特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ザ・メニュー』

 今年もあと3週間になってしまいました。毎度のことですが、時の過ぎるスピードは早い。
 自由が丘の駅前にもイルミネーションが飾られているけれど、ボク自身はクリスマスなんか何処にあるんだろうって感じです(笑)。幸い、今年の忘年会は殆ど潰れてしまいましたが、ボク自身は何かと忙しい年の瀬です。
 


 さて自民党が防衛費を増やすために増税すると言ってます。具体的な用途もはっきりしないのに増税だけ決めようというのだからひどい話です。

 一方 立憲民主はこんなことを言っています。インボイス廃止とか時限的な消費税減税とか全然ダメじゃん(笑)。枝野氏が『消費税減税なんて選挙公約は失敗だった』と言ってたのに全然わかってない。

 消費税の軽減税率を廃止して『給付付き税額控除』を導入する、と言っているのは流石だと思いますが給付付き税額控除とは: 日本経済新聞、そもそも日本には住民税非課税の世帯が全体の2割以上、約1200万世帯もあります。その人たちは関係ない、と云う事のようです(笑)。

「住民税非課税世帯」の年代別割合は?年金生活者に多いのは本当なのか | Mocha(モカ)

 そもそも日本は税金を払ってない人が多すぎる。日本で投票率が低い原因の一つは所得税や住民税の納税者が少ないこと、と思いますが、立憲民主の言ってることも時限的な消費税減税やインボイス廃止も含めて、相変わらず支離滅裂です。
 野党第一党の立憲民主でこれですから、他の野党は問題外でしょう。言ってる本人たちも実現できると考えてないんじゃないですか(笑)。頭の悪い支持者へのポーズだけで。

 自民党も困りますが、野党もこんなザマでは困る。いつまで経っても政権担当能力のある政党が育たない。投票率が低い原因は野党がダメだからか(笑)。


 と、いうことで、六本木で映画『ザ・メニュー

 1人20万円という高価格にも関わらず、予約が取れない有名シェフ(レイフ・ファインズ)が提供するメニューを目当てに、孤島のレストランを訪れたカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。その晩は投資家、料理評論家、大富豪など特別な顧客が招待されていた。料理マニアの男性(ニコラス・ホルト)が料理に感激する一方で、女性は奇をてらった料理に違和感を抱く。やがて店内は不穏な様相を帯び始め、シェフ自慢のメニューに思いも寄らないサプライズが用意されていたことが判る。

 映画館でホラー風の予告編を度々見てスルー予定にしていたのですが(ボクは怖いものは嫌い)、大変評判が良いので見に行った映画です。

 それもそのはず、監督のマーク・マイロッド(TVシリーズシェイムレス 俺たちに恥はない』)は知らない人ですが、製作はボクが大好きな『マネー・ショート 華麗なる大作戦』や『バイス』のアダム・マッケイ、それに『俺たちシリーズ』の有名コメディアン、ウィル・フェレルも製作に参加しています。権力や腐敗を徹底的に笑い飛ばす辛辣なコメディを作ってきた人たちです。

 孤島のレストランに船で十数名のお客さんたちがやってきます。ここには有名シェフ(レイフ・ファインズ)が営む予約が取れないレストランがあるのです。

 お金持ちや投資家、料理評論家などに交じって、場違いな若いカップルがいます。『ウォームボディ』や『マッドマックス4』のニコラス・ホルトとネットフリックスのドラマ『クイーンズ・ギャンビット』の主演などで話題の、今 売り出し中のアニャ・テイラー・ジョイのカップルです。このカップルもどこか余所余所しい。違和感があります。

 海岸沿いの素晴らしい眺望のレストランです。その中で素晴らしい料理が出てくる。今はやりの二酸化窒素を使って凍らせたり、エスプーマ(泡)のソースなど奇をてらった、所謂クリエイティブ、と言われる料理です。以前 アジアでベスト3と言うレストランに行った話を書きましたけど

spyboy.hatenablog.com

料理も雰囲気もそっくりでした。
 この映画で出てくるのは、そういう店で出てくる、資源や環境の保護をコンセプトにした見栄えの良い料理。大して美味しくもない、要するにボクが嫌いな類です(笑)。

 レストランではシェフが独裁者のようにふるまっています。料理が出されるたびにシェフが客を沈黙させ、コンセプトを説明する。彼の命令通り動く従業員たちは丁寧で慇懃だけど、客に対しても自分たちのコンセプトを押し付けてくる。

 因みにこちらが青山のアジアベスト3位のレストラン↓。独裁者のシェフは居ないけれど、お客の目の前で寄ってたかって料理を作っているところなんかそっくりです。

 有名シェフの料理に客たちは感激し、時には涙を流す(笑)。ニコラス・ホルト君のバカ演技も面白かった。

 その中でアニャ・テイラー・ジョイが演じる女性だけは料理や雰囲気に反発する。お皿に手を付けようとしません。想定外の反応を示す彼女に対して、シェフは段々イライラしてくる。実は彼女だけは招待客リストになく、料理オタク(ニコラス・ホルト)が予定されていた同伴者の代わりに連れてきたのです。彼女の正体は何者なのか。

 やがて観客たちにシェフのたくらみが明らかになってきます。


 シェフを演じるレイフ・ファインズは流石です。この迫力と説得力、狂気は彼が演じているから成立するのでしょう。彼と絡むアニャ・テイラー・ジョイも頑張っている。存在感ある独特の風貌を持った人ですが、ここでは線の細さ、繊細なはかなさも表現している。

 お話自体は予告編である程度 想像できます。ホラー風味を取り入れたグルメ・ドラマという感じでしょうか。それだけでもかなり、面白くできている。

 でも、ですね。そんな簡単なドラマではない。狂気に取りつかれたシェフだけでなく、見栄えと見栄ばかりのグルメブームに異を唱え、それを支える金持ちや投資家など特権階級の腐敗をあざ笑う。露悪的ですが、痛快です。

 そして、感動があります。人間が本当に美味しいと思うものは何なのか。料理人や客が本当に求めているものは何なのかまでドラマは辿り着こうとする。終盤の展開でボクは目頭が熱くなりました。登場人物の心がこれだけ、触れ合うようなドラマはなかなかない。

 アダム・マッケイ印らしい、敢えてどぎつい表現もあるドラマですが、根底には人間と言う存在に対する深い愛情が溢れています。見る人は選ぶかもしれませんが(笑)、ボクは結構な傑作だと思います。


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