特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『インスタ映えする六本木』(失笑)と映画『バトル・オブ・セクシーズ』と『女と男の観覧車』

猛暑、酷暑、熱暑、なんと言ったらよいのでしょうか。家の中にいるだけでも倒れそうな猛烈な暑さです。被災地で作業をしている人はさぞ大変だと思います。
選挙違反で公民権停止の前科がある防衛相の小野寺は『豪雨の最中も宴会に出席していたことを非難され、宴会の最中も指示を出していた』と言い訳していたのがウソだったことが報じられました。どうして、こういう嘘つきばかりが政治家をやっているんでしょうか?
安倍晋三が広島訪問をキャンセルしたのも罵声を恐れて?(他の閣僚が現地で罵声を浴びたのがNHKローカルで流れました)の仮病が疑われています。今後 安倍晋三の右足に注目(笑)。



今日の京都は宵山なんですね。この時期 一度行ってみたいと思ってるんですが、なかなか縁がない。ボウイみたいに1年位 京都に住んでみたいものです(ずっとは無理)(笑)。
●こんな光景を目の前で見たら腰抜かします。俵屋(2枚目)は一度行ってみたいー


政治家と違って(笑)、ボクは盛り場に出かけるようなことは滅多にないんですが、3連休の都心だったら空いているだろうと思って六本木に夕涼みに行ってきました。ボクの感覚だと自ら大資本のカモになりに行くようなもので、バカらしいといえばバカらしいのですが、たまには(笑)。確かに人は少なかった。

●ミッドタウンの庭の芝生では石庭を模して、コンピュータ制御で刻々と変わるドライアイスとイルミネーションのショーをやっていました。インスタ映えする六本木(失笑)







アッと言う間に 3連休は過ぎようとしています。早く定年にならないかなあ(笑)
先日 YAHOOのニュースで、こんな見出しが目に留まりました。高校野球なんか全く興味ないから いつもは無視なんですが、見出しの意味が理解できなかったので記事を見てみました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180712-00265421-nksports-base
高校野球でマウンドにいるピッチャーへ女性マネージャーが革靴・制服で伝令したことがニュースになったみたいです。そんなこと、何の問題があるのでしょうか?どうしてニュースになるのでしょうか。少し前まで高校野球はグラウンドには男しか入れなかったそうですが、いまだに日本はこんなくだらないことがニュースになるような有様。国とマスコミと大衆が寄ってたかって、下等なスポーツ(見世物)で性差別を拡大再生産している 未開の低開発国もいいところ、です。その挙句 少子高齢化で滅びかけているのだから、この国はバカ丸出しです。


ということで、渋谷で映画『バトル・オブ・セクシーズ映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

女子テニスプレーヤーのビリー・ジーン・キング夫人(エマ・ストーン)は、女子選手の優勝賞金が男子選手の8分の1と不当に安いことに抗議して、全米テニス協会を脱退、女子だけのテニス協会を立ち上げる。そんなビリーに元男子チャンピオンのボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)が男性優位主義代表として対決を申し込む。


70年代の女子テニスの王者ビリー・ジーン・キングを題材にした実録作品です。と言っても、ボクはテニスは興味ないし、ルールも全然わかんない。なんで得点が15点ずつ増えるんだよ?意味が判らない。あまり、気が進みませんでしたが、映画自体の評判は良いので見に行ってみました。
●昨年アカデミー主演女優賞を取ったばかりのエマ・ストーンがキング夫人を演じています。


舞台は1970年。プロテニスに女性が進出して程ない頃。トップ選手だったキング夫人は賞金の男女格差が改善されないことに抗議して、女性だけのテニス協会を発足させます。観客の動員数は同じなのに、男女の賞金格差は8倍。それでも『男の方が優れている』として改善しようとしないテニス協会に業を煮やして、女性選手たちを集めて女子テニス協会を立ち上げるのです。
●キング夫人たちを中心にした女性選手たちは賞金の男女格差に抗議して、女性テニス協会を立ち上げます。契約金はそれぞれ1ドル。

彼女たちは協会の嫌がらせにも屈せず、スポンサー会社を見つけてツアーを始めます。今までの野暮たかったユニフォームをデザイナーを雇って華やかなものにしたり、美容師に選手たちの髪形をセットさせたりするなどの工夫で、ツアーは盛況になります。


キング夫人はツアーを始めるうちに自分が同姓に興味があることに気が付きます。そして、ほどなくツアーに同伴する美容師と関係を持つようになります。保守的な家庭に育った彼女は今まで自分のことが判らなかった。彼女には優しい夫も居る。それに当時は同性愛のテニス選手なんかが許される時代ではありません。ツアーのスポンサーが撤退したら大変なことになります。彼女は葛藤を続けます。
●キング夫人は女性美容師(写真右)に不思議な感情を持つようになります。


軌道にのったかに見えたかの女子テニス協会ですが、そこへ元男子チャンピオン、55歳のボビー・リッグス(スティーブ・カレル)がかみついてきます。
男性の方が女性より能力は優れている、男と女で賞金に差があるのは当然だ。女性の賞金を上げるのだったらシニアの自分たちの賞金だってあげるべきだ。
リッグスはこのような言い分を唱えて、彼女たちに挑戦してきます。
●元ウィンブルドンの覇者 ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)(写真右)は男女には能力差があるとして、女性選手たちに戦いを挑みます。


ところがリッグスにも事情があります。かっての世界チャンピオンだった栄光や緊張感は消え失せ、今は金持ちの奥さんの実家の会社に世話になって暮らしている。暇を持て余した彼はギャンブル依存症で通院までしています。あくまでもスリルを追い求めたい人間なのです。キング夫人たちの女子テニス協会旗揚げとそれに対する男性たちの一部の反発は彼にとってチャンスでした。もともと彼は男性優位主義者ではあるかもしれませんが、必要以上にそれを演じることで男女対決に世間の注目を集めてスリルを味わいたいのです。ギャンブルをやめられないことに業を煮やした奥さんに離婚を宣告されても、スリルを追うことは止められない。


主役のキング夫人を演じるエマ・ストーンも全くテニスを知らなかったそうですが、数か月の特訓で7キロ増量して筋肉をつけたそうです。試合シーンもカットが入っているし、吹替も使っているとは言え、ちゃんとそれらしくなっているのは、あちらの俳優さんはいつもながらすごいと思いました。
エマ・ストーンスティーヴ・カレルもエンドロールで映った実際の選手たちそっくりなのも驚きだったんですが、とにかくエマ・ストーンの眼鏡の奥の水色の目がかわゆい、かわゆい(笑)。それにスティーブ・カレルってコメディアンかと思ってたんですが、最近のこの人の演技は本当にうまい。
●スティーブ・カレルはエキセントリックだけど哀愁が漂う中年男役を見事に演じています。


この映画は単純な勧善懲悪の視点に陥りません。テニス対決よりも、キング夫人、リッグス、それぞれの事情を丁寧に述べていることで、クライマックスの男女対決が重みをもって描写されます。ここいら辺の盛り上げはお見事。実際にドーム球場に3万人もの観客を集めて全国ネットで放送したんですね。男性優位を唱えるバカな男たちや、平等の権利と尊敬を持って扱われることを求める女性たちも試合を注視している。スリルを追い求めるギャンブル依存症のリッグスはともかく、キング夫人は女性の権利のために戦ったわけですが、大変なプレッシャーだったと思います。
●二人の対決は全米生中継、いろいろな人を巻き込んで世界中の大騒ぎになります。


しかし一番感動するのは試合が終わった後です。ゲイのユニフォーム・デザイナーがキング夫人に語りかける台詞で号泣してしまいました。人間の自由の本質、世の中を変えるってことはどういうことかを雄弁に示すセリフを語る実在のデザイナーを演じるのはアラン・カミング育児放棄された子供を養子縁組するために世間と戦うゲイのカップルを描いた傑作『チョコレート・ドーナッツ』で『アイ・シャル・ビー・リリースド』を絶唱したあの人です。見ている時は判らなかったのですが、あまりにも素晴らしかったので帰宅して調べて、そのことを知ったとたん、また涙が出た。『チョコレート・ドーナッツ』の仇を取った〜と思いましたもん。


キング夫人はその後 レズビアンであることをカミングアウト、LGBTQの権利の向上に尽くした功績でオバマ大統領から文民の最高位、大統領自由勲章を受章しました。夫とは離婚し同性のパートナーと一緒になりましたが、夫が再婚した相手と作った子供の名付け親になるなど、元夫とは良好な関係が続いています。


監督のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫婦は傑作『リトル・ミス・サンシャイン』やボクの好きな、お洒落かわゆい映画『ルビー・スパークス』を手掛けた人、脚本のサイモン・ボーファイは『スラムドッグ$ミリオネア』 でアカデミー脚色賞を受賞した人。


この作品はエンターテイメントとして一級品であるだけでなく、描かれる70年代風俗も非常に良くできている。こういう時代だったんだなーと思わせます。でも、それだけでなく男女平等という枠を超えた、もっと普遍的な価値にまで言及しています。お見事な着地でした。日本ではイマイチ地味な扱いかもしれませんが、誰が見ても面白い、そして感動的な作品です。テニスが題材じゃなきゃ(笑)、満点つけちゃうくらい好き!


もう一つ、新宿で映画『女と男の観覧車映画『女と男の観覧車』公式サイト

舞台は1950年代のコニーアイランド。遊園地のレストランでウエイトレスとして働く元女優のジニー(ケイト・ウィンスレット)は、遊園地で働く再婚同士の夫(ジム・ベルーシ)と自分の連れ子と一緒に、観覧車の見える部屋に住んでいた。苦しい生活と退屈な夫に不満を募らせた彼女は海岸で監視員のアルバイトをしている脚本家志望のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と火遊びに走る。ところが、ある日久しく音沙汰がなかった夫の娘(ジュノー・テンプル)が現われたことで、ジニーの生活が狂い始める……。


82歳のウディ・アレン監督、48作目の新作です。ボクはウディ・アレン監督の映画は必ず見に行くことにしています。おしゃれで意地悪だから(笑)。でも今回のように人間関係のどろどろしたお話しってボクは嫌いなので、この映画はとりあえずお義理で出かけました。それが、そんなに嫌じゃなかったのが自分でも意外でした。


元女優のジニーはかって自分が不倫をしたことで前夫が自殺し、精神のバランスを失った自分も女優の職を失います。今は落ち目の歓楽地コニーアイランドのレストランでウェイトレスとして働いています。


再婚した夫のハンプティはコニーアイランドの遊園地で働いていますが、稼ぎも悪く、横暴で酒癖も悪い、休日は釣りや野球観戦、と彼女にとっては退屈な男です。

おまけに自分の連れ子は悪ガキで放火癖がある。


日常生活が何もかもうまく行かないジニーは海岸の監視員をしている大学生、ミッキーと知り合い、恋に落ちます。彼は若く、ハンサムなだけでなく大学の演劇科に在籍して脚本を目指しています。彼の脚本で女優に復帰、という夢を抱いたジニーは火遊びを止められません。親子そろって火遊びが止められない(笑)。この意地悪さがウディ・アレンです(笑)。


この映画の原題は『Wonder Wheel』。まるで彼女の家の前にある観覧車のように、同じ場所から離れられない彼女の人生を示唆しているかのようです。


ジニーを演じるケイト・ウィンスレットは生活の疲労感とかろうじて残っている美貌が絶妙のバランスです。かなりの場面ではヒステリーを起こしているし、適度に太ってだらしない身体をわざと画面にさらします(女優魂!)。それでもこの人、美しい。しかし、現実には夫は横暴だし稼ぎも悪い。子供の病院代にすら事欠く有様。生活に追われる労働者階級の暮らしに彼女の美貌はどこか不釣り合いです。
逆に、若くてハンサムなミッキーとの情事は確かに彼女に似合っている。


そこに現れたのが音信不通だった夫の娘です。マフィアと結婚して駆け落ち同然で出て行った彼女は警察の尋問に応じたため、今はマフィアに追われています。マフィアに買ってもらった高そうなドレスをまとった彼女は若く、美しい。彼女を匿って同居することになったのですが、ミッキーが若くて美しい娘に目を付けます。嫉妬に狂ったジニーは自ら自滅していきます。


スクリーンの中でのケイト・ウィンスレットはオレンジ色、夕暮れ色の照明が当てられています。彼女を美しく描くと同時に落日を思わせる。落ち目の観光地であるコニーアイランドとシンクロしています。そこが美しい。


一方 娘には寒色の照明が当てられています。彼女と対照的です(ただ、個人的な好みでは、この人はあまりきれいには見えなかった)。


そうやって若さを対比させるのはいかにもという感じでボク的には抵抗があります。実際、画面ではケイト・ウィンスレットの方が、若い娘役の子より全然 美しい。ですが、そういう点も含めて、お話が定型的に見えるところが、逆に絵空事感が出て効果的でもある。描写がさらりとしているんですね。ケイト・ウィンスレットの演技もしょっちゅうヒスを起こしている割には抑制的で、印象はどぎつくありません。今作でのケイト・ウィンスレットの演技が高く評価されているのもうなづけます。


美しい画面の中で話が様式美で描かれるのでドロドロしていない。見ていて案外 楽しいんです。誰が何と言っても放火を止めない息子もアレンらしく苦味が効いていて面白いし。
ウディ・アレンが80歳にして新境地を開く傑作だった前作の『カフェ・ソサエティ『週末の共謀罪反対』と女性のタイプ2題:映画『カフェ・ソサエティ』と『バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)と異なって、今作はそれほどではない小品ではあります。非常に綺麗な画面に人生の苦悩に悩む美女に軽いジャズと郷愁、見ていて案外 楽しい映画でした。