特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

年次改革要望書とTPP、もしくは日本解散(笑)

野田という松下政経塾出身の総理大臣はAPECの首脳会談での自分の発言すら、日米で解釈が違うことを説明できない始末だ。もちろん、日米どちらの言い分が信用できるかは明らかだろう(笑)。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111115-OYT1T00478.htm?from=main2

早速 アメリカの通商代表が、TPPでは『牛肉』、『自動車』、『郵政民営化』が焦点になる、という発言をしたそうだ。そういえば前にも書いたが、かって在日全米商工会議所の会頭(アフラックの社長)が講演でhttp://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20111103/1320321237アメリカの通商面での要望は、いわゆる『年次改革要望書』(小泉以降は『規制改革イニシアティヴ』と言うらしい)にまとめている、と言っていたのを思い出した。TPP交渉にその内容が反映されるのは当然だろう。


で、今年の2月に出た最新版『日米経済調和対話』を見てみる。確かに牛肉以外のことは今 アメリカが言ってることがきちんと文字になっている。 全品目・全分野だよ(笑)、もちろん。
彼らは情報公開という面では日本の政府よりはるかに『フェア』で、きちんと日本語訳をつけて大使館のホームページで『要望事項』をそのつど発表している。 http://japan2.usembassy.gov/j/policy/tpolicyj-econ.html#kiseikaikaku

その文書から、大見出しを書き出してみる。
<米国側関心事項>(笑)
・情報通信技術
知的財産権
・郵政
・保険
・透明性
・運輸・流通・エネルギー
・農業関連課題
・競争政策 *注 独禁法関連
・ビジネス法制環境
・医薬品・医療機器


簡保を含めた『郵政民営化』はもちろん、保険では『共済を規制して、(外資も含め)保険会社と競争条件を同じにしろ』(まさにアフラックが言いたいことだろう)が要求されている。運輸では『DHLやUPSと日本郵便の競争条件を同じにしろ』、『革新的な自動車(テスラなどの電気自動車だろう)規制緩和をしろ』、ビジネス法制では『国境を越えたM&Aをやりやすくしろ』、農業関連は『もっと農薬モンサントだ〜=経団連会長の出身企業の提携先)食品添加物を使わせろ』、とか、確かに彼らが強い産業分野の規制緩和の話が並んでいる。この文書のひとつ前、08年版のイニシアティブには『公務員の年金に401Kを導入しろ』というものまであった(笑)。


けれど、アメリカが言っていることが全部悪い、というわけではない。 『新薬や医療機器承認の大幅スピードアップ』とか『風力発電を初めとした再生可能エネルギー規制緩和』とか、もっともな話も多い。 特に透明性のところ、『日本政府のパブリックコメントや審議会、規制の解釈などの透明性確保』なんか九電の例を見るまでも無く、300%アメリカが言っている事が正しい(笑)。
ちなみにパブリックコメント制度も裁判員制度同様 アメリカの要求に基づいて始めたらしい。まさか日本の役所自らやらせをするほど酷いとは流石のアメリカ人も夢にも思わなかっただろう(笑)。

アフラックのおっさんもそうだったが、アメリカは『郵政民営化をすれば日本の消費者も得ですよ』と、表向きは経済合理性に立脚して議論しようとしている。だったら同じように日本もアメリカの言っていることをオープンかつ合理的に議論すればいい。陰謀とか言ってても、全く埒があかないだろう(笑)。
日本だってアメリカの要望に対する回答やアメリカに対する要望書を英訳もつけて、ネットで公開すればいいじゃないか。





外国にそこまで言われなきゃいけないの?という感情論はあるだろう。だけど大事なのは日本がもっとマシに、もっと住みやすい社会になることだ。
残念ながら 今の日本には致命的な欠点があるオリンパス不正経理を外人社長が暴いたのが良い例で、日本という社会は閉鎖的・排他的で、なかなか自浄作用が働かない。東京電力九州電力、それに役所はその極端な例だろう。
オリンパス損失隠しも仮に自分が内部昇格した役員だったら、どうだろうか。自分の管轄外のテーマを社長に楯突いて指摘できる人はそんなに多くないと思う。社外出身とか、違う立場の人でなければ、なかなか難しいのではないか。ま、オリンパスの場合は社外取締役もダメだったし(笑)、そもそも1000億以上の不正を見逃すのはマトモではないけれど。


本当に日本を何とかしたいのなら、『外部の血』が必要だと思う。
日本人男性ばかりだった日本の組織や企業に女性や外国人がどんどん入ってくればいいと思うし、ジャック・アタリエマニュエル・トッドが言っている『(摩擦やデメリットはあっても)日本の活路は移民をバンバン受け入れるしかない』という意見にボクは賛成する。移民は多くの人が反対だと思うが、今 上映中の映画『サウダーヂ』を見て、良く考えたほうがいい(笑)。 そもそも食い物屋だって、工場だって、農業だって、日本国内の産業は外国の人がいなければ成り立たないではないか。もう、遅いよ(笑)。


結局 TPPも原発も、本質的な問題は日本の政治家・役人・大手マスコミが国民に情報をきちんと説明しない、そして議論をしないこと、ではないか。
半年前を思い出してみよう。
放射性物質の拡散予測は、日本の気象庁ではなくドイツの気象庁のものを見なければ判らなかった。
・各地の放射線量は日本の文部科学省ではなく、アメリカのエネルギー省の調査が発表されるまで判らなかった。
・フクシマ原発が爆発した様子や被害状況は日本のTVや新聞より、CNNの方がはるかに正確で詳しかった。
・フランスやドイツの政府は自国民に関東地方からの退去を勧告したが、日本政府は科学的根拠がない原発周辺の同心円内の住民にしか避難勧告を出さなかった。



ボクは、アメリカの弱肉強食社会より、少なくとも公的健康保険が機能しているだけ、日本のほうがまだマシだとは、思う。TPPの交渉項目には絶対に同意してはいけないものが含まれている。良いこともある。だけど、それ以上に日本、特に日本の政府・役所には戦前から続く致命的な欠点があるんだよ。

情報を隠して議論もないまま、いつの間にか『なあなあ』で意思決定がされてしまう。だから失敗しても誰も責任を取らず、同じ過ちを繰り返す。


相変わらずの日本の政治家や役人のバカさ・売国さを見ていると、『日本なんて国はさっさと解散して、(小金があるうちに)アメリカの51番目の州に入れてもらったほうがまだマシかも』、という突拍子もないアイデアが魅惑的に思えてしまう。右翼風な物言いをすれば、政治家や役人が国を売りたいなら、売り物をなくしてしまえばいい(笑)。国や政府はどうなっても、日本に住む人の暮らしが良くなればいいのだから。