特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『#0714年金返せ渋谷ハチ公前大抗議集会』と、何もかもが美しい:映画『COLD WAR あの歌、2つの心』

 梅雨空のお天気はジメジメ・ジトジト、はっきりしませんが、愉しい3連休でした。やっぱり3日間 休みがあるとやりたいことが色々できます。

 昨日の日曜日は『#0714年金返せ渋谷ハチ公前大抗議集会』へ行ってみました。

 前回 6月に日比谷で行われたデモは『金融庁の報告書に抗議する』ということでしたので、参加しませんでした。『95歳まで生きるとしたら年金とは別に2000万の貯金が必要』という金融庁の報告書は単に事実を述べただけで、非難するような筋合いのものではありません。そんなバカなデモに付き合ってられるか と思ったからです。
 ボクは納得できないものは、何であろうとダメなんです。幼児の時からそうだったらしい(笑)。

 今回も同じ主催者、個人の人たちですけど映画の帰り、どんなものか と思って行ってみたのです。

 ハチ公前は生憎の雨模様。人通りが多いから、どれだけ集まっているかわからない。数百人くらいだと思います。居る人の顔は官邸前や国会前の抗議で見かける人も多いですが、ピンクの髪の毛の若者とか居るのが面白い。ダンマクが風船で吊り下げられ、DJが音楽も流している。

 集会は当事者のスピーチと『年金返せ』というコールを織り交ぜた構成です。
●1枚目、主催者挨拶、2枚目 全厚生労働組合書記長 川奈氏、3枚目 会場で有志が配っていたステッカー


 半信半疑で出かけた集会でしたが、スピーチは考えさせられるものがありました。特にファンクバンド「オーサカ=モノレール」の中田氏が
今までグリーンピアだのに訳の分からないものに役人が金を使い込んだ結果、我々は年金に不安を抱いている。その不安を解消する責任は政府にある。我々の責任ではない。我々の仕事は怒ることと投票することボクらが金を貯めなければいけないんじゃない。何とかするのが政府と役人の仕事だ。』、
●『オーサカ=モノレール』の中田氏

また、今 発達障害で働けず、障害年金をもらっているという若い人が
今 6万円ちょっとしかもらっていない障害年金が将来マクロ経済スライドで4万にまで減るという。今でさえギリギリの生活なのに、そうしたらどうやって生きていけばいいのか
と言っていたのは印象に残りました。


 確かに年金だけで暮らしていくことはできないけれど、誰もが2000万も貯められるわけではない。そういう人はどうしたら良いのか。これは『生きる権利』の問題でもあります。中田氏が言っていたように今は憲法のことなんか議論をしている暇はない。
専修大の森原康仁准教授(経済学)。知らない人だったけど、熱い!マトモ!
財政検証によると、今35歳で年収500万の人は現在は年179万貰えるが、85歳になったら119万しかもらえない国民年金は最大で6割減る。経済的に弱い人にばかり皺寄せがいくなんて馬鹿げている。』
公助が薄い日本は自助ばかり強調されるから家族、専業主婦にばかり負担が押し付けられる。日本で色々な差別が無くならない理由の一つは公助の薄さだ。』
『どんな人にだって生きていける権利がある。投資をしなくても、金儲けが得意じゃなくても、生きていける権利があるはずだ。そのために社会保険の仕組みがある!』

 経済学者が『投資をしなくても、金儲けが得意じゃなくても、どんな人にだって生きていける権利がある』というのにはちょっと新鮮な驚きを覚えました。確かにこの問題は、そういう話です。

 正直、この集会は行って良かったです。選挙の情勢調査は色々出てきましたけど(笑)、日経と毎日の見出しの違いは面白いです。やっぱり報道は複数のものを比べてみてナンボ、です。
www.nikkei.com
mainichi.jp

 自分の投票のために状況はこれから分析しますが(笑)、とにかく選挙に行かなくちゃ、何も始まりません。選挙に行かないような奴は罰金は当然、年金需給資格を停止にすればいいのに、マジで。
●SEALDsの記録映画を作った西原監督のダイジェスト映像。僅か2分弱で内容が判る映像ですので、是非ご覧ください。この日はSEALDsのUCD君もコールしました。

●こちらは2時間ヴァージョン(笑)。でも今回はスピーチを聞くだけでも勉強になりました。

#0714年金返せ渋谷ハチ公前大抗議集会



 ということで、渋谷で映画『COLD WAR あの歌、2つの心
coldwar-movie.jp
f:id:SPYBOY:20190714092725j:plain
1949年、東西冷戦下のポーランド共産主義政府は全国各地から少年少女を集めて民俗音楽・舞踊を演じるマズレク舞踊団を立ち上げる。その養成所に入ったズーラ(ヨアンナ・クーリグ)はその美貌、才能と一際目立つようになるが、性格は気ままな問題児。そんな彼女に惹かれていく舞踊団のピアニスト、ヴィクトル(トマシュ・コット)。妻もいるヴィクトルだが、いつしか2人は愛し合うようになっていく

 昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞、アカデミー賞でも3部門にノミネートされた作品です。
 


 舞台は1949年、ポーランド。まず、荒れ果てた教会が映されます。屋根も落ち、壁も崩れ、祭壇らしきものが残っているだけ。もちろん人はいない。まだまだ戦争の傷跡が色濃く残っている。
 やがて人々が民俗音楽を演奏するところが映される。これがかなりカッコいい。思わず、画面に引き込まれる。ポーランドワルシャワ周辺の民謡だそうですが、地声の太い声で歌うコーラスは昔流行ったブルガリアン・ヴォイスみたいです。

 
 そうこうしていると、民謡を演奏する舞踊団にシーンが移ります。ここで若い女性たちのオーディションが始まる。その中にひときわ目立つ女の子、ズーラ。美しいが性格も個性的です。
●ズーラ。美貌と個性的なキャラクターで舞踊団の中でも一際目立った存在です。

 それを採点する男性ピアニスト、ヴィクトル。もう一人、男性ピアニストのパートナーらしい女性教師はなんとなくズーラを警戒しますが、男性の強い推薦でズーラは舞踊団に合格します。
●ヴィクトル。舞踊団の音楽指導をしつつも、密かに西側の音楽に憧れています。

 
 これが二人の出会い。やがて二人は生徒と教師と言う立場を超えて愛し合うようになります。
 
 
 折しも第二次大戦後のポーランドは新たな共産主義国として復興が始まったところ。舞踊団にも国威発揚と党への貢献が求められます。民俗音楽をやっていた舞踊団にも共産党が介入してくる。ヴィクトルは抵抗しますが、抗いきれない。

 一方 ズーラは個性的な振る舞いで舞踊団の中でも浮いています。実は彼女は近親相姦を強要した父親を殺して保護観察中の身でした。しかし彼女は当然のことをしたのだから、何も恥じる理由はありません。

 
 西側世界の新しい音楽、ジャズに惹かれていたピアニストのヴィクトルは東ベルリンへの公演を機に、西側へ亡命します。彼はズーラと落ち合って亡命することになっていましたが、ズーラは待ち合わせ場所にやってきませんでした。

 ヴィクトルはパリに居を構え、映画音楽で生計を立てるようになります。ジャズではなく映画音楽なのは不本意ですが、新たな恋人もいる。そこにズーラが現れます。舞踊団の公演でパリにやってきたのです。これを機に、2人は国境を越えて度々別れと再会を繰り返すようになります。
●中盤はパリを舞台にした美男美女のラブストーリーになります。

 
 実はズーラもヴィクトルも結婚したり、恋人がいます。
●ヴィクトルとパリの恋人

 それでも二人は別れることができない。再会してもお互いの暮らしは別にあります。別れを決意しても、別れきれない。
 美男美女の不条理な、だけど情熱的な恋物語です。この世界には永遠のものなんかない。二人は判っているけれど、それを追い求め続けます。滅茶苦茶な話のように見えますが、監督の両親のほぼ実話だそうです(笑)。


 ズーラが歌う歌は最初は民俗音楽として、パリではジャズとして奏でられます。

 どちらも実に美しい。
 もの悲しい歌は東にも西にも居場所がない、どこにも寄る辺がない二人を象徴しているかのようです。
 終盤 映画の舞台は冒頭の教会に戻ります。二人は自分たちの場所を見つけることができたのか。

 美男美女、個性的な音楽、白黒の画面、この映画に描かれているものは全てが美しい。
 いや、人間の姿だけは美しくない、特に共産主義者の陰険さはマジ、怖い。連中は人を拉致する際も眉毛一つ動かしません(笑)。


 90分足らずの短い映画です。静かだけど衝撃的なエンディングは見るものに深い印象を残します。それも含めて、実に美しく、完成度が高い映画です。新しい映画ですが、もう古典みたい。まさに見る価値がある、素晴らしい作品でした。

映画『COLD WAR あの歌、2つの心』6月28日(金)公開 特報予告