特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ある、台詞までの240分:Che,Part2

 銀座でChe,Part2http://che.gyao.jp/
驚いたことにPart1同様、今回も結構 客が入ってる。週末とは言え昼の回、客席が8割がた埋まっている。なんなんだろうね。
内容はチェ・ゲバラキューバを去ってボリビアで戦った約300日を淡々と描写した、そんな映画だ。
 Part1と同様、なぜゲバラが戦ったのか、その理由を描く場面がほとんどない、またボリビア政府軍の実態やCIAの役割に関する描写が極端に薄いのも、制作側が加減をしているような感じもしないでも、ない。
 だが、ゲバラたちに直接起きた出来事はほぼ忠実に描かれているようだ。ボリビアのジャングルでのゲリラ戦、その間も住民を治療したり読書を続けるゲバラ、協力どころかソ連の指示に従ってゲバラたちの足を引張るボリビア共産党キューバから来た外人を信用しないインディオたち、そして次第に追い詰められていくゲリラたちの焦燥。登場人物も史実にほぼ忠実に、数年後アメリカの大富豪ハーストの娘がこの名を名乗ったことで有名な女性ゲリラのタニアやフランス人ジャーナリストのレジス・ドブレ、日系人医師フレディ・マイムラなども登場する。ただし説明や解説みたいなシーンは一切ないから、見ている側は予備知識がないとまったく訳がわからないだろう。
 この、起きた事象だけを淡々と描写していくという手法は平板に過ぎて、Part1ではやや物足りない感じもした。しかし、今回は却って好感が持てた。何故だろうか。
映画として成功かどうかは別にして、ゲバラのような人物の生涯、特に死を描くとしたら、演出抜きに起きたことだけをストイックに描いて行く、このやり方以外には難しいと感じたからだ。そういう意味ではこの映画のPart1、Part2は一体だし、Part2まで見て初めて理解できる作品だと思った。

 でも一箇所だけ演出らしい演出がある。負傷して政府軍に捕まったゲバラが監視役の兵士と会話するシーンだ。『(一般の)ボリビア人はゲリラの味方をしなかったではないか?』、『神を信じないのか?』と尋ねる兵士に対して、ゲバラは『(それでも)私は人間を信じる』と単純明快に言い切る
 実際にゲバラがそう言ったかどうかは知らない。いずれにしても僕には、そのようなことを言い切るのはとても出来ない。それはもしかしたら僕だけではないかもしれない。だからこそ、スティーブン・ソダーバーグ監督はこの台詞のために2時間、いやPart1もあわせて4時間、ひたすらストイックな描写を続けたのではないだろうか。そんな気がする。