特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『世界一のステーキ??』とドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』

 朝は本当に冷えるようになってきました。冬用のマフラー、コートを出したところです。
 今週は通勤の途中で白い富士山が見えました。寒くなって空気が澄んできたのでしょう。富士山が見えると冬の足音が聞こえてきます。


 この前、恵比寿に昨年オープンしたステーキ屋、『ピーター・ルーガー』へ行ってきました。言わずと知れたNYの有名店、世界で唯一の支店、という触れ込みです。

 本店は1887年にブルックリンで創業したアメリカで最も長い歴史を持つステーキハウスで、究極の旨味と柔らかさを実現したステーキは世界最高峰との呼び声も高い、とマスコミでは言われています(笑)。
www.fashion-press.net

 数年前に六本木や丸の内などに続々と出店した熟成肉のTボーンステーキ屋、例えばウォルフガングやエンパイヤなどもこの店の出身です。
●本店はNHKでも取り上げられました。
natalie.mu

 熟成肉のステーキは大ブームになったにも関わらず、ピーター・ルーガーは頑としてNY以外には支店を出しませんでした。ようやく昨年10月 世界でも初めての支店が恵比寿に出来たのですが、なんと予約が3か月待ち。

 普段ボクはダイエットと騒いでいますけど、やっぱり一生に一度は味見はしてみたい(笑)。だけど3か月待ちまでして行きたくはないですよね(笑)。1年経って多少は収まったのか、この前ネットを見てみたら、1か月先の土曜の昼に空席が見つかったので行ってみることにしました。
●恵比寿の店の外観

 所詮は焼いた肉、ですから、冷静に考えればそんなに美味しいものが出てくるとは思わない。ま、観光地、ディズニーランドみたいなものです。

 1Fで受け付けをしたら上階に案内されます。2F,3F併せて店内は広い、100席以上あるでしょうか。重厚そうな作りではありますが、安普請(笑)。こういう店は良くも悪くも、インテリアもサービスもファミレスです。サービスもカジュアルでフレンドリー、アメリカ流です。これはこれで親しみやすいから、悪いことではない。

 客層は若くて20代、30代くらいが多かったのは意外でした。ボクの隣のテーブルは中国人の一家。ずっとスマホをいじっている両親をしり目に、20代の娘さんがでかい肉にむしゃぶりついていました。彼らが東京在住なのかはわかりませんが、NYで食べることを考えたら東京で食べる方が手軽です。
 これもまた今の東京を象徴する光景です。有名店には必ず中国のお客さんがいる。


(この2枚は店の宣伝写真から)

 昼間ですが、まずシャンパンを一杯。これだけでいい気分になります。グラスに注ぐ量もアメリカサイズ?

 最初はサラダ。サラダですがこのベーコンの量!(笑) 。ドレッシングはブルーチーズのみじん切りがどっちゃり!これじゃ、メインディッシュじゃん(笑)。
 当然 前菜はこれだけしか食べられません。普通は肉に野菜、でしょうから、殆どのお客さんはサラダとステーキ、料理はこの2種類しか食べないことになります。恐ろしく効率が良い商売です。

 次はステーキ。熟成させたTボーンを高温のオーブンで焼き上げたもの。バターが沸き立っています。これで肉の量は600グラム。

 Tボーンですから骨の周りのサーロインとヒレ、2種類の肉を味わうことが出来ます。香りも旨味も熟成は控えめだったし、肉質も焼きもすごく美味しいという訳ではありませんが、まあまあ美味しい(笑)。脂ギトギトの和牛霜降りよりは遥かに良いですが、イタリアのキアーヌ牛やファッソーネ牛には負けるし、草の香りがするニュージーランド等のグラスフェッドの牛のほうがボクは好き。

 ウォルフガングなど既に日本で出店している他の店より肉は香ばしい、とは思いました。500℃出せるオーブンはうちだけです、と給仕の人は言ってました。
 テーブルにはこの店特製の『ピーター・ルーガーソース』が置かれます。ホースラディッシュが大量に入っているところは良いのですが、異様に甘い(笑)。これもまた、アメリカ流です。勿論 肉はソースをつけなくても食べられます(その方が美味しい)。

 まあまあ美味しいけど、これが世界一のステーキ、と言われると、それはない(笑)。ここもまた、レストランというより、観光地ですね。
 でも、それが悪いわけではない。肉だけを思いきり、カジュアルに食べたい時は良いと思いました。ただし予約が取れれば(笑)。
●最初にヒレとサーロインが一切れずつ盛り付けられます。左上はこの店のもう一つの名物、クリーム・スピナッチ。液体みたいな柔らかさでした(笑)。

 食後の甘いものは想像がつくので頼みませんでした。メニューに並ぶのはアップルパイにピーカンパイにチーズケーキ、アメリカ人が好きそうな死ぬほど甘い、そして巨大サイズです。日本人が食べたら気が狂う(笑)。
 お茶を飲んでお勘定を済ませると、おまけにこの店特製のコインチョコが出てきました。

 3年くらい前はこれくらいの量は楽勝で食べられました。今回は何とか食べきりましたが、おなか一杯、限界です。さっぱりした赤身なのでお腹はもたれませんが、とにかく次の日まで他のものは食べられなかった(笑)。そのおかげで体重は却って1キロ減った(笑)。

 こういうものはたまに食べたくなります。だけどもう、3,4年に1回でいいかな(笑)。家に犬がいれば骨を持って帰ると大喜びするから、通っちゃいますけどね。
 ボクは昔 シーズー犬を飼っていたのですが、肉を食べて帰ってくると、彼はボクの口の周りの匂いをチェックして『ズルい!』とばかりに激怒していました。でも店で骨をもらってくると尻尾を振って大喜び。ああ、また犬を飼いたいなあ。
 やっぱり歳を感じた、お上りさんの『ピーター・ルーガー』見物でした。


 さて、今週は野田が安倍晋三の追悼演説をしたんでしたっけ。ボクはあまり興味ありませんでしたが、一部の左派が裏切り者とか、ブーブー言ってました(笑)。アホか。

 ボクは、118回も国会で嘘をついた安倍晋三との国会での論戦を『ことばの真剣勝負』と表現した演説内容には賛同できませんが(笑)、野田が追悼演説をしたのは良かったと思います。安倍晋三の死は因果応報、天罰でも、故人を追悼するくらいの寛容さはあってもいいじゃないですか(笑)。
 国民の利益のためには賛同できるところは賛同する、そんな基本的なことができない政治(国会)なんて意味がない。

 昨今の状況を見ているとボクもこう思います↓。戦後の右派も左派ももう、終わりでしょう。安保法反対の際 国会前で時代遅れの左派ジジイ連中を見て『末期症状』と感じましたが(笑)、いよいよはっきりしてきた。統一教会べったりの安倍晋三を信奉する右派は言うまでもない。
 ボクは維新なんか反吐が出るほど嫌いですが、統一教会対策をするために一致する点があるのなら、立憲民主が組むのは別に構わない。それが国民の利益です。逆にそれすら出来ない共産党とかは何やってるんだ。化石、ですな(笑)。

 戦後左派も右派も現実への対処能力に欠けている。バカウヨの大日本帝国リバイバルも時代錯誤ですが、少子高齢化が進んでいるのに一部の左派が『消費税を無くせば経済は回復する』と言い張ったり、未だに平和憲法を守るだけで安全保障の議論すらまともにできないのも、頭がおかしいとしか言いようがない。こんな非現実的な連中の政治勢力としての寿命は尽きている

 これからの日本の将来は(北欧のような)再分配と経済成長の両立を目指す社会民主主義的な勢力が立ち上がれるかに、かかっているでしょう。現実を直視することすらできないアホはもう、勘弁してほしい。


 月曜日、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』の第1回が放送されました。何といっても脚本は渡辺あや(『その街のこども』、『今ここにある危機とぼくの好感度について』)、演出は大根仁(『モテキ』、『いだてん』)、音楽は大友良英(『あまちゃん』、『いだてん』)という期待のラインナップです。
www.ktv.jp

 渡辺あやは映画の他はNHKのドラマしかやったことがありません。民放ではいつも企画が通らず、民放の番組を手掛けるのは今回が初、だそうです。
 この企画を考えたプロデューサーの佐野氏(ドラマ『カルテット』(未見)など)は2016年当時 在籍していたTBSで制作しようとするも冤罪がテーマということで却下され、彼女が関テレに転職して実現したいわくつきの作品だそうです。

www.fujitv-view.jp

 夜10時なんて起きていられないので(笑)録画して見ました。

 前半30分はテレビ局、それも腐った雰囲気が非常にリアルに描写されます。パワハラ、セクハラを振りまく男性ディレクターが懇親会でとんねるずの歌を歌うなど、まるでどこかの放送局を思い起こさせます。フジテレビに代表される世界には一切触れたくないボクが不愉快になるくらい、リアルな描写です(笑)。

 その中で孤立し、干されているのが長澤まさみ演じるかっての花形女子アナ。局内の政治部記者(鈴木亮平)と路チューしているところを写真週刊誌に撮られて、なぜか彼女だけメインキャスターを降板、今は若い女子アナの脇のサブに甘んじています。
 ドラマのなかで彼女は『ババア』扱いされていましたが、そこだけはムリがある(笑)。こんなきれいな女子アナ、いませんよ(笑)。

 喜怒哀楽を表に出さず感情を殺して、面倒なことに一切関わらないように生きている彼女のところに、空気を読まないバラエティのディレクター(眞栄田郷敦)から12年前の冤罪疑惑の調査が持ち込まれます。

 現実でも女性だけがスキャンダルの責任を取らされることは度々ある。渡辺あやの切っ先は今回も鋭い。

 劇中 テレビ局員の『今どき 調査報道なんかやってられるか』というセリフがあります。目先の視聴率、それに視聴者のウケや自分たちの出世という組織の内輪の論理で局員の頭の中は最初から支配されている。それが常識になっている。

 冤罪調査の企画を出した長澤まさみたちと上司との間の
『冤罪の調査報道ってことは国家権力に盾突くってこと、判るか?』
『判りたくありません。私は飲み込みたくないんです』

 というやりとりは迫真でした。
 既得権益に浸かった組織で声を上げるのは、周囲の空気を読めないへっぽこディレクターと閑職に追いやられたアナウンサー、しかも女性、と言うのも説得力がある。維新の連中が好例ですが、既得権益者、特に男が改革の旗を振る筈がない。ゴルバチョフのような人は中々いません。

 様々なやり取りを見ていると、今のテレビ局がどうしてまともなニュースを流さないのか、1回目の放送を見ただけでもよく判る気がします。

 麻生太郎そっくりの副総理がTVに出演する際、迎えに出た政治部記者(鈴木亮平)に「きょう何聞かれんだ?」と尋ねるシーンがあります。
「ざっくり公約まわりですね」、「森友止めてますので」
と言う記者の返事に、副総理は「あったりめえだろ、お前」と返し、互いに笑みを浮かべます。このドラマ、森友を実名で出している
 ちなみに副総理と政治部記者は、TV出演後 飲みに行く約束もしています。古色蒼然としたBoy's Club、既得権益の共同体です。

 政治だけでなく、テレビ局の体質、テレビで働く人々への鋭い視線、組織に横行するパワハラやセクハラ、それらを真正面から描くドラマです。確かにTBSで企画が却下されたのもわかります(笑)。長澤まさみは存在感あるし(良い役者になりました)、共演者も三浦透子(『ドライブ・マイ・カー』)や筒井真理子(『よこがお』)など良い映画で見かける俳優さんも揃っています。

 攻めたドラマです。今どき珍しい’’社会派’’と分類される作品ですが、第1話だけでも映画『新聞記者』の100倍は説得力がありました。毎週1時間、ドラマを見る時間を捻出するのは結構辛いんですが、楽しみです。