特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『最低賃金』と読書『資本主義と民主主義の終焉』、それに映画『パリ、嘘つきな恋』

 今週は半年に1回の勤務先の強制連行宴会で、ボクは官邸前抗議はお休みです(泣)。
●宴会っていうのは話すこともないし、とにかく楽しくない。それでいて、窓の外を見るくらいしかやることもないから、結局 食べちゃうんですよ。しかも大してうまくない(泣)。ほんとに時間と資源の無駄だと思う。
f:id:SPYBOY:20190621190452j:plain

f:id:SPYBOY:20190621193029j:plain



代わりと言っては何ですが、日曜日にエキタスの『最低賃金上げろデモ#最低賃金を1500円に があるので、そちらの模様は月曜の更新でアップします。


 木曜の日経に出ていましたが、最低賃金を上げても失業は増えないという研究や実例が、アメリカやイギリス、ドイツなどで続々と出てきています。失敗したのは一気に16%も上げた韓国だけです(そりゃあ、いっぺんに16%も上げればそうなりますよ(笑))。
●良い記事なのに有料記事なので全文貼り付けます。

f:id:SPYBOY:20190620210925j:plain



www.nikkei.com

 消費税アップ凍結ならまだしも、山本太郎のように頭の悪い奴が『消費税廃止』と言ってますけど、それには 財源の問題や世代間格差を拡大させるという大きなマイナスがあります。富裕層から税をとれ、というのは賛成ですけど、それだけじゃ財源は足りないでしょう。

 このブログで前々から言っているように、相続税100%なら景気対策としても財源としても格差対策としてもOKですが、勿論 山本太郎のような真正アホはそこまで頭は回らない(笑)。
●前回のエントリーで山本太郎が極右の偽経済評論家、三橋貴明と組んだのをご紹介しましたが、今度はこれ。案外 細野豪志と一緒に自民党二階派に入ったりして(笑)。半分冗談にしろ、自民だったらそれくらいやるし、山本太郎もそれに引っかかるくらいはバカでしょう(笑)。


 一方 最低賃金を上げれば働く人の皆の給料も増えるし、消費も増えるから企業も儲かり、税収入も増える。財源だって出来るでしょう。生産性が低い企業の淘汰も進み、日本経済の足を引っ張っている無能な経営者の整理も進めることができる。人手不足と言っている今がチャンスなんです。もう少ししたらAIやロボットで人間の雇用だってドラスティックに減る可能性だってある。そうなってからではもう、間に合いません

 選挙に向けて 自民や国民民主の公約は最低賃金1000円以上、立憲民主党は5年以内に1300円という公約を掲げています。ただでさえ先進国の中でも低い日本の最低賃金の引き上げは格差対策だけでもなく、景気対策としてもますます重要になってきています。
www.nikkei.com


f:id:SPYBOY:20190621080229j:plain


さて、軽い読書の感想です。
資本主義と民主主義の終焉」。民主党のブレーンでもあった山口二郎法政大教授と水野和夫法政大教授が平成の30年間を振り返った対談。

 内容は冷静な語りで過去を思い出させてくれる部分もあるし、さらさらと読めて面白い本です。自分でも忘れていたことも多かったので、過去を振り返ることは将来への学びを得るためには大切だ と思いました。ただ、水野和夫先生のいい加減な放言、山口二郎のくだらない寝言や愚痴も混じっています(笑)。律儀に全部を本気に取るとまずいかも(笑)。

 対談の中で、『与野党ともに話し合う共通の基盤があって「河野談話」などを出すことができた90年代初頭が日本の戦後民主主義のピークだった』というのは成程~と思いました。『民主党政権、特にリーダー3人、鳩山は定見はあるけど政治的スキルがなさすぎ、菅、野田は個人的なことばかり考えて理念が全くなかった』のも言えています。

 これに政争以外に興味がない、行政経験もまともにない小沢一郎が絡むのだから、民主党政権は、とにかく人材不足だった。私利私欲しか興味がない安倍晋三よりはマシかもしれませんが、それでも酷かった、というのは事実です。失敗は仕方ないにしろ総括は必要だと思う。それにこの4人はもう、政界に出てくるべきではない。


 この本の結論は資本主義が終焉に向かいつつあり、なおかつ少子高齢化で衰退の道をまっしぐらの日本は、今後二つの事をやっておかなければならない。』というもの。一つは『財政の均衡を図り社会保障を含めてゼロ成長でも持続可能な財政制度を設計すること』、もう一つは『エネルギー問題の解消』(石油依存からの脱却)

 かって日本は自動車、電機、機械、の3つの産業の黒字で石油を輸入して存立する経済構造でしたが、今や電機は壊滅、ほぼ自動車産業だけで貿易黒字を稼ぎ出す構造になっています。となってくると、現在の日本の存立条件は『自動車産業の国際競争力があること』、『石油が1バレル100ドルを超えないこと』(水野先生の計算)、『ゼロ金利であること』の3つです。一つでも崩れたらこの国はアウト。実に危うい状況です。

 自動車産業だって電気自動車へのシフトが進む中で、いつまで国際優位を保てるか判りません。石油が1バレル100ドルを超えることだって、国際情勢次第でいくらでも考えられる。現にこの10年間、何度も100ドルを超えるような事態が起きています(下のグラフのオレンジ線が100ドル)。その時 日本は経常赤字になったし、たまたま円安でしかも短期間だったから大事にはならなかっただけです。
●WTI原油先物価格のこの10年間の推移
f:id:SPYBOY:20190619154206j:plain

 TPPやアメリカとのFTAを『自動車のために農業を売り渡した』とか言ってる連中がいますけど、どちらが重要かを考えれば当然のことです。現時点では自動車がなければ石油は買えない。石油が買えなければ農業だって壊滅します。農業資材やビニールハウスの燃料、肥料、生産物の保管や輸送、日本の農業がどれだけ石油漬けなのかわかってないのか(笑)。もちろん石油がなければ他の産業だってただでは済みません。

 そんなことより競争力のある産業を如何に育てていくかは資源小国の日本にとっては急務です。農業のように従事者の平均年齢60台後半の斜陽産業に構っている余裕なんかあるはずないです。農業への企業参入解禁、それに農協を強制分割したり流通支配を崩すなど産業の競争力を高める策ならよいとは思いますが。


 まして、山本太郎のように日本でもMMTとか言っている連中は完全に頭がおかしい、と改めて思いました。
 今でさえ上記の3つの条件が満たせなくなったら日本は壊滅です(笑)。今はまだ 日本が経常黒字だから国内で借金を用立てることができる。だから、今のところは借金まみれの国でもなんとかなっているんです。
 
 でも MMTとか言って無制限に金を使っていて、その時に経常赤字になったらどうなるでしょう? 外国の金を借金して経済を回そうとするわけですから、資金繰りに窮するのは必至です。
 そうなれば 文字通りギリシャみたいに増税と年金・福祉削減の国になってしまう。オリンピック後というところも共通しているかも(笑)。そんなことに成ったら一番しわ寄せがいくのは庶民です。

 要するにMMTなんてわざわざショック・ドクトリンを誘発しているようなものです。だから、アホだっていうんです。
f:id:SPYBOY:20190621080150j:plain




ということで今回はすっごく楽しい映画! 新宿で『パリ、嘘つきな恋

paris-uso.jp

スニーカー販売会社のフランス支社長、ジョスラン(フランク・デュボスク)は49歳、独身。口八丁手八丁で女性の尻を文字通り追いかけているプレイボーイ。結婚する気なんか全くない。亡くなったばかりの母親のアパートの後片付けをしていると、隣人のセクシーな介護士ジュリーに足が不自由と勘違いされる。若くてセクシーなジュリーの気を惹こうと、障碍者のふりをするジョスランだが、ジュリーからは足が不自由な姉、フロランス(アレクサンドラ・ラミー)を紹介される。車椅子生活にも関わらずバイオリニスト、車いすテニスの選手として活躍し、知性に溢れるフロランスにジョスランは惹かれていくが、自分が健常者であることを言い出せなくなってしまって- - --


 主演のフランス人コメディアン、フランク・デュボスクが監督・脚本も務めたという、フランスで興収1位、200万人を動員したというラブ・コメディです。
f:id:SPYBOY:20190604194727j:plain

 主人公のジョスランは49歳にもなって文字通り、年がら年中、女性の尻か胸を追いかけているような男です。口八丁手八丁というといやーな感じですが(笑)、あまり嫌悪感を感じません。ジョスランはドスケベだけど、上品だし、知性もある。
●主人公は有名スニーカー販売会社のフランス支社長、仕事は出来る。いい歳こいてますが、独身、ハンサム、金もあります。

 演じる主演兼監督のフランク・デュボスク、フランスのコメディアンだそうですが結構ハンサム。49歳という役の割には老けているような気はしましたが、フランス人というよりイタリア人っぽい。それに洋服がお洒落。これ、ポイント高い。

 ボクがフランスやイタリアの映画が好きな理由の一つは、服がお洒落というのがあります。この映画はその点、お見事です。非常に参考になります。
 ボクは今までドレスシャツの第2ボタンまで開けるのは抵抗がありましたが、この映画を見てから開けるようになった(我ながら、軽い)(笑)。折しもバーゲンのシーズン、かっこいいシャツが欲しくなって困ってます(笑)。
●いかにもラテン系のいいスーツです。

 ジョスランは亡き母のアパートの隣人、若くてセクシーな介護士、ジュリーに足が悪いと思われて仲良くなったことで彼女を、いや、正確には彼女の尻と胸を追いかけ始めます(笑)。
●ジュリー(右)を見るジョスランの視線に注目(笑)。

 彼女の実家へいくことになったジョスランですが、そこで足に障害がある、自分と同年代の姉、フロランスに紹介されます。
●ジョスラン(右)はジュリー(中央)の実家で、姉のフロランス(左)に紹介されます。

 妹としては年齢的にも、足に障害があるということでも、お似合いではないか、ということだったのですが、ジョスランは車椅子テニスの選手でバイオリニストとして積極的な人生を送る、そして年齢相応の知性と落ち着きがあるフロランスに本気で夢中になっていきます。

 ただの艶笑コメディではなく、スケベでもジョスランが女性の知性を評価できるだけの知性があるからこそ、成り立つお話しです。

 そして車いすに載った二人がパリを舞台にバリアフリーラブ・ストーリーを繰り広げる。障碍者の大変さも描きつつ、家に閉じこもっているだけの障碍者なんか描かない。
 美味しいものを食べて、お酒を飲んで、恋をして、お洒落をして、みんな、人生を謳歌している。ここいら辺が如何にもヨーロッパらしい。アメリカや日本のお子ちゃま映画とは違います。

 ヒロインを演じるアレクサンドラ・ラミーという女優さんは、始めて見ましたが、美しいだけでなく、知的で落ち着きがある。いつも背筋がピンと伸びているところが素敵(笑)。ジョスランならずともいい感じです(笑)。

 彼女が登場すると、ジョスランが女性の胸と尻を追いかけていた時と異なり、画面には知的な会話やクラシックのコンサート、美しいパリやプラハの光景、と俄然美しくなってくる。見ていて益々楽しくなってくる。あと、当たり前のようにEU全体がデートスポットになる(笑)こういう映画を見ていると、日常的にもう、既にEUは一体、と思いました。

 ジョスランがフロランスを招いて、初めて自宅で食事するシーンの演出は誰もがあっと驚く素晴らしさ。

 フロランスを好きになるにつれて、ジョスランは自分がウソをついていることを益々言い出せなくなります。観客としては、『このバカ男』と思いながら見ているわけですが、嘘を誤魔化すために、奇跡を起こすということで有名なルルドの泉にまで出かけていくドタバタぶりは面白い。

またジョスランと秘書とのエピソードもありきたりですが、観客の期待通りのハートウォ―ミングな展開でこれまた、良かった。


 深く考えさせるとかそういう話ではありませんが、見ていて実に楽しい、ユーモアがあって、お洒落で実に気分がアガる映画です。そういうことを狙った映画は数限りなくありますが、実際に説得力を持って見せてくれるものは少ない。
 大人の知性とお洒落とユーモア、センスが良いから出来る芸当で、そういう映画って年に1、2本しかお目にかからない。この映画はまさにそういう1本。フランスで大ヒットと言うのも良く判ります。本当に楽しい映画でした!

映画『パリ、嘘つきな恋』本編映像

『パリ、嘘つきな恋』予告編

見た人の人生を変えてしまう:映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

 なーんか、寒くなったり、暑くなったり、本当に気温の変化が激しいですね。身体に応えます。
 でも暑い日でも、夕方の風は気持ちいい!ボクはビールは嫌いなんですけど、初夏の夕方、風にあたりながら、スパークリングワインやシードルを飲むのは気持ちいいものです。ピリピリしている平日はそんな余裕はないので、週末だけですけどね(笑)。
●既に若者ではないボクですが、社会人になってから、ずーっとこう思ってました(笑)。


 さて、この写真は某駒澤大学の近くを通りかかったときのもの。駅に向かう学生たちを警備員が誘導しているところです。公共の歩道で警備員が学生たちに、こちら側を通れとか、並んで歩けとか指図しているんです。


 びっくりしました。以前 学習塾の小学校高学年が同じようなことをされているのを見て驚いたのですが、こちらは一応(笑)、大学生です。君たち、幼稚園児か!(笑) 
しかも、みんな当たり前のように指示に従っている。信じられませんでした。こういう付和雷同はかっての全共闘も似たようなレベルかもしれませんが、これじゃあ、奴隷根性の大衆ばかりになるわけです(笑)。

 香港では昨日も若者を中心に200万人近く(人口の4人に1人!)の人がデモに参加したそうです。
 この動画を観てください。救急車が来たら群衆がさっと動いて、クルマを通している。参加者が自分の頭で考え、自分から動いている。先ほどの写真とはなんと違うことか!。

香港と日本、今や一人当たりGDPが100万円近く香港の方が高いのは当たり前だと思いました。
●世界の一人当たり名目GDPランキング


あと もう一つおまけ。山本太郎ネトウヨの自称経済評論家、三橋貴明とくっついたのは笑いました。反知性主義』という点では大差がないので山本太郎のような奴はどうせ極右とでもくっつくだろうと思ってましたが、『類は友を呼ぶ』のは想像以上に早かった(笑)。

*6/18付記 当日になって山本太郎は欠席する旨を表明しました。しかし3月にはこの極右と対談をしているし、いったんは出席の意思を示した事実には変わりありません。



ということで、渋谷で映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた

hblmovie.jp

ニューヨーク、ブルックリンの海辺の小さな街、レッドフック。
寂れたレコードショップを営む元ミュージシャンでシングルファーザーの父、フランク(ニック・オファーマン)と、UCLAの医学部に進学を控えた娘、サム(カーシー・クレモンズ)
9月から娘がLAに引っ越すこともあり、この夏でフランクは店をたたんで定職に就き、認知症の母親を引き取って暮らそうと考えている。
ところが、偶然 二人が作った曲を音楽ストリーミングサービス、SPOTIFYにアップロードしたところ、話題になってーーー


 ジョン・カーニー監督の超名作『はじまりのうた』のバッタものみたいな邦題、書体、この映画大丈夫か~と思いながら見に行きました。インチキ臭いだけでなく、ハードルも上がるじゃないですか。

 でも、ボクが間違っておりました。すみません。結論から言うと、素晴らしい名作(笑)でした。このオリジナル版のポスター↓、オヤジがギターを抱えている姿勢を見るだけで、監督や俳優が『判ってる!』ことが判ります。
 


 映画は、フランクが自分のレコード店でタバコを吸いながらPCを検索しているところから始まります。喫煙店なんてアメリカの都会、いや日本の都会でだってありえないですよね。タバコを止めてくれ、という客に逆切れして悪態をつくフランク。しかもCDではなくLPレコードの店。最近はレコードが復権してるようですが、そんな態度が悪い店は赤字経営になるに決まっています。

 元ミュージシャンで今はしがないレコード屋をやっているフランクにはUCLAの医学部への進学が決まった娘、サムがいます。彼女は入学式もまだなのに、もう予習を始めている。しっかりした娘です。

 そこに親父がやってくる。『宿題なんか放っといて、ジャムセッションしようよ~』、『勉強なんかしなくていいじゃん~』。ずーっと駄々のこねまくり。バカ過ぎて見ているとイライラする(笑)。
 大人の娘は仕方なくオヤジの相手をしてやります。一緒に曲を作って演奏して歌ってPCに録音、オヤジは娘に黙って音楽配信サービスのスポッティファイにアップ、ところが、その曲が話題になります。

 出演者も監督も全然知らない人ばかりです。ブレット・ヘイリーという監督は日本公開作品は初めて、出演者も娘役のサムを演じるカーシー・クレモンズくらいしか知りません。昨年の佳作『さよなら、僕のマンハッタン』で主人公の恋人役で中々の存在感を発揮してました。
●『さよなら、僕のマンハッタン』でのカーシー・クレモンズ

spyboy.hatenablog.com


 生来の賢さが感じられる、笑顔が素敵なこの娘、結構歌えるんです。素人と言うにはうますぎ、歌手というにはもう一歩、この映画にはちょうどいい感じです。(これは最近見た『RBG 最強の85歳』の主題歌を歌っていたジェニファー・ハドソン等レベルの高い話をしているのであって、普通の歌手としては十分だし、特に日本の歌手なんか問題にならないくらい上手いです)
 あと、この人、実際にレズビアンであることをカミングアウトしているそうです。今度DC映画『フラッシュポイント』でヒロインをやるそうじゃないですか。

 あと、サムの恋人役のトニ・コレットは昨年カンヌで審査員賞をとった『American Honey(日本公開スル―)(怒)で主演しています。この映画、これからスターになっていく若手有望女優が共演していた奇跡の作品として将来 記憶されるのかもしれません。


 フランクは17年続けたレコード屋の廃業を決意しています。経営は赤字だし、サムはLAへ行ってしまうし、母親は認知症で度々警察のお世話になる始末。母親を引き取って定職につこうと考えています。
レコード屋の大家の女性はフランクを励ましてくれますが

 しかし、サムと作った曲が話題になったことで、かって諦めたミュージシャンへの夢がむくむくと湧き上がってきます。金もないのにレスポールを買い込んで娘に呆れられる始末。
●もう一人の親友はバーの店主。今もマリファナ漬けです。

 サムは医者になって自分の生活を切り開いて行こうと決意しています。ダメおやじを見ているから堅実なんです。しかし彼女には好きな女性がいる。LAに行くということは彼女と別れてしまうことになります。バカオヤジとバンドをやってNYに残るべきか。悩むサム。


 ダメおやじがサムに『恋人は男か女か』と聞くところが良いです。サムの答えに若干 動揺はしますが、当たり前のように受け入れる。またフランクの妻、サムの母親が黒人であることもこの映画では当たり前のことでしかない。

 この映画のお話はそういう価値観に裏打ちされています。登場人物たちは皆、世俗的にはパッとしないけれど他人の立場や意見を尊重することが当たり前になっている。映画の中でもそれが当たり前のように表現される。キャストの経歴を見たら主要な俳優さんは皆、俳優活動をしながら社会運動や反差別運動を積極的にやっているような人たちです。うーん(笑)。


 映画で流される音楽はシンプルだけどメロディが美しい、趣味が良いものばかりです。そこに10代のサムが加わることによって今風のアレンジが施されていくところが面白い。オリジナル曲はどれも素晴らしいです。音楽を担当している『キーガン・デウィット』という人、全然知りませんでしたが、これから要チェックです。
●サントラ、素晴らしいです。

Hearts Beat Loud (Original Motion Picture Soundtrack)

Hearts Beat Loud (Original Motion Picture Soundtrack)

 物語が進むにつれ、フランクとサムは共通の心の傷を抱えていることが判ってきます。二人はまだ、フランクの妻、サムの母の死のショックを抱えている。フランクが酒浸りになっているのも、ダメ男だから、だけではないんです。
お金もない、仕事もない、だけど手を差し伸べてくれる人の手を払いのけてしまうフランク。人生はうまく行かない


 いよいよ店を閉める日、『タイタニックが沈没していくときも船では楽団が演奏していた』(笑)というサムの一言で、二人はレコード店での最初で最後のライブをやることになります。
 


 そのライブシーンが本当に素晴らしい。躍動感と演奏する楽しみに満ち溢れている。実際に二人が演奏しているようですが、すごくうまいと言う訳じゃないけど、ポイントを突いている。まさに生きた音楽です。それをバッチシ、カメラがとらえている。

 正直、この映画のライブ・シーンは『ボヘミアン・ラプソディ』や『アリー スター誕生』の1000倍は素晴らしいです。ただ演奏しているだけなのに、涙が出てきて困りました。強いて難点があるとしたら、3曲という演奏時間が短すぎること。1時間くらいこのシーンを見ていたかったです。


 最初に挙げたジョン・カーニー監督の『はじまりのうた』や『シング・ストリート』と比べると低予算だし、曲もあそこまでではないし、映画の完成度も勝っているとは思いません。
 それでも、この映画は芸術で人が救われる瞬間を見事に描いています。The Whoのギタリスト、ピート・タウンジェントの名言に『ロックは人の悩みを忘れさせはしない。悩みを抱えたまま躍らせるものだ』というのがあります。この映画はまさに、その言葉を体現している。
●この映画で使われる唯一のオリジナル以外の曲。Mitski という日系人歌手の『Your Best American Girl』。サムが恋人に教えてもらう曲という設定、日系人アメリカ人になり切れないというコンプレックスを歌ったもの。その疎外感は同性愛の二人を象徴しています。

Mitski: 'Your Best American Girl' SXSW 2016 | NPR MUSIC FRONT ROW

 趣味の良い音楽を基にしたハートウォーミングな物語。確かにそういう面は強いけれど、それだけじゃありません。
 この映画の視点はあくまでも広く、開放的です。そこが良いんです。
 例えば音楽映画だと特定のマニアックな方向に行きがちで、そこが魅力だったりしますけど、この映画は70年代のトム・ウェイツから最近の音楽、アニマル・コレクティヴやMITSUKIまで目が行きとどいている。狭いマニアの世界にこだわるのではなく、良い物だったら何でもいいという開放的な雰囲気がこの映画にはある。

 それだけではありません。この映画は登場人物たちの心の動きを丁寧に掬い取りながらも、常に視点は外にも向いている。人種や性差、貧富、奨学金、シングルでの子育て、都市の再開発。移り変わる世の中で人はどうやって生きて行ったらよいか。現実の苦さから逃げていないから、この物語には力がある。


 ひと夏が終わると共に、父親にとっても娘にとっても一つの時代が終わります。でも夏が終わっても人生は続いていく。 

 この映画には見た人の人生を変えてしまう力があります。人を夢中にさせるけれど、世の中はうまく行かないということも教えてくれる。それでも温かい気持ちにさせ、前へ進む勇気を呉れる。
 ボクがこの映画をみて帰宅して最初にやったのは、映画のサントラをiTunesでダウンロードしたことです。それを毎日2回聞いている(笑)。これはもう、何度も見たい。幸せな時間を味わっていたい。ボクにとって2019年を代表する一本になるでしょう。

映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』予告編

『数式には罪はない』(笑)と『6/13香港の自由と民主主義を守る緊急行動』&『0614再稼働反対!首相官邸前抗議』

 この前 神宮前でアイスクリームを食べたんです。数年前にオープンしたLAITIER(レティエ)という店はTVや雑誌などに掲載された後、店頭での行列や自撮りしてる奴が大勢いたので敬遠していました(笑)。最近やっと落ち着いてきたので勇気を出して(笑)、店のドアを開けてみました。

●店のお奨めという『はちみつと3種のナッツのアイスクリーム』
f:id:SPYBOY:20190612130238j:plain

 これが異様に上手い(笑)。味は濃いけど、それほど甘くない。ミルクの味が濃いから甘さを抑えることが出来るそうです。今まで食べたアイスの中でも、トップレベルの美味しさ。びっくりしました。マシンメイドのソフトクリームだから、きちんとしたレストランが手作りするふわふわのアイスとは食感は違うけど、また違う美味しさです(笑)。

 地元の人に話を聞いたら、個人経営のその店は市場を通さず親戚の農園から直接ミルクを持ってきているそうです。値段もちょっと高い(780円)けど、これなら納得です。『ダイエットの敵』ですけど、度々リスクを冒す価値はありそうです(笑)。



 さて、今週 自民党が雑誌ViViを使って行ったネット・キャンペーン↓が炎上してました。

www.huffingtonpost.jp

 また怒ってる連中もいるけど(笑)、今後 ボクはこの雑誌をボイコットするだけで(もともと買ったことないけど)、別に何とも思いません。発行部数がピークの4分の1にまで落ち込んでいるという落ち目の雑誌が自民党の広告資金に転んだ、というだけです。それも、これだけだったら、間に電通かましても精々2000万くらいのはした金でしょう。

 与党が金に飽かせて物量戦術をやってきているのではなく、創意工夫でゲリラ戦をやってきている、というのがこの問題のポイントです。

 以前 国民民主党の玉木が兜をかぶるCMをTVや映画館で見かけましたが、あまりのセンスの悪さに失笑する観客すらいました。こちらの方が金は遥かにかかっている。10倍どころじゃないでしょ旧民主党負の遺産=国庫へ返納もしないで残った政治資金の超無駄遣い)けど、効果は自民党の方が遥かにあると思う。ターゲットが明確な分だけ、広告として優れている。
●サイテーでしょ。これは票を減らす効果しかない(笑)

国民民主党 CM動画 : 「私たちの答え」篇

 このことで判るのは、自民党の方が野党より遥かにマーケティングに長けているということ。その差はどんどん開いています。ネット時代になって安価に効果的な広告・広報を打つことが可能になりました。自民党はそれをうまく利用している。
 広告の内容は『レイプ犯をかばったり、LGBTは生産性がないと言う議員まで居る自民党の内実』とは全く違うけれど、間違いなく自民党のほうが野党より国民の眼を意識している
 政治ってある意味 マーケティングです。政策を、誰に、どうやって(広報や演説、マスコミ露出)働きかけるか。野党の多くは人々に訴えかける基本的なスキルができていない。これは金とか、政治と媒体の癒着の問題ではない。

 これじゃ野党が選挙に勝てるわけがありません。企業に置き換えてみると今の野党って、倒産寸前(社民、国民民主)、将来の成長性がない(共産)、設立後間もないのに大企業病(立民)、インチキ健康食品や霊感商法の個人商店(山本太郎)のようなものだと思う。野党は頼むからもうちょっと頭を使ってくれ。ムリか(笑)。
●うまいですよ。その程度の国民、ということを自民党はよく理解している。野党より賢いです。



 それより金融庁の金融審議会市場ワーキンググループによる「高齢社会における資産形成・管理」、通称『貯金が2000万ないと95歳までの老後は厳しい』(笑)という報告書が物議を醸しています。
this.kiji.is


 試しに40ページ余りの報告書を読んでみましたけど、ボクは全く問題があるとは思いませんでした
●流し読みだったら10分で読めますよ。https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

 内容は『企業の退職金も減ってきてるし、若い時から貯金、運用しなくちゃだめよ』と言ってるだけです。そんなの誰でも判ってるはず(笑)。
 で、厚労省のデータを基に、と但し書きをして、『高齢無職夫婦の平均的な収支は平均で毎月5万の赤字、その赤字が毎月発生するなら20年で1300万、30年で2000万貯金を取り崩すことが必要』とは書いてある。それってただの計算結果です(笑)。5万×12ヶ月×30年≒2000万。数式には罪はない(笑)。
そもそも報告書には年金の事なんか何も書いてないんです!(笑)

headlines.yahoo.co.jp


 ネットでは国の責任放棄じゃないかって怒っている人が大勢いるし、それにビビったのか 所轄大臣の麻生太郎は報告書を受け取らない、とまで言っています。でも、報告書には年金の事なんか書いてない!(笑)。報告書に怒ってる奴らも麻生も、お前ら、報告書読んだのか(笑)。

 不思議です。この報告書に怒ってる人って、今まで年金だけで暮らしていけると本気で思ってたんですか(笑)。厚労省マクロ経済スライド制度を導入したとき、『100年安心』とか言ってましたけど、それを本気にしてたんでしょうか?(笑)。

 今までだって、年金だけじゃ足りないって報道は沢山あったし、それでなくとも自分がもらえそうな年金額だって、ある程度わかる。それで足りないか足りるかぐらい判るでしょう。今まで何も考えていなかったんですか?(笑)

 老後にいくら必要か、その人の住んでいる場所や健康状態、家庭環境、ライフスタイルによって全然違います。だとしたら自分で考えるしかありません。年金だけで足りるか足りないかは、自分で判断するしかない。当たり前じゃないですか(笑)。そこまで自分の人生を他人任せにするの(笑)?

 実際 老後資金は年金だけでは足りないと思ってる人が大勢いて貯金に励んでいるから、結果 景気が悪くなっているわけでしょ(笑)。


 もちろん 貯金も出来ないくらい生活が厳しい人の問題は有ります。非正規の人がこれだけ増えたんです。大きな社会問題です。でも、それは小泉の派遣社員規制緩和が大きな原因です。年金ではなく雇用・賃金政策の問題です。ましてや、この報告書には関係ない。関係ない報告書に怒ってるヒマがあったら、最低賃金上げろっていうべきです。

 100年安心とかデマを飛ばした厚労省無為無策のまま放っておいた与野党の政治家を責めるのならわかります。単に数式通りカネの計算をしたに過ぎない金融庁の報告書を責めるのはお門違いです。事実は事実なんだから。

 与党も野党も現実から目を塞いでいる。報告書を受け取らないという与党は確かにおかしい。

 それ以上にヒステリックに理不尽な言いがかりをつける蓮舫の国会質問なんか最悪でした。初めて安倍晋三に同情しましたよ(笑)。事業仕訳の時も感じたことですが、蓮舫って実は頭は空っぽなんじゃないか(実際に現物を見ると、いい人ではありますけどね)。
●年金の事に触れていない報告書のことで年金問題を追及されるんだから、たちの悪いヤクザの言いがかりみたいなもんです(笑)。


 まるで 紅衛兵ポルポト人民裁判みたいじゃないですか。ファシズムですよ。ファシズム安倍晋三のお株を奪ってどうすんだよ(笑)
headlines.yahoo.co.jp

 
 やはり社会に不満が溜まっているんでしょうね。為政者は金持ち優先の政策が中心、野党は国民の方を向いていないし、多くの市民運動は旧態依然としたまま。人々の不満のはけ口がないだから滅茶苦茶なことを言ってるアホの山本太郎に寄付が集まったり、『NHKから国民を守る党』から議員が当選する。 左右に関わらず、反知性主義が跋扈する。

 こういう状況は狂ったポピュリズム、やっぱり人民裁判って言った方が良いかな。右左関係なくムードに流されやすい、頭を使いたくない人々の鬱屈した感情が溜まってくると、それがファシズムに転化するまでもう一歩です。


 この週末にこの報告書に反対すると言う『年金返せデモ』があるけど、報告書を読んだらアホかと思いました。逆に『(安倍から)報告書を守れ』じゃないの。逆だよ、逆

 確かに年金は参院選前の大きなトピックではあるけど、取り上げる理屈が間違っていれば実効性はないし、長続きはしない。何よりもボクは理不尽なファシズム人民裁判に加担する気はないですよ~。

●数少ないまともな意見。『報告書を責めるのは筋違い、だけど麻生太郎が追及に反論せず適当に収めようとした対応は最悪だった』というもの。それなら理解できる。
diamond.jp


といいつつ、木曜は九段下の香港経済貿易代表部へ。
6/13 香港の自由と民主主義を守る緊急行動
 香港のデモに連帯する主旨は大賛成だし、信頼できる元SEALDsの子たちの呼び掛けです。雨傘運動の子たちは15年の安保法反対運動の時 国会前に来てくれていました。何も出来ないけれど、ボクは彼ら・彼女たちに連帯の気持ちくらいは示したいです。なお金曜日の今日は札幌、名古屋でも緊急行動が行われています。


この抗議が呼びかけられたの水曜の深夜、Twitterだけです。5時半からと言う普通のサラリーマンには不可能な時間帯(笑)しかも前日夜のアナウンス、特殊なサラリーマン(笑)のボクだって当日知って、急いで出て来たんです。それで300人も集まったのですから参加者は多いと思います。

●抗議風景。三枚目は呼びかけ人の元SEALDs、沖縄県民投票の会の元山君

●コールは香港頑張れ! 香港加油


 
 元SEALDsの子や香港の人、中国に留学してた人がスピーチしましたが、沖縄と香港のことを重ねて話す人が多かったです。香港に駐在したり、旅行することだってあるんだし、まったく他人事じゃない。何よりも安倍晋三中国共産党みたいな社会を目指しているじゃないですか!

www.asahi.com
 
●そのあと渋谷で抗議が行われました。こちらは参加者2500人

●昨年 習近平が『くまのプーさん』に似ているとネットで揶揄されたことで、ディズニー映画が公開中止になりました。忖度役人満載の日本だって今にそうなる。




 ということで、今週も官邸前へ #金曜官邸前抗議へ
 当初 天気予報では雨だった☔️のですが、保ちました。午後6時の気温は23度。暑くもなく寒くもない抗議日和でした。参加者は300人くらい?先週よりは多かったと思います。
●抗議風景