特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

狂気と絶望、祈り:映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

 楽しい楽しい3連休。
 気持ちが良い秋晴れだと、朝 マンションの裏庭を散歩するだけでも気持ち良いです。

 忘れてたんだけど、35年前にテレビでこんなことがあったんですね。さすが清志郎。他の出演者も笑っている。
 当時だったら笑って済みました?が(笑)、今だったら芸能界から抹殺でしょう。人間の質はどんどん劣化している。

 アメリカも日本も政治の方はきな臭くなってきました。
 80歳近くなっても、こんなに幼稚な奴も珍しいです。

 一方 ハリス陣営の副大統領候補、ティム・ウォルツはこう。

 特に昨今は知性とか人間性といったものとは関係なく世の中は動いていくものかもしれません。

 安倍晋三が長期政権で日本を滅茶苦茶にしたのがその典型です。経済だけでなく、人間まで劣化させたんでしょう。安倍晋三のようなバカに影響される国民が悪いんですが。

 被団協がノーベル平和賞を受賞した件、良かったとは思います。白村江の戦いに始まり、大化の改新明治維新、太平洋戦争に至るまで過去の歴史を振り返っても結局 日本人は外圧がないと自らを変えられない

 意地悪なボクは、かって被団協が共産党系と社会党系に分裂した話をマスコミが流さないのはどうなってんだと思ってたんですが、この話を聞いて、どうでも良くなりました。その通り、結局 世界はどこかで繋がっている。


 と、いうことで、日比谷で映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日

 近未来のアメリカ。19の州が連邦政府から離脱し、カリフォルニア州テキサス州が「西部連盟」を作り、さらに『フロリダ連合』や有象無象の勢力がアメリカからの独立をめざし「政府軍」との戦争が始まる。戦場カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)をはじめとする4人のジャーナリストはワシントンに立て籠もる大統領にインタビューするために戦場と化したアメリカを、ニューヨークから1,400キロ離れた首都ワシントンへと向かう。

happinet-phantom.com

 分断が進むアメリカの将来を描いているとアメリカでNO1ヒットを記録した作品です。監督のアレックス・ガーランドはイギリス人、元小説家です。個人的にも今年最大の期待作かもしれません。

 どうせ、こういう映画は日本では流行らないから早めに見ておこう、と思って公開第1週、朝一に見に行きました。なんと、満席でした。第1週は日本でも興収1位になりました。ちなみにA24 はブラッド・ピットが作った映画制作会社、良心的な映画造りで知られています。


 映画はワシントンの光景から始まります。何も説明はありませんが、アメリカでは何やら戦争が起こっているようです。

 カリフォルニアとテキサスが西部連盟(WF)を作ってアメリカからの独立戦争を始めている。大統領は政府軍は大勝利を収めたと主張し、TVから西部連盟に投降を呼びかけています。
 しかし、どうもそんな感じではない。西部連盟が進撃して首都は陥落寸前、という情報も漏れ伝わってきます。

 ニューヨークは騒然としています。治安は乱れ、街は戦場のようになっています。

 そんな中、14か月もマスコミの取材を受けていない大統領にインタビューをしようと、戦場カメラマンのリー(キルステン・ダンスト)をはじめとする4人のジャーナリストはニューヨークから1400キロ離れた首都、ワシントンへ向かいます。道中はもはや戦地と化しています。

 古典的なロードムーヴィー、映画はそんな構造で作られています。しかしここで描かれているのはまさに地獄めぐりです(笑)。


 
 シビル・ウォーとはかっての南北戦争の事ですが、市民戦争という意味でもあります。南北戦争では市井の人々が銃を握り、互いに殺しあった。拷問や略奪も横行し、プロである軍隊の戦争より血なまぐさいかったそうです。ネットで見ると当時の拷問の写真とか山ほど出てきますが、このことはアメリカの歴史では大きなトラウマになっている。

 この映画でも平和な街は戦場に変わり、同級生はガソリンスタンドで殺しあい、ショッピングセンターや工場は廃墟になり、ジェノサイドがのどかな田舎で行われる、驚くべき光景が次々に描かれます。

 地獄のような光景をリーたちジャーナリストは心を鬼にして記録し続ける。起きたことを公正に記録することが次の犠牲を防ぐのを信じているからです。

ですが、現実のすさまじさに信念も絶えず揺さぶられます

 ここで描かれるアメリカはとんでもないことになっている。殺し合いと人種差別、外国人嫌悪は当たり前という社会に落ちぶれている。映画の中ではアジア系というだけで殺されるシーンがある。

 戦場カメラマンのリーは中東やアフリカの戦場を『こんなことを二度と起こしてはいけない』つもりで取材していましたが、アメリカで同じことが起きていることにショックを隠せません。

 ドルの価値は暴落し、カナダドルにも価値が劣るような状況にもなっています。「この国はもうダメだ」、「記者は全員射殺されるぞ」と言った衝撃的な台詞が度々出てくる。アメリカはもう、先進国ではない。

 大統領は憲法を改正して就任3期目を迎えた独裁者です。国民から遊離してホワイトハウスに立てこもり、デマ情報を流し続けるだけの存在です。

 監督は『(今は)右派も左派も対話に失敗している』、『(トランプのような)ファシストと対抗するためだったら民主党(カリフォルニア)と共和党(テキサス)が手を結ぶことだって可能じゃないか』と言っています。もし今、アメリカで内戦が勃発したら!? 超話題作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の監督を高橋ヨシキが直撃!「映画は未来への警告である」 - エンタメ - ニュース|週プレNEWS

 もちろんトランプのようなポピュリストの台頭やアメリカで起きている社会の分断が意識されています。更にイラク戦争やアフリカでの内戦のイメージも濃厚に投影されている。中東やアフリカにあるような難民キャンプがアメリカ国内に出来るなんて誰が想像したでしょう。明日は我が身(笑)。

 いや、この映画で描かれているのは日本も含めた我々自身です。デマが飛び交い、暴力が誘発され、社会は分断している。

 例えば、トランプのMAGA支持者は言うまでもありません。ボクは今のバカウヨやアホ左翼のようないわゆる『信者』とも殆ど会話はできないと思う。
 彼らは事実を元に対話をしないから、たぶん彼らはボクの意見を聞いても反日とか体制の手先とか思うでしょう(笑)。例えば消費税なんか下げても1年も経てば消費は元に戻るから効果はないし、財政赤字が増えて福祉が削られる、財源に国債を増発しても円安になって物価が上がるだけ、と言っても、たぶん山本太郎信者には通じない(笑)。
 あと、川崎や川口に押しかけて、クルドや韓国の人への差別を振りまいている低能ども。頭の中身はこの映画に出てくる狂人と大きな差はない。
 つまりバカにつける薬はない

 政治でもビジネスでも議論して、お互いの異なる利害をすり合わせるのがお互いの自由を保障する唯一の方法ですが、認知のゆがみで会話が成り立たないのなら自由も民主主義も成り立たない
 この映画で描かれているのはそんな社会です。

 狂った世界の中で無力感に襲われながら、懸命に正気を保とうとするリーを演じるキルステン・ダンストの深い皺と鋭い視線が実に印象的でした。ただ若い世代への伝承、というサイドストーリーは彼女に同行するジャーナリスト志望の若い子がバカすぎて、あまり説得力がなかったです。

 この映画の最も優れている点は演出です。美しい映像、音、音楽が巧みに組み立てられていて、観客は自分が戦場に居るかのような気持ちにさせられます。恐ろしいと同時に美しい。

 殆どアート映画と言っても良い。それくらいの切れ味です。

 戦場への没入感が素晴らしいです。美しくて迫真の画面だけではなく、特に音響と音楽のセンスが凄い。
 音響は無音のタイミングが度々挿入され、効果的なコントラストを作っています。音楽はストーリー以上に状況を表現している。最初から最後まで、狂気に取りつかれたアメリカを描くのには実に効果的でした。映像も美しい。遠くで両軍が撃ち合う砲弾が夜空に浮かび上がる美しさはなんと表現したらよいのか。ボクはiMAXで見たのですが、大正解でした。

 最高にセンスがいい、圧倒的な映画です。凄い。
 NYのパンクバンド、スーサイドの曲が完璧なタイミング、完璧な内容で流れるエンディングでは、感動の嗚咽が止まりませんでした。こう来たか、と。そこにあるのは狂気と絶望、祈りです。

 凄いものを見せられたという感動で嗚咽した。ホント、これは大きい画面で見るべき政治アートです。この映画で映しだされているのは現在の我々の姿です。
 今の現実には、ここまで抽象度を高めなければ対抗できない、というのは感じました。

 ある者は戦争の狂気に囚われ、ある者はそれを見て見ぬふりをしています。、映画にはアメリカでこういうことが起きないように、というメッセージは強く感じます。それ以上に凄い映像体験で、むしろ現実はこうなってしまうんじゃないかと思えてしまう。それくらい描写に力がある。

 今年のベスト10どころではない、ベスト5には確実に入る、まさに今の映画です。10年後に見直したら、『こんなの甘いよ』と思うのでしょうか。
 高すぎるハードルを軽々と超える傑作でした。感動しました。


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