを犯す。間違いを犯すことを恐れてはいけない、それが人生なんだと。

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 アペリティーボという食事前の近所の飲み会、美しいシチリアの光景などイタリア映画ならではのアクセントも楽しいです。『ローマ法王になる日まで』のような感動の名作という訳ではないし、魅力的だったり、完成度が高い作品という訳ではありませんが、楽しい小品としては良かったと思います。

急死した中年男、92分間だけ生き返る!映画『ワン・モア・ライフ』予告編