特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『沖縄 慰霊の日』と映画『ハクソ―・リッジ』と『おとなの恋の測り方』

最初は2日に迫った都議会選挙にちなんだ、東京西半分のローカルニュース(笑)から。
こんなクソ議員が居るんですね。4年間 議会で質問ゼロ、一方 ハイヤーの使用回数は議会1位。三宅茂樹 と言う世田谷区選出の自民党都議会議員、こりゃあ、びっくり。文字通りの人間のクズ!じゃないでしょうか。良くここまで恥知らずになれるな、とびっくりしました。



#三宅茂樹 #税金泥棒


こういう税金泥棒の議員は世田谷だけでなく、全国各地にゴキブリのように生息してるんじゃないですか。ボクも含めて、有権者の無関心が、こういう泥棒を生息させているわけです(怒)。
朝日新聞世論調査部長のtweet


さて、この写真をご覧ください。人間のクズと言えば、もう一匹(笑)。沖縄戦終結日、6月23日に行われた慰霊の日の式典に出席した安倍晋三を沖縄の人がどのように思っているか、非常に良く表している写真です。


拡大した写真はこちら。


オリジナルを是非 ご覧くださいhttp://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017062402000061.html


知事や県の関係者はもちろん、前列の子供たちも含めて、沖縄の人が安倍晋三をどのように見ているか、この写真は恐ろしいほど雄弁に語っています。もちろんこの視線は本土の我々にも向けられています。今までの沖縄の基地は全て米軍に接収されて作られたものですが、今回の辺野古は初めて日本人自らが作る米軍基地なんですから。しかも攻撃部隊である海兵隊の基地なんか日本の防衛には関係ないことは沖縄の人だってわかってますよ。



ということで、六本木で映画『ハクソ―・リッジ映画「ハクソー・リッジ」公式サイト|6.24 Sat. ROADSHOW

第2次世界大戦中、デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、日本軍の真珠湾攻撃に憤激して軍隊に志願する。しかし彼自身は人を殺してはいけないという宗教上の信念を持っており衛生兵として働くことを望む。上官の命令を受けても銃を持とうとしない彼は部隊の中でも臆病者扱いされ軍法会議にかけられるが、新婚の妻(テリーサ・パーマー)と第1次大戦の兵士だった父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、彼は武器の携行なしに戦場に向かうことを許可される。やがて彼の部隊は地獄のような沖縄の戦場に投入される。


映画『ハクソ―・リッジ』は今年のアカデミー賞でも作品賞、主演男優賞、監督賞候補になり、2部門(編集、録音)を受賞した非常に評価が高い作品です。度々の暴言やDVや奇行でハリウッドで干されていた監督のメル・ギブソンがこれで10年ぶりに復活したと言われています。
映画は沖縄戦中盤の山場 前田高地の激戦を舞台にしています。日米両軍が文字通り血で血を洗ったこの戦いの酷さはボクも昔から聞いていました。20代の頃 沖縄に初めて行った際 どんなところだろうと思って、実際にその崖の下まで現地の人に連れて行ってもらったくらいです。もちろん 今は民家が密集し緑がうっそうと生えていて 当時の面影は全くありません。ただ瞑目だけして帰ってきました。


ボクは残酷なシーンがある映画は苦手なので、肉片が飛び散る戦場の実相をリアルに描いたこの映画はスルーするつもりでした。が、映画を機に公開された浦添市の前田高地の案内を見て、見に行くことに決めました。やっぱり戦場の残酷さを見ておかなければならないだろうと思ったんです。文字通り、おっかなびっくりでしたが。
●これを見て、非常に考えさせられました。浦添市グッジョブです。『ハクソー・リッジ』〜作品の舞台をご案内します〜 | 浦添市


ちなみに日本の映画会社はこの映画の舞台は沖縄戦ということを極力避けて宣伝しています。アンジェリーナ・ジョリーが監督した『アンブロークン』のように敵味方の兵士たちの感動秘話なのに反日映画扱いされるのを怖れたからだそうです。この国は救いがたいです。アホかって。


●映画のワンシーン(1枚目)と記録写真(2枚目)(浦添市のホームページから)。非常にリアルです。


前半は軍に志願した主人公のデズモンド・ドスが新兵訓練に明け暮れるところが描かれます。セブンスデー・アドベンチスト教会の信者である彼はどんな命令を受けても銃を持とうとしません。彼の父は第1次大戦に従軍して戦場の恐怖を味わった結果、PTSDのアル中になりました。家庭内でオヤジのDVに晒されるうちにドスは銃を持たないことを心に誓ったのです。この映画全般に云えることですが、PTSDの描写は非常に見事でした。言葉では説明しないんだけど、勝敗に関係なく、兵士たちが戦場で深く傷ついたことが良くわかります。沖縄戦では生き残った米軍兵士のうち、1万人以上が戦場の恐怖でPTSDを発症しています。なぜ、こんな描写があるかって?もちろん、ベトナムでもイラクでもアフガンでも多くの人が傷つき、兵士とその家族、そして社会そのものを、今も傷つけているからです。●まともな訓練もしないまま国民を戦場に狩り出していた日本軍とは違い、戦中でも米軍はちゃんと訓練をしていたのが印象に残りました。


部隊の仲間から蔑まれ、暴行まで受け、軍法会議にかけられても、ドスは自分の信念を曲げません。軍法会議で刑務所送りになる寸前、思わぬ人物の助けで彼は救われます。米軍は良心的兵役拒否者を認めていました。第2次大戦でも兵役拒否者が2万人従軍して、戦闘以外の業務に携わったそうです。やはり米軍は、軍属や子供までむりやり戦場に送り出した日本軍とは文明度が違います。


ドスには軍に入る直前、ナンパして結婚した妻(テリーサ・パーマー)が居ます。ボク、テリーサ・パーマーちゃん好きなんです。ゾンビ映画なのに優しくて心が温かくなる傑作『ウォ―ム・ボディーズ』のヒロイン役で一発で大好きになりました。そう思った人は他にもいたらしく(笑)、マニアックな映像芸術専門のテレンス・マリックの作品でもヒロインを務めていました。このエグい映画でも最初から最後までオアシスのような役目を果たしています(笑)。

●衣装や髪型は当時を再現していますが、やっぱり可愛いテリーサ・パーマーちゃん


後半は沖縄戦、前田高地の戦いが描かれます。狭い高地で戦車を投入できない地形に日本軍が立てこもり、頑強な抵抗を続けたそうです。ここを落とさないと首里を攻略できない。米軍には艦砲射撃や爆撃などの支援はありますが、日本軍は地中に洞窟を掘って立てこもり、度々逆襲して米軍を崖から追い落としたそうです。

●この崖を登って米軍は高地に攻めていきました。

●崖の上ではこんな艦砲射撃がさく裂しています。それでも日本軍は地中に立てこもっていました。


覚悟はしていましたが、戦場シーンは恐ろしい、の一言に尽きます。銃で撃ち殺す、銃剣で刺し殺す、殴りつける、火炎放射器で焼き殺す。敵味方関係なく、簡単に人が死ぬだけでなく、腕や足が飛び散り、内臓がはみ出す。戦場に散乱する死体にはネズミが食いついている。そして戦場での人間の恐ろしさ。CGを使わずに描いた、こういう描写はメル・ギブソンお得意だそうですが、まさにリアル・ホラー映画です。恐ろしさを表現するための描写ではなく、現実を描くための描写です。


7度目の死闘の末 一旦は高地を占領した米軍ですが、夜になると日本軍の死に物狂いの突撃で崖下に追い落されてしまいます。しかし、崖の上にはまだ、大勢の負傷兵が取り残されています。武器を持たない衛生兵のドスは一人残って、負傷兵を救おうとするのです。


本当にこんなことをした人がいたのは信じられないのですが、実話です。残兵狩りをする日本軍の眼を盗んで、ドスは1日以上も高地にとどまり、日本兵も含めて75人の負傷兵の命を救います。彼を苛め、蔑んでいた部隊の面々は彼によって命を救われるのです。『あと、もう一人だけ、救わせてください』と神に祈りながら、負傷兵を救いだして崖の下へ降ろす主人公の姿には胸が熱くならざるを得ません。一見 線が細く見えるアンドリュー・ガーフィールド君はまさに適役で、熱演だった『沈黙』での牧師よりも良かったかもしれません。超感動の嵐です。信じられない。


メル・ギブソンは超保守的なキリスト教信者だそうで、リアルな描写を通じて『受難』を描きたいようです。この映画はその主題をうまく描いているとは思いますが、キリスト教が胡散臭いと思ってるボクには良くわからない。しかしリアルな描写に拘った結果 戦争のバカらしさ、人間の信念の強さがそれ以上に強く描かれてますから、普遍的な作品になりえています。最後に2008年まで存命だった実際のドスや部隊の面々のインタビューを入れたのも効果的でした。ドスは『静かに暮らしたい』として映画や小説化の勧めをはねのけていたそうですが、晩年 初めて許可を出した結果、この映画が作られたそうです。


この映画では沖縄の民間人の被害が描かれていないのですが(想像は出来ます)、それを除けばリアルな描写をテンポよく繰り出して、監督の描きたい主題を効果的に打ち出しています。描写にはびっくりしますけど、非常に上手い映画でもあります。上映時間の2時間20分はあっという間で非常に短く感じました。


結構な大規模公開ですので劇場にはポップコーンを抱えた頭の悪い客も大勢来ていて(人間の肉片が飛び散るような映画でポップコーンを抱えているのはアホとしか言いようがない)、度肝を抜かれたようでした(笑)。ですが、日本人、特に本土の人間が眼をそむけてはいけないことが描かれている映画であることは間違いありません。映画としての質も高いです。
戦争をすれば、文字通りこのような地獄になる。どんな理由をつけても、戦争は起きるのではなく『する』のです。どんなことをしても戦争だけはやってはいけないと改めて思いました。



もう一つは 楽しい映画です。新宿で映画『おとなの恋の測り方おとなの恋の測り方

舞台は南仏マルセイユ。浮気性な夫と離婚して3年がたった弁護士のディアーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、彼女がレストランに置き忘れた携帯電話を拾ったという連絡を受ける。電話の主の男性の優しく知的でユーモラスな話し方に惹かれたディアーヌは、携帯電話を受け取りに行くが、現れた男性アレクサンドル(ジャン・デュジャルダン)はおしゃれでハンサムだったが身長は136センチしかなかった- - -
●身長差のあるカップル(笑)


アカデミー賞を取った『アーティスト』のジャン・デュジャルダンが演じるアレクサンドルは×1で子供を育てる建築家、ディアーヌは×1の弁護士、前夫とは衝突しながらも共同事務所を経営している。大人のラブ・ラブコメディです。デュジャルダンはCGを使って、障害で身長が伸びなかった136センチの男性役を演じています。

●ハンサムではあるんですけどね。


いかにも、常に恋していたい?ラテン系らしいコメディです。主人公の男も女も×1、ディアーヌの親も離婚して、継父は聴覚障害者、前夫は依頼人から検事まで、いい女を見つけたら手当たり次第。アレクサンドルの息子は半ニート状態。日本だったらひっくりかえってしまうような人間関係がごく当たり前のように描かれています。離婚も浮気もニートも中年男女の新たな恋にも、誰も偏見は持ちません。


そんなフランスでも、アレクサンドルの身長に偏見を持つ人がいます。ディアーヌとデートしても彼の身長は彼女の胸までしかありません。彼の姿を見て、物笑いにするようなクズもいます。優しく知的でハンサムで性格も良いアレクサンドルに、ディアーヌは恋をしているのですが、彼の身長を見て笑う人たちを見て心が次第に乱れてきます。
●恋人と前夫(笑) 


見ていて楽しいです。地中海の海と強い陽の光、おしゃれな服、ディアーヌ役のヴィルジニー・エフィラも素敵です。すごく美人、というわけではないけど、やっぱり美人(笑)。正義感が強いけど少しわがままなキャリア女性の姿は堂に入っています。今まで知らなかった人ですが、日本でも今夏 公開される、イザベル・ユペールの話題作『エル』にも出ているそうで楽しみです。お話の中で可愛いセント・バーナード犬がお話のスパイスとして活躍するところもうれしかったです。
●完全無欠な絶世の美人より、スーツ姿の適度な美人のほうに魅力を感じるのはボクだけでしょうか(笑)


お話しは多少 ご都合主義のところはありますが、主人公のセリフにある『誰もが普通であることを要求するのはナチスと一緒』(今の日本の風潮はまさにそうです!)、『偏見や差別は自らの心の中にある』という考え方が徹底されているので、嫌な気持ちになりません。ルックスにしろ、身長にしろ、外観に惑わされることが人生にとって如何にアホらしいか、全編を通じて訴えているんですね。気弱な男に対して、女性がイニシアチブをとるエンディングもうなづけます。やっぱり、そういう時代ですよ。
●地中海の美しい海、強い陽の光は観ているだけで心が浮き立ってくる。


綺麗な景色と美しいカップル、お洒落な洋服、リベラルな価値観とボクの好きなものが詰め込まれた楽しい、楽しい2時間です。こういう映画を見ると洋服が欲しくなる。ボクはリネンのシャツが欲しくなって、今 ネットを見ながらため息をついてます(笑)。いっぱい笑って、ちょっと泣いて、目の保養。何も考えずに見る映画としては、とても良いです。こういう幸福な映画は何度も見たくなる。ボクはかなり評価高いです。

●おまけ:ちょうど今 TV番組『Youは何しに日本へ?』(TV東京)を見てたら、身長差30センチ以上のカップルが出てました。現実にもあるということです。彼は日本人、彼女はドイツ人。