特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

非転向(笑)のススメ:映画『ヤング≒アダルト』

復興景気に沸く東北地方は日本中から建設業者が押し寄せているそうです。復興から除染まで、普通より高い日当で仕事はいくらでもあるらしい。東北の人員を大増員している某ゼネコンはこういう人員の振り分けをしていると聞きました。『もう子どもを作った40歳以上はフクシマ、それ以外は仙台』。そのこと自体をどうこうは言えません。けどフクシマには今も住んでいる人がいるわけです。
               

さて、今 映画女優で誰が一番美しいか?という話になったら、アングロサクソン系ではシャーリーズ・セロンという意見は多いんじゃないでしょうか。
映画『ヤング≒アダルト』はシャーリーズ・セロンが性格最悪の×1女を演じた、笑って泣かせるコメディです。 仕事サボって平日昼間の渋谷で映画館に入ったら、中には女子高生の群れがぎゃあぎゃあ蠢いている(笑)。怖かったよ〜。

監督は『ジュノ』、『サンキュー・スモーキング』、『マイレージ・マイライフ』と良い作品ばかりを作ってきたジェイソン・ライトマン、脚本はエレン・ペイジちゃん扮する女子高生の妊娠を描いた『ジュノ』でアカデミー脚本賞を取ったディアブロ・コディ。先日 朝日新聞にインタビューが載っていた彼女は元ストリッパーという経歴だそうです。


シャーリーズ・セロン演じる主人公は田舎町出身のゴーストライターヤングアダルト文学でヒットを出したが、今やブームが過ぎて連載作品は最終回を迎えようとしているところ。アラフォーとは言え、生来の美貌でオトコには不自由してないが、特定の恋人はおらず、チワワ犬だけがお友達。バーボンをストレートでがぶ飲みしてはベッドに倒れこむような毎日。仕事もプライヴェートも行き詰ってきたある日、今も田舎町に住む高校時代の元カレからの子供誕生のメールを受け取ります。憤慨した彼女はチワワをかばんに押し込んで(笑)、故郷に向かいます。子どもが生まれたばかりの元カレを奪うために。

●キティちゃんからチワワまで完璧な造形(笑)


若い時っていうのは恥ずかしいことで一杯で、ボクなんか未来永劫思い出したくもないです(笑)。
だけどこの映画では、高校生のときに栄光を味わった主人公はアラフォーになっても、そのリバイバルを懸命に演じ続けます。見せられる側は自分の恥部を見せ付けられるようです。
こういう役を演じるのはシャーリーズ・セロンだから許されるんでしょう。アカデミー賞を受賞した『モンスター』もそうだったらしいですが(ボクは未見)、この映画での徹底的な性格ブス(笑)ぶりは凄いです。主人公の荒れた生活を象徴するのはキティちゃんTシャツにピンクのバッグ、ルーズなスウェット。こういうのって洋の東西を問わず共通している感じ。
彼女が泥酔するシーンでは文字通り邪悪なオーラがマジで漂ってきます。酒場で目が据わったまま誇大妄想気味の自己主張を続ける彼女には美人女優の面影なんてまったくありません。あの極悪な目つきには魔女メドゥーサってこんな感じなのか、と思ったもん。
●魔女のお姿


超美人が恥ずかしさをさらす大熱演を引き出すのがディアブロ・コディの脚本とジェイソン・ライトマン監督の脚色です。
一見コミカルな映画だけど、それを支えるプロットも脚色も小道具も、何もかも計算されつくしている感じです。邪悪な彼女の横に対極的な存在、おたくでいけてない良識的な同級生マットを配して話を進めていくところ、前後2回ある彼女がベッドの上で男の腕を跳ね除けて起きるシーン、彼女がコーヒーを入れるシーン、彼女の乱れた髪の毛ですら意味を持たせているんじゃないかと思えるくらい。とにかく教科書みたいによく出来ています。
●麗しのメアリー・ベス・ハートさま♥


田舎の下手くそ主婦バンドとか、主人公にとっての都会が(決して大都会とはいえない)ミネアポリス、などの細かな設定もリアルで愛らしい。おまけにボクが若いとき大好きだった女優メアリー・ベス・ハート(名画『ガープの世界』の主人公ガープの奥さん役)もクレジットに入っていました。



映画『ヤング・アダルト』の最大の魅力はやっぱりラストシーン。我侭で幼稚な、大人子供の主人公は一体どうなるのか。
ぼろぼろになったミニクーパーに乗って独りでミネアポリスへもどって行く彼女の姿は、ボクにはとても痛快に見えました。一皮向けた彼女が自分を貫いているように見えたからです。こういう生き方ってあるよな。ほろ苦くも爽やかな後味で、この映画大好きです。
                                  
一見 おばかそうなドラマの意外なシリアスさに戸惑ったのか、観終わったら静まり返っていた渋谷の女子高生の諸君も頑張りなさい(笑)。他人のことは言えませんか(泣)。