昨日(47人)、今日(48人)と、東京のコロナ感染者が増えてきた件、TVでは連日『夜の街』がどうのとか言ってますが、元々昼も夜もまともに検査してないんだから、昼の街だって検査すれば陽性患者はいくらでも増えるに決まってますよね(笑)。
買春大臣の西村がカメラの前で『夜の街』がどうの、とか話していると、やっぱり違和感があります。西村は以前疑惑が報じられた海外だけでなく、元々 国内でも女癖が悪くて有名だそうですけど、こんな連中にだけはとやかく言われたくない、と思うのはボクだけでしょうか。
ウィルスだけでなく、この国には狂気が広まってきたようです。この、埼玉市教委のニュースは驚きました↓。
さいたま市の全市立小学校で医療従事者らに「感謝の意を示す」拍手を明日いっせい実施とのこと。
— yamada shingo (@syashingo) 2020年6月13日
(朝日新聞埼玉県版 2020年6月14日付) pic.twitter.com/3PO04hBSLS
職務を放棄した大阪市長を大勢の市民が後押しした(笑)先日の大阪の雨合羽もそうですが、いよいよ北朝鮮のようになってきた。アホは安倍晋三だけじゃないもんなあ(嘆息)
●こういうアホもいましたな(笑)。まさにN国党との同類対決(笑)で寄付集め。
日本の政治家はゴミばっか、ということで、アマゾンの配信で「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」
pepe-movie.com
3月に公開されて、見ようと思っているうちに映画館が閉まって見られなくなっていた作品です。
言うまでもなく、ホセ・ムヒカ氏はウルグアイの元大統領(2010~2015)。報酬も財産もほとんどを貧困救済のための財団に寄付した質素な暮らしぶりは『世界でもっとも貧しい大統領』として知られています。数年前の来日時はTVで取り上げられるなどブームになりました。
ボクも、この人は偉い、とは思ってますけど、清貧ぶりが強調される日本での取り上げられ方には違和感を持っています。
清貧というのは素晴らしいことではあるけれど、現代社会ではその裏で赤い舌を出している奴がほぼ必ず、いるわけです。インチキ・ジャーナリストとか代理店とかTV局とか大企業とか。
そこいら辺を見過ごし、またムヒカ氏がどうしてそういう考え方に至ったかを無視したまま、今の清貧ぶりだけに注目するのは頭が悪すぎるんじゃないかと思ってしまいます。
そう、ご本人じゃなく、騒いでいる連中がインチキ臭い。
だから世界3大映画祭を制覇した旧ユーゴの巨匠、エミール・クストリッツアがムヒカ氏のドキュメンタリーを作ったと聞いて、ぜひ見てみたいと思ったのです。
●農園で談笑するムヒカ氏とクストリッツア監督(左)
映画は監督とムヒカ氏が屋外でマテ茶を呑むシーンから始まります。二人とも殆ど無言。穏やかな表情ですが、ムヒカ氏がマテ茶を大好きなことは伝わってくる。
そのあと、彼は『孤独の中で過ごした10数年が無かったら、成果主義で短絡的で尊大な人間になっていた』とつぶやきます。彼はかって左翼ゲリラに加わっていて、12年間投獄されていたんです。
そこから映画は、彼の半生を振り返ります。
南米は長年 ユナイッテッド・フルーツやATTなどアメリカの大資本によって経済を支配され、多くの人々は貧しい状態に放置されていました。それに対して、人々の間では抵抗運動が起こっています。
60年代後半 南米はキューバ革命に危機感を覚えたCIAなどの暗躍でアメリカ寄りの軍事独裁政権が続々と生まれていました。各国の軍部、ギャング、ナチの残党をCIAが操って行われた一連のテロやクーデターは作戦名『コンドル作戦』、別名『汚い戦争』とも呼ばれています。昨年 アカデミー賞を取った映画『ROMA/ローマ』でもメキシコの白色テロ(右翼テロ)が描かれていましたね。
- 発売日: 2020/06/03
- メディア: Blu-ray
選挙で生まれた社会主義政権を軍事クーデターで転覆させ大統領が殺されたチリ、軍事政権が市民や労組員を拷問、多くの死者を出したアルゼンチン(現ローマ法王フランチェスコも軍事政権に抵抗していました)などが有名です。
ウルグアイでも軍部が力を持つようになり、軍が政権を掌握、独裁体制になります。国民300万人の国で30万人がブラックリストに載ると言う異常な体制だったそうです。
ムヒカ氏は ゲバラに影響を受けた左翼ゲリラに加わっていました。彼らは銀行強盗や要人の誘拐など暴力的な手段も厭いませんでした。政府側もバンバン、暴力、テロを起こしてくるのですから、それしか手段がなかった。
やがてムヒカ氏たちは72年に逮捕・投獄、12年もの獄中生活を強いられます。その際 ムヒカ氏は実際に何発も銃弾を受けており、今でも肺の4分の1を切除したままだそうです。
ムヒカ氏は、『12年の獄中生活が自省と思考を深める機会になった』、と言います。
●今はこんな穏やかな表情ですが、その裏にあるものを見なければならないと思う。
その後 85年に国民投票によって軍政は崩壊(これもチリと同じです)、ムヒカ氏たちもテロを放棄して合法政党になり、彼は中道左派連合の代表として2010年に大統領に就任した、と言う訳です。
これらのことが当人の証言だけでなく、当時の写真や共に投獄された友人などの証言などから語られます。
●当時の左翼ゲリラの同志と
現在は好々爺と言った雰囲気ですが、当時の風貌もやっていたこともそんな感じではありません。まさに闘争の男、です。
ちなみに長年連れ添った奥さんも左翼ゲリラで書類の偽造係をやっていたそうです。彼女は上院議員でしたが、ムヒカ氏が15年に大統領を退任した後 17年に副大統領になりました。
●奥さんと。選挙の応援演説です。
映画はムヒカ氏の事績より、彼の人柄を洗い出しています。普段は大人しく農作業に勤しむ姿、政界引退後も情熱的な演説の光景(普段と全く!違います)、犬のご飯を手作りする姿- - -
●ムヒカ氏は傷ついていた3本足の犬を救い、そのまま飼っています。こういう人は信頼できる。
彼が街を歩くと、多くの人が声をかけてきたり、記念写真をねだったりしてきます。国民の間に親しまれ、愛されていることは良くわかります。
●彼の愛車のフォルクスワーゲン。今でも自分で運転して出かけていきます。高齢者の運転、どころではありません(笑)。
●映画とは関係ありませんが、一般人がヒッチハイクしていたら、大統領が拾ってくれた、というニュースが2015年に報じられました(笑)。
Hacía dedo en la ruta y lo levantó el presidente José Mujica. Conocé la historia http://t.co/0dxjtPOnzz pic.twitter.com/C6Jq6cyMJF
— El Observador (@ObservadorUY) 2015年1月16日
その一方 街角で男から『お前はIMFの言いなりだ』と文字通り因縁を吹っ掛けられ、最初は丁寧に応対しているものの、ムヒカ氏も最後には激怒して『お前はアホだ』と相手を罵る姿も収められています。
●自宅農園で鶏と。
ムヒカ氏はチャベスのような反米政権になるかと思いきや、中道左派的な政策を取りました。左翼的な人間から見ればIMFなど既存の秩序に妥協した、と見えるのでしょう。
しかし、彼は大統領在任中に貧困率を39%から11%に下げ、大麻や同性婚を合法化しました。経済成長率は従来と同程度でしたが、失業率や一人当たりGDPは大幅に改善されました(ただし近年は治安の悪化が進んでいる、とは言われています)。
彼は述懐しています。
「若いときは体制を破壊し作り直すことなど簡単だと思っていた。」、「しかし、歳を重ねて、体制を作り直すことは実に大変だということが分かった」
そうなんです。現実を変える、ということは一筋縄ではいきません。教条主義的な左翼にはこのような苦労は理解できないのでしょう。
2015年、ムヒカ氏の大統領辞任の際の演説は感動的でした。
●大統領退任式典で(中央)。ネクタイをしないのがムヒカ氏のモットーだそうです。
『私は引退するが、これからだ』、『皆さんが困っていたら私はいつでも駆けつける。これからも困っている人の側に立ち続けていきたい』、『なぜなら、それが自分の人生を最も充実したものにするからだ』
この『自分のためにやっている』と言い切るところこそが、ボクは『この人は信用できる』と思ってしまう点です。
実際、彼の言葉には嘘がない。
式典が終わったあとも、おんぼろフォルクスワーゲンを運転して、自宅へ帰っていく(笑)。
辞任後は自分の財産を貧困者のための財団に寄付し、農業学校や住宅建設を行っています。夫婦で左翼ゲリラ活動を行っていたから彼は子供を持つことが出来なかった。それは彼の人生の中で後悔として残っているそうです。
●大統領退任後 彼が作った農業学校の開校式で。
何よりも文化が変わらなければ世の中を変えることができない。歳をとり、多くのことを学んできた。武装闘争ではなく、平和的に少しずつ世の中を変えることを学んできた。しかし彼の胸の中の想いは左翼ゲリラだったころから変わっていない。
この人の言葉は確かにずっと聞いていたいと思わせられます。地位も財産も名誉も眼中にない彼の境地は確かに本物に見える。それは彼がまるで聖人の様に見えるからではなく、その逆、自分自身のためにやっている、あくまで自分の人生を見失わないところに惹かれるのです。
映画は退任後 奥さんとフォルクスワーゲンに乗って(笑)出かけた酒場で終わります。
グラスを片手に歌にじっと聞き入る二人。齢80を超えても、ムヒカ氏はまさに『愛と闘争の男』です。カッコいい!