特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『アリー/スター誕生』

 お正月休みが遠い過去のように思える(笑)、この週末は楽しい3連休でした。

 今日 街に出ると晴れ着の女の子が大勢歩いていて微笑ましかったですけど、その背景を考えると、良くあんなことするな、とも思います。みんな、それなりに可愛らしいし、自分が好きでやっているのか、親や友人、マスコミなど周囲に踊らされているのかはわからないけど、やっぱり、なんであんなことをやっているのだろうと考えてしまう。

 なんで自治体が成人式なんか開くの?
 なんで式典で首長やくだらない有名人の説教を聞かなければならないの?

 はるか昔(笑)、ボクは成人式なんか行こうとも思わなかったし、今年二十歳の姪っ子ちゃんに聞いたら『(成人式なんか)アホらしい』という返事しか返ってこなかったし(姪っ子ちゃん、偉い!)(笑)、冷静に考えると、そんなものなんでしょう。もちろん成人式に行きたい人を非難する気はないけど、不思議には感じます。

冷静に考えると、最近起きていることはこうなんですよね↓(朝日新聞編集委員tweet

きりがないというか、世の中はどんどんきな臭い方向へ進んでいる。

この国、いや、国民!の自浄能力には期待しません。でも何とかオリンピックだけでも潰れてほしいなあーー。東京で二回中止になれば、それこそ伝説になると思うし(笑)、大河ドラマ『いだてん』も余計に盛り上がるでしょう(笑)。


www.change.org


 こんどの日曜日、1/20、東京、大阪で同時に『安倍やめろ』デモがあります。 #AbeOut0120大阪   #AbeOut0120   #安倍もう飽きた   #維新もうんざり
とりあえず、冬空の下で声を挙げてみましょうか。そうそう、、デモとか言っても、所詮 お散歩に毛が生えたようなものです。気持ちいいじゃないですか。



ということで、日比谷で『アリー/スター誕生
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昼はウェイトレスとして働きながら、夜はゲイバーで歌っているアリー(レディ・ガガ)は、鼻が大きすぎるなど容姿にコンプレックスを持っていて、歌手になる自信を持てずにいた。ある日 酔っぱらって訪れたカントリー歌手のスター、ジャクソン(ブラッドリー・クーパー)から歌を高く評価され、ジャクソンのステージに上げられたことをきっかけにスターへの階段を登り始める。私生活でも二人は結婚するが、アリーの成功とは対照的にジャクソンはアルコールとドラッグに溺れていくーーーー


 ボクはレディ・ガガとかあまり興味ないので最初はスルー予定でしたが、非常に評判が良いので、とりあえず見に行ってみました。
 音楽はあまり好きじゃなくても映画としては面白かったボヘミアン・ラプソディの前例もありますし。『アリー』はアメリカでも興収は2位、レディ・ガガのサントラは全米、全英で1位を獲得しています。日本ではいまひとつのようですが、世界的には大ヒットしています。
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 当初はクリント・イーストウッド監督、ビヨンセ主演の予定だったそうです。ところがビヨンセが懐妊したため、レディ・ガガが主役になって、監督も出演しているブラッドリー・クーパーがやることになった。
 お話自体はハリウッドで4回目のカバーだそうです。かってはジュディ―・ガーランドやバーブラ・ストライサンドなどが主演している古典です。バーブラの前作くらい見ていけば良かったんですが、このお話し自体あまり好きじゃないんですよね。というか、大嫌い(笑)。だって、

 貧しい女の子が王子様のような男と知り合い、歌手や映画スターとして一躍 スターダムにのし上がるが、それとは反対に男は落ちぶれていく。

 今こういう映画が作られることは『女性を取り巻く差別はジュディ・ガーランド、いやバーブラの時代からすら、変わっていないことを告発している(嘆息)』という考え方もあるのでしょうけど、描き方はいい加減、少しは考えた方がいいんじゃないの?って思うんです。
性差別やルックスなどでくすぶっていた女の子が王子様のような男に救われる話も、瓢箪から駒のようなスターダムの話も、女性の成功を認めることができない男なんて、バカすぎて描く価値ないでしょ。


 今作もそういうお話です。世間で言われているとおり、ブラッドリー・クーパーのミュージシャン役、レディ・ガガの歌手役も悪くありません。特にブラッドリー・クーパーは歌とギターを特訓したそうで、表現はやや平板だけど本当の歌手みたいに見える。しかも曲まで自分で書いている。アルコールとドラッグで身を持ち崩していくスター歌手という役ですが、彼は終始 酒やけの声で演技し続ける。まさに熱演です。
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 映画はブラッドリー・クーパーレディ・ガガの二人をほぼアップで映し続けます。まるでこの二人は本当にできているんじゃないかと思わせるほどです(笑)。セリフに出てくる気持ちだけでなく、言外の気持ちまで伝わってくる。ちなみに『ボヘミアン・ラプソディ』ではフレディ役の俳優とヒロインのスーザン・ボイントンちゃんは実際に今 付き合っているらしい、くっそー(笑)。
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 俳優としてはブラッドリー・クーパーがメインですが、俳優としてのレディ・ガガも良いです。ジャクソンと出会った時の様々な表情の変化は素晴らしい。夜明けの駐車場のシーンなんかは歴史に残るくらいの名シーンかも。前回の『スター誕生』のバーブラ・ストライサンドと同じように、大きすぎる鼻にコンプレックスを持っているという設定のレディ・ガガ、ほぼスッピンのユダヤ人顔は結構可愛いです(笑)。
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 悲劇にしたくなかったと、とブラッドリー・クーパーは語っていますけど、演出も出過ぎず、感傷も押さえられていて、品がある。ジャクソンもアリーの造形も丁寧に描かれている。特にジャクソンの人物描写は説得力がある。監督としての手腕は見事なものです。
 ブラッドリー・クーパーと言えば超二枚目俳優として知られていますが、天は二物を与えたらしい(笑)。俳優としての二人はめちゃくちゃ気合が入っている。映画としては悪くありません。
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 一応 ある程度 今の時代のことは反映されています。アリーは男に頼らない自立した女性だし、ジャクソンに絡む酔っ払いを自分で殴り飛ばしたりするほどです。実際のレディ・ガガ同様、LGBTQに対する共感が表現されているのもいいです。



 でも、ボクの好みで言うとイマイチ、でした。お話で勝負しない音楽映画なのに、全く音楽に説得力がないんですもん。
まあ、ブラッドリー・クーパーの歌は良しとします。彼が歌うシーンは長くないし、彼の音楽は映画の中では添え物ですから。
だけど、お話にあるように、レディ・ガガが演じるアリーの音楽は『スターになって当然』というほどの説得力はない。映画を見た人は『うまい』と思うようなレベルではある。でも感動するほどでもない。ボクに言わせれば、凡庸です。

 これがビヨンセだったら違うかもしれません。彼女だったらルックスも歌も曲も『おおっ!』というだけの説得力がある。
アカデミー主題歌賞間違いなしと言われている、この映画の主題歌『シャロウ』はかなり良い曲です。だけど感動する程の名曲ではない。アリーの部屋にはキャロル・キングのウルトラ超名盤『綴れ織り』のジャケットが飾ってありましたが、それ風の音楽に強引で大仰なサビをつけて、無理矢理盛り上げようとする感じ。良くできているけど、合成甘味料が多用されているみたいで、ちょっと趣味が悪い。

Lady Gaga, Bradley Cooper - Shallow (A Star Is Born)


 お話し自体は見る前から判っている。だったら音楽で説得するしかないじゃない。この映画はそれが出来ていない。これは歌とかギターの技術の問題じゃない。基本的に音楽が人生に占める意味が判ってない。

 例えばジョン・カーニーの超名作『はじまりのうた』では歌は素人の女優、キーラ・ナイトレイが歌ったり、ヘイリー・スタインヘルドちゃんがギターを弾いてました。どちらもド素人、演奏技術はボクとおんなじくらいです(笑)。

キーラ・ナイトレイの歌。上のレディ・ガガと比べると、音楽において技術と感動は必ずしも比例しないことが良くわかる。

BEGIN AGAIN - Keira Knightley "Lost Stars" (Lyric Video) - Estreno 1 Agosto

 でも、滅茶苦茶感動する。それはこの映画が音楽が人を救う瞬間を描いているからです。それが音楽の意味なんですよ。
 
 音楽で納得させる映画の例は他にもあります。少し前、2009年、ジェフ・ブリッジス主演の『クレイジー・ハート』。

アル中のカントリー歌手を主人公にした、この映画とそっくりな話です。同じように主演のジェフ・ブリッジスが主題歌『The Weary Kind』を弾き語りしています。この曲はアカデミー賞ゴールデン・グローブ賞で主題歌賞を総なめ、真面目に聞いているとそれだけで泣いてしまう、これ一発で映画の内容全てを納得させてしまう超名曲でした。それくらいなら映画としても説得力がある。
●映画ではジェフ・ブリッジスが弾いています。

Ryan Bingham - "The Weary Kind" (Theme from Crazy Heart) [Official Video]


 同じように音楽をテーマにした『アリー/スター誕生』にはそこまでの説得力、音楽に対する熱情はない。ダンスを入れてもいいし、テクノアレンジでもいいけど、アリーがレディ・ガガと重なりすぎているのが裏目に出ている。ボクはこの映画にも表現されている、レディ・ガガのLGBTQに対するシンパシーには共感する。でも、この程度のありきたりの音楽では人間は救われない。
●美男美女が楽し気に演奏しているところを見るのは楽しいんですけどね。
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 じゃあ、音楽映画なのに音楽が今いちな例はどうでしょう。例えば『ボヘミアン・ラプソディ』。クイーンは一流のポップスだとは思いますけど、基本的にはごく一部の曲を除いて、安っぽい商業主義で大仰で下品な音楽です。要するにファーストフードみたいな産業ロック。聞き流している分には良いけど、ボクはクイーンの音楽単体では全く感動できません。
 でも『ボヘミアン・ラプソディ』は脚本が面白い。クイーンが南アで公演して間接的に人種差別を支持したなど都合の悪いことをカットしたり、事実を大幅に改編して、感動できる話に仕立てている。そこを大画面と音響で盛り上げて、共鳴させている。その手腕は素晴らしい。一方 『アリー/スター誕生』は脚本もありきたり過ぎる。


 全然 悪い映画じゃないどころか、俳優の演技も良いし、完成度も高い、ブラッドリー・クーパー監督は大したものです。美男美女の美しいラブストーリー。後味も悪くありません。サントラもCDで買うほどではないにしろ、iTunesで買っちゃうかもしれないくらいの良さはあります。好き嫌いの問題もあるけど、これだけ感想を書けるだけの作品ではあります。
 上の悪口はボクの感じ方なんで、客観的に見れば取柄はある映画です。でも、いまいちだったなあー。感動はしなかった。ホント、ビヨンセ主演だったら良かったのに。

映画『アリー/ スター誕生』予告【HD】2018年12月21日(金)公開

『沈没する日本』と読書『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』、それに『0111再稼働反対!首相官邸前抗議』

 もう、完全にお正月気分は抜けて、また市場競争の修羅場の毎日です(笑)。
 それにしても朝は一段と冷えるようになりました。ちょうど小寒大寒の間、1年で一番寒い時期に差し掛かっているのでしょう。春は春で花粉がうっとおしいし、雑事も多くてウンザリですが、少なくとも温かいのだけはありがたい。あー、布団の国に生まれたかった(笑)。
●スーパーに珍しい物がありました。超巨大キャベツ『札幌大球』。1個3980円!(笑)
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●夕方 グッド・ニュースが飛び込んで来ました。コイツもゴーンと同じ代用監獄に入れば良いんです😄。あ、文明国のフランスにはないか🤑




 さて、このブログでも実質賃金や名目賃金厚労省の『毎月勤労雇用統計』は度々引用しています。今週8日に報じられた『毎月勤労雇用統計のデータが不完全なまま発表されており、長年偽装されていた疑いがある』というニュースは流石に驚きました。この国はここまで落ちぶれたか(笑)。
www.sankei.com

www.chunichi.co.jp

 まだ全容は判りませんが、本来、従業員500人以上の全ての事業所が対象なのに東京都では3分の1程度の事業所を抽出して調べていた。連中は2004年からデータを捏造しており、そのために失業手当などの雇用保険の過少給付が約2000万人、総額で567億円もあるそうじゃないですか。

 この統計は社会のベースとなるもので、これが間違っていれば、賃金の伸びや経済状況も正しく把握できません。例の高プロの1075万の基準とかもこれに基づいています。
jp.reuters.com

 そんな重要なデータをねつ造するのですから、厚労省の存在意義自体が問われます。しかも初犯じゃない。以前の年金データ、昨年の残業データもそうだったのですから、これはもう、厚労省はお取り潰し、解体したほうが良いですね。

東芝や東電のような親方日の丸や独占企業ならいざ知らず、普通の民間企業だったら、不正や事件などあまり変なことをやったら会社が潰れるという恐怖があります。それが歯止めになっているわけですが(なってない場合もありますが)、役人の場合はそれがない。責任者の役人は詐欺で牢屋にぶち込むべき!じゃないでしょうか。ゴーン氏のやったことが本当だとしても、厚労省の役人が与えた被害の方が遥かに悪質です。これじゃあ日本は、マジで北朝鮮や中国の事はいえません。

 やっぱり競争がないのはダメなんですよ。地方で現場のセールスマンに聞くと、商談をしていて人を人とも思わない偉そうな連中、態度が悪い連中はたいていは教師か役人、それに電力会社って話をよく聞きます。まともに競争がない連中ばかりです。

 残念ながら、競争がないと人間って腐ることが多い。安倍晋三は生まれたときから真正のアホで嘘つきかもしれませんが自民党がこんなに劣化したのも野党がバカすぎて競争がないからでしょう。ボクは競争なんか嫌いですが、やはり、人間がサボれるような仕組みは良くない。
 普通だったら最低でも大臣辞任、内閣辞任だっておかしくない話です。やっぱり、この国は沈没しつつあると思います。朴政権もろとも沈んだフェリー、セウォル号のように。




さてさて、お正月休みには珍しく、ベストセラー本を読みました。年末の本屋の店頭にどわーっと山積みされていた本です。
FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

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 アメリカでもベストセラーになった、トランプ政権の内幕を描いたノンフィクションです。著者のボブ・ウッドワードウォーターゲート事件を暴いたことで有名な人。


 今作はホワイトハウスの関係者にインタビューを行い、それを基に書かれたものだそうです。だいたい誰が話したか、読んでみると容易に想像ができます。ちなみに本の冒頭には、トランプにもインタビューを申し込んだが断られた、という但書があります。


 良く言われることですが、本当にトランプも周囲の人間も、トランプが大統領に当選するとは思ってなかったようです。本気だったのは後に首席戦略官になった、ネトウヨの親玉、スティーヴン・バノンだけ。彼だけは本気で勝つための戦略を考えていた。バノンはヒラリーが手を抜いていた激戦州に力を注ぎ、選挙に勝つ作戦を立案します。それでも彼が陣営に加わったのは選挙戦の終盤、夏以降です。

 当選後 トランプ大統領のスタッフはいくつかのグループに分かれます。
 まずトランプの親族(娘のイバンカ、娘婿のクシュナー)。親イスラエルですが他の面ではリベラルな姿勢から、ホワイトハウス内では『民主党』と呼ばれ、嫌われているそうです。自分たちは他のスタッフとは違う、特別だと公言しています。

 次に軍人(陸軍中将のマクマスター国家安全保障担当補佐官、海兵隊大将のジョン・ケリー大統領首席補佐官、海兵隊大将のジェームズ・マティス国防長官)、それぞれ立場も考え方も違いますが、ルールや規律を守らないイバンカたちを苦々しく思っている、訳の分からない戦争は防ごうとする、という面では共通しています。

 ビジネス界からコーン国家経済会議委員長(元ゴールドマン・サックス)、ティラーソン国務長官(元エクソン)、ムニューシン財務長官(元ゴールドマン・サックス、元ヘッジファンド)など。彼らもそれぞれ立場も考え方も違いますが、コーンやティラーソンは自由貿易を堅持する常識的な経済人であることは共通しています。

 共和党どころかアメリカ社会からも非主流の変わり者たち本気で革命を起こしたがっている極右のバノンや世の中や学会からは相手にされていない経済学者のナバロ通商会議議長(元UCLA教授)。

などです。出身が異なるもの同士は勿論、出身が同じでも、お互いが助け合う人たちではなく、それぞれが自分のことしか考えない『捕食者』だったそうです。よく考えたらトランプ自身もそうです。部下も味方も平気で裏切ります。
●取材者の証言はアマゾンの本紹介ページから取りました。


 トランプが自分で連れてきたマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官はロシアとのスキャンダルで辞任、「知恵袋」だったスティーブン・バノン首席戦略官もイバンカやクシュナーとの確執で辞任。
 トランプは就任当初から現在まで常に自分のロシア疑惑への追及におびえ続けているそうです。本人の一番の関心がそれ。この本を読んでいる限りではモスクワで売春婦を呼んで乱交パーティをやった(で、写真を撮られた)のは本当みたいですね。当人は疑惑を逃れること以外はあまり頭に入らない。同じ極右仲間のセッションズ司法長官が超法規的に捜査に介入しないことに対して就任当初から不満を述べ続けます。セッションズはやがて解任されます。


 トランプは毎日に6~8時間TVを見て、そのあとツイッターをやっている。従って、難しい報告書を読んだり、複雑な軍事や経済の状況を理解できないし、する気もない。関税をかけるとアメリカの消費者が余計なコストを払わなければならないということすら判らない。 スタッフの間では報告書は1ページ以内、不意な決定は正式な決定とみなさない、ということになっているそうです。

 エクソンのトップだったティラーソンやゴールドマン・サックスのトップだったコーンから見れば、トランプはバカに見えて仕方がない。ビジネスマンとして自分より格下という思いもあるし、実際遥かに格下です。これではうまく行くわけがない。
 おまけにトランプは朝令暮改どころか、嘘ばかりつく。さっきまで秘密と言ってた人事などまで、勝手にツイッターで発信してしまう。
 結果 コーンもティラーソンも堪忍袋の緒が切れて退任してしまいます。環境汚染で悪名高いエクソンリーマンショックで大儲けしたゴールドマン・サックス、資本主義のマイナス面を象徴する超極悪企業ですが、そのトップがトランプ政権の中に入るとまともに見えてしまう。ひどいもんです。

 軍人から見ても同じです。トランプは直接的なことでしか物事を考えません。例に挙げられているのが韓国。韓国に米軍が駐留していれば北朝鮮ICBMを発射すれば7秒で探知できます。しかし米軍が韓国から撤退すると、ICBMを探知するまで15分かかる。安全保障上 その差は大きい。それでもトランプは韓国からの米軍撤退に固執しています。韓国との同盟破棄にもつながる自由貿易協定も破棄しようとしています。

 ビジネスに失敗して6度破産したトランプは、政治も間違えたらやり直せばいいと考えているようだ、とコーンは言っています。だから北朝鮮との戦争のリスクを冒すこともいとわない。でも戦争はやり直しは効かない。意思決定論の名著『八月の砲声』が座右の書、というインテリ将軍マティスは偶発的な戦争が勃発するリスクを減らすのに大わらわです。
●誰もが数か月で終わると思っていた第1次大戦が双方の意志決定の誤りが折り重なって、泥沼になっていた経緯を描いています。ちょっと難しいけど、非常に良い本でした。

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

 トランプに『何で米軍が海外に基地を置くのだ』と問われて、軍人たちは『第3次世界大戦を起こさないために、我々は駐留している』と答えます。しかしトランプには理解できません。
 結果 マクマスター、ケリーが退任し、つい最近もシリアからの撤退に反対してマティス国防長官が退任しました。シリアから撤退すれば、トルコがクルド人勢力を攻撃し始める。クルド人勢力がISのようになるかもしれない。シリアも何をするか判らない。トランプはそういうことは考えません(この件は最近、流石にトーンダウンしてきましたが)


 トランプは理解力はありませんが、気ままに意思決定はしてしまいます。韓国との自由貿易協定を廃止する決定を下したことがありました。しかし秘書官とティラーソンが書類を隠して阻止します。書類がなければトランプは忘れてしまう。もちろん後になったら思いだしますが、その場を取り繕えば、また忘れてしまう。

 また自由貿易反対のナバロがトランプに強硬論を吹き込んで、トランプがそれに影響されるということもありました。ナバロはただ中国を敵視するだけの、ティラーソンに言わせると、世の中の99%の経済学者から相手にされないようなインチキ学者です。ティラーソンやケリーはナバロをトランプに直接会わせないようにしてしまいます。


 軍人、ビジネスマン、極右、親族それぞれが権力争いをするなかで、右寄りとはいえ、現実的な視野に立つ軍人やビジネスマンがトランプの気ままな意思決定を何とか抑えてきた、というのがこの2年間の政治のようです。1年前のように北朝鮮との間で一触即発の時にマティスが居なかったら、本当に戦争が起きていたかもしれません。


 しかし、その2年間で、この本に出てきたまともな登場人物は既に皆 退任してしまいました。特に面と向き合うと感情が出てしまうので、なるべく出張に出かけてトランプと会わずにコントロールしようとしてきたマティスまで首になってしまったのは大きい。

 この本を読むと、トランプは自分のロシア疑惑を逃れること、保護貿易、自分の再選、それくらいしか考えていないように見えます。残りの時間はTVとツイッターで時間が過ぎていく。バノンですら「毎日そんなことをやっていたら人間の頭脳はどうなるか」と呆れています。

 そんなトランプの思い付きや気まぐれを抑えることに能力を使ってきたティラーソンやマティスはもう、ホワイトハウスにはいません。彼らがやったことは正しかったのでしょうか。それともトランプの思いこみが正しいのでしょうか。


 この本はロシア疑惑とそれに対する司法妨害に関してトランプの弁護を担当する弁護士が辞任するところで終わります。弁護士はトランプに、特別捜査官への証言を拒否するよう進言しますが、トランプは受けてしまいます。トランプは『自分は巧みに証言できるので、証言すれば疑惑から逃れることができる』と信じているからです。進言が聞き入れられなかった弁護士は自ら辞任することを決め、ウッドワードにこう述懐します。

(トランプは)くそったれのウソツキだ

 読み物としては滅茶苦茶面白いです。400ページ超の本ですが、面白くてスラスラ2日で読んでしまった。
 この本を読んで何かを学ぶ、とかそういうものではないかもしれませんが、政権の内実を描いた話としてとてもユニークです。これだけ話が漏れてくるというのは閣僚もスタッフもそれだけ不満や危機感を持っているからです。
 いつか、安倍政権の内幕について、こういう本が書かれたとしたら、かなり似たものが書かれるんじゃないでしょうか。その頃の日本は文字通り、滅茶苦茶になっているでしょうけど(笑)。



ということで今年も官邸前へ #金曜官邸前抗議
昼間は暖かかったのですが、寒くなった夕方はプラカードを持つ手が凍えます。今日の午後6時の気温は8度、今年初めの抗議は参加者400人。

●抗議風景


 今日の昼間、日経のスクープ?が出ました。いよいよ日立のイギリスへの原発輸出を中断する方針が固まったそうです。
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日立、英原発事業を中断 2000億円規模の損失計上へ :日本経済新聞

前々から話に出ていたイギリスへの輸出の件、とうとう日立が諦めたようです。損害は2000億~3000億の見通し。でも東芝のことを考えればこれでも少ない。来週の役員会で正式決定するそうです。日本政府なんか信じるからですよ(笑)。
●今日の日立の株価。原発輸出中止が報じられた途端 激上げ(笑)。みーんな、原発なんか止めたいんです。
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 あともう一つ原発事故直後から、福島の安全性を発信してきた東大の早野龍五名誉教授が論文のデータを偽造していた件、これも驚きました。調査で福島県伊達市の住民の個人被ばく線量を3分の1にしていた、また論文に使用したデータのうち約2万7千人分は本人の同意が得られていなかった、そうです。


被ばく線量誤り論文修正へ 東大・早野氏 福島の住民データ :日本経済新聞

www.huffingtonpost.jp
www3.nhk.or.jp

詳細はこちらを(神戸大の教授が書いたもの)
hbol.jp

 福島事故の安全性を強調する早野は事故当時、TBSラジオの荻上チキの番組にも出演するなど積極的に情報発信していましたので、ボクもある程度はチェックしていました。政治でも原発事故でも異なる立場の意見を目にしたいからです。
早野の語り口は論理的でしたけど、証拠など言ってることの裏付けがとれなかったので、事故当時の自分なりの結論は『裏付けが取れないので判断保留=真に受けない』。で、その後 安全性を訴える糸井重里との共著を出した時点で、『こいつ、胡散臭い』と判断しました。ついでに糸井重里も。
●リテラは弱い者いじめのスキャンダル雑誌『噂の真相』の出身者がやっているので信用していませんが、この記事についてはその通り。
lite-ra.com

 ま、それは良いんですが、功成り名を遂げた?東大の名誉教授がデータの偽造までやるかよ、とは思うんです。定年後にそんなセコイことするのかよ、ボケじじい(笑)。孫に合わせる顔があるのかね。

プログラムのミスと当人は言い訳してるけど、データを3分の1にするようなプログラムなんか意図的な偽造に決まってるじゃないですか。もう、モラルも減ったくれもない。おしどりマコそっくりの詐欺師です。原発の危険を煽る側、安全を煽る側、どちらの立場でも詐欺師は枚挙にいとまがありませんが、民主主義を守るためにはこういうゴキブリは一つ一つ潰していくしかありません。
南京大虐殺はなかった、みたいな修正史観が広まったのもゴキブリどものデマを潰さなかったからです。象牙の塔に籠っていた学者の怠慢には大いに責任がある。


 昨年から今年にかけて、政府や役人、大企業、そして学者のデータ改ざんや偽造ばかりが目につきます。日本という国、社会の劣化はこんなところにも表れてきているのでしょう。こういう時一番ダメなのは現実を直視しないこと。ダメな奴はダメで仕方ないけれど、自分は自分なりに気を引き締めていかないとなあ、と思います。

ドラマ『いだてん』と『終活』のススメ:映画『家へ帰ろう』

 いよいよ今日から、世の中が本格的に動き出す、という感じでしょうか。まあ、個人的には動いてくれなくてもいいし、動きたくもないんですけどね(笑)。

 今朝の朝刊に掲載された毎年恒例になっている宝島社の新年の広告、良かったと思います。
●朝日に載ったもの
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●読売、日刊ゲンダイに載ったもの
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もちろん 何冊もヘイト本を出している宝島社が良いという訳ではありません(笑)。むしろ、盗人猛々しい。


 情報が溢れている今の時代、『嘘つき』は根本的な問題です。嘘は民主主義が成立するのに必要な一人一人の判断力を失わせるばかりか、社会そのものを破壊すると言えるでしょう。しかし現実には安倍晋三やトランプ、杉田水脈百田尚樹堤未果おしどりマコに至るまで、右左関係なく嘘が溢れている。まさに『敵は嘘』なのに。
 それにしても正月早々から総理大臣が国営放送で見え透いた嘘をついても誰も突っ込まない。国も放送局もどうなっているんでしょう。これで誰も不思議に思わないのが不思議です。



 昨晩 放送されたNHKのドラマ『いだてん』、興味深かったです。
www.nhk.or.jp

 そもそも忙しいので、ボクはドラマなんか見ません。そんな時間はない。内容のくだらなさもさることながら、ドキュメンタリーなどは早回しで見られるけどドラマはそれができないし、TVの前で1時間座っていること自体耐えられない。受け身なのが嫌なんです。しかも、このドラマのテーマはボクの大嫌いなオリンピック。

 しかし、『いだてん』の制作は井上剛(演出)+大友良英(音楽)です。このコンビの前作『あまちゃん』は本気になってしまったし、神戸の大震災をテーマにした『その街のこども』、311をテーマにした『LIVE !LOVE!SING!生きて愛して歌うこと』は生涯ベスト10に入るような映画です。大河ドラマなんか見たくありませんが、仕方がない(笑)。

その街のこども 劇場版 [DVD]

その街のこども 劇場版 [DVD]

「LIVE! LOVE! SING!?生きて愛して歌うこと?」オリジナル・サウンドトラック

「LIVE! LOVE! SING!?生きて愛して歌うこと?」オリジナル・サウンドトラック


 始まって直ぐ、森山未来(『その街のこども』)や『あまちゃん』に出ていた橋本愛ちゃんや小泉今日子などの面々が出てきたら、懐かしい気がして、いっぺんに見てしまいました。『俺たちを止められるか』で文字通り暴れていた満島真之介くんがここでも暴れていたのも嬉しいし。

 懸念した内容も、嘉納治五郎役の役所広司に『国家を背負うなんてばからし』、『勝ち負けにこだわるなんて間違っている』なんて言わせるなど、良いじゃないですか。ボクには、オリンピックを利用しようとしている安倍晋三などの政治家やインチキ臭い代理店の連中を真っ向から否定しているように聞こえました。NHKを利用して、堂々と異議申し立てをやってる、と。
 音楽の方も疾走するようなテーマ曲はかっこよかったし、劇中 ところどころで鳴り物がさく裂するのも大友良英らしくて良かった。今までの大河ドラマとは明らかに異質です。

 長丁場の連続ドラマを見る、というのは時間的にも肉体的にも苦痛ではあるんですが、これからどうなるか、注目していきたいと思います。
●クイーンのブライアン・メイ氏も辺野古基地反対の署名に参加したそうです。彼は天文学博士だから、Drがついてるのよ。


ということで、新年らしい?映画。銀座で映画『家へ帰ろう
uchi-kaero.ayapro.ne.jp

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ブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立て屋アブラハムは病で足を悪くしてしまい、切断しなければならない瀬戸際に立たされる。そこで彼は自宅を娘たちに譲り、老人ホームへ入ることになる。入居の前夜 アブラハムは家を抜け出し、第2次大戦当時ユダヤ人の彼が強制収容所から生還する際、助けてくれた親友に逢いに一人、ポーランドへ旅立つ


 アルゼンチン・スペインの合作映画です。ラテン系の血が強烈に濃縮された作品でした。
冒頭 主人公の爺さん、アブラハムの家に娘たちが訪れるところから始まります。大勢の孫たちと写真を撮る姿は嬉しそうですが、足を引きずっていて、日常生活も辛そうです。

 明日は老人ホームに送られる日です。その晩、アブラハムは一人、家を抜け出し、ヨーロッパへ向かいます。


 お洒落で女好きという雰囲気を漂わせているアブラハムですが、表情は険しく、眉間には深いしわが寄っています。いかにも因業ジジイという感じで、あまり知り合いにはなりたくないタイプです。
●こんなお洒落な88歳、なかなかいません。

 お話が進むうちに、彼はもともとポーランドに住んでいたユダヤ人でホロコーストの生き残り、家族は皆殺しにされるなか、ポーランド人の親友の助けで生き残ったことが判ってきます。第2次大戦後アルゼンチンにまで逃げてきた。死を目前にした今、故郷ポーランドに戻って50年以上音信不通の親友を探し出して、自分が最後に作ったスーツを渡したい、というのです。

 そう、この映画は『終活』のお話です。
 娘たちから逃げるように飛び乗った飛行機で、アブラハムが最初に降り立ったのはマドリッド。お金に余裕があるわけではない彼は電車でポーランドへ向かいます。足が不自由で体調も悪いアブラハムポーランドにたどりつけるでしょうか。

行く先々でアブラハムは様々なトラブルに直面します。その際、彼が出会うのは女性たち。マドリッドでは同年代の宿の主人、マリア(写真中央)。

パリでは中年のドイツ人人類学者、イングリッド

ワルシャワでは若い看護師のゴーシャ。

 不機嫌そうなアブラハムの表情に、当初は見ているこちらも陰鬱な感じでしたが、年代も個性も異なる女性たちが表れてくると、お話ががぜん面白くなってきます。羨ましいというか、映画ならでは、です(笑)。そんな旅の間に、今までアブラハムが送ってきた人生、そして戦争が遺した傷のことが判ってきます。
スペイン語が通じないパリで、アブラハムはドイツを通らずにポーランドへ向かう方法を必死に探します。


 特にワルシャワへ向かうドイツで列車の乗り換えをする際、アブラハムが『絶対にドイツの土を踏みたくない』と強硬に言い張るところは度肝を抜かれました。乗り換えの際ホームにすら足をつけたくないというのです。アブラハムは自分の目の前で家族を殺されました。戦後70年が経っても、傷は癒えることはない。戦争とナチスの非道性を思い知らされます。と、同時に、大日本帝国に対してそういう思いを持っている人も居るんじゃないでしょうか、とも思って愕然としました。ちなみに、そんなアブラハムを救ったのはドイツ人のイングリッドでした。

 やっとのことで、ワルシャワに着いたアブラハムは現地の看護師のゴーシャの力を借りて、かって自分が住んでいた街へ向かいます。彼の家族が殺され、財産を奪われた、親友が住んでいた街へ。

 段々 ボク自身も『終活』がそんなに遠いことのようには感じられなくなってきました。自分の人生にどのような区切りをつけたらよいか、どんな締めくくり方をすればよいか、考えてしまう。もし自分の終活をすることができたなら、感じることは後悔だらけなんでしょうけど、それでも半分ボケた頭で自分で自分をごまかして区切りをつけるのだと思います。

 この映画は欠点だらけの人間たちを温かく包んでくれます。最後は号泣必至。70年経っても忘れることができない戦争の深い傷と自分の頑なさ故の後悔だらけの人生。そんな人生でもいつか終わりがくる。さあ、どうしよう。中々の佳品でした。

映画『家へ帰ろう』予告編