特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

読書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 』と『1116再稼働反対!首相官邸前抗議』

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フランキー堺主演、川島雄三監督の1957年の名画『幕末太陽傳』の舞台、御殿山の昨日の光景です。東京もだんだんと木の葉が色づき始めています。

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11月の半ばを迎えて、めっきり寒くなりました。もう観念して冬服を出します(笑)。ったく、年の瀬が押し迫るにつけ憂鬱になります。宴会の予定が入るからです。せっかく仕事が終わっても、全く面白くない時間を2時間も過ごさなければならないのが耐えられない。ボクはどうしても逃げられないものを3つくらい出るだけですが、それだけでも、今からウンザリ。宴会という言葉を聞くだけで、心まで寒くなります。ホント、人間と関わらないですむ山の中で暮らしたいです。でも寒いのも 嫌~(笑)。
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今週 発表されたGDPがマイナス成長だったことが話題になってますけど、
www.nikkei.com

今まで景気を支えてきた輸出がダメ、

もちろん個人消費もダメ、

2期ぶりマイナス成長 7~9月期GDPをグラフ解説 :日本経済新聞

マスコミは災害などによる一時的な減速とか言ってますけど、災害と外需は関係ありません(笑)。さらに米中の貿易戦争やイギリスのEU離脱にしても、これからも外需はあまり良さそうな感じがしません。かといって、金持ち優遇政策内需はずっとダメ(笑)。今後 日本経済はどうしたらいいんでしょうか!(笑)。
しかもこれから消費増税。もちろん累進税率や相続税大幅アップの方が優先すべきですけど、消費増税自体は仕方がないとボクは思います。でも景気は悪化する。それをどこかでやらなければならないのなら、野党より安倍晋三にやらせて汚名をかぶせた方が良い。いずれにしても、前途に暗雲が漂う年の瀬です。
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さて、読書の感想です。

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

世界22か国で刊行され、日本でも10月の朝日、日経、読売、信濃毎日、週刊文春9/27号、文藝春秋11月号と各紙の書評で取り上げられる話題の本。実際 本屋でもベストセラーとして、ずっと平積みされていて、もう10万部を超えているそうです。7月に発売されたこの本、ビジネス書か~と思って、最初は手が伸びなかったのですが、読んでみたら非常に面白かったし、すらすら読めた。これはぜひご紹介したい(笑)。

著者はNY大のビジネススクールマーケティングを教える教授です。いくつもの企業を興した起業家でもあり、NYタイムスやゲートウェイ・コンピュータ(もう潰れた)の社外取締役を務めたキャリアの持ち主でもあります。日本の学者に良く居るように、ニートのように学校に引きこもって口だけ偉そうな連中とは違う。

GAFAとはGoogleAppleFacebookAmazonを略した言葉です。この本は以下のことを述べています。
1.GAFAはなぜ、これほどの力を得たのか
2.GAFAは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
3.GAFAが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか

GAFAが例えられた四騎士とは、聖書の黙示録に出てくる世界の終わりをもたらす四騎士のことです。面白いのでアマゾンの本紹介に出ていたイラストを引用します。
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これらの企業は2017年の企業の株式時価総額(会社の価格です)の1位(アップル)2位(グーグル)4位(アマゾン)5位(フェイスブックを占めています(3位はマイクロソフト)。GEもエクソンも武器製造企業も自動車会社も製薬会社も全く目じゃありません。ちなみに2006年は1位がエクソン(石油)、2位がGE,、3位がマイクロソフト、4位がシティ・コープ(金融)、5位がバンカメ(金融)だったそうです。10年で会社も業種も全く変わってしまった。


GAFAは世界中何十億人もの人々に利用され、人々に利便性をもたらしています。同時に自分たちも莫大な収益を上げると同時に、参入した業界、産業、大企業を破壊しています(デジタル・ディスラプション)。PCや電話機のメーカーはアップルに、マスコミや広告会社はグーグルに、小売業はアマゾンに破壊されたり、業界ごと消滅させられたりしています。ボクの勤務先も大丈夫か?(笑)。最初は限られた企業や業界だけでしたが、これからは銀行などの金融、自動車会社、医療、保険や教育など全然考えられなかった業界まで変えていくでしょう。

例えば 全米で300万人(全労働者の2.6%)いるというレジ打ちの人はアマゾンの無人店舗技術が普及すれば雇用がなくなります。日本でも赤羽駅の紀ノ国屋で実験している、アレです。もう10年くらい経ったら人間の販売員なんて、高級店以外では滅多にお目にかかれなくなるかもしれません
アマゾンだけでなく、トランプのロシア疑惑だってフェイスブックのデータをハッキングし悪用されたというのが実態です。データを悪用したケンブリッジ・アナリティカのバックには極右の大金持ちがいる、という話もある。GAFAは我々の生活や雇用だけでなく、国や社会の形だって変えてしまうかもしれない。確かに彼らは世界を変えつつある。聖書のように四騎士は世界に終わりをもたらすのでしょうか。
赤羽駅無人店舗(アマゾンではなくJRがやっています。仕組みはアマゾンとほぼ同じ)

JR赤羽駅のAI無人店舗を体験してみた - ITmedia ビジネスオンライン

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JR東、赤羽駅に無人決済店舗 カメラが客を追跡 - ITmedia NEWS


GAFAがなぜ、これほどの力を得たのか。デジタルという技術の特性、また彼らが技術をビジネスに結び付けることに長けていたことに加えて、著者は『GAFAは脳、心、性器を刺激している』と言います。グーグルやアマゾンは検索や情報量で頭脳を刺激し、競合より遥かに価格が高いがデザインに優れたアップル製品は持っているだけで持ち主がセクシーに見える、つまり性器を刺激する。フェイスブックは『いいね』や『つながり』で人間の心を刺激する。確かにこれは強い。消費者は自ら進んで服従する、とまでは言いませんが、生活になくてはならないものになっている。


GAFAは世界をどのように変えたのでしょうか。著者は端的に言います。アメリカは300万人の領主と3億人の農奴になる』です。デジタルの世界は勝者総取りです。それもグローバルに。著者によると例えばタクシー配車アプリのウーバーの時価総額は700億ドル、社員は8000人、一人当たり9億円弱の資産を持っていることになります(実際は持ち株数での配分ですから、現実とは異なります)。一方 ウーバーで使われる運転手は200万人、時給は平均8ドル弱(約1000円)。比較対象としては正確ではありませんが、分かりやすい例えです。因みに今のところ 役所の石頭の規制のおかげで日本ではウーバーの進出が失敗しているのは良かったなーと思っています。


違う面もあります。アマゾンは『地球上で最も消費者を大事にする企業』というのが企業理念、掟です。その理念に基づいて、彼らは利益を極力 出しません。税金も極力払わない(日本でも合法的に消費税や法人税を払ってないし、アメリカでも殆ど払っていないそうです)、株主にも配当を出さない。赤字を出さない程度の利益にして、あとは消費者のための投資に回してしまいます。莫大な品揃えと安売りの源資、世界最多のコンピューター、1000以上もの物流倉庫の建設に、品出しロボットを開発会社ごと買収、無人店舗技術やドローン配送、音声AIの開発etc。

今やマイクロソフトのWIN10パソコンには全てアマゾンの音声AIが入っています。アマゾンは服飾業界にも参入していますが、洋服会社(J・クルー)の社長が『金を儲けるつもりがない大企業と競争なんかできない』とぼやいています。利益を出さない、配当も払わない、税金も払わない、確かにそんな企業とは競争なんかできません

ボクは、もしかしたらこれは新しい資本主義の一種ではないか、とすら思います。利益も配当も出さないのだから、大企業や資本家の搾取とか、剰余価値とか、マルクスが言ってたことなんか当てはまらない
アマゾンは何を目指しているのだろう?もしかして世界経済の征服?(笑)。こんな姿勢を著者は、『べゾス(アマゾンの創業者でありトップ)、本当は何を目指しているのか、早く言え』と述べています。

彼らの理念、『地球上で最も消費者を大事にする企業』は綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、社内では確かに徹底されているようです。いくら営業成績が良くても、理念に合ってないと判断されたら直ぐクビ、みたいです。ただし『消費者にとって大事なもの』はアマゾンが決める。そこが恐ろしい。彼らはマスコミの批判なんか恐れない。金があるから、関係ない。そういう意味でも恐ろしい。

ちなみにアマゾンの創業者のジェフ・べゾスは給料は年1000万円程度しかもらってないことで有名です。あの会社でしたら平社員なみでしょう。しかし彼は世界1の大金持ち。アマゾンの株は配当を出さないにも関わらず、値上がりを続けているからです。彼は自費でウォーターゲ―ト事件で有名な新聞ワシントン・ポストを買収、政府批判を続ける同紙の姿勢を支持しているおかげで、トランプからは度々非難されています(笑)。


しかし GAFAがいつまでも続くとは限らない、とも著者は言っています。変化が速い世界ですが、その変化は時を経るにつれて一層早くなっている。IT業界は以前はIBMが絶対君主でしたが、HPにとってかわられ、マイクロソフトにとってかわられ、今やGAFAの時代です。それがいつまで続くかは判らない。著者は高級ブランドという無形資産を持つアップルが最も長続きするのではないか、と言っていますが、それは判りません。

ではGAFAが作り替えた世界で我々はどうしたらよいのでしょうか。著者は『現代は超優秀な人間にとっては最高だけど、平凡な人間にとっては最悪』と言います。優秀じゃダメなんですね。超優秀じゃないと、あとは十把一絡げ。『数万人の領主と数億人の農奴』というわけです。
このような時代に生き残るためには、個人の精神的な成熟に加えて、ハイレベルな教育、ニッチ分野を探すこと、友人関係、新しいことを受け入れる&四騎士を使いこなすこと、好きなことではなく得意なことで仕事をすること、組織ではなく個人を大事にすること、様々なことを挙げています。

著者は『四騎士の目的は金儲けだ』と言いつつも、最後に『四騎士と闘うべきか、悪とレッテルを貼るべきか、それは分からない。すくなくとも彼らを理解することが必要だ』と述べています。
ボクも、それは100%同感です。否定するにしても、良い点を認めるにしても、まず四騎士のような超巨大デジタル企業の存在を理解しなければ何もできない。あと、最近EUがデータ保護規制を作ったり(GDPR)、イギリスがデジタル課税をするとか言ってますが、法的な不備、特に独禁法の強化は日本も含めて世界的な急務だと思います。我々がGAFAに対抗する武器は税制と独禁法、あと連中に踊らされないよう一人一人の知性で対抗するしかありません


著者はビジネスを理解しつつも、かなりリベラルです。日本にはリベラルでありながら実務を知っている人って殆どいないから羨ましい限りです。話も面白い。特に彼がNYタイムズ社外取締役としてグーグルに対抗しようとしたが社内の抵抗で挫折した話なんか非常に面白かったです。朝日も毎日もNYタイムズをお手本にしてデジタル時代に生き残ろうとしているみたいですが、この話を読むとまるっきりのバカに見える。
400ページと厚い本ですが、難しいところもないのでスラスラ読めます。面白かったです。
●このこと一つとっても、日本の将来はお先真っ暗なことが判ります。この国が再建できるとしても、右でも左でも、こういう無能なジジイ連中が棺桶に入ってからですね。

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https://www.theguardian.com/world/2018/nov/15/japan-cyber-security-ministernever-used-computer-yoshitaka-sakurada
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と、いうことで、今週も金曜官邸前抗議へ。
今朝の東京は10度を切りました。10月ですら暑い日が多かったのがウソのようです。今年の秋は短かい、のかもしれません。午後6時の気温は16度、参加者は500人。
●抗議風景

相変らずおしどりマコが講演会で福島に関するデマを振りまいているようなので、その模様を記したtogetterを晒しておきます。今も福島で『奇形玉ねぎ』が発生していると吹聴しているそうです。

引用元のtogetterを見ると、講演の内容を知った人が、福島市の農協・福島県北部農林事務所・サカタのタネに問い合わせたところ、奇形でも何でもないということだったそうです。立憲民主党は、福島苛めで商売をする詐欺師参院選の候補に担いでよいのでしょうか??
原発だけではありませんが、我々が本当に民主主義を求めるなら、こういうデマを一つ一つ潰していくことが必要だと思うんです。反原発デマで商売をしているおしどりマコは、LGBTに関するデマを振りまいて商売をしている杉田水脈生活保護に関するデマを振りまいて商売をしている片山さつきと まさに同類じゃありませんか。

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引用元 https://togetter.com/li/1281486

『1111原発ゼロ☆国会前集会』と映画『10年 Ten Years Japan』

 週末は友達と原宿に行ってきました。
 自家製のクラフトビール&燻製料理のお店です。と言っても、ボクはビールはあんまり好きじゃないので他のモノを飲んでた。

●セロリ入りのブラディ・マリー。グラスの縁にはスモークして香りをつけた塩

●スモークした肉の盛り合わせ。エスプレッソで肉を燻製すると柔らかくなるそうです。

 夜が更けるにつれて、テーブルが全て外人で埋まったのはびっくりしました。日本人客は我々だけ(笑)。六本木ならそういうこともありますけど、原宿だから、ちょっと驚きました。ここに限らず、安くて美味しい店って外人比率が高いことが多い。彼らはなんだかんだ言って鼻が利く。
 結局 日本人がアホってことなのか、単に彼らがカロリーの高い料理を求めているからなんでしょうか(笑)。

店中 外人だらけ。植民地状態(笑)。




日曜は、日比谷で映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見た後、国会前へ行ってきました。

 良いお天気で散歩日和でした。日比谷から歩いて15分くらい、国会前に通じる歩道にはバカみたいに警官が厳重なゲートを作ってました。ホント、税金の無駄遣いです。金返せ
 参加者は2500人。相変らずボクより年配の人が多いです。この日 自分が着ていた真っ赤なセーターが場違いに感じる(笑)。着いたときは上智の中野教授がしゃべっているところでした。

 まあ、他人の話、特に政治家の話とかはあまり興味ないんですけど(笑)、維新と国民民主以外の野党が提出した原発ゼロ法案が今国会で自公に審議拒否されている、ということだけは判りました。まともに答弁も出来なかったり、スキャンダルだらけの大臣が居座っているのも含め、やっぱりこれだけ与野党議席数がかけ離れていることが国会の自浄能力を失わせているんでしょうね。自民党の支持者も含め、これは国民全体にとって不幸なことです。
●順に共産党の吉良ちゃん、立憲民主の山崎氏(原発ゼロの会)、社民党の福島氏

 かといって、投票したくなるような野党でもない、のも確かなんですが(笑)、鼻をつまんで投票するしかありません。それにしても『野党は共闘』も良いんですけど、もう飽きた(笑)。もちろんそれすら成り立ってない現状はあるにしても、野党共闘なんて最低条件、更に新たなコンテンツ、旗印が必要です。

 この日 立憲民主の山崎氏が『原発が日本経済の足を引っ張っている』と述べてましたけど、まさにその通りで、短期的には原発のコストの電気代への転嫁や巨額の補助金、長期的には産業構造の転換を遅らせているのは事実です。それこそ財界だって、この点は納得できる人も多いはずです。次の選挙にそなえて、経済政策と共に、原発の害悪を具体的に訴えてもらいたいものです。

と、いうことで、新宿で映画『10年 Ten Years Japan
tenyearsjapan.com



『高齢化問題』、『AI教育』、『データ社会』、『原発事故』、『徴兵制』。日本の10年後を描いた5つの短編で構成される物語。太賀、池脇千鶴國村隼、杉村花などが出演。

万引き家族』の是枝裕和監督が総合監修を担当したオムニバス作品。日本の10年後をテーマにした17~18分の短編を5人の新人監督が担当しています。ボクは見ませんでしたが11月6日のNHK朝7時のニュースでも、この作品が紹介されていました。朝7時のニュースは来日時に黒塗り文書を批判するポスターを貼ったケンドリック・ラマ―のインタビューを流すなど頑張ってます。


作品は順番に、厚労省が75歳以上の老人の安楽死を推奨する制度と勧誘担当者を描いた『PLAN75』、AIシステムで勉強だけでなく行動まで管理される小学生と用務員を描いた『いたずら同盟』、母の生前のデータが入力されたデジタル遺産をハッキングした女子校生を描いた『DATA』、原発事故で地上が汚染され、人々が地下で暮らすようになった中で、地上の世界を夢見る『その空気は見えない』、徴兵制が導入され、告知のポスター制作を担当する広告代理店の青年を描いた『美しい国』の5つです。
●『DATA』。父と二人暮らしの女子高生(杉村花)は母の生前のデータを保管した「デジタル遺産」をハッキングし、母の秘密を探ろうとします。


超高齢化と安楽死、AIによる管理教育、デジタル遺産、原発事故、徴兵制、近未来の日本を想像するとこうなるのでしょうか(泣)。監督は別々ですが、どの作品もショッキングなテーマを淡々と、間接的に描いています。
●『いたずら同盟』。勉強から遊びまで、すべてがAIに管理された学校で用務員(國村隼)は子供たちを見守っています。


ボクは75歳以上の老人の安楽死が国策になったのを描いた『PLAN75』が一番、面白かったです。苦しまない方法で、国が葬儀や墓の世話、支度金までくれて安楽死させてくれる。これを見てると正直『自分も応募しちゃうかも』と思ってしまいました。公的扶助に頼らざるを得ない低所得層をターゲットに厚労省安楽死政策を推し進めるという設定は、いかにも維新や竹中平蔵みたいな日本のバカな新自由主義者が思いつきそうです。お話は、普段は安楽死を勧誘している厚労省の担当者が認知症になった義母を抱えたときにどうするか、というものです。
●『PLAN75』。10年後 日本では75歳以上の老人の安楽死が国策になります(1枚目)。厚労省の勧誘担当は仕事に励むのですが(2枚目)、認知症になった義母を安楽死させようとする妻を懸命に止めようとします(3枚目)

美しい国』ではしょっちゅうミサイル警報が鳴る日本が描かれています。今でも自衛隊は定員の7割程度しか充足しておらず、特に兵員が足りないそうです。徴兵制、もしくは経済的徴兵制をやりたいと思っている政治家や役人は結構いるでしょう。連中は自分たちは特別、戦場へ行かなくて済むと思ってますからね。
映画は徴兵制のキャンペーンを担当する広告会社の若手社員を描きます。徴兵制のポスターを貼る下請け業者の人たちが、いつの間にか中高年ばかりになっている、そんな日本が描かれます。
●『美しい国』。徴兵制が施行された日本。徴兵制をPRする代理店担当者はデザイナーの大家に勧誘ポスターの変更を頼みに行きますが。

技術の進歩に格差の拡大、自分の利益が大事な政治家に、差別や感情に流される割には忘れっぽいバカ国民。何よりも環境の変化のスピードが速すぎる。日本の現状をみれば 楽観的な未来より、悲観的な未来が思い浮かびます。人にもよるかもしれませんが、少なくともボクはそう思う。長期的には判りませんが、10年や20年先の短期では結構厳しそうです。
是枝監督もそう感じているのだと思いますが、それでも一つくらいは未来の希望を描いた作品があっても良かったとは思います。人間のほとんどの活動がデジタル化されて保管される『DATA』や新たな原発事故後の日本を描いた『その空気は見えない』がそうなのかもしれませんが、作品としてやや力不足かも。
●『その空気は見えない』では池脇千鶴が母親役を熱演。新たな原発事故で地上は汚染され、人々は地下で暮らしています。が、子供にとっては酷な環境でした。

普通に考えれば日本の将来はお先真っ暗です。少子高齢化で市場は縮小、科学技術は中国やインドにも負けつつあり、それに輪をかけて政治はまるでダメ。与野党問わず、無能な政治家や腐敗した役人ばかりが目につきます。国民は政治に関心を示さないばかりか、狭い殻に閉じこもって排他的になるばかり。
それでも自分の周囲を見渡せば、身近なところにも明るい兆しも転がっています。確かに大変な時代ですが、自分自身が変わる切っ掛けを探してみるのも良いかもしれません。自分たち一人一人が変わっていくことが、時代が変わる切っ掛けでもあるのではないか。徹底的にパーソナルな事柄を描いたこの映画を見てそう思いました。

十年 Ten Years Japan 【2018】 映画予告編

アメリカの中間選挙と映画『華氏119』

今回から、新しいブログになりました。
旧ブログ(はてなダイアリー)からのインポートは順番待ちだったし、ブログの設定も何だかんだ1週間かかりました。いじらなければ問題ないんですが、フォントを大きくしたり、少しは見やすいものにしたかったのです。まだ新ブログの使い方も慣れてないのですが、内容も含めて試行錯誤をしながらやっていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

毎週 恒例の金曜官邸前抗議は日曜日に大規模抗議があるので今週はお休みです。まあ、集会とかボクはあまり好きじゃないです。等身大の生の声ならともかく、マヌケな政治家や独りよがりの活動家の話なんか聞いても時間がもったいない。予定調和だったり、ヒステリックな原発廃止バカ話を聞いても得るものはありません。ま、こちらの模様は来週に。


さてアメリカの中間選挙は今回はほぼマスコミの予想通りになりました(笑)。上院が共和党、下院が民主党過半数共和党過半数を取った上院は圧倒的に地方部ばかりでしたので、もともと民主党が勝つのはムリでした。ほぼ順当な結果でしょう。
WSJの記事はこう言っています。
diamond.jp

民主党が期待していたような全米を席巻する「波」とまでは行かず、共和党を特定の場所で混乱の渦に巻き込む「竜巻」の様相を帯びた
民主党は大勝というわけではないし、大敗北というわけでもない。ただ上院は最高裁判事のことがあるから、確かに厳しいんですけど。

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●選挙結果を受けてのマイケル・ムーア監督のtweetVICTORY!と(笑)

と言っても、共和党の支持が強いのは年齢別には65歳以上のみ、そして地方部だけです。アメリカのどんどん衰退していく部分です。今が社会が変わっていく変わり目だし、逆の意味でトランプの参謀、バノンなんかもそう思っているでしょう。
同時に行われた知事選では『全米50州のうち36の州で行われ、ABCテレビによりますと野党・民主党が選挙前よりも7人増やして16人、与党・共和党が7人少ない、19人が当選を確実アメリカ中間選挙2018|NHK NEWS WEBという結果です。
下院の奪還、知事選の勝利の原因は今回 若者の投票率がアップしたから、です。若者は、トランプの無責任な政治に任せるわけにはいかないというわけですね。

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一方 日本はどうでしょう。国民は政治に無関心、無責任なまま。相変らず 政治も経済も年寄りの男(Boy's Club)が握っているし、そして男は家事をやらない自分で自分の生活を生きていない)。勿論 女性の中にも稲田朋美片山さつきみたいなクズもいますけど、それでも政治は女性に全てゆだねるくらいしないと日本はダメかもしれません。男性の選挙権はともかく、男性の被選挙権(立候補権)を廃止するのはどうでしょうか! 汚いジジイが国会から消えるし、ジジイに媚びることでのし上がろうとする基地外女も消滅するだろうから、きれいさっぱりするんじゃない?


と、いうことで、渋谷で映画『華氏119


gaga.ne.jp
トランプの大統領に当選した2016年11月9日。それまでは誰もトランプの当選を信じていなかった。なぜトランプのような人間が大統領に当選してしまったのか?どうやったら我々は民主主義を取り戻せるのか?


ボウリング・フォー・コロンバイン』でアカデミー賞を、ブッシュを徹底的にこき下ろした『華氏911』でカンヌ映画祭で最高賞を受賞した、おそらく世界で最も有名なドキュメンタリー監督、マイケル・ムーアの新作です。


ボクはムーア監督の大ファンです。劇場公開の作品はもちろん、彼が作ったTV番組のDVDや本も日本語版は殆どは見ている。彼の徹底的にこき下ろすお笑いのセンスが好きなんです。彼のアカデミー賞授賞式のスピーチなんか名画『スミス、都へ行く』みたいな名シーンでした。『ローマ法王もディキシー・チックスもみんなお前に反対だ。ブッシュ、お前の時間はもうおしまいだ!

Michael Moore winning an Oscar® for "Bowling for Columbine"


一方、あまりにも姿勢が明確なので、ドキュメンタリーとしては??と思う時もあります。ドキュメンタリーというより、プロパガンダに近いかも。しかし、それは見る方も作る側も明確に判ってやっているから、『真実を伝えている』ふりをした日本の凡百なドキュメンタリーより遥かに良いです。押しつけがましさもないし、誤解しようもないですもん。


今作のテーマはトランプ。でもトランプそのものではなく、トランプを生み出したアメリカ社会そのものに視線は向いています。ちなみに119とは2年前の大統領選でトランプが勝利宣言をした11月9日のこと。

トランプの娘婿クシュナーはかってムーア監督のためにパーティを開いていました。
 

宣伝でも言われているように、ムーア監督はトランプの勝利を事前に予言していました。確かに誰もトランプの勝利なんか予想していない16年の夏、『トランプが勝つ5つの理由』という彼のレターがボクにも送られてきました。ボクは彼のプロモーション用メーリングリストに登録しているんです。
www.huffingtonpost.jp

 
でも、大多数の人と同じようにボクもまさか、と思っていました。ムーアは大統領選のカギを握る激戦州(スイング・ステート)、オハイオやミシガン、ペンシルべニアなどラストベルトのことを理由として述べていたんですが、これらの州は労働者の地域、民主党の地盤ですからね。

ところが選挙ではトランプがこれらの州で得票し、選挙に勝った。映画は本人も含め、誰も勝つと思わなかったトランプの勝利から始まります。トランプ本人も本気じゃなかった。大統領選への出馬自体 自分のTV番組のネタでNBCへのギャラつり上げのための材料だったし、当選時だって、まともな勝利演説を用意していなかったくらいです。


日本ではあまり触れられていませんが、ヒラリーの敗因は単純明快です。トランプ云々というより、ラストベルトでまともに選挙活動をしなかったから。例えば激戦州のウィスコンシンには7か月足を踏み入れなかった。ヒラリー陣営は驚くほど傲慢だった。ヒラリーの敗北演説は感動的だったし、当人は社会を良くしようとする志がある人だとは思います。でも、言葉の端々に現れているように彼女自身も傲慢だった。ウォール街から山ほど献金をもらっていても悪いとも思わない。講演会のギャラが1回7000万円ということが報じられても恥かしいとすら、思わない。
ちなみに昔 ビル・クリントンの大統領辞任直後の日本での講演会ギャラは2000万か3000万円だったと思います。当時は電通が売り込みに来た。20年でずいぶんギャラが跳ね上がったものです。


ムーア監督もミシガン州生まれ、父親も祖父も自動車労働者です。彼が描くラストベルトの人たちの不満、怒りは非常にリアルに感じられます。それと派生して、彼の生まれ故郷ミシガン州フリントで発生した水道の鉛毒が描かれます。コンピュータメーカー、ゲートウェイ2000の社長だったスナイダー州知事共和党)の性急な水道民営化が原因です。このことは日本でもニュースで報じられるほどの騒ぎになりましたけど、州は非を認めない。健康被害データを改ざん、緊急事態保護法を制定して抗議を押さえつけます。しかしGMの工場だけは部品洗浄で不良品が発生したため、違う水道に付け替える(笑)。映画では、このスナイダー知事は昔からトランプと仲良しで、トランプが政治のお手本にしていることが 語られます。

 

トランプや共和党だけが問題なのではありません。民主党だって腐っている。バーニー・サンダースの立候補を党の重鎮たちが顔をそろえる特別代議員制度で押さえつけたのは記憶に新しい。気落ちしたサンダース支持者の多くは棄権します。ヒラリーもトランプも選挙での得票はそれぞれ約6000万票です(ヒラリーの方が100万票以上多い)。しかし棄権は1億票にも上ります。

民主党が人々から遊離しているのは今に始まったことではありません。リーマンショックの原因となったウォール街への規制緩和も始めたのはクリントンです。オバマ大統領はフリントの水道の件でミシガンまでやってきましたが、何もしなかった。フィルムは人々の落胆の表情を良く捉えています。これが民主主義なのだろうか。トランプの当選の原因は今に始まったことではない人々の民主主義に対する落胆からだ、という訳です。

 

トランプは次の選挙での再選に意欲満々だし、既に再選運動を始めています。トランプのやり方はヒトラーそっくりではないか、というのがムーア監督の主張です。人々は政治に関心を失っている。そして、独裁者が過激なことを発言しても、まさかそんなにひどいことはしないだろうと思っている。一方 日常生活に不満を持っているものは過激な発言に熱狂し、独裁者はウケるために本当に滅茶苦茶なことをやりだす。
ムーア監督は『うんざりして、あきらめた時代に独裁者が現れる』と語ります。

トランプの参謀バノンの会社はムーア監督の『シッコ』のDVDを発売していました。


では、我々に希望はないのでしょうか。ムーア監督はこんな動きにも密着します。
ウェストバージニア州での教職員のストライキ、『民主党を乗っ取ろう』と草の根で活動を始めた組合活動家、従来からのボス政治に対抗して立候補する草の根の候補たちがいます(主に女性)。
民主党の下院議員候補オカシオ=コルテス氏。プエルトリコ系の29歳。プログラミングか何かのコンテストで全米2位になるほど優秀な頭脳の持ち主でしたが、その後 父親が死亡して大学進学を諦めて今はバーテンダーバーニー・サンダースを支持する運動から政界に入り、重鎮を蹴散らかして民主党の候補に選ばれました。今回 史上最年少で当選。

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ソマリア難民、パレスチナ移民、イスラム系の女性二人、それにレズビアンで先住民の女性も当選。



 

そして銃規制を訴えるフロリダ州の高校生たち。


●選挙後 映画に出演した高校生のマット↑へのムーア監督のtweet。『パークランド高校の子供たちが革命に火をつけたんだ。これからが始まりだ!』

既にニュースなどで何度も見たパークランド高校のエマ・ゴンザレスさんの演説、映画で改めて見ても泣けて困ります。

Emma Gonzalez Speech At March For Our Lives Rally

銃規制運動への参加を禁止した小学校の校長に、11歳の子供が『これは私たちの問題だ』と言い捨ててデモに参加するところも印象的でした。『みんなで参加すれば、処罰なんかできない』と、ほぼ全校生徒が校長を無視してデモに参加するんです。
女性、若者、マイノリティがダメダメ政党だった民主党の中身を入れ替え、世の中を少しだけマシにするかもしれない。
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●11/5、NHK夜9時のニュースで


今回はお笑いは控えめです。ムーア監督自身もアカデミー監督の有名人になり、アポなし突撃も難しいのでしょう。

スナイダー州知事の家にフリントの水道水を撒くムーア監督。水が無害と言うのなら使って見ろという訳です。


映画の構成もやや乱雑な印象を受けました。しかし、教職員たちのストライキや組合活動家、民主党の草の根候補たち、それに高校生たちの姿には希望が持てます。こんな状態でも画面には希望が映っています。与野党ともに既成政党が腐ってしまい、人々が政治に関心を失くす。その隙間でポピュリズムがヘイトを煽る危機的な状況は日本もアメリカと変わりません。


ムーア監督は雑誌のインタビューでこう語っています。
この映画は究極的にはファシズムについての映画だ。だけど、20世紀のファシズム、第二次次大戦の時代のドイツ、イタリア、日本のようなファシズムを指しているわけではない。今あるのは“21世紀のファシズム”で、それよりずっとフレンドリーなバージョンだ。そして多くの人を殺すことになるだろう。誰かを列車に乗せて強制収容所に連れて行くようなことはしない。
では、どういう形をとるかというと、トランプのような人間が多くを自分の味方につけ、社会を引き継ぐ。それも人を強制するのではなく“僕についてきてくれれば、僕は君たちのためにこんなことができる”とね。非常に危険なことが起こっているんだよ。アメリカ以外でも同様なことが起こりつつある。民族主義者や右翼結社がヨーロッパ、ブラジルので勢力を伸ばしつつある。それは日本でも起こる可能性があるんだ。そういう意味で、この映画は日本に向けてのメッセージが多く込められた映画だと思う。

courrier.jp

●NHK9時のニュースで『日本に望むことは?』と聞かれて。誰のことか判りますよね(笑)。はっきり言った!NHKも放送した!

こんな映画を撮ってもトランプの支持者は絶対に見るわけがありません。そんなことはムーア監督は判っています。彼は、この映画のターゲットはサンダースを支持していたけど棄権してしまったような、政治に絶望している人たちだ、と語っています。彼らが棄権さえしなければ、トランプを引き摺り下ろせるのです。
果たして私たちはまた、独裁者を登場させてしまうほど愚かなのでしょうか。今は人々が自ら行動するしかない、とムーア監督は呼びかけています。
 

 

 


ボクはオバマ氏もサンダース氏も立派な人と思いますが、スタッフは抱えているにしても、彼らは一人でした。一人の力にはどうしたって限界があります。
でも、この選挙で起きていることは違います。女性や若者、マイノリティが立ち上がりだした。若者や女性を中心にオバマ氏やサンダース氏のような人たち、民主党民主党たちが大勢表れているんです。もともとトランプの支持層は年寄りばかりですが、今回の選挙では18~24歳までの若者の民主党支持率は約7割だそうです。格差、宗教、人種、性、アメリカという国に広がる分断は日本から想像するよりはるかに大きいにしても、チャレンジすること、新しいことをする人の足を引っ張ってばかりの日本とは随分 違うように見えます
日本にも、立憲民主党立憲民主党員、反共産党共産党員みたいな人たちがどんどん出てくればよいと思います(他の政党は論外)。どっちも今のままじゃ政権の可能性なんか皆無ですから。それとも、反自民党の自民党員の方が良いかもしれませんね。

華氏119 - 映画予告編