特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ももクロちゃんは機械仕掛けの夢を見るか?:『機械との競争』(RACE AGAINST THE MACHINE)

以前 チェスの世界王者がコンピュータに負けたことが話題になったが、今度はプロの棋士がコンピュータに負けたことが話題になっている。トップクラスのプロ5人とコンピュータソフト5種類が対局して、結果は人間の1勝3敗1引き分け。 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013042102000115.html
ニコニコ動画での機械と人間との対局の中継は180万人も視聴したらしい。ボクは将棋のことなど良くわからないが、限られたマス目のなかで決まったルールで大局していればコンピュータが人間を凌駕することは充分考えられる。

                                                                                                                                         
                                                                                               
同じように『機械との競争』(原題:RACE AGAINST THE MACHINE)と言う本が話題になっている。この原題はアンチ資本主義の有名バンドRAGE AGAINST THE MACHINEのもじりだろう。内容は『情報技術が雇用、賃金、経済に及ぼす影響』をMITの教授と研究員がレポートしたもの。具体的には『機械が人間の今までの職を少なからず奪っていく。ジョブレス・リカバリーと呼ばれる、景気が回復しても失業者の数が減らない現象は、オフィスへのコンピュータの導入や現場の機械化によるものが大きいのではないか』というものだ。

機械との競争

機械との競争

                                                                          
この本は統計的な論証が殆ど省かれている点は不満だけれど、書かれている内容自体は納得がいくものが多い。

工場へのロボット導入やオフィスのOA化によって、確かに働く人は大幅に減った。ネットが出来るまえは図書館へ出かけて統計をひっくり返して調べていたことが、今はネットでググれば、あっというまにグラフまで出来る。
タイピストや株式市場の仲買人、首都圏の駅の改札などは職業自体がなくなってしまったし、隆盛を極めるネット販売はCDショップや本屋の店員さんの雇用を減らすことに少なからず影響している。EDIは企業の営業マンを減らしているし、OA化で事務職自体が減っていることは言うまでもない。さらに将来は自動車の運転だってグーグルカーなど機械が進出して、消滅する職業は更に増えるだろう、とこの本は言う。
人間の職が全てなくなるわけではない。芸術家や経営者など創造性や判断力が求められる職業は機械では代替出来ないし、現場での肉体労働やサービスといった職種も残っていくだろう。 駅の改札は自動機に置き換わっても、様々な雑用は機械ではこなせない。
だが 少数のコンピューター/機械を使う側とそうでない側との貧富の差は広がっていく。結論として、この本ではクリエイティブな職業へ携わる人が増えるように、教育の内容自体を芸術性や思考力などクリエイティヴィティ重視に変えていくことを推奨している。

                                                                                                            
ボクはこの本に納得したところと反対のところがある。
機械が人間の雇用を変化させている、ある職種については減らしているのは事実だ。だから、それに人間が適応できるよう教育も変えていかなければならないのはそのとおりだ。だが政治家がTOEFL導入だの、道徳とか愛国心だの言い出している日本で、クリエイティヴィティを重視する教育ができるかと言うとボクは?だ。道徳だの愛国だの非論理的な話にムキになっているような創造性がない人間が、どうしたら教育を創造的にできるのかさっぱりわからない(笑)。(余談だけど 自民党の教育『再生』本部でTOEFLを入試に義務化する案を取りまとめた遠藤利明というジジイ議員が、私自身はTOEFLは受けたこともないし、英語も全然わからない、と5/1の朝日新聞のインタビューで公言していたのにはぞっとした。http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201304300626.html

そんな間抜けな例は置いておくとしても、時代状況に合わせてカリキュラムを変えていかなければならないことは間違いないだろう。

 
                                            
反対なのは貧富の差を情報技術だけに求めてしまうのは格差の問題の本質をゆがめるもので、百害あって1利なし、ということだ。
簡単に言うと、ファンドなんかで大もうけしている奴は全員とは言わないが、クリエイティヴでもないし、世の中に貢献しているわけでもない、ただ大組織で権力を握ったからとか、コネだとか、元から財産を持ってた家に生まれたから、という奴が多いだろ、ってことだ(笑)。

新自由主義の問題点は、『新自由主義は自由競争なんかしてない』(笑)、ってことだ。彼らのスローガン、『規制を緩和して自由競争にして利権をなくせ』っていうのはうなずける部分もある。だが実際には起きていることは違う。完全な自由競争なんて行われていない。郵政民営化のドサクサでオリックスが超低価格で『かんぽの宿』の払い下げを受けたのがその典型だ。自由競争により高価格で国有財産を払い下げたのではない
それだけではない。レーガノミクス以来 アメリカでも日本でも累進課税の税率を下げてきた。お金持ちや超大企業が影響力を行使して世の中のルール自体を自分たちに有利にしてきたからだ。その挙句、ジョージ・ソロスが『自分たちは貧乏人より税率が低い。金持ちの俺たちからもっと税金を取れ』と指摘するまでになってしまった。
新自由主義は『金持ちが自分たちに有利なようにルールを変えてしまう』、ということなのだ。言い換えれば、新自由主義の本質は新しい利権作りってこと。実際に新自由主義を推進したのは誰がどう見ても知能指数が低い金持ちのドラ息子、2世3世議員のブッシュだの小泉だの安倍だのっていうのがそれを象徴している利権をなくしたら一番 困る連中じゃん(笑)。


機械との競争』はその点は不満があるけれど、『情報技術や機械が人間の仕事のやり方を変えつつある、一部の仕事はこの世から無くしつつある』、という指摘自体は事実だし、見過ごしてはならない視点だとおもう。個人的にも、自衛のために仕事のやり方はいつも見直していかないとマジで危ないなあ、と感じた。
創造性を高めるために、クリエイティブなももクロちゃんのDVDでも見よ〜っと(笑)。

                                      
●躍動感あふれる生歌とダンス、テクノロジーを活用しつつも機械とは対極のライブ。ずっと見てると頭がウニになってくる(笑)けど、この3年くらいのシングル曲は本当にいい。