特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『劇場版 センキョナンデス』

 温かくなったり、寒くなったり三寒四温のお天気が続いています。
 今朝 登る朝陽を見て、力がある光だなーと思いました。いよいよ春が近づいてきました。

 しかし、今朝もミサイルを撃ってた北朝鮮、本当にバカですね。

 今日本がやっている経済制裁、これ以上やる余地がどれくらいあるのか知りませんが、もっと何とか出来ないんですかね。
 ああいう救い難い連中が隣国にいると言うのも迷惑な話です。日本会議統一教会も絶対平和主義の限界左翼も同類、とボクは思うのですが、そういうカルトや宗教はまともな話が通じないから困る。
 政治とはお互いの考えを議論して最大公約数を見つけていく作業だと思うのですが、自分の思い込みだけで頭が一杯だと政治という人間の基本的な営為すら不可能になってしまう。


 と、いうことで、渋谷で映画『劇場版 センキョナンデス

 時事問題を扱うYouTube番組「ヒルカラナンデス」を配信するラッパーのダースレイダーと芸人のプチ鹿島が監督と出演、21年の衆院選挙と22年の参院選を取材したドキュメンタリー。2021年の衆議院議員総選挙では香川一区で、2022年の参議院議員総選挙では激戦区である大阪と京都で、候補者たちへのアポなし取材を敢行する。22年の選挙戦では終盤、安倍晋三元首相の銃撃事件が飛び込んでくるが- - - -

www.senkyonandesu.com


 時事問題を扱うYouTube番組「ヒルカラナンデス」を放送している二人組、フランス生まれでロンドン育ち、東大中退というラッパー、ダースレイダーと文春に時事ネタを連載している芸人のプチ鹿島が監督と出演を兼ねたドキュメンタリーです。プロデューサーは『なぜ君は総理大臣になれないのか』などの監督を務めた大島新。

ダースレイダー(右)とプチ鹿島

 ボク自身は忙しいのでYouTubeは殆ど見ることはないのですが、選挙の度 二人のtwitterは興味深く見ています。歯に衣を着せない、それでいて客観的な現場の生情報はマスコミの伝える情報の補助線として大変面白い。

 最初は21年の香川一区。大島監督のドキュメンタリー『香川一区』でもこの二人が映ってましたが、二人はアポなしで各陣営に乗り込んでいきます。誰かを贔屓するでもなく中立な立場で密着していくところが良いです。中立だからこそ、各陣営の性格が、歪んでいる部分も含めて見えてくるからです。

 香川一区は言うまでもなく、地元で圧倒的なシェアを持つ新聞、テレビ局、ラジオ局のオーナー一族の平井卓也初代デジタル庁大臣とパーマ屋の息子である立憲民主党小川淳也氏との争いです。大島新監督の傑作ドキュメンタリー『なぜ君は』、『香川一区』はその構図を見事に捉えていました。

 21年の選挙ではその二人に維新の新人候補が割って入る、という形です。選挙前から平井大臣がNECを恫喝した話、小川淳也氏(と平井陣営の自民党県議)が維新の候補に立候補を取りやめるよう電話した話も報じられています。特に平井大臣の弟が社長を務める四国新聞平井大臣の言い分ばかりを載せるだけでなく、小川氏の言い分を全く取材せず一方的な報道を続けている。
 ダースレイダープチ鹿島の二人はそのことも含めて、忖度の無い取材を進めます。

 各候補の違いは面白いです。小川淳也氏は自ら自転車で走りながら気さくに市民に話しかけ、選挙運動をしています。忙しい中でもダースレイダープチ鹿島に声をかけられると、普通に会話に応じる。彼の周りには全国各地からのボランティアも含め大勢の人たちが集まってくる。凄い熱気です。
小川淳也氏(右)と二人

 維新の候補、町川の演説には全然人が集まってこない。もともと国民民主党の玉木の秘書だった人です。なんで維新から出馬したのかもわからない。手持無沙汰なのか、町川は二人の取材に答えて饒舌に話し続けます。

 一方 平井卓也の周りには関係者しかいない。町中を練り歩いても、有権者からは全く無視される。平井卓也自身も自ら人々の中に入って話しかけるということもしない。

 小川陣営とは全く対照的な光景です。

 それを取材していると平井の関係者がカメラマンを脅しに来る。『香川一区』でも映画の女性カメラマンが脅されている光景が写されていましたが、この映画のカメラマンにも強面の関係者が因縁をつけてくる。選挙が公的な性格のものである、という意識は全くないらしい。何から何まで小川陣営と違う。

 それだけではありません。平井卓也の実家の四国新聞は『なぜ小川氏に直接取材しないのか』という二人の取材に全く答えないだけでなく、香川一区を訪れている二人をずっと監視し続けていたことが選挙後に分かります。この記者たちは何をやってるんだ(笑)。想像を絶する酷さですが、映画としては見事なオチになりました(笑)。

●先週行われた映画宣伝のための街宣(笑)

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 22年の参院選では、二人は菅直人が反維新を掲げて大阪で運動しているのを取材しに行きます。要は炎上しそうな選挙区を狙っているわけです(笑)。
 集会などで演説を聞くとバカみたいな話ばかりなので、ボクは菅直人は嫌いです。でも単身でどんどん商店街の中へ入って人々に話しかけていくところには感心しました。そういうところは流石です。

 大阪の現職は維新2、自民、公明、それに共産党の辰巳、立憲の新人が挑むという構図です。二人はアポなしですが礼儀正しく取材する、という一線は守っています。だからこそ候補者の特徴、本音迄出てきます。

 例えば自民の松川るい。元外務官僚で『報道1930』で度々見かける人です。頭はいいと思うのですが偉そうな物言いがボクは大嫌いです。街頭での選挙演説でも、『不況の企業に勤める労働者はリスキリングして新しい企業に移ればいい』と常に上から目線で喋り続けているのが面白い。

 しかし本人には悪気もなければ、上から目線という自覚もない。演説が終わっても、二人の取材に気さくに応じ、とうとうと持論をまくしたてます。ある意味 人がいい。二人の感想は『自民党の中でもあまり相手にされてないんだろうな』でした(笑)。 

 立憲民主だって偉そうなことは言えません。選挙期間中『立憲執行部は菅直人が維新を敵視し過ぎているのを苦々しく思っている』という報道が出ます。それに対して直撃取材しても泉も菅直人もぜんぜん応えない。二人の向けるカメラから逃げてしまう。

 京都で当落選上の激戦を続けている福山哲郎だけは真正面から『そんなのは選挙が終わってからの話だよ』と答えます。それぞれのキャラクターが良く表れています。

 あと辻元清美の『人間力』。前年の衆院選で維新相手に落選、今度は参院比例区で捲土重来を期している彼女は沿道で訴えかける人たちに対しても、自陣営の人たちに対しても、プチ鹿島達に対しても、全く態度が変わらない。
 この人は国対委員長時代も自民党とも話ができる、と言われていましたが、こういう人こそがトップにはふさわしい、と改めて思いました。

 そして7月8日、安倍晋三の銃撃事件が起こります。自民党も野党も衝撃を受ける。ここでも辻元の示した態度は印象的でした。死亡の知らせを聞いた後、コメントが続けられなくなって去る辻元の後ろ姿は何よりも雄弁でした。

●ぶら下がり取材を受けている時に安倍晋三の死を知った辻元の表情。

 エンターテイメントとしてはとても面白い、机上やネットで流布されている話や理屈とはまた違ったものが伝わってくるドキュメンタリーです。
 例えば平井卓也小川淳也辻元清美などは対照的な存在ともいえる。デジタルと連呼しながらも大量の為書きや推薦状を貼っている平井の事務所や全く人が集まらない平井の街頭練り歩きを見て、観客は大笑いしている。でも結局は国民は自民党を選ぶ。これは何なのか。

 二人のいう通り選挙は確かにお祭りだし、もっと積極的に参加して楽しむべきではあるんですが、それだけでは何も変わりません。この映画でも維新の吉村の演説に大勢の人が群がっている光景が写っています。群衆の規模、盛り上がりではこの映画の中では最も大きかった。結局はそういうことです。

 政治が今のような体たらくなのは政治家が悪いというだけでなく、国民がもたらしているんだなーとも思わされます。

 二人はまだまだ続編を作っていくそうですが、こういう映画が流行れば日本人の政治への無関心は少しは良くなるのかな。とっ散らかってはいるけれど、間違いなく面白い映画ではありました。

●上映後はプチ鹿島ダースレイダー、そしてプロデューサーの大島新氏の舞台挨拶がありました。

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