特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

読書『不機嫌な時代』と『白アスパラの土鍋ご飯』

 6月になりました。今日は大雨。
 うっとおしい梅雨が始まりそうですが、その分 偶の晴れ間が素晴らしいと感じます。

  今週の『フライデー』。ドラ息子の官邸忘年会の写真に岸田本人も寝間着姿で写っているらしい。岸田だけでなく、それを報じない大新聞も恥を知れ。


 さて、3月の引越しで書棚の奥から25年前の本が出てきました。昔流行ったイギリス人エコノミスト、ピーター・タスカのベストセラー『不機嫌な時代 JAPAN2020』です。


https://forbesjapan.com/articles/detail/2274#:~:text=%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%82%AB%E6%B0%8F%E3%81%AF1990,%E3%80%8C%E3%83%87%E3%83%95%E3%83%AC%E5%8C%96%E3%80%8D%E3%82%92%E6%8C%87%E6%91%98%E3%80%82

 内容は2020年の日本はどうなっているかです。
 97年に書かれた本の中身はスッカリ忘れていましたが読み直してみると、中国の台頭や日本経済の凋落、円安など当たっていることも多い。テレワークの普及などもバッチリ当たっている。

 何よりも将来の日本の姿を示した3つのシナリオが面白かったのでご紹介します。
『大逆転』(平和主義)、『デジタル元禄』(資本主義)、『長いさよなら』(民族主義です。

 1つ目のシナリオは『大逆転』。日米安保の傘の下とはいえ、戦後ずっと守ってきた平和主義を続けた場合どうなるか。
 将来、中国が台湾への武力行使をちらつかせた際、日本はアメリカへの軍事協力や基地使用を拒否。両国間の信頼関係がなくなったことから日米安保体制は崩壊、アメリカはアジアから手を引きます。

 それでも日本の政治は変わりません。相変わらず一部の大企業や中小企業、業界団体、地方、高齢者などへ利権を分配するだけです。時代遅れの補助金や規制はそのままで予算はどんどん増え、やがて財政は破綻。日本経済は衰退、水道や道路など社会インフラも劣化、治安も悪化する。
 そこに入り込んでくるのが中国資本。インフラに出資したり、企業を買収したり、日本国内で親中国の世論作りを行ったり。
 結果として日本は中国の勢力下に置かれる、というもの。アメリカの属国から中国の属国へ、ですね(笑)。

 2つ目のシナリオは『デジタル元禄』。日本がもっと自由経済が進み欧米的な社会を目指す場合です。
 外資がどんどん進出してくることで、当初は国内の伝統的な企業が潰れたり海外移転したり、生産性の低い産業が衰退して、国内経済は不況に陥ります。が、デジタル分野を中心に新たな企業が生まれ、女性や外国人が活躍することで2020年頃には日本経済は再び活況を呈している。産業構造も製造業や中小企業が衰退する反面 金融やサービス業中心に変化する。アメリカ、中国とも経済的に密接に結びつくことで、日本はある程度の軍事貢献を行いながら、安全保障を確保していく。

 3つ目のシナリオは『長いさよなら』。将来の日本が国際的に孤立して民族主義が台頭する場合です。
 日本は国内産業の保護のために外資の進出を拒み続け、経済の開放を拒否する。国際的な孤立は深まり、逆に国内では政府、官僚の統制が現在より更に進むことになる。社会的には民族主義愛国主義が高まり日米安保は廃棄、独自の核武装にまで至ります。既存の大企業の寡占化が進み、女性の社会進出も進まない。海外との貿易、特に日本国内への外資の投資は減少していく、結果として社会にイノベーションや変化は起きないまま、ゆっくりと日本の衰退が続いていく
 

 どれも株屋さんの極論ですが当たっているところも多い、と思いました。
 実際 日本は2000年代までは1と2のシナリオのミックス、10年代は1が弱くなり、現在は2、3のシナリオが強くなる方向で動いています。
 ただし日本は既にデジタルでは完膚なきまでに敗戦したし、日本の金融業が海外に勝てるわけがないから、2のシナリオそのままはもう、あり得ません。

 どのシナリオもそれなりに説得力があります。
 特に1の『大逆転』。『平和主義を追求することで却って国際的な孤立と国内政治の機能不全を招く』は成程、と思いました。外人にはこういう風に見えるのか、と再認識しました。
 平和主義と言えば聞こえは良いですが、周囲の国が認めなければ独りよがりでしかありません。この10年 事実として軍拡をしているのはロシアや中国、北朝鮮です。彼らは平和主義なんか歯牙にもかけない。だから日本は他の国と組まざるを得ない。組まなければ逆に国際的に孤立する

 3の『長いさよなら』も充分あり得ます。偏見に裏打ちされた民族主義はまだまだこの国には根強い今回の入管法改悪が典型です。この国の支配層や奴隷臣民は何の得もないのに、何故か閉じた国を志向する。

 また国内政治の機能不全は言うまでもない。日本の政府やマスコミが自浄能力に欠けるのも今に始まったことではない。野党も同じで、立憲民主だって民主党時代の総括すらまともにやっていません。共産党やれいわなど他の野党は議論の対象にすらなりません。
 
 結局 日本は国際社会と協調し、たまに外圧を受けなければ経済も安保もおかしくなる(笑)。
 今や先進国は北欧も含めて全ての国が集団安全保障に加わっています。集団安全保障に加わるということはその枠組みの中で役割を果たす、ということです。何も役割を果たさない、ということは日本が孤立する、ということになります。
 インドやロシアのような資源大国なら兎も角、日本が国際的に孤立したら、シナリオ1のようにどこかの国の勢力下に入るか、シナリオ3のように窮乏化するしかありません。

 今現在 与党の方向性は主に2(資本主義)と3(民族主義)、公明は1(平和主義)と2、維新は2と3(民族主義)、野党では立憲は1と2、社民・共産は1、れいわや参政は1と3ですかね。極端な平和主義や民族主義は日本の孤立・自爆・自滅を意味します。国民が資本主義の要素が強い与党に投票するのも、ある程度理にかなっている。

 しかしアメリカのような資本主義万能な社会が良いとは思えないし、今の日本にはそんな資源も競争力もありません。シナリオ2そのままはありえない。
 だったら、北欧のように平和主義を守りつつ何らかの国際的役割を果たす。そして経済面ではセーフティーネットを固めながら資本主義の自由競争を取り入れていくのが小国日本の活路でしょう。

 武力拒否の平和主義や日本サイコーのアホ民族主義のような極論で思考停止するのはいい加減やめて、日本が経済や安全保障面で国際社会への関わり方の再定義が益々重要なんでしょう。つまり平和主義・資本主義のバージョンアップ、答は25年前からある程度判ってたんだな。


 さてさて、今度は近所の和食屋へ行ってきました。
 広島のサミットの晩餐会は京都の菊乃井という和食屋が担当したそうですが、その東京支店の料理長が独立して開いた、という店です。

 数年前にオープンしたのは知っていたのですが、ボクの嫌いなカウンター形式だし、混んでいて予約がめんどくさいので中々足が進みませんでした。基本的に並んだり予約が面倒くさい店にはボクは行きたくない。


https://www.tenpodesign.com/work/detail/33827

 が、3月に引っ越して近くなったので節を曲げて(笑)、わざわざ1か月前に予約して行ってみました。新規開拓、物は試しです。


https://www.tenpodesign.com/work/detail/33827

 最初はゴマ豆腐。
 日本のゴマの99%は輸入だそうで、日本では唯一 喜界ヶ島で作られている残りの1%のゴマを使ったものだそうです。ゴマ豆腐自体はなんてことありませんが、抹茶の餡は美味しかった。

 ボクはビールは年に1回も飲みません。小さな和食屋なのにグラスのシャンパンがあるのは感心しました。京都の菊乃井本店にはグラスシャンパンはありませんからね。

 八寸。
 佐島の蛸や柏でくるんだ鯛の寿司、白ワインで煮た青梅、キュウリの花。あとは忘れました(笑)。

 お造り。
 下から時計回りにホタルイカのペーストを載せたアオリイカ、醤油漬けの黄身を載せた炙ったメジマグロ、ポン酢のゼリーを載せたキンメダイ、山椒のペーストを載せたカマス、梅を漬けた煎り酒で食べる鯛。魚に施した仕事だけでなく、それぞれの魚がいい感じに熟成していたのには感心しました。
 店を見渡したら席は9席しかないのに調理場には4人もいます。仕事が細かいのも頷ける。

 お椀。

 中には前日から届き始めたという賀茂茄子とジュンサイ。もう賀茂茄子が出ているんですね。
 ただし!出汁の味はいまいちでした。判り易い味付けだし、不味くはない。煮物やお吸い物だったら問題ない。だけど、お椀としては品がないと表現すればいいのか。水自体の味をあまり感じませんでした。

 日本酒のあて。きびなごと黒豆。ボクは酒飲みじゃないんで瞬殺です(笑)。ただ、日本酒をこういうグラスで飲むと美味しくは感じます。もったいなくて家の戸棚にしまいっぱなしの切り子のグラスを出してこようと思いました(笑)。
  

 麹に漬けたスズキの焼き物。
 常盤ものではなく日本海の物だそうですが、身が厚くて立派です。レアに焼いたと言っていましたが、半生の干物みたいな食感でとても美味しかった。

 常陸牛の内もも。
 写真を見ればわかるように、霜降りです。内ももだからまだマシでしたが、霜降りって脂っこくて肉の味がわからない。その一方 肉の下に敷いてあるアスパラのソースは美味しかった。付け合わせの黄ニラの酢漬も美味しかったです。ご主人は『中華の味を合わせた』と言ってました。

 土鍋で炊いたばかりの白アスパラの炊き込みご飯。 

 これは美味しかったー。和食屋は米の旨味を出すために柔らかめに炊く店が多いですが、しゃっきりとした堅めの炊き具合が新鮮でした。残りはお土産、翌日の朝食です(笑)。
 お吸い物は新玉ねぎのすり流し。これも家で真似します(笑)。

 作りたての蕨餅。蕨餅って時間を置くと腰が抜けてしまいますからね。

 カウンターの店は気を遣うのであまり行きたくないのですが、その分 お勘定は安い(笑)。
 歩いて帰れるところにまあまあの和食があることが判ったのは良かったです。ご主人の人柄も悪くないし、仕事は細かい。もう少し予約がとりやすければなあ。1か月前に予約するなんてバカらしいもんなあ。