特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

お正月の奇跡&2009年映画ベスト3

毎年 お正月には不思議に感じることがある。
昔からあるホテルや中華に出かけるとテーブルはほぼ完全に1種類の顧客で占められている。都会の家族が3世代、集合した光景なのだろう。老夫婦に、若夫婦、その孫を加えたグループ。
特徴的なのは若夫婦の奥さんのほう。誰もが絵に描いたような、セミロングかロングのヘアスタイル、フェミニンなワンピースを纏った、スリムでちょっとキレイ目の女性(笑)。皆が皆、元JJの愛読者みたいなタイプ(笑)。間違っても金髪の元ヤンキーや、キャリアをバリバリ追求する、例えばテーラード・スーツを着こなしているような女性がテーブルに座っているということは100%、ない(*別に元ヤンやキャリア系の女性がキレイでない、ということは金輪際 言っていないので悪しからず)。
バブル期に出版されたホイチョイ・プロの名著?『東京いい店、やれる店』には『金持ちには、顔が良い女が寄ってくる』というシンプルな指摘がある。そのままの光景が今も、ある。世界的な不景気の2009年の今でも、こんなことが変わらないのはある意味、奇跡だ(笑)。

東京いい店やれる店

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ちなみにニューオータニのレストランで、ボクの目の前に並んでいた、(元)顔が良い女性はフォワグラ入りのキッシュを大皿から取る際、わざわざフォワグラが多い部分を選んで自分の皿に載せていた。要するにそういうこと、なんだろう(笑)。

そんな2009年を振り返る映画はこれ。
1.ミルク(ガス・ヴァン・サント)
主役を演じたショーン・ペン、監督のガス・ヴァン・サント、そしてエキストラの人たち、この作品には、関わったおそらく全ての人の、故人への敬意と誠実さが満ち溢れている。表現しがたいほど美しいキャンドル・パレードのシーンも含めて、これら全てのことが奇跡のようだ。
70年代にミルクと回りの人たちが切り開いてくれた自由の地平がなければ、ボクは今ここにいない。同時期にリバイバル上映された『ハーヴェイ・ミルクとその時代』も合わせて2009ベスト1。

ミルク [DVD]

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2.アストレとセラドン(エリック・ロメ−ル)
フランスという国が成立する前にその地に住んでいたガリア人のラブ・ストーリー、という思い切り意表をついたエリック・ロメールの時代劇。
ローマ人から思い切り野蛮人扱いされていたガリア人の生活がこんなに平和で牧歌的なのか、とは思う。が、それは言わないお約束なんだろう(笑)、誰もその目で見たことがないわけだし。
ドラマとしてのこの作品には無駄とか蛇足、というものが一切ないことに感嘆する。画面ではただ、シンプルな衣装を纏った(時には纏わない)美青年と美女の、シンプルなラブストーリーが美しい自然の中で展開される、だけ。
要するにロメールの作品を見ると、人生には喜びというものがある、ということを思い出すことができる。それを表現するのに奇跡、以外の言葉があるだろうか。
アストレとセラドン 我が至上の愛 [DVD]

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3.『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド)、『ワカラナイ』(小林政広)、『ザ・レスラー』(ダーレン・アロノフスキー
どれもが余りにも2009年と言う今を象徴していて、決して忘れることが出来ない。
『社会の多様性』と言う今日的なキー・メッセージを、異常なほどの映画的完成度の高さで包みこんだ『グラン・トリノ』。
寒々とした現実を直視しても、その無骨さゆえに押し付けがましい不快感がない『ワカラナイ』。
ボクのようなダメ人間に一筋の救済の道を見せてくれる(笑)奇跡のような映画 『ザ・レスラー』。
どれも素晴らしい映画だった。